来週の為替相場見通し:『ドル円は153円台半ばへ急伸。来週は日米金融政策イベントに注目』(12/14朝)

ドル円は12/3に記録した約2カ月ぶり安値148.64(10/11以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、一時153.69(11/26以来の高値圏)まで急伸しました。

来週の為替相場見通し:『ドル円は153円台半ばへ急伸。来週は日米金融政策イベントに注目』(12/14朝)

『ドル円は153円台半ばへ急伸。来週は日米金融政策イベントに注目』

〇今週のドル円、週明けに149.69まで下落後、週末にかけて週間高値153.69まで急伸、高値圏で越週
〇中国の経済対策の発表、米CPI、PPIの伸び率加速と過度の日米金利差縮小観測の後退等が背景
〇ユーロドル、仏独政局不透明感、ECBの利下げ実施とハト派的スタンス強調に一時1.0453まで下落
〇ドル円、主要テクニカルポイント軒並み上抜け、地合い強い
〇ファンダメンタルズも日銀年内利上げ観測後退、FRBの過度な利下げ期待の剥落等がドル円をサポート
〇来週は19日未明のFOMC結果公表、同日昼の日銀政策発表に注目集まる
〇FOMCは0.25%利下げ織り込み来年の予想に注目、日銀会合は追加利上げの有無そのものが焦点に
〇来週の予想レンジ(USDJPY):151.00ー156.00、(EURUSD):1.0300−1.0600

今週のレビュー(12/9−12/13)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初150.07で寄り付いた後、早々に週間安値149.69まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(1)中国共産党指導部による「2025年に金融緩和と財政支出の拡大を進める」との方針転換(中央政治局は来年の金融政策について従来の「穏健」から14年ぶりに「適度に緩和」に変更した他、財政政策についても従来の「積極的」から「より積極的」へと方針変更)や、(2)上記1を背景とした世界的なリスクオン再開(リスク選好の円売り圧力)、(3)ニューヨーク連銀調査における1年先期待インフレ率(結果3.0%、前回2.9%)および、3年先期待インフレ率(結果2.6%、前回2.5%)および、5年先期待インフレ率(結果2.9%、前回2.8%)の上方修正、(4)米金利上昇に伴うドル買い圧力、

(5)氷見野良三日銀副総裁による異例の懇親会決定(同氏は来年1/14に神奈川県金融経済懇談会に出席した上で記者会見を行う予定→1月の金融政策決定会合前に日銀の政策委員が懇談会を開くことは異例→日銀による追加利上げが年内ではなく1月に行われるとの見方の浮上)、(6)米ブルームバーグによる「日銀は今月利上げ見送りでも物価加速リスクは大きくないと認識」「円安の物価押し上げリスクは相対的に薄れていると判断」とのハト派的な観測報道、(7)上記5、6を背景とした年内利上げの見送り観測、(8)米11月消費者物価指数(結果+2.7%、予想+2.7%、前回+2.6%)の伸び率加速、(9)ロイターによる「日銀内で追加利上げを急ぐ必要はないとの認識が広がっている」「海外経済や賃上げ動向をもう少し見極めた上で利上げしても問題ないとの声がある」とのハト派的な観測報道、

(10)米11月生産者物価指数(結果+3.0%、予想++2.6%、前回+2.6%)および、同コア指数(結果+3.4%、予想+3.2%、前回+3.4%)の市場予想を上回る結果、(11)共同通信による「日銀が利上げ見送りを検討」とのハト派的な観測報道が支えとなり、週末にかけて、週間高値153.69(11/26以来の高値圏)まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間12/14午前1時00分現在)では、153.66前後で推移しております。尚、週末に発表された全国企業短期経済観測調査(短観)は総じて良好な結果となりましたが、年内利上げ観測を高めるほどのサプライズは見られなかったため、円買いでの反応は限定的なものに留まりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0564で寄り付いた後、早々に週間高値1.0595まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(1)ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの残存や、(2)ユーロ圏12月投資家信頼感指数(結果▲17.5、予想▲12.3)の市場予想を下回る結果(2023年11月以来の低水準を記録)、(3)フランス・ドイツを巡る政局不透明感、(4)ECB理事会での25bpの追加利下げ決定(3会合連続の利下げ決定)、(5)声明文での「必要な限り金利を制限的に維持する」との文言削除、(6)インフレ見通しの下方修正、(7)ラガルドECB総裁による「ディスインフレプロセスは順調に進んでいる」「成長見通しのリスクはダウンサイド」とのハト派的な見解発表、(8)ドイツ10月貿易収支(結果134億ユーロ黒字、予想157億ユーロ黒字)の市場予想を下回る結果、(9)ドイツ連銀による2025年のインフレ率予測(結果+2.4%、前回+2.7%)および、経済成長率予測(結果+0.2%、前回+1.1%)の下方修正が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0453まで下落しました。

引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間12/14午前1時00分現在)では、1.0490前後で推移しております。

来週の見通し(12/16−12/20)

<ドル円相場>
ドル円は12/3に記録した約2カ月ぶり安値148.64(10/11以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、一時153.69(11/26以来の高値圏)まで急伸しました。日足ローソク足が主要テクニカルポイントを軒並み上抜けしたこと(市場参加者に意識されていた200日移動平均線も上方ブレイク)や、一目均衡表の分厚い雲がダウンサイドから急ピッチに切り上がってくること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による年内利上げ観測の後退(今週は米ブルームバーグによる「日銀は今月利上げ見送りでも物価加速リスクは大きくないと認識」「円安の物価押し上げリスクは相対的に薄れていると判断」との報道や、ロイターによる「日銀内で追加利上げを急ぐ必要はないとの認識が広がっている」「海外経済や賃上げ動向をもう少し見極めた上で利上げしても問題ないとの声がある」との報道、共同通信による「日銀が利上げ見送りを検討」との複数のリーク報道あり)や、(2)米FRBによる過度な利下げ期待の剥落(今週発表された米CPI、米PPIはいずれも伸び率加速)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待(日米金利差は当面縮まらないとの見方からドル買い・円売り安心感)、(4)中国政府による来年の大規模景気対策期待(中国共産党指導部は12/9に金融緩和および積極財政への方針転換を発表)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。

こうした中、来週は12/19の日本時間午前4時に発表される米FOMCと、同日昼頃に予定されている日銀金融政策決定会合に注目が集まります。米FOMCは25bpの追加利下げが既に織り込まれているため、市場の関心は来年以降の利下げペースに移っています。同時に発表されるドットチャートで利下げ回数が前回9月時点の4回から下方修正される場合や、日本時間4時30分から始まるパウエルFRB議長・記者会見にて積極利下げに慎重なスタンスが見られる場合には、米金利上昇→米ドル買いの経路でドル円に強い上昇圧力が加わるシナリオが想定されます。また、日銀金融政策決定会合で追加利上げが見送られる場合や、植田日銀総裁より追加利上げに慎重な姿勢が見られる場合にも、日銀による追加利上げ観測後退→円金利低下→円キャリートレード再開の経路で、ドル円に強い上昇圧力が加わるものと推察されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル買い・円売りトレンドの本格再開をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):151.00ー156.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は11/22に記録した約2年ぶり安値1.0333(一昨年11/30以来の安値圏)をボトムに切り返すと、12/6に一時1.0631まで持ち直しましたが、今週は再びユーロ売りが活発化し、週末にかけて、一時1.0453まで値を崩しました。日足ローソク足が全ての主要テクニカルポイントの下側に位置していることや、強い売りシグナルを示唆する「21日線と90日線のデッドクロス」「21日線と200日線のデッドクロス」「EMAベースの弱気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役逆転」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは極めて弱いと判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(トランプ次期政権下の関税政策で欧州経済に甚大な悪影響が及ぶとの警戒感。ユーロ圏12月投資家信頼感指数も2023年11月以来の低水準を記録)や、(2)欧州政治の先行き不透明感(フランスやドイツを巡る政治不安)、(3)ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスク、(4)ECBによる根強い追加利下げ観測(今週のECB理事会は25bpの利下げに留まったが、声明文やインフレ見通し、ラガルドECB総裁発言は総じてハト派)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

来週予定されている米FOMCがタカ派的な結果となる場合(米金利上昇→米ドル買い)や、欧州経済指標(ユーロ圏各国のPMI速報値や、ドイツ12月IFO景況感指数、ドイツ12月ZEW景況感指数)が市場予想を下回る場合(欧州債利回り低下→ユーロ売り)には、ユーロドルにもう一段強い下押し圧力が加わるシナリオも想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落(11/22に記録した安値1.0333を試すシナリオ)をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0300−1.0600

注:ポイント要約は編集部

『ドル円は153円台半ばへ急伸。来週は日米金融政策イベントに注目』

ドル円日足

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