新政権の政策を見つつ円買いに(週報17年1月第四週)

注目の大統領就任式も終わり、いよいよトランプ新政権がスタートしました。

新政権の政策を見つつ円買いに(週報17年1月第四週)

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値    高値   安値   終値

ドル円    114.23 115.62 112.60 114.62
ユーロ円  121.39 122.95 120.55 122.66
ユーロドル 1.0628 1.0720 1.0580 1.0703
日経平均 19219.13 19255.41 18650.33 19137.91

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

1月16日(月)

週明けの東京市場では、週末の英紙に載ったメイ首相のハードブレグジット懸念からポンドが全通貨に対して大幅安、リスクオフの動きから円もクロス円を中心に円高が進行しました。東京後場にはドル円が113.63レベルの安値と昨年12月の円安進行前の水準へと押し、ユーロ円も120.76レベルを付けました。その後は米国が祝日となることもあって、動きが見られたのは欧州市場序盤まで、日計り組の買い戻しからそれぞれ114円台、121円台へと戻し、その後はもみあいで動意の無いままの一日となりました。

1月17日(火)

東京市場では、週末の英紙のハードブレグジット懸念を引きずりリスクオフの円買いが進む中、日経平均株価も大幅安となったことからじり安の展開を辿りました。後場に入り前日安値を下回るとストップオーダーも巻き込みながら円高が進みましたが、トランプ次期大統領が米紙に人民元安について言及したことも円高の材料とされていました。欧州市場では112円台後半、ユーロドルも1.07台とドル全面安で英国議会のメイ首相演説を迎えましたが、なんと最終案は議会で採決するとの発言が飛び出したことから1.21台から1.24台までポンドが急騰、その動きを受けユーロ買い(ドル売り)、ドル円もドル売りとNY市場ではドル全面安となり、ドル円は112.61レベルの安値引けとなりました。

1月18日(水)

英国メイ首相の議会演説でハードブレグジット懸念が和らいだことをきっかけにリスクオフの巻き返しが目立つ一日となりました。早朝市場でつけた112.57レベルを安値に、買い戻しが入った株価とともに終日じり高の展開が続き、NY後場には既に113.70レベルと1円ほど値を戻していました。その後引け間際にイエレンFRB議長が講演で2019年まで年数回の利上げを見込んでいると、ハト派の議長にしてはかなりタカ派的な発言となったことからドルが急速に値を上げ、ドル円は114.76レベルまでさらに1円の上昇、ユーロドルも1.0629レベルまで水準を下げ、ドル高値圏での引けとなりました。

1月19日(木)

前日NY引け間際のイエレン議長講演で大幅高となったドル円は、東京、欧州市場と様子見の流れが続きドル高値圏でのもみあいとなりました。いっぽうユーロドルはECB理事会におけるタカ派理事の発言に警戒しじり高の展開を辿りましたが、ドラギ総裁の会見では引き続き刺激策が必要で、テーパリングの議論が無かったことに言及したことからユーロは直前高値の1.0677レベルから1.0589レベルまで水準を下げました。しかしNYの引けにかけては再び買い戻しが優勢となり高値圏に迫ってのクローズ。ドル円もドラギ総裁会見直後に115円台半ばまで上昇し、さらに次期財務長官就任が予定されているムニューチン氏が長期的なドル高に肯定的な発言をしたことから115.62レベルの高値を付けましたが、引けにかけてはユーロドル同様に114円台後半へと押して引けました。

1月20日(金)

金曜の東京市場では朝方にドル買いが先行したものの、イエレン議長が前回講演と異なりハト派姿勢を強調したため反落、114円台半ばから後半でのもみあいとなりました。海外市場に移ってからは大統領就任式を前に買い戻しも見られましたが、徐々に様子見姿勢が強まり、就任演説後はイベント通過から114円台前半へと押しそてのクローズとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2017年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、シカゴ、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

1月23日(月)
**:** NZ市場休場
20:30 ドラギECB総裁講演
22:15 プラートECB理事講演

1月24日(火)
**:** 英国最高裁ブレグジットの議会承認につき判断
17:00 フランス1月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ1月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏1月製造業・サービス業PMI速報値
**:** 南ア中銀政策金利発表
20:00 トルコ中銀政策金利発表
**:** 米国予算局財政見通し公表
23:45 米国1月MarkIt製造業PMI速報値
24:00 米国1月リッチモンド連銀製造業指数
25:00 プラートECB理事討論会参加
17:00 ラウテンシュレーガーECB理事講演

1月25日(水)
08:50 本邦12月貿易収支
09:30 豪州10〜12月期CPI
16:45 フランス1月企業景況感
18:00 ドイツ1月ifo景気期待指数
22:15 ドイツ連銀総裁講演
23:00 米国11月住宅価格指数
24:30 米国週間原油在庫
24:30 スイス中銀総裁討論会参加
25:00 英中銀総裁講演
30:30 NZ10〜12月期CPI

1月26日(木)
**:** 豪州市場休場
16:00 ドイツ2月GFK消費者信頼感
18:30 英国10〜12月期GDP速報値
18:30 南ア12月PPI
20:00 メルシュECB理事講演
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 米国12月卸売在庫
23:45 米国1月MarkItサービス業PMI速報値
24:00 米国12月景気先行指数
24:00 米国12月新築住宅販売件数

1月27日(金)
**:** 中国市場休場(〜2月2日)
08:30 本邦12月CPI、1月東京区部CPI
09:30 豪州10〜12月期PPI
16:00 ドイツ12月輸入物価指数
16:45 フランス1月消費者信頼感指数
22:30 米国10〜12月期GDP速報値
22:30 米国12月耐久財受注
24:00 米国1月ミシガン大消費者信頼感指数確報値

今週の週間見通し

注目の大統領就任式も終わり、いよいよトランプ新政権がスタートしました。就任後の演説では、権限のワシントンから国民への返還、米国第一主義を中心とした内容と、特にサプライズも無く、イベント通過の安心感から為替相場は若干ドル売りの動きでの引けとなりました。

しかし、その後の大統領令1号ではオバマケアの撤廃、ホワイトハウスのホームページには通商政策の柱(TPPからの離脱、NAFTAの再交渉)が掲載され、保護主義に向かっていく可能性を強く示しています。公約だから当然とは言うものの週明けの為替市場では円高の動きが先行しています。

新政権において財務長官は長期的なドル高を米国の国益という発言をしていますが、これは先週のFX羅針盤のコラムで触れたとおり、あくまでも全体としてであって個別の通貨に関してはその限りでは無いと捉えるべきです。就任前の会見では圧倒的な貿易赤字の中国と並んでメキシコと日本の名前が出てきました。人民元安牽制と並んでいつ円安牽制が出てもおかしくはないというスタンスでいた方が安全です。

年に2回公表される米国財務省による為替報告書でも監視リストに入っているのは、中国、日本、台湾、韓国、ドイツ、スイス(昨年秋に追加)の6カ国ですが、欧州の2ヵ国ではなくアジアの4ヵ国特に中国と日本は常に目立つ位置にいることは間違いありません。通商代表も対中国、日本の強硬派を据えていることから、保護主義のシンボル的なターゲット国として中国と日本は今後も名前が出てくる可能性が高いと言えそうです。

当面ひとつ気にしておくべき水準として、就任直前の戻し高値となった115円台半ばが挙げられます。テクニカルなターゲットとしてまさにぴったりの戻しであったということもありますが、やはり新政権にとって直前の為替水準は記憶に残っているでしょうから、就任前の水準よりも円安に動くと今まで以上に目立つという、これは一般的な感覚から来るものです。

また、実際に就任したことでこれまでは期待先行での株高と長期金利上昇といった動きが見られましたが、今後はより現実的に新政権が打ち出してくる政策を冷静に分析することとなるでしょう。既に株価も長期金利も調整が入っていますが、為替とともにこの調整がしばらく続きやすいと見ておいた方がよさそうです。期待先行での動きがあまりにも速かったため、いったんは調整を経て上がるにしてもそれからという展開になると見ています。

日柄的にも先週示したように24〜26日にドル売りという時間帯がありますので、今週はいったん115円台が遠のいたと見て、112.00レベルをサポートに、115.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

なお、もうひとつ大きなイベントとして、24日に英国最高裁がブレグジットの議会承認につき判断を示します。議会承認が必要なのか不要なのかの結果で一時的にポンドが大きく振れる可能性がありますので注意が必要です。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

ディスクレーマー

アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る