ドル円見通し 米経済指標から乱高下、3営業日連続陰線で8月15日以降の安値更新
〇ドル円、経済指標の予想を下回る結果を受け9/5夜142.84へ下落、8/15高値149.38以降の安値を更新
〇深夜144.21まで反発するも売られ9/6未明143.10台へ下落、午前序盤にかけても143円台前半で小動き
〇米ADP民間雇用増加数は3年半ぶりの低調さ、9/6夜の米雇用統計も弱めの数字になるとの見方に寄与
〇米長期債利回りは総じて続落、米国株はまちまちの結果に
〇142.84割れを回避する内は上昇余地ありとし、144.21超えからは145円を目指す上昇を想定する
〇142.84割れからは、142円前後への下落を想定する
【概況】
ドル円は9月5日夜のADP8月全米雇用報告で非農業部門民間就業者数が前月比9万9000人増にとどまり市場予想を下回ったことで142.84円へ下落して8月16日早朝の15日付け高値149.38円以降の安値を更新し、その後の米経済指標が強めだったことでいったん買い戻されて深夜に144.21円まで反発したが、買い一巡で早々に売られて6日未明に143.10円台へ下落し、6日午前序盤にかけても概ね143円台前半での小動きにとどまっている。
8月26日安値143.45円から当面のドル売り円買い一巡として9月3日高値147.20円まで上昇幅3.75円としたが、9月3日の8月ISM製造業景況指数と7月建設支出の悪化、4日のJOLTS求人件数の減少でドル安が進行してきたが、6日夜の米8月雇用統計を控えて5日夜は小波乱ながら慎重な動きに留まった印象だ。
今夜の米雇用統計次第では9月17/18日のFOMCにおける利下げ幅が通常の0.25%ではなく0.50%の大幅利下げとなる可能性もあり、金利先物市場における0.50%利下げ期待度は4割とされている。
日銀の高田審議委員が5日の金沢市講演で「堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁など前向きな企業行動の持続性が確認されていけば、その都度もう一段のギアシフト=金融緩和度合いのさらなる調整を進めることが必要」と述べ、年末から年明けにかけての追加利上げを模索する姿勢を示したが、直近の植田総裁発言等と変わらずサプライズ感はなかった。
【米ADP民間雇用増加数は3年半ぶりの低調さ】
9月5日夜発表の米ADPによる8月全米雇用報告では非農業部門民間雇用者数が9万9000人増となり市場予想の14万5000人を大きく下回り3年半ぶりの低水準となった。7月分は当初の12万2000人増から11万1000人増に下方修正された。これらは6日夜の米雇用統計でも弱めの数字になるとの見方に寄与したが、ADP統計と労働省雇用統計は大きく食い違うことも多々ある。
米労働省による第2四半期の非農業部門労働生産性改定値は年率換算前期比2.5%上昇して速報値の2.3%上昇から上方修正されたが市場予想と同じだった。前年同期比は2.7%上昇で速報と変わらず、単位労働コストは前期比0.4%上昇で速報の0.9%上昇から下方修正され、時間当たり労働報酬も前期比3.0%増で速報の3.3%増から下方修正された。
S&Pグローバルによる8月の米サービス業PMI確報値は55.7となり速報の55.2から上方修正されて7月の55.0から改善した。総合PMI確報値は54.6となり速報の54.1から上方修正されて7月の54.3を若干上回った。
ISM(米供給管理協会)の8月サービス業景況指数は51.5となり7月の51.4をわずかに上回り市場予想の51.1を上回った。価格指数は7月の57.0から57.3へ上昇した。
【米長期債利回りは米労働省雇用統計を控え総じて低下、米国株はまちまち】
9月5日の米長期債利回りはADP統計が冴えなかったことと6日の米労働省雇用統計を控え総じて低下した。
長期金利指標の10年債利回りは前日比0.03%低下の3.73%となり3営業日連続低下した。8月26日から30日までの5連騰による上昇幅を解消し、8月5日の急低下時に付けた3.67%割れには至らずにいるものの日足終値ベースでは前日に続き昨年10月23日の5.02%以降の最低とした。
30年債利回りは前日比0.04%低下の4.02%となり10年債同様に3営業日連続低下し、終値ベースでは今年4月以降の最低とした。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは前日比0.01%低下と小幅だったものの3営業日連続低下となり、一時3.71%をつけて前日に続き昨年10月19日に付けた5.26%以降の最低を更新して15か月ぶり低水準とした。
一方で米国主要株価指数は雇用統計を控えてまちまちで慎重な動きだった。NYダウは前日比219.22ドル安と下落し、ナスダック総合指数は43.36ポイント高と上昇、S&P500は16.66ポイント安で3日から3営業日続落した。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は9月3日深夜に145.16円へ急落したために4日午前時点では9月3日午前高値を目先のピークとした下落期入りとして4日の日中から6日の日中にかけての間への下落を想定した。
9月5日夜に142.84円まで続落してからいったん144.21円へ戻して再び失速しているため、5日夜安値割れを回避する内は6日の日中から10日午前にかけての間への上昇余地ありとし、米雇用統計を強気サプライズとして5日深夜高値144.21円を上抜く場合は上昇が勢い付く可能性があると注意するが、5日夜安値割れからは新たな下落期入りとして10日夜から12日夜にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では9月5日夜の反騰では遅行スパンが好転に至らず先行スパンの下限にも届かなかったため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、先行スパンへ潜り込むところからは反騰期に入る可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は9月5日夜の反騰時に50ポイントを超えたもののその後は40ポイント台にとどまっている。55ポイント超えからは上昇が勢い付くとみて60ポイント台後半への上昇を想定するが、40ポイント以下での推移が続き始める場合は下向きとし、35ポイント割れからは20ポイント前後への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月5日夜安値142.84円を下値支持線、5日深夜高値144.21円を上値抵抗線とする。
(2)142.84円割れを回避する内は上昇余地ありとし、144.21円超えからは145円を目指す上昇を想定する。米雇用統計を強気サプライズとする場合は145円台前半へ上値目途を引き上げ、週明けも高値試しを続けやすいとみる。
(3)142.84円割れからは142円前後への下落を想定する。142円前後は買われやすいとみるが、米雇用統計から急落商状に陥る場合は141円台中盤へ下値目途を引き下げ、週明けの続落を想定する。
【当面の予定】
9/6(金)
14:00 (日) 7月 景気先行指数CI速報値 (6月 109.0、予想 109.4)
14:00 (日) 7月 景気一致指数CI速報値 (6月 113.2、予想 116.2)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 1.4%、予想 -0.3%)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -4.1%、予想 -3.5%)
15:00 (独) 7月 貿易収支 (6月 204億ユーロ、予想 210億ユーロ)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP確定値 前期比 (改定値 0.3%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 0.6%、予想 0.6%)
21:30 (米) 8月 非農業部門就業者増加数 前月比 (7月 11.4万人、予想 16.0万人)
21:30 (米) 8月 失業率 (7月 4.3%、予想 4.2%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前月比 (7月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 平均時給 前年同月比 (7月 3.6%、予想 3.7%)
21:45 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
24:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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