法案撤回でリスクオフのドル売り継続か(3月第四週)

先週はオバマケア代替案の採決に向け週末まで米国材料での動きが目立ちました。

法案撤回でリスクオフのドル売り継続か(3月第四週)

前週の主要レート(週間レンジ)

始値 高値 安値 終値

ドル円 112.67 112.89 110.63 111.34
ユーロ円 121.05 121.84 119.33 120.23
ユーロドル 1.0743 1.0824 1.0725 1.0799
日経平均 19416.55 19485.14 18973.75 19262.53

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

3月20日(月)

東京市場が休場となった月曜のアジア市場は動意薄、欧州市場が入ってくる時間帯にポジション調整からドル円、ユーロドルともに買い戻しが見られましたが戻りは弱く、再び売りの流れとなりました。G20を経て今後の日米間の通商政策に対する懸念が円買いの材料となり、また英国が29日にEU離脱を正式表明する話からポンド、ユーロに売りが入り、ユーロ円は金曜安値を下回り120.72レベルの安値を付けました。ドル円も欧州市場の安値近辺まで下押しし、上値の重たいまま引けました。

3月21日(火)

東京市場では、フランス大統領選に向けた世論調査で中道のマクロン全経済相が優勢とのニュースに、ユーロが対ドル、対円で買われる動きとなりました。欧州市場序盤には、ユーロドルは直近高値を上抜け1.08台乗せ、ユーロ円も121.84レベルの高値を付けました。NY市場では前場からダウとWTIが急落したことからドル安の動きとなり、既に買われていたユーロドルは高止まりする一方で、ドル円は112円を割り込んで引けました。

3月22日(水)

前日のダウ急落を中心としたリスクオフの動きが東京市場でも継続、早朝から年初来安値を割り込んだ後も上値の重たい展開を続けました。トランプ政権への期待からリスクオンとなっていた動きに対してなかなか進展が見られないと、初期のトランプ・ユーフォリアが終わり実際の政策を見たいという流れになりました。

3月23日(木)

東京市場では朝方こそ前日のポジション調整もありドル買い戻しが先行しましたが、昼前には頭打ちとなり再びリスクオフの流れへと回帰することとなりました。国会の証人喚問もあって東京勢は動きにくそうでしたが、後場以降はオバマケアの代替法案に対する不透明感からリスクオフの動きで円が全面高となりました。NY市場の朝方にはドル円が110.63レベル、ユーロ円も119.33レベルまで円高が進んだものの、採決が延期となり、引けにかけては日計り組のポジション調整も入って、方向感のはっきりしないまま引けました。

3月24日(金)

東京市場では延期となったオバマケア代替案の採決が行われるとのニュースに可決の可能性が高いという期待からドル買いが先行しました。しかし、後場に頭打ちとなり欧州市場に入りユーロドルが強い経済指標に反応して買いが入ったことから全般にドル売り地合いでNY市場に入り、採決への警戒感もあってドルの上値が重たい流れとなりました。引け間際に採決を断念するとのニュースから、とりあえず次に進むとの思惑でドル買いでの引けとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2017年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

3月27日(月)
08:50 日銀会合(15・16日)「主な意見」公表
**:** 欧州・英国夏時間
17:00 ドイツ3月ifo景況感指数
23:30 米国3月ダラス連銀製造業活動指数
26:15 シカゴ連銀総裁講演
26:15 プラートECB理事討論会参加

3月28日(火)
07:30 ダラス連銀総裁講演
21:30 米国2月卸売在庫
22:00 米国1月ケースシラー住宅価格指数
23:00 米国3月消費者信頼感指数
23:00 米国3月リッチモンド連銀製造業指数
25:45 (カンザスシティ連銀総裁講演)
25:50 イエレンFRB議長講演
26:00 ダラス連銀総裁講演
29:30 パウエルFRB理事講演

3月29日(水)
15:45 フランス3月消費者信頼感指数
**:** 英国EU離脱を正式に通告
22:20 シカゴ連銀総裁講演
23:00 米国2月中古住宅販売保留件数指数
23:30 米国週間原油在庫
24:30 (ボストン連銀総裁講演)
26:15 (サンフランシスコ連銀総裁講演)

3月30日(木)
18:00 ユーロ圏3月消費者信頼感確報値
18:30 南ア2月PPI
**:** 南ア政策金利発表
21:00 ドイツ3月CPI速報値
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国10〜12月期GDP確報値
22:45 (クリーブランド連銀総裁講演)
24:00 ダラス連銀総裁講演
24:15 (サンフランシスコ連銀総裁講演)

3月31日(金)
08:01 英国3月GFK消費者信頼感
08:30 本邦2月CPI、3月東京区部CPI
08:30 本邦2月失業率、有効求人倍率
09:00 NZ3月ANZ企業信頼感
10:00 中国4月製造業PMI、非製造業PMI
16:00 トルコ10〜12月期GDP
16:55 ドイツ3月失業率
17:30 英国10〜12月期GDP確報値
17:30 クーレECB理事講演
18:00 ユーロ圏3月CPI速報値
21:00 南ア2月貿易収支
21:30 米国2月個人所得、消費支出
22:45 米国3月シカゴ購買部協会景気指数
23:00 米国3月ミシガン大消費者信頼感指数確報値
23:00 ミネアポリス連銀総裁講演

4月2日(日)
 **:** 豪州、NZ冬時間に移行

今週の週間見通し

先週はオバマケア代替案の採決に向け週末まで米国材料での動きが目立ちました。火曜にはフランス大統領選でマクロン前経済相が優勢との世論調査結果からユーロ買い・ドル売りが入り、同日のNY市場ではNYダウとWTIが急落しと、週半ば以降はドル売り警戒感が広がる中、ドル円は安値110.63レベルと昨年11月22日以来の安値をつけることとなりました。

オバマケア代替案の採決は、共和党内に反対が30名程度いたこと(過半数の賛成票を取るには身内の反対票は21票まで)から結局取り下げとなりましたが、これまではオバマケア代替案が可決されないと先に進まないと言われていたことが、とりあえずオバマケアは存続し次の公約実行に移ると、金曜の引け間際の反応は本当にそうなのかと疑わしい動きとなりました。

冷静に考えるならばこれまでトランプ大統領の公約の内、入国制限は裁判所に止められ、オバマケア撤廃は身内の反対で採決断念と、どう考えてもホワイトハウスの政策執行に暗雲が立ち込めていると考えざるを得ません。今後は次の政策に進めていき、それらが無事に通るとしても初期のトランプ・ユーフォリアが終わり実際の政策を見たいという流れになっていくことは間違いないでしょう。

そうであるならば、金曜引け間際の安易なリスクオンの動きには警戒せざるを得ず、今後はそれぞれの材料に反応しつつも、ユーフォリアで織り込み済み部分もあることから突然のリスクオフには警戒したいところです。個人的には金曜の動きは上がって欲しい向きの投機的な動きであったのではないかと見ていますが、メディアに出てきたコメントも肯定論、否定論が入り混じっていますので、市場全体のコンセンサス形成には今日1日はかかるものと見ています。

今週の外の材料としては、29日にメイ首相がEUからの離脱を正式に表明すること(これはポンドとユーロの売り材料とはなるものの長期的な材料)、また四半期末(日本は年度末)要因といったことが挙げられますが、日々の材料も豊富で全般的にはドルの上値が重たいころまでの流れを継続しつつも神経質な値動きとなりやすい一週間を考えています。

テクニカルには、これまでと大きく変化した点はありませんが日足チャートをご覧ください。

トランプ相場が始まった昨年11月9日安値101.20と12月15日高値118.66の38.2%押しは先週の下値トライで下抜け、現在は半値押しの水準にあたる109.93、大きくは110円の大台を視野に入れる動きとなっています。更には、12月高値118.66を起点に、2月安値111.60までの押し、その後の3月高値115.50までの戻しを逆N波のフィボナッチ・エクスパンションの100%エクスパンションが108.45、トランプ相場の61.8%押しが107.87とこれらはすぐにではないにせよ、気にしておくべき水準です。

今週は、オバマケア代替案採決の失敗から他の政策によるドル買い期待よりも、G20での材料となった米国保護主義による特に日米間の通商政策等、円買い材料が引き続き気になるところです。今週のドル円も、引き続きドルの上値が重たい展開を考え109.90レベルをサポートに、111.90レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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