ドル円見通し 米GDP上方修正からのドル高で年初来高値更新、140円台に到達(23/5/26)

26日早朝には140.22円を付けて昨年11月23日以来の140円台到達となった。

ドル円見通し 米GDP上方修正からのドル高で年初来高値更新、140円台に到達(23/5/26)

ドル円見通し 米GDP上方修正からのドル高で年初来高値更新、140円台に到達

〇ドル円、5/25夜の米GDP改定値の上方修正をきっかけにドル高反応、139.83へ上昇し年初来高値更新
〇5/26早朝には140.22を付け、昨年11/23以来の140円台到達
〇日銀植田総裁、インタビューで「必要に応じて検証中の政策変更もあり得る」という趣旨の発言
〇米GDP改定値は速報から上方修正、市場は追加利上げ余地を示すものと受け止め、ドル高反応招く
〇米10年債・2年債利回りは上昇継続で2連騰、NYダウは5営業日続落
〇139.18を割り込まないうちは一段高余地ありとし、140.22超えからは140円台中盤への上昇を想定する
〇139.18割れからは、138円台後半(138.85から138.50台)への下落を想定する

【概況】

ドル円は5月25日夜の米GDP改定値が速報から上方修正されたことをきっかけに22時過ぎ高値で139.83円へ上昇して年初来高値を更新し、26日早朝には140.22円を付けて昨年11月23日以来の140円台到達となった。GDP発表前には時事通信社等による植田日銀総裁インタビューの内容が流れ、前回の金融政策決定会合において金融緩和政策の検証を1年から1年半かけて行うとしたことに対して必要に応じてYCC等の修正もあり得ると述べたことで一時的に円高反応を招いて139.18円まで下げたが、その直後の米GDP等の発表からドル高反応となったことで切り返した。140円台到達後は26日夜の米4月PECデフレーターの発表を控えているために上昇一服感も出て140円を割り込んでいる。

3月8日と5月2日の両高値を上抜いて上昇してきたために1月16日安値からの上昇は3月8日までを一段目とし、3月24日から二段目の上昇となっているが、一段目の上昇と同規模となる140.33円に迫っている。また昨年10月21日高値から今年1月16日安値までの下げ幅に対する半値戻し139.58円を超えており、140円台での高値切り上げへ進めば3分の2戻しとなる143.71円等も意識され始めるのではないかと思われる。

【日銀植田総裁、「検証中の政策変更もあり得る」】

日銀の植田総裁は5月25日に通信社インタビューに答えて「長短金利操作(YCC=イールドカーブコントロール)等の金融緩和政策については「効果と副作用をにらみ、バランスに変化があれば修正はあり得る」と述べた。日銀は4月会合で過去25年間の金融政策に関する多角的なレビュー(検証)を1年から1年半かけて行うとしたが、植田総裁はレビュー中でも「必要に応じて政策を変更することはあり得る」とし、検証中の政策変更はないとの見方にくぎを刺した。ただし、「あまり急いで引き締めをすると大きなマイナス影響が及ぶ」として早期の変更に対する慎重姿勢も示した。
物価目標については「良い芽も少しずつ出てきており、目標を簡単に変えるべきではない」「企業収益や雇用、賃金が増加していく中で、物価も2%くらい上昇する好循環を目指している点は政府と一致している」と述べて政府日銀共同声明のスタンス変更には否定的な見方を示した。
インタビュー内容が流れた後にドル円は139.56円近辺から139.18円へ反落したが、その直後の米GDP等をきっかけに反騰に転じて年初来高値を更新した。

【米GDP改定値は速報から上方修正】

米商務省による1-3月期の米GDP改定値は年率換算前期比1.3%増となり、速報の1.1%増から上方修正されて据え置きとみていた市場予想を上回った。GDPの7割を示す個人消費は3.8%増となり速報の3.7%から上方修正された他、設備投資が速報の0.7%増から1.4%増へ上方修正、輸出が4.8%増から5.2%増へ上方修正、輸入も速報の2.9%から4.0%へ上方修正、住宅投資は4.2%減から5.4%減へ下方修正された。
1-3月期のPCEデフレーターは前期比4.2%上昇で速報の4.2%と変わらず、コアPCEデフレーターは5.0%上昇で速報の4.9%から上方修正された。

FRBによる利上げが続いてきたことによる景気への圧迫感はあるものの個人消費が堅調なことで過度の景気減速懸念が後退してFRBの追加利上げ余地のあることを示すものと市場は受け止めてドル高反応を招いた。
米労働省による新規失業保険申請件数は5月20日までの週間で前週比4000件増の22万9000件となり、3週ぶりの悪化となったが、前週分が速報の24万2000件から22万5000件へ下方修正されたためであり、市場予想の24万5000件を下回った。失業保険受給者総数は5月13日までの週間で179万4000人となり、前週から5000人減少して市場予想の180万人を下回った。

【米10年債利回りは上昇継続、NYダウは5営業日続落】

5月25日の米長期債利回りはGDP上方修正を受けて総じて上昇した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.07%上昇の3.82%となった。5月12日から22日まで7連騰の上昇となったが、23日は3.76%まで続伸してからの反落で8営業日ぶりの低下となっていたが、24日に0.05%上昇となり、25日も連騰したことで4月6日に付けた3.25%以降の最高値更新となった。上昇基調の継続感が強まっているが、2月の上昇時に匹敵する動きと思われる。
利上げに敏感な2年債利回りは前日比0.16%上昇の4.54%となった。5月12日から22日へ7連騰となり23日に4.42%まで高値を伸ばしてから失速して前日比変わらずとしていたが、24日に0.05%上昇としたとこからの連騰となり3月24日の3.56%以降の高値を更新した。

ウォラーFRB理事等の利上げ継続支持発言やFOMC議事要旨による追加利上げ観測が強まる中、GDPが上方修正されたことが長期債利回り上昇を促進したといえる。ただ25日にボストン連銀のコリンズ総裁が「インフレは依然として高すぎる」としつつも「鈍化が期待できるいくつかの兆しがある」として「利上げを停止する地点にいるかその近くにいるかもしれない」と述べており、過度の利上げ継続期待をけん制する動きもある。今夜の米PCEデフレーターに対する反応に注目が集まる。
NYダウは前日比35.27ドル安となる5営業日続落となったが、一時は200ドルを超える下落だったところから持ち直して突っ込み警戒感を示し、ナスダック総合指数は米長期債利回り上昇にもかかわらず景気減速懸念の後退を優先して213.93ポイント高と上昇した。米連邦債務上限問題が合意に近づいているとの報道もダウの安値からの反騰やナスダックの上昇に寄与したようだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は5月19日深夜に急落したものの22日午前に安値更新を回避したところを起点として上昇再開に入り26日早朝へ高値を伸ばしてきた。5月19日高値を起点とすれば目先の高値形成期は26日午前にかけてと想定されるが、24日午後まで138円台の持ち合いを入れてから一段高しているため、24日午後安値を起点とした上昇とすれば目先の高値形成期が30日夜にかけて延びる可能性もあるとみる。このため5月25日夜の反落時安値139.18円を割り込まないうちは週明けへの上昇余地ありとし、25日夜安値割れからは下落期入りとみて29日の日中にかけての下落を想定する。

60分足の一目均衡表では5月24日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンへ潜り込んだところから上抜けたが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中の高値試し優先とする。25日夜の反落時安値を割り込むところからは下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、その際は先行スパンが下値支持帯として機能するとみるが、先行スパンから転落の場合は下げ足が速まることもあり得ると注意する。

60分足の相対力指数は5月26日早朝への上昇で70ポイント台に到達してからやや下げているものの60ポイント近辺にとどまっているのでまだ上昇余地ありとし、弱気転換は50ポイント割れからとしてその際は30ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月25日夜安値139.18円を下値支持線、26日早朝高値140.22円を上値抵抗線とする。
(2)5月25日夜安値を割り込まないうちは一段高余地ありとし、140.22円超えからは140円台中盤(140.35円から140.65円)への上昇を想定する。140.50円以上は反落注意とするが、直前高値から1円を超える反落が発生しないうちは週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)139.18円割れからは138円台後半(138.85円から138.50円台)への下落を想定する。138.70円以下は反発注意とするが、25日夜安値を割り込んだ水準での推移が続く場合は週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/26(金)
休場 香港
10:30 (豪) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.4%、予想 0.3%)
15:00 (英) 4月 小売売上高 前月比 (3月 -0.9%、予想 0.3%)
15:00 (英) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 -3.1%、予想 -2.7%)
15:00 (英) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (3月 -1.0%、予想 0.4%)
15:00 (英) 4月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (3月 -3.2%、予想 -2.8%)

21:30 (米) 4月 個人所得 前月比 (3月 0.3%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 PCE(個人消費支出) 前月比 (3月 0.0%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 PCEデフレーター 前年同月比 (3月 4.2%、予想 4.3%)
21:30 (米) 4月 PCEコアデフレーター 前月比 (3月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 4月 PCEコアデフレーター 前年同月比 (3月 4.6%、予想 4.6%)
21:30 (米) 4月 卸売在庫 前月比 (3月 0.1%、予想 0.0%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注 前月比 (3月 3.2%、予想 -1.0%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (3月 0.3%、予想 -0.1%)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 57.7、予想 57.7)

5月29日(月)は米国のメモリアルデー(戦没者追悼の日)のため全て休場。26日の米債券市場は現地午後2時までの短縮取引となる。



注:ポイント要約は編集部

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