ドル円見通し(週報17年7月第二週)

日銀は7日、あらかじめ指定した金利水準で無制限に国債を買い入れる「指し値オペ」を5か月ぶりに実施した。

ドル円見通し(週報17年7月第二週)

<概況>

6月15日の米連銀FOMCにおける利上げ決定から上昇に転じ、6月29日には112.92円まで上昇したが、7月3日深夜へ続伸して113円台に乗せ、4日早朝には113.45円まで高値を更新した。
その後は4日、5日、6日と113円を割り込むところは買い戻されて113円を挟んだ高値圏持合いで推移していた。7月7日午前、日銀が5か月振りに長期国債の指値オペを実施し、日本の長期金利上昇を抑えにかかったことで円売りが加速、113.83円まで高値を伸ばした。
さらに7日夜、米雇用統計で非農業部門雇用者増加数が予想を上回ったことでドル高が進み、7日深夜には114.17円まで上昇、114.36円をつけた5月11日高値以来の114円台乗せとなった。

【日銀の指値オペ】

日銀は7日、あらかじめ指定した金利水準で無制限に国債を買い入れる「指し値オペ」を5か月ぶりに実施した。日銀は長期金利を0%にとどめる金融政策を取っているが、欧米の長期金利が上昇する中で一時は10年債利回りが0.105%に上昇したため、金利上昇を抑えるために指し値オペを実施した。
今回の指し値オペ金利水準は0.11%で市場の実勢金利よりも高かったため、日銀のオペに応じた金融機関はなかった。しかし日銀のゼロ金利維持姿勢が改めて強いとの認識を市場へ与えた。一方では欧米の長期金利は上昇傾向にあるため、日米、日欧の長期金利差は拡大傾向を維持し、金利差からの円安が誘導されることになるため、ドル円は一段高反応となった。

指し値オペは、日銀があらかじめ指定した利回りで国債を無制限に買い入れるもので、長期金利を目標に誘導するもの。2016年9月から導入されている。これまでに2016年11月と2017年2月に実施されてきた。2016年11月では、トランプ大統領誕生ショックから転じたトランプラリーにより円安が加速、12月まで大幅な円安ドル高となった。2017年2月では111円割れを回避し、3月10日高値115.50円まで円安基調が維持された。今回は6月14日安値108.84円から円安ドル高で進み、高値警戒感も出やすい状況にある中で実施されたため、市場の高値警戒感を緩め、投機的な円安ドル高を助長する可能性がある。

【米雇用統計 円安基調を印象付け】

7月7日に米労働省が発表した6月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比22万2000人増となり、市場予想の17万8000人増、前月の15万2000人増(当初の13万8000人から上方修正)を上回った。4月と5月分を併せて4万7000人増へと上方修正された。
失業率は4.4%で、16年ぶり低水準だった前月の4.3%から上昇し、市場予想の4.3%を上回った。また、平均時給は前月比0.2%増で市場予想の0.3%増を下回った。前年同月比では2.5%増でこれも予想の2.6%増を下回った。
就業者数の増加は予想以上でかなり良好、失業率は求職が増えればこの程度は悪化する。問題は平均時給の伸びが鈍化したこと。その点も踏まえて発表当初はドル安反応が見られたが、その反応は一時的で、すぐにドル高基調へと走った。
ドル円も114円台に乗せるところまで上昇、取引終了時点では114円を割り込んだが、6月15日以降の上昇基調を維持し、円安基調が継続しやすい状況にあることを印象付けた。

【欧米の長期金利上昇と日銀オペによる円安】

ECBは金融緩和政策(量的金融緩和)を年末まで継続するが、マイナス金利の深堀はもうしないと前回の理事会で宣言した。その後はドラギ総裁発言等からECBが出口戦略へ向かっているとの印象が強まり、ユーロ高、さらに独長期債利回り上昇をはじめとして加盟国の長期債利回りが大きく上昇し始めた。
英中銀も利上げへ転じる可能性を示唆したためにポンド高、英長期債利回り上昇が進んだ。
米長期債利回りは6月から低下傾向となり、6月15日未明のFOMCで利上げが決定された後も数日間は利回り低下が続いていた。しかし、欧州長期金利上昇に触発されて月末から上昇に転じた。6日未明のFOMC議事録、7日の米雇用統計内容を踏まえ、米長期金利も上昇基調へ進むとの見方が強まった。
また7日夜のカナダ雇用統計でも失業率が改善したため、カナダ中銀も利上げへ進む可能性が取り沙汰され始めている。

一方で日銀の指値オペである。欧米が金利上昇へと進み始める中でそれと逆行するオペであり、従来から示されてきた日銀のゼロ金利政策実行の為のものではあるが、日米貿易収支問題も抱える中で円安誘導ともとられかねないオペは、今後に批判的な反応を呼ぶ可能性もあるのではないかと思われる。しかし、市場にとっては円安継続のお墨付きを得たような印象となるため、当面、円安けん制的な動きが出てこないうちはドル円の上昇継続、高値試しの可能性も続くと思われる。

【日足 一目均衡表分析】

【日足 一目均衡表分析】

6月後半の上昇により、一目均衡表では先行スパンを突破、遅行スパンも好転している。26日基準線は111.51円にあり、基準線を上回るうちは中勢レベルの上昇基調の範囲と言えるだろう。

6月14日(6月15日未明FOMC)からの上昇は日足で18本となった。前回の上昇は4月17日から5月11日までの19本であり、また5月11日高値114.36円に迫ったことも踏まえ、対等数値としては高値警戒、反落注意圏に来ている。しかし上昇が20本以上へと伸びる場合、上昇波動はもう一段階レベルアップするため、5月11日から6月14日への下落=25本、3月10日から4月17日への下落27本、2月6日から3月10日への上昇25本、1月3日から2月6日への25本等、基本数値の26本前後が基調転換の目安となるため、7月19日前後まで上昇基調が継続する可能性も出てくると思われる。

3月10日高値と5月11日高値を結んだやや右肩下がりの抵抗線を上抜いた。このため、当面は5月11日高値114.36円前後が上値抵抗となるが、これを超える場合、4月17日から5月11日への上昇幅6.25円高並としてN波計算値=115.09円、もう一つ手前の高値である3月10日の115.50円等まで目安が切り上がってくる可能性がある。

当面、113.50円を下値支持線とし、上回るうちは上昇継続とみる。113.50円割れ、さらに113.5円割れへと続落の場合、短期的な調整安入りの可能性を踏まえ、113円から112.50円にかけての下落を想定するが、そこは押し目買いから反騰入りとなる可能性があると見ておく。(了)<9日19:30執筆>

【今週の主な予定】

7月10日
(欧)ユーロ圏財務相会合(ルクセンブルグ、11日まで)
(日) 8:50 5月国際収支 経常収支 (4月 +1兆9519億円、予想 1兆7928億円)
(日) 8:50 5月国際収支-貿易収支 (4月 +5536億円、予想 -450億円)
(日) 8:50 5月機械受注 前年比 (4月 +2.7%、予想 +7.6%)
(日) 9:30 黒田日銀総裁、支店長会議あいさつ
(中)10:30 6月消費者物価指数 前年比 (5月 +1.5%、予想 +1.6%)
(中)10:30 6月生産者物価指数 前年比 (5月 +5.5%、予想 +5.5%)
(日)14:00 6月景気ウォッチャー調査・現状判断DI
(米)23:00 米6月労働市場情勢指数

7月11日
(米) 4:00 米5月消費者信用残高
(日) 8:50 6月マネーストックM3
(米)12:05 ウィリアムズ米サンフランシスコ連銀総裁、講演
(米)23:00 米5月卸売売上高

7月12日
(米) 1:30 ブレイナードFRB理事、講演
(日)13:30 5月第3次産業活動指数
(加)23:00 カナダ中銀(BOC)政策金利発表 (現状 0.5%、予想 現状維持)
(米)23:00 イエレンFRB議長、米下院金融委員会 半期金融政策報告証言

7月13日
(米) 3:00 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
(米) 3:15 ジョージ米カンザスティ連銀総裁、講演
(中) 未定  6月貿易収支 (5月 408.1億ドル、予想430.0億ドル)
(米) 21:30 6月生産者物価指数 前年比 (5月 +2.4%、予想 +1.8%) 
(米) 21:30 6月生産者物価指数・コア前年比 (5月 +2.1%、予想 +2.0%)
(米) 21:30 新規失業保険申請件数 (前週 24.8万件)
(米) 23:00 イエレンFRB議長、米上院銀行委員会 半期金融政策報告証言

7月14日
(米) 0:30 エバンス米シカゴ連銀総裁、講演
(米) 2:00 ブレイナードFRB理事、講演
(米) 3:00 6月財政収支
(日)13:30 5月鉱工業生産・確報値
(米)21:30 6月消費者物価指数前年比 (5月 +1.9%、予想 +1.7%)
(米)21:30 6月消費者物価指数・コア前年比 (5月 +1.7%、予想 +1.7%)
(米)21:30 6月小売売上高 前月比 (5月 -0.3%、予想 +0.1%)
(米)22:15 6月鉱工業生産 前月比 (5月 0.0%、予想 +0.3%)
(米)22:15 6月設備稼働率 (5月 76.6%、予想 76.8%)
(米)22:30 カプラン米ダラス連銀総裁、講演
(米)23:00 7月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (6月 95.1、予想 95.0)
(米)23:00 5月企業在庫

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