ドル円見通し 信用不安収まらず3月8日からの下落継続(週報3月第三週)

今年3月8日高値137.91円までの戻りは10.70円で、3分の1戻しの135.45円を超えて半値戻しの139.57円に挑んでいたものの届かずに失速した。

ドル円見通し 信用不安収まらず3月8日からの下落継続(週報3月第三週)

ドル円見通し 信用不安収まらず3月8日からの下落継続

〇ドル円、SVBファイナンシャルグループが民事再生の適用を申請したことで18日未明131.55まで一段安
〇金融機関の破綻連鎖への不安続き、2008年型の金融危機を招いたとしても不思議ない状況にあると警戒
〇米長期金利、利上げは長続きせず、利下げの再開も速まる可能性もあり、当面は低下傾向を続けるか
〇当面は日米金利差縮小による円高優勢の展開を予想
〇133円超えからは3/17高値133.82試しとするが、超えずに1円を超える反落が発生する場合は下げ再開
〇131円割れからは130円、129円を順次試しつつ、1/16安値127.21へ接近してゆく流れか

【概況】

ドル円は3月18日未明への下落で131.55円の安値を付けて年初来高値である3月8日高値137.91円からの下げ幅は6.36円に拡大、1月16日安値127.21円から3月8日高値への上昇幅10.70円に対して凡そ6割を削った。3月10日の米2月雇用統計が強弱まちまちとなる中、シルバーゲート銀やシリコンバレー銀の破綻報道が相次いだことで10日深夜に134.10円へ急落し、3月13日早朝にはNY州の地銀シグネチャー銀の破綻報道で13日夜安値132.27円へ一段安した。いったん市場心理が収まりかけたことで15日夕刻には135.09円まで持ち直し、直前の下げ幅に対して半値を戻したのだが、今度はクレディースイス株暴落による破綻懸念が発生して16日夜には131.71円まで安値を切り下げた。

クレディースイスへのスイス中銀による資金供給と支援宣言や、ECBが金融危機には発展しないとして従来想定通りに0.50%利上げを決定したことに鼓舞されて17日未明には133.82円まで戻したものの、17日にクレディースイス株は一時二桁を超える反落となり、シリコンバレー銀行の親会社であるSVBファイナンシャル・グループが連邦破産法11条(民事再生)の適用を申請したことで株安・米長期債利回り低下となり、信用不安の連鎖はまだ続きかねないとして18日未明の131.55円まで一段安となった。

【破綻連鎖への不安続く】

スイス中銀は経営危機に陥ったクレディスイスに対して最大500億スイスフラン(約540億ドル)の貸付を決めた。また3月17日に株価が急落して新たな経営危機が取り沙汰された米中堅銀行ファースト・リパブリック銀に対しては米金融機関大手複数により300億ドルの預金預け入れが表明されたことで目先の危機は落ち着いている。ECBのラガルド総裁やイエレン米財務長官は2008年の金融危機と比較すれば銀行の体力は確りしているとして金融危機発生には進展しないと市場を安心させる発言を行い、イエレン財務長官は「バイデン政権の最重要課題はインフレの抑制」と強調して米FRBによる3月21-22日のFOMCにおける利上げを事実上支持するなど、市場に平静を保たせようとしている。

ECBが仮に利上げを見送ったならばそれだけ危機は深刻として市場心理は一層悪化した可能性もあり、FRBも米銀破綻前に0.50%利上げがあり得るとされていた状況からは0.25%の通常利上げに留めると予想されているが、利上げ回避がかえって混乱を招きかねないことで難しい判断を求められているところだ。
2008年のリーマンショックにおいても、当初は住宅金融関連の破綻が相次ぎ、ベアスターンズ証券が破綻した時でも大事にはならないと楽観説が多く、当局も救済措置を取りながら市場に冷静さを求めたものだが、リーマンブラザーズの破綻に至り信用不安はパニックをもたらした。FRBが昨年の利上げを急いだことにより住宅ローンの高騰で不動産市況が悪化していること、コロナ対策での大規模金融緩和による好景気が大きく減速している状況にあることを踏まえれば、2008年型の金融危機を招いたとしても不思議ない状況にあると警戒すべきだろう。

FRBはシリコンバレー銀とシグネチャー銀の経営破綻を受けて新たな資金供給策として「バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)」を発表、3月15日時点で119.43億ドルの融資を行ったと公表した。BTFPは最大1年の期間での資金供給を行う。
米下院金融サービス委員会は3月29日には米銀破綻に関しての公聴会を開催、FRBのバー副議長と連邦預金保険公社(FDIC)のグルーエンバーグ総裁が証言する予定。

【米長期債利回りは再び急低下、ダウは反落】

3月17日の米長期債利回りは総じて低下した。長期金利指標の10年債利回りは前日比0.14%低下の3.44%で終了した。米銀破綻報道により3月9日に0.09%低下、10日に0.21%低下、13日に0.16%低下と3日連続で大幅低下し、3月14日は0.16%上昇と戻したが、15日には0.24%低下、16日は0.12%上昇と乱高下していたところから前日の上昇を解消する反落に終わり、週間では3月10日の3.70%から17日の3.44%まで0.26%の大幅低下、前週の0.26%低下からの大幅続落となった。

30年債利回りは0.08%低下の3.63%で終了し前日の0.06%上昇を解消した。利上げに敏感な2年債利回りは0.32%低下の3.85%に終わった。3月8日に5.08%を付けて2007年以降の最高値としたところから3月9日に0.21%低下、10日に0.28%低下、13日には0.57%低下し、14日は0.24%上昇と戻して15日は0.37%低下、16日に0.28%上昇と乱高下して17日は前日分の上昇を解消する急低下となり、昨年9月以来の水準まで下げた。
FRBにより0.25%利上げが決定されたとしても利上げは長続きせずに金融市場の状況次第では利下げの再開も速まる可能性が高まっているため、当面は乱調な展開を繰り返しながらも低下傾向を続けるのではないかと思われる。
一方でNYダウの3月17日は前日比384.57ドル安と下落、ナスダック総合指数も86.77ポイント安と下落した。信用不安が払拭できないとして株売り・債券買いの動きが強まっていることが背景であり、利上げがピークアウトしたとしても信用不安が拡大するなら景気減速が従来想定よりも深刻化する可能性もあると市場は見ているようだ。

【年初からの戻り一巡、二段目の下落期入りの可能性】

ドル円は昨年10月21日高値で151.94円を付けて2021年1月6日底102.57円からの上昇幅を49.37円とする歴史的な大上昇を実現したが、今年1月16日安値127.21円まで24.73円の下げ幅となり半値押しの127.25円をわずかに割り込んだ。今年3月8日高値137.91円までの戻りは10.70円で、3分の1戻しの135.45円を超えて半値戻しの139.57円に挑んでいたものの届かずに失速した。
既に1月16日からの上昇幅の半値を削っていること、上昇時の下値支持線となる26日移動平均や一目均衡表の26日基準線を割り込んでいることを踏まえれば、戻り一巡による下落再開に入り、昨年10月21日を天井とする下落波動における二段目の下げに入っている可能性がある。

日足の先行スパン下限は130円近辺にあるが、130円を割り込む場合は26日基準線割れに続く遅行スパンの悪化、先行スパンからの転落と弱気確認サインが揃ってくる。
日足の相対力指数は2月末から3月8日への高値切り上げに際して指数のピークが70ポイント手前で切り下がる弱気逆行を見せてから50ポイントを割り込み、3月17日には40ポイントを若干割り込んでいるため、既に下落期入りの様相となっており、30ポイント割れを目指す可能性が高まってきている印象だ。

【当面は日米金利差縮小による円高優勢の展開】

【当面は日米金利差縮小による円高優勢の展開】

日銀は黒田総裁としての最後の金融政策決定会合を現状維持で終え、4月9日からは植田総裁体制となり、将来的には黒田総裁時代の「異次元」金融緩和からの脱却、機能不全に陥っているYCC(長短金利操作)の修正へ向かうと思われるが、欧米の金融機関破綻懸念が拡大中にあっては急激に修正への舵を切ることは難しく、しばらくは市場を刺激しない姿勢で進むのではないかと思われる。その際は長期金利の絶対水準の差では日本10年債利回りの動きはわずかであり、ドル円としては米長期金利の騰落に合わせての推移を続けつつ、不安心理を反映してクロス円における積極的な投資ポジションの縮小=円の買い戻しにより円高へ進みやすい環境と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
新たな経営破綻報道の発生に注意しつつ、経済イベントとしては3月21-22日のFOMC(23日未明に声明・議長会見)が最大の焦点となる。3月23日夕刻から夜にかけてはノルウェー中銀、トルコ中銀、英中銀の政策金利発表が相次ぐところも変動を大きくしやすいと注意する。
FOMC後にドル高反応の場合はよほどのサプライズが無ければ短期的な上昇とみてその後の反落を警戒し、FOMCから下落反応なら下げ足はさらに速まる可能性があるとみる。

(1)当面、131円を下値支持線、133円を上値抵抗線とし、しばらくは安値試しが続きやすい局面と考える。
(2)132円台後半から133円にかけての水準は戻り売りにつかまりやすいとみる。133円超えからは3月17日未明高値133.82円試しとするが、17日未明高値を超えずにその後に1円を超える反落が発生するところからは下げ再開とみる。
(3)131円割れからは130円、129円を順次試しつつ、1月16日安値127.21円へ接近してゆく流れと考える。

【当面の主な予定】

3/20(月)
休場、メキシコ
内田氏、氷見野氏が日銀副総裁に就任
08:50 (日) 金融政策決定会合(3/9-3/10開催分)「主な意見」
16:00 (独) 2月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (1月 -1.0%、予想 -0.5%)
19:00 (欧) 1月 貿易収支・季調済 (12月 -181億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 貿易収支・季調前 (12月 -88億ユーロ)
23:00 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、発言

3/21(火)
休場、日本、南ア
06:45 (NZ) 2月 貿易収支 (1月 -19.54億NZドル)
米連邦公開市場委員会(FOMC)初日
09:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨
19:00 (独) 3月 ZEW景況感 (2月 28.1、予想 15.0)
19:00 (欧) 3月 ZEW景況感 (2月 29.7)
19:00 (欧) 1月 建設支出 前月比 (12月 -2.5%)
19:00 (欧) 1月 建設支出 前年同月比 (12月 -1.3%)

21:30 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、パネル討論会参加
23:00 (米) 2月 中古住宅販売件数・年率換算 (1月 400万件、予想 420万件)
23:00 (米) 2月 中古住宅販売件数 前月比 (1月 -0.7%、予想 5.0%)
24:30 (米) 財務省1年債入札
26:00 (米) 財務省20年債入札、インフレ指数連動10年債入札

3/22(水)
休場 インドネシア
英中銀金融政策委員会(MPC)初日
16:00 (英) 2月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (1月 -0.6%、予想 0.6%)
16:00 (英) 2月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (1月 10.1%、予想 9.9%)
16:00 (英) 2月 コアCPI 前年同月比 (1月 5.8%、予想 5.7%)
16:00 (英) 2月 小売物価指数(RPI) 前年同月比 (1月 13.4%、予想 13.2%)
17:45 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、講演
18:00 (欧) 1月 経常収支・季調済 (12月 159億ユーロ)
22:45 (欧) パネッタECB理事、講演
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
25:45 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 4.50-4.75%、予想 4.75-5.00%)
27:30 (米) パウエル米FRB議長、定例記者会見

3/23(木)
EU首脳会議(3/24まで)、米韓合同軍事演習最終日
17:30 (ス) スイス中銀 政策金利 (現行 1.00%、予想 1.50%)
18:00 (ノ) ノルウェー中銀 政策金利 (現行 2.75%、予想 3.00%)
20:00 (ト) トルコ中銀 政策金利 (現行 8.50%、予想 8.50%)
21:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 4.00%、予想 4.25%)
21:30 (米) 10-12月期 経常収支 (7-9月 -2171億ドル、予想 -2136億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.2万件、予想 20.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.4万人)
23:00 (米) 2月 新築住宅販売件数・年率換算 (1月 67.0万件、予想 65.0万件)
23:00 (米) 2月 新築住宅販売件数 前月比 (1月 7.2%、予想 -3.0%)
24:00 (欧) 3月 消費者信頼感・速報値 (2月 -19.0、予想 -18.5)
24:00 (英) マン英中銀委員、講演
25:00 (欧) レーンECB理事、講演

3/24(金)
EU首脳会議最終日
08:30 (日) 2月 全国消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (1月 4.3%、予想 3.3%)
08:30 (日) 2月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (1月 4.2%、予想 3.1%)
08:30 (日) 2月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (1月 3.2%、予想 3.4%)
09:01 (英) 3月 GFK消費者信頼感 (2月 -38、予想 -35)
16:00 (英) 2月 小売売上高 前月比 (1月 0.5%、予想 0.2%)
16:00 (英) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 -5.1%、予想 -4.7%)
16:00 (英) 2月 小売売上高・除自動車 前月比 (1月 0.4%、予想 0.2%)
16:00 (英) 2月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (1月 -5.3%、予想 -4.8%)
17:30 (独) 3月 製造業PMI・速報値 (2月 46.3、予想 47.0)
17:30 (独) 3月 サービス業PMI・速報値 (2月 50.9、予想 51.0)

18:00 (欧) 3月 製造業PMI・速報値 (2月 48.5、予想 49.0)
18:00 (欧) 3月 サービス業PMI・速報値 (2月 52.7、予想 52.5)
18:15 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
18:30 (英) 3月 製造業PMI・速報値 (2月 49.3、予想 49.7)
18:30 (英) 3月 サービス業PMI・速報値 (2月 53.5、予想 53.0)
21:30 (米) 2月 耐久財受注 前月比 (1月 -4.5%、予想 1.5%)
21:30 (米) 2月 耐久財受注・除輸送用機器 前月比 (1月 0.7%、予想 0.3%)
22:45 (米) 3月 製造業PMI・速報値 (2月 47.3、予想 47.0)
22:45 (米) 3月 サービス業PMI・速報値 (2月 50.6、予想 50.2)
25:00 (英) マン英中銀委員、パネル討論会参加

3/26(日)
欧州夏時間開始

注:ポイント要約は編集部

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