ドル円、デリケートな展開続く(週報5月第一週)

北朝鮮は29日午前5時半ごろ、弾道ミサイル1発を発射した。数分間飛行して最高高度は71キロに達したが空中で爆発したという。

ドル円、デリケートな展開続く(週報5月第一週)

<概況>

4月11日の米トランプ大統領ツイートから朝鮮半島有事リスクが急拡大してドル円は110円割れへ下落、ほぼ1週間の円高ドル安でとなった。17日に108円割れを回避した後はやや戻し気味ながらも109円台前半までに止まり、模様眺めの1週間であった。
先週は24日早朝のフランス大統領選挙での中道派のマクロン氏首位、極右のEU離脱派ルペン氏は2位に止まり、5月7日の決選投票でのマクロン氏勝利見通しが濃厚となり、大きなリスクの一つが後退した。これを受けて24日早朝にドル円は110円台をいったん回復した。
4月25日、北朝鮮建軍記念日を巡って有事リスク拡大が懸念されたが、核実験強行等がなく、市場はやや安心してリスクオンとなりドル円は111円台後半まで戻した。
リスク警戒感を背景に4月10日の111円台半ばから17日の108円割れ回避まで下げ、リスク警戒感後退により4月17日への下落に対する揺れ返し的な上昇で、元の水準へと回帰した。状況的には振り出しに戻ったと言える。

【朝鮮半島有事リスク】

北朝鮮は29日午前5時半ごろ、弾道ミサイル1発を発射した。数分間飛行して最高高度は71キロに達したが空中で爆発したという。北朝鮮の領域からは出なかった。米軍によれば発射されたのは準中距離弾道ミサイル「KN17」とされる。スパイサー米大統領報道官は「米政府は北朝鮮のミサイル実験を把握しており、大統領は報告を受けた」と述べた。トランプ米大統領はその後に「北朝鮮が中国および習近平国家主席の要求を尊重せずミサイルを発射したが、失敗した。ひどい」とツイートした。日本では首都圏の地下鉄が安全確認として一時運転を見合わせる事態だった。
米空母カールビンソン等は日本海に到達、海自が護衛についた。また仏軍艦が英軍兵士を乗せて日本へ帰航、日本の自衛隊員等を載せて出港、日仏英の共同演習行動をとっている。
4月25日の北朝鮮建軍記念日に核実験が強行されなかったことで、市場はひとまず安心していたわけだが、29日早朝の弾道ミサイル発射により、その安心感が崩れたと言える。また中国も制御しきれないことを再認識させた。このため、週明けは再び朝鮮半島有事リスクを意識した動きになる可能性がある。

しかし、現実問題として米国が北朝鮮を軍事的に攻撃する可能性は、その反撃被害想定を踏まえると簡単とは言えない。トランプ大統領という従来にないキャラクターの登場が軍事行動をとるリスクを市場に警戒させるが、市場も徐々に慣れてくる可能性もある。そうした慣れを否定するような攻撃的な対応、また軍事衝突リスクの段階をステップアップさせる状況が発生するかどうかが、今後もこの問題に振り回されてゆくかどうかのカギとなると思う。
当面は朝鮮半島有事リスクがドル円にとっての重要テーマであり続けることは変わりないだろう。リスクが高まれば円高反応も発生すると思われるが、時間経過で落ち着き、日々のテーマ、米経済指標、トランプ大統領の経済政策、米連銀の金融政策等に対して反応してゆくものと思われる。

【トランプ減税】

トランプ政権が税制改革案を発表した。大統領就任100日に対するアピールが主題と思われる。具体的な財源問題が希薄であり、市場は実現性、効果について懐疑的だ。選挙公約だった法人税15%への引き下げ等は「米国史上最大の減税案」と言えるものだが、海外利益の米国還流=レパトリに対する減税、国境調整税も曖昧なものとなった。
米ナスダックは6000ポイントを超えて史上最高値を連日更新したが、週末やや下げている。NYダウとSP500は最高値近辺まで戻したものの高値更新には至っていない。
仏大統領選挙結果での欧州株上昇が市場のムードを好転させたのは確かだが、さらに楽観的な株高基調を継続させてゆくだけの材料的な基盤が欧州、米国、日本、中国にあるのかという疑問も出始めやすい時期と思われる。日本株は外部要因頼みの為、欧米株が先週の上昇に対する反動安となる場合は反落しやすく、その際はドル円にとっても円高要因となってくる可能性がある。

【FOMC】

5月2日から3日にかけて米連邦準備制度理事会(FRB)によるFOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)がある。6月のFOMCにおける利上げ確率は7割程度となっているが、3月会合で追加利上げをしたばかりであり、年内あと2回と言われている利上げ回数を踏まえれば、今回の会合では現状維持だろうと思われる。ただし、今後のトランプ政策の実行度によっては米財政赤字問題が浮上し、米FOMCの判断にも影響を与えてゆく可能性がある。財政拡大姿勢が強まれば、それに対応した引き締めも必要となってくるため、今回のFOMC声明文が従来から変化しないかどうかを見定める必要があるだろう。
6月利上げ確率を7割程度とみている市場にとっては、6月会合での利上げ確率が低下する可能性を示す内容になる場合には、5月5日の米雇用統計内容も含めてドル安円高要因となる可能性もある。米国の1−3月期のGDPが予想を下回る低水準だったこと、前月の米雇用統計での非農業部門就業者増加数も予想を大幅に下回ったことも影響する可能性がある。週末にはイエレン議長、フィッシャー副議長の講演他、地区連銀総裁の講演も集中的にあるため、発言が注目される。

【日足 一目均衡表分析】

【日足 一目均衡表分析】

26日基準線が支持線、割り込む場合は下げ再開を警戒!
4月17日からの上昇により、24日朝に9日転換線を上抜き、25日の上昇で26日基準線も突破、さらに28日終了時点では遅行スパンが実線を上回る好転となった。遅行スパンが好転するのは3月10日へ反発した時以来である。これらは今回の上昇がさらに継続する可能性を示している。
ただし、4月17日からの上昇幅は3.65円であり、2月28日から3月10日へ戻した時の3.81円幅に近い。また3月10日からの下落で110円割れを何度か回避していた時の高値は3月31日の112.19円であり、現状から112円台序盤にかけては、4月17日への下落に対する揺れ返しの範囲である。
2月6日安値111.58円から中段持合いを形成して3月10日へ戻したわけだが、その時期の下値支持線は111.50円台までである。

以上を踏まえると、週末までの上昇は今のところ3月31日からの下落に対する揺れ返しのレベルにあり、111.50円から112円台序盤にかけてが重要な抵抗帯となっていると考えられる。
この抵抗帯を突破してさらに一段高するには、仏大統領選挙結果による楽観論、北朝鮮情勢に対する週末時点での安堵感による上昇という側面を超える一段高への推進材料が必要と思われる。そのような推進力を得れば113円超えから先行スパン突破となり、上昇もリバウンドのレベルを超えて力強くなる可能性がある。
3月10日からの下落再開では、26日基準線割れが弱気転換の目安となった。110円割れを切り返せなくなる下落発生の場合は基準線割れとなり、下げ再開の可能性が高まると思われる。

(1)4月17日からの戻り高値を更新し、その後も111円割れを短時間で切り返す内は上昇の継続として112円台序盤試しを想定する。さらに新たな上昇要因から高値更新なら113円台を目指す可能性を考える。
(2)高値更新へ進めないか、112円台序盤に到達した後に111円割れとなり、短時間で切り返せない場合は110円試しを想定する。
(3)110円試しまで下落してもその後の反騰で高値更新へ進めば、4月17日安値を中心とした逆三尊型が形成される可能性がある。110円割れを切り返せずに4月17日安値へ迫る場合は戻り一巡からの下げ再開として4月17日安値割れ、さらに105円前後を目指す下落期入りを考える。(了)<4/30 20:00執筆>

【今週の主要イベント】

5月1日
 香港・シンガポール・フランクフルト・パリ・チューリッヒ市場休場(レーバーデー)
 ロンドン市場休場(アーリー・メイ・バンクホリデー)
 南ア市場休場(労働者の日)、 中国市場休場(労働節)
米 21:30 米3月個人所得 予想 0%、前月 0%
米 21:30 米3月個人消費支出 予想 0%。前月 0%
米 21:30 米3月コアPCEデフレーター 予想 0%、前月 0%
米 23:00 米4月ISM製造業景況指数 予想 56.5、前月 57.2
米 23:00 米3月建設支出 予想 0%、前月 1%

5月2日
米 米連邦公開市場委員会(FOMC) 3日まで
日  8:50 日銀・金融政策決定会合議事要旨公表(3月15-16日開催分)

5月3日
日 東京市場休場(憲法記念日)
米 トランプ米大統領、パレスチナ自治政府アッバス議長と会談
仏 マクロン前仏経済相と、ペン国民戦線党首のテレビ討論会
欧 18:00 ユーロ圏1-3月期GDP・速報値(前期比) 予想 1%、前期 0%
欧 18:00 ユーロ圏1-3月期GDP・速報値(前年比) 予想 2%、前期 2%
米 21:15 米4月ADP全国雇用者数 予想 +19.0万人、前月 +26.3万人
米 23:00 米4月ISM非製造業景況指数 予想 56、前月 55.2

5月4日
米  3:00 米連邦公開市場委員会(FOMC)金融政策発表
日 東京市場休場(みどりの日)
米 21:30 米3月貿易赤字 予想 444億ドル、前月 436億ドル
米 21:30 米新規失業保険申請件数  前週 25.7万件
米 21:30 米1-3月期非農業部門労働生産性・速報値 予想 0%、前期 1%
米 23:00 米3月製造業受注指数 予想 0%、前月 1%

5月5日
欧  0:30 ドラギECB総裁講演
日 東京市場休場(こどもの日)
米 21:30 米4月非農業部門雇用者数 予想 +18万人、前月 +9.8万人
米 21:30 米4月失業率 予想 5%、前月 5%
米 21:30 米4月平均時給 予想 0%、予想 0%

5月6日
米  0:30 フィッシャーFRB副議長講演
米  1:45 ウィリアムズ米サンフランシスコ連銀総裁講演
米  2:30 ローゼングレン米ボストン連銀総裁講演
エバンス米シカゴ連銀総裁講演
ブラード米セントルイス連銀総裁講演
    イエレンFRB議長講演


5月7日
米  4:00 ウィリアムズ米サンフランシスコ連銀総裁、講演
仏 仏大統領選挙決選投票

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る