米雇用統計年次改定巡り乱高下、FOMC議事要旨後に一段安
〇昨日のドル円、米雇用統計年次改定発表の遅れで乱高下、一時146.86へ急伸
〇非農業部門就業者数の大幅下方修正により、未明に8/21午前安値を割り込む
〇その後、FOMC議事要旨公表を受け144.45まで安値を切り下げる
〇議事要旨は利下げに前向きな姿勢示す、FRB議長も9月会合での利下げ検討の可能性を明言
〇米長期債利回りは一時乱高下、NYダウは6日ぶり反落から持ち直す
〇本日は欧米の製造業及びサービス業PMIの発表予定
〇8/23のパウエル議長と植田総裁の発言、いずれもドル安円高材料となりやすいか
〇144.45割れからは144.00、143.50、143.00を順次試して行く下落を想定
〇146円超えからは146円台中盤への上昇を想定
【概況】
ドル円は8月5日安値141.69円からの戻り一巡で8月16日早朝高値149.38円から下落に転じ、21日午前には144.94円を付けて19日午後安値145.18円を割り込み、145円割れに対する突っ込み警戒感から146円を前後する水準までいったん戻していた。
8月21日夜23時発表予定の米労働省による雇用統計年次改定の発表が遅れたことによる思惑で乱高下となり一時146.86円へ急伸したものの、非農業部門就業者数が年間で81万8000人の大幅な下方修正とされたことで21日未明に21日午前安値を割り込み、米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月30〜31日開催分)が9月利下げ開始を濃厚とする内容だったことで公表後に144.45円まで安値を切り下げた。議事要旨にサプライズはなかったためいったん145円台へ戻し、22日朝にかけては145円を挟んだ揉み合いで推移している。
8月5日安値141.69円から8月16日高値149.38円までの上昇幅7.69円に対して8月22日早朝安値144.45円までの下げ幅は4.93円となり凡そ3分の2を削っている。21日深夜の乱高下時も20日午後高値147.34円には届かずに一段安したために8月16日以降の右肩下がりの展開が続いている。
本日は欧米の製造業及びサービス業PMIの発表があり、23日にはパウエルFRB議長講演がある。23日は参院と衆院の閉会中審査で日銀の植田総裁が金融政策に関して答弁するが、7月31日の利上げ後に世界連鎖株安が発生したことで日銀の内田副総裁が混乱期の利上げはないとした姿勢を踏襲するのか、年末にかけて利上げを睨む姿勢を示すのか注目される。パウエル議長と植田総裁の発言はいずれもドル安円高材料となりやすいのではないかと思われる。
【米雇用統計は年次改定で大幅な下方修正、FOMC議事要旨は9月利下げ支持姿勢】
8月21日に米労働省が公表した雇用統計算出基準改定による年次改定では今年3月までの1年間の就業者数が従来発表より81万8000人下方修正された。3月までの1年間における月平均の就業者数は17万4000人増となり、改定前の24万2000人増を大幅に下回ることとなった。うち民間部門で81万9000人が下方修正されたようだ。
FRBは物価の安定化と雇用促進を主要政策目標としており、インフレが徐々に低下する中で労働市場の悪化が顕著になる場合に利下げを始めると見込まれており、今回の年次改定が9月利下げ開始及び年末にかけて会合毎に利下げが続く可能性を高めたと思われる。
米連邦準備制度理事会(FRB)は7月30日と31日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を公表したが、インフレ鈍化が続けば「次回9月会合での金融緩和が適切になる可能性がある」として利下げに前向きな姿勢を示した。
当該会合では政策金利が年5.25〜5.50%として8会合連続の据え置きとしたが、会合後の会見でパウエル議長は「9月会合で利下げが検討される可能性がある」と明言した。議事要旨では据え置きが全会一致だったものの、一部参加者は7月会合での0.25%利下げもあり得たとした。労働市場の鈍化傾向については「一層深刻な悪化に移行するリスク」を警戒するとの意見もあった。
8月2日の米7月雇用統計が予想以上に悪化したことと、21日の年次改定で年間の大幅下方修正があったことを踏まえれば、9月会合で0.25%利下げに踏み込むことはほぼ確実と市場は受け止めている。
【米長期債利回りは一時乱高下、NYダウは6日ぶり反落から持ち直す】
8月21日の米長期債利回りは、米労働省の年次改定が発表予定より遅れたことに対する思惑が交錯して一時急伸してから急落に転じ、終値ベースでは前日比まちまちとなった。
長期金利指標の10年債利回りは一時3.84%へ上昇してから3.76%へ低下し、前日比0.01%低下の3.80%で終了し、8月16日から4営業日連続低下となった。30年債利回りは一時4.09%へ上昇してから4.04%へ低下し、前日比0.02%上昇の4.08%で終了した。
政策金利動向に敏感な2年債利回りは4.00%へ上昇後に一時3.91%へ低下し、前日比0.05%低下の3.93%で終了したが、8月16日からは4営業日連続の低下となった。
一方で米国主要株価指数は総じて小幅上昇した。NYダウは8月13日から19日まで5営業日連騰してから20日に前日比61.56ドル安と反落したが21日は55.52ドル高と持ち直し、ナスダック総合指数は8月8日から19日まで8連騰して20日に前日比59.83ポイント安と反落したが21日は102.05ポイント高と切り返した。S&P500指数も20日に前日比11.13ポイント安と8日ぶりに反落したが21日は23.73ポイント高と反発した。
雇用統計の年次改定とFOMC議事要旨により9月利下げ開始見通しが固まっているものの労働市場の悪化問題が景気後退リスクを再び意識させていることで大幅高反応には至らなかった印象だ。
ドル円としては株高一服で円安効果が後退しつつある中で米長期債利回りが低下傾向の範囲にあるため下振れ圧力のかかりやすい状況と思われる。
【60分足、サイクル・一目均衡表分析】
ドル円は8月19日午後安値145.18円から戻したものの21日午前への下落で底割れしたために20日午後高値を起点として二段目の下落期に入ったとして当面の安値形成期を22日の日中から26日午後にかけての間と想定した。8月21日深夜の乱高下でも20日午後高値に届かず一段安しているので144円割れから143円台へ進みやすい局面と思われるが、乱調な展開が続く可能性もあるので146円超えからは強気転換注意として21日深夜高値146.86円試しとする。
60分足の一目均衡表で8月21日の一時的な急伸で先行スパン上限に迫ってから再び転落に入り遅行スパンの悪化も続いているため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンに潜り込む場合は強気転換注意とするが、上昇期入りには先行スパンを上抜き返す必要がある。
60分足の相対力指数は8月21日夕刻に60ポイントに迫ってから22日早朝に30ポイントを割り込み、その後も40ポイント近辺での推移のためまだ下落余地ありとし次の30ポイント割れからは20ポイント前後への低下を想定するが、50ポイント超えからは反騰入りの可能性ありとして60ポイントに迫る上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月22日早朝安値144.45円を下値支持線、146.00円を上値抵抗線とする。
(2)146円以下での推移中は下向きとし、144.45円割れからは144.00円、143.50円、143.00円を順次試して行く下落を想定する。急落商状の場合は142円台後半へ下値目途を引き下げる。
(3)145.50円から146円手前にかけては戻り売り有利とし、146円超えからは146円台中盤への上昇を想定するがその後に145.50円を割り込むところから下げ再開から一段安へ進むのではないかとみる。
【当面の予定】
8/22(木)
16:30 (独) 8月 HOCB製造業PMI速報値 (7月 43.2、予想 43.5)
16:30 (独) 8月 HOCBサービス業PMI速報値 (7月 52.5、予想 52.3)
17:00 (欧) 8月 HOCB製造業PMI速報値 (7月 45.8、予想 45.8)
17:00 (欧) 8月 HOCBサービス業PMI速報値 (7月 51.9、予想 51.9)
17:30 (英) 8月 S&PG製造業PMI速報値 (7月 52.1、予想 52.1)
17:30 (英) 8月 S&PGサービス業PMI速報値 (7月 52.5、予想 52.8)
20:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨・7月18日分
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.7万件、予想 23.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 186.4万人、予想 186.7万人)
22:45 (米) 8月 S&PG製造業PMI速報値 (7月 49.6、予想 49.6)
22:45 (米) 8月 S&PGサービス業PMI速報値 (7月 55.0、予想 54.0)
23:00 (欧) 8月 消費者信頼感速報値 (7月 -13.0、予想 -12.6)
23:00 (米) 7月 中古住宅販売件数・年率換算 (6月 389万件、予想 393万件)
23:00 (米) 7月 中古住宅販売件数 前月比 (6月 -5.4%、予想 1.0%)
26:00 (米) 財務省30年債入札
8/23(金)
ジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催シンポジウム、24日まで)
07:45 (NZ) 4-6月期 小売売上高 前期比 (1-3月 0.5%、予想 -0.9%)
08:01 (英) 8月 GFK消費者信頼感 (7月 -13,予想 -11)
08:30 (日) 7月 全国CPI(消費者物価指数) 前年同月比 (6月 2.8%、予想 2.7%)
08:30 (日) 7月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (6月 2.6%、予想 2.7%)
08:30 (日) 7月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (6月 2.2%、予想 1.9%)
09:30 (日) 植田日銀総裁、衆院財務金融委員会(閉会中審査)出席
13:00 (日) 植田日銀総裁、参院財政金融委員会(閉会中審査)出席
23:00 (米) 7月 新築住宅販売件数・年率換算 (6月 61.7万件、予想 63.1万件)
23:00 (米) 7月 新築住宅販売件数 前月比 (6月 -0.6%、予想 2.3%)
23:00 (米) パウエル米FRB議長、講演(ジャクソンホール)
24:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演(ジャクソンホール)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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