来週の為替相場見通し:『日米金利差縮小で円キャリートレードの巻き戻しが活発化』(12/7朝)

ドル円は11/15に記録した約3カ月半ぶり高値156.75(7/23以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、一時148.64(10/11以来の安値圏)まで急落しました。

来週の為替相場見通し:『日米金利差縮小で円キャリートレードの巻き戻しが活発化』(12/7朝)

『日米金利差縮小で円キャリートレードの巻き戻しが活発化』

〇今週のドル円、韓国の尹大統領による「非常戒厳」のサプライズ宣言等で週前半148.64まで下落
〇週央にかけては、時事報道をきっかけとした日銀による追加利上げ観測後退等に151.23まで反発
〇週末は米指標の不冴え等が重石になり150円前後での推移
〇ユーロドル、次回ECBでの大幅利下げ観測、仏政局不安等に週明け1.0459まで急落
〇売り一巡後は米金利低下、欧州債利回りと欧州株の上昇等に一時1.06台を回復1.05台半ばで越週
〇ドル円、日足が主要テクニカルポイント下抜け、複数の買いシグナルも消滅、テクニカルの地合い悪化
〇ファンダメンタルズも日米金利差縮小観測強まり、トランプトレードも一巡、ドル円下落材料多いか
〇引き続き、ドル円相場の短期的な下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):147.00ー152.00、(EURUSD):1.0350−1.0750

今週のレビュー(12/2−12/6)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初149.73で寄り付いた後、(1)ウォラーFRB理事による「12月の利下げ支持に傾いている」とのハト派的な発言や、(2)米金利低下に伴うドル売り圧力、(3)韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」のサプライズ宣言、(4)上記3を背景としたリスク回避の円買い圧力、(5)テクニカル的な地合いの悪化(直近安値ブレイクに伴う仕掛け的なドル売り・円買い)が重石となり、翌12/3にかけて、週間安値148.64(10/11以来の安値圏)まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(6)米10月JOLT雇用動態調査(結果774.4万件、予想747.0万件)の市場予想を上回る結果や、(7)時事通信社による「日銀が12月の金融政策決定会合で政策維持を決定する可能性がある」との観測報道、(8)上記7を背景とした円キャリートレードの再開期待(日銀による追加利上げ観測後退→円金利低下→円売り)が支えとなり、週央にかけて、週間高値151.23まで反発しました。

もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(9)米11月ADP雇用統計(結果+14.6万人、予想+15.0万人)の市場予想を下回る結果や、(10)米11月総合PMI確報値(結果54.9、予想55.3)の市場予想を下回る結果、(11)米11月ISM非製造業景況指数(結果52.1、予想55.7)の市場予想を下回る結果、(12)ハト派で知られる中村豊明日銀審議委員による「利上げに反対しているわけではない」とのタカ派的な発言、(13)上記12を背景とした日銀による年内追加利上げ観測の再燃(円金利上昇→円買い)、(14)円キャリートレードの巻き戻しが重石となり、本稿執筆時点(日本時間12/7午前6時30分現在)では、150.00前後で推移しております。

尚、今週はセントルイス連銀ムサレム総裁より「金利引き下げのペースが鈍化もしくは停止する時期が近づいている可能性がある」とのタカ派的な発言が見られた他、リッチモンド連銀バーキン総裁からも「正常化は中立金利に向けてより遅く慎重に行う」「やや引き締め的な政策への到達を望む」とのタカ派的な発言が見られましたが、市場の反応は限られました。また、週末に発表された米11月雇用統計は総じて強めの内容となりましたが、ドル買いでの反応は見られず、むしろ米長期金利の低下を通じて、ドル売りで反応する結果となりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0575で寄り付いた後、(1)次回ECB理事会での大幅利下げ観測の高まり(50bpの大幅利下げ期待の高まり)や、(2)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力、(3)フランス政治の先行き不透明感(フランスのバルニエ首相が「予算の一部について議会採決を経ずに強行通過させるために憲法上の手段を行使する」と宣言→バルニエ内閣に対する不信任決議で総辞職が決定的→独仏債スプレッド急拡大)、(4)米11月ISM製造業景況指数(結果48.4、予想47.5)の市場予想を上回る結果が重石となり、週明け早々に、週間安値1.0459まで急落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)急ピッチな下落に対する反動買いや、(6)欧州株の堅調推移、(7)米経済指標(米11月ADP雇用統計、米11月総合PMI確報値、米11月ISM非製造業景況指数)の冴えない結果、(9)米金利低下に伴うドル売り圧力、(10)ドイツ10月製造業受注(結果+5.7%、予想+1.8%)の市場予想を上回る結果、(11)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、(12)短期筋のショートカバー(ECB理事会を翌週に控えたポジション調整)が支えとなり、週末にかけて、週間高値1.0631まで上昇しました。

引けにかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間12/7午前6時30分現在)では、1.0565前後で推移しております。尚、今週はフィンランド中銀レーン総裁による「ECBの金融緩和は今後数カ月続くと予想」「12月利下げの根拠は増えると見込む」との発言や、クロアチア中銀ブイチッチ総裁による「不確実性の中で金利変更は少しずつ行う方がよい」との発言、アイルランド中銀マクルーフ総裁による「0.50%利下げの必要性について慎重に進めることを好む」との発言、ラガルドECB総裁による「利下げを続けるが、ペースについて言及しない」との発言、ラトビア中銀カザークス総裁による「来週の会合も含めて利下げは継続していくべき」との発言が見られましたが、タカ派・ハト派の様々な見解が入り混じったことで、市場の反応は限られました。

来週の見通し(12/9−12/13)

ドル円は11/15に記録した約3カ月半ぶり高値156.75(7/23以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、一時148.64(10/11以来の安値圏)まで急落しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、ボリンジャーミッドバンド)を下抜けした他、これまでドル円相場の下支えに寄与してきた複数の買いシグナル(一目均衡表三役好転やダウ理論の上昇トレンド)も消滅するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を強く印象付けるチャート形状となりつつあります。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による年内利上げ観測の再燃(時事通信社による12/4の報道を受けて日銀による年内利上げ観測が一時的に後退したが、12/5にハト派で知られる中村豊明日銀審議委員がタカ派的な発言を行ったことで年内利上げ観測が再浮上)や、(2)米FRBによる年内利下げの織り込み加速(次回FOMCでの利下げ織り込み度合が1週間前の66.0%から足元85.1%へ急上昇)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの巻き戻し懸念、(4)トランプ・トレード(債券売り・米ドル買い)からベッセント・トレード(債券買い・米ドル売り)へのテーマシフトなど、ドル円相場の下落を連想させる材料が揃っています。

来週12/9に予定されている本邦の第3四半期GDP速報値が市場予想を上回る場合や、12/11に予定されている米国の11月消費者物価指数が市場予想を下回る場合には、次回日銀金融政策決定会合(12/19アジア時間)での追加利上げ観測の高まりと、次回FOMC(12/18米国時間)での追加利下げ観測の高まりが組み合わさるため、日米金利差縮小→円キャリートレード巻き戻しの波及経路で、ドル円に強い下押し圧力が加わるシナリオが想定されます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の短期的な下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は上記イベント(本邦第3四半期GDP速報値、米11月消費者物価指数)以外にも、米11月生産者物価指数や、米11月輸出入物価指数、本邦第4四半期日銀短観などが予定されております。

来週の予想レンジ(USDJPY):147.00ー152.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は11/22に記録した約2年ぶり安値1.0333(一昨年11/30以来の安値圏)をボトムに切り返すと、今週は幾分持ち直す動きとなりましたが、日足ローソク足が主要テクニカルポイントの下側に位置していることや、強い売りシグナルを示唆する「21日線と90日線のデッドクロス」「21日線と200日線のデッドクロス」「EMAベースの弱気のパーフェクトオーダー」「一目均衡表三役逆転」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱い(上値余地は限定的)と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感(トランプ次期政権の関税政策の影響で欧州経済に甚大な悪影響を及ぶとの警戒感)や、(2)欧州政治の先行き不透明感(フランスやドイツを巡る政局不透明感継続)、(3)ECBによる追加利下げ観測、(4)ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクなど、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。来週12/12に予定されているECB理事会にて50bpの大幅利下げが実施されれば、欧州債利回り低下→対主要通貨でのユーロ独歩安の経路で、ユーロドルに強い下押し圧力が加わるシナリオも想定されるため、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0350−1.0750

『日米金利差縮小で円キャリートレードの巻き戻しが活発化』

ドル円日足

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