米国為替報告書 日本の為替操作監視対象国リスト入りの影響
本邦財務省が5月末に公表した4月26日から5月29日の外国為替平衡操作の実施状況によれば、日本がこの期間に実行した円買い為替介入額は9兆7885億円と過去最大規模のドル売り円買い介入を実施したことが明らかになった。
ドル円相場が4月末に一時160円台まで急騰したことを受けての大規模介入だったが、ドル円相場は一旦、152円割れまで下落したものの、その後、約2か月かけて徐々に値を戻し、再び年初来のドル高値を更新する展開となっている。
この間、ドルが買われたというより、円は他の主要通貨に対しても売られる展開となっており、7月4日に総選挙を控える英国(ポンド)に対しても、6月末から7月初旬に国民議会選挙を控えるフランスを主要メンバーに擁するユーロに対しても円は軟調に推移している。
円安を招いている要因は日本サイドにあると思われ、6月の日銀金融政策決定会合で、国債買入れ減額の方針は確認できたものの、具体的な実施要項が先送りされた形となったことが今の円の弱さに影響していると見るのが妥当だろうか。
他の材料として、6月20日に発表された米国財務省の為替政策報告書(Macroeconomic and Foreign Exchange Policies of Major Economic Partners of the United States)を挙げる向きもある。
この報告書は毎年2回、6月と11月に米国財務省が公表するレポートで、為替操作監視対象国のリストが注目を集めている。今回は2022年の11月レポート以来、日本が監視対象国に加えられたことで為替介入へのハードルが上がったのではないかという思惑を呼んでいる。
同レポートの日本に対する項目では、今年の4月と5月に行われた日本の為替介入についても言及されており、2022年10月以来となるドル売り円買い介入を実施し、円高に導いたことや、日本の外為平衡操作については毎月、公表がなされており透明性があるといった事実(Fact)についての記載がある。
為替介入については、”Treasury’s expectation is that in large, freely traded exchange markets, intervention should be reserved only for very exceptional circumstances with appropriate prior consultations.”とある。
この文章に、米国財務省の意向が強く滲み出ているように感じるのだが、例えば、介入については“should be executed”ではなく、 ” should be reserved”(温存されるべき)と取っておきの手段とのニュアンスを出している。
また、為替介入は”only for very exceptional circumstance”(極めて例外的な状況でのみ)、”with appropriate prior consultation”(適切な事前の協議を伴って)、と為替介入を実行するにあたっての要件についても難度が高い。
しかし、実はこの文章は今回、新たに書き加えられた文章では無く、1年7か月前の2022年11月の報告書でもほとんど同じ文章が記載されている。
唯一の違いは冒頭の主語が”Treasury’s firm expectation”から”Treasury’s expectation” へと、今回のセンテンスではfirmという単語が省かれていることだ。読み方によっては、2022年11月のレポートより為替介入に対しおおらかになったともとれる。
6月の日銀金融政策決定会合で肩透かしを食った形で騰勢を強めているドル円相場だが、次の日銀の金融政策決定会合は7月末で、約1か月も待たねばならない。この間のドル円相場が160円台に滞留する時間次第で、短ければ「やっぱり160円の壁は厚い」と天井感も漂ってくるだろうが、160円台での滞留時間が長くなれば、水準に目が慣れてしまって時間が経つほど介入もやり辛くなるだろう。
7月上旬で160円台が定着するかどうか、月末の日銀金融政策決定会合をどういった水準で迎えるかが年後半のドル円相場の行方を占うのに大きなポイントになりそうだ。勿論、為替介入も引き続き円安阻止の有力な手段のひとつであることに変わりはない。
【参考】
米国財務省為替政策報告書
次回に続く
オーダー/ポジション状況
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