ドル円見通し 欧米長期金利上昇で137円に迫り、その後の136円割れも買われて高値圏維持(23/3/1)

ドル円は2月28日夜高値で136.93円をつけて1月16日安値127.21円以降の高値を更新した。

ドル円見通し 欧米長期金利上昇で137円に迫り、その後の136円割れも買われて高値圏維持(23/3/1)

欧米長期金利上昇で137円に迫り、その後の136円割れも買われて高値圏維持

〇ドル円、2/28夜に136.93をつけ、1/16安値127.21以降の高値を更新
〇2/28の米経済指標は総じて弱く、3/1未明に135.73まで下げたが、3/1午前序盤は136円台で推移中
〇欧州インフレ指標の上ブレにより欧州長期債利回り上昇、2/28夜のユーロドルが上昇
〇市場予想を下回った米経済指標、金融引き締めによる景気減速感が示されている
〇労働需給ひっ迫感と賃金上昇によるインフレ押し上げの懸念強くFRB利上げ継続長期化へ懸念強める
〇136円以上での推移中は一段高余地あり、136.93超えからは137.20ー137.50への上昇を想定
〇135.73割れからは135.30前後へ下落想定、136円以下で推移が続くと3/2も安値試しへ向かう可能性も

【概況】

ドル円は2月28日夜高値で136.93円をつけて1月16日安値127.21円以降の高値を更新した。フランスやスペインのインフレ率が予想以上の上ブレとなったことで独仏伊の長期債利回りが上昇したことでユーロドルが一時急伸、ポンドドルも連れ高となりユーロ円やポンド円の上昇による円安がドル円にも波及したことで137円に迫った。28日夜は米経済指標が総じて弱かったことで米長期債利回りが反落に転じると欧州長期債利回りも低下したためにユーロやポンドが反落に入り、ドル円も3月1日未明には135.73円まで下げたが、136円割れは買い拾われて1日午前序盤は136円台へ戻している。
2月24日の米1月PCEデフレーターが予想を超えたことによる上昇で2月27日午前に136.55円をつけ、27日夜の135.90円への反落から一段高し、3月1日未明の下落時には27日夜安値を割り込んでいる。高値を切り上げつつ安値が切り下がるレンジ拡張型の三角持ち合いの様相でもあり、135円台中盤までを下値支持帯として高値切り上げをさらに試しやすい姿と考える。

【欧州インフレ継続感で長期債利回りが上昇】

2月28日に発表されたフランスの2月消費者物価指数上昇率は前月比0.9%となり、市場予想の1.0%を下回ったものの1月の0.4%から大幅に加速、前年同月比は6.2%となり1月の6.0%及び市場予想の6.1%を上回った。EU基準のHICPの2月は前年同月比7.2%となり、1月の7.0%を上回った。
スペインの2月消費者物価上昇率も前年比で6.1%となり、1月の5.9%から加速して市場予想の5.7%を上回った。これらインフレ指標の上ブレにより、欧州中銀(ECB)による利上げピーク水準(ターミナルレート)に対する市場予想は4%まで押し上げられ、独10年債利回りは一時2.71%へ上昇して2011年7月以来の高水準となり、独2年債利回りは3.191%をつけて2008年10月以来の高水準に達した。またイタリア10年債利回りも一時4.575%をつけて1月3日以来の高値となるなど、総じて欧州長期債利回り上昇となったことが28日夜にかけてのユーロドルの上昇背景となり、ユーロ円の上昇が円安感を強めてドル円も上昇したようだ。

【米経済指標は総じて予想を下回る】

2月28日の米経済指標は総じて市場予想を下回った。S&Pケース・シラー住宅価格指数(全米主要20都市)は前年比4.6%上昇となったが11月の6.8%から大幅に低下して市場予想の5.8%も下回った。前月比は0.5%低下で市場予想と一致した。
米連邦住宅金融局(FHFA)による12月住宅価格指数は前月比0.1%低下、前年比6.6%上昇だったが伸び率は2020年6月以来最低となった。

MNIインディケーターズによる2月のシカゴ購買部景況指数は市場予想の45.0を下回る43.6となり、1月の44.3から悪化して2022年11月の36.2以来の低水準となったが、好不況の節目である50を6か月連続で割り込んだ。
米コンファレンス・ボードによる2月の消費者信頼感指数は102.9となり1月の106.0から低下、市場予想の108.5を下回った。現況指数は1月の151.1から152.8へ改善したが、期待指数は1月の76.0から69.7へ低下した。
住宅市況の悪化については米FRBの利上げによる住宅ローン金利上昇が原因であり昨年後半からの悪化傾向が顕著となっている。景況感については各種調査でまちまちなところもあるが金融引き締めによる景気減速感が示されている印象だ。しかしCPI、PPI、PCEデフレーター、平均時給等のインフレ指標は高止まりか再加速の傾向を示し、2月3日の米雇用統計がかなり強めだったことも含めて労働需給のひっ迫感と賃金上昇によるインフレ押し上げへの懸念は強いままであり、FRBによる利上げ継続の長期化への懸念を強めている。

【米10年債利回りは11週ぶり高値へ上昇】

2月28日の米10年債利回りは前日比変わらずの3.92%だったが、一時は3.98%をつけて昨年11月初旬以来の高水準となった。30年債利回りは0.01%ポイント低下の3.92%、利上げに敏感な2年債利回りは0.04%ポイント上昇の4.82%となった。
2月28日の米経済指標が冴えない内容だったことが長期債利回りの上昇抑制要因となったものの、2年債利回りは終値ベースで1月19日以降の高値を更新した。昨年11月6日につけた2020年以降の最高値である4.88%には届いていないものの終値としては11月4日の4.66%を超えてこの間の最高値水準となっており、米長期債利回りの上昇基調は継続と思われる。
一方でNYダウは欧米の長期金利上昇に圧迫されて前日比232.39ドル安と下落して2月14日以降の下落基調を継続、ナスダック総合指数も11.44ポイント安と小幅ながら下落して2月2日以降の下落基調が続いている。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は2月28日夜高値136.93円から3月1日未明安値135.73円まで1円を超える反落から持ち直しているところだが、2月23日夜高値から3日目となる2月28日夜高値で目先のピークをつけて調整安に入ったところと思われる。3月1日未明安値を起点として既に新たな上昇期に入っている可能性もあるが、2月28日夜高値を超えないうちは3月3日午前にかけての下落余地ありとし、2月28日夜高値超えからは新たな上昇期入りとして週末から3月7日夜にかけての上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では3月1日未明への反落時に遅行スパンが悪化して先行スパンへ潜り込んだものの、その後の反発で遅行スパンは再び好転しつつあり、先行スパンからも上抜けているため既に上昇再開へと入っている印象だ。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とし、3月1日未明安値を割り込まないうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後の好転から上昇再開とする。ただし3月1日未明安値割れからはもう一段安へ進むとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は3月1日未明への反落時に30ポイント台序盤へ低下してから50ポイント台まで戻しているのですでに調整終了から上昇再開に入りつつあるところと思われる。再び45ポイントを割り込む場合は安値試しへ向かうとみて30ポイント台前半への低下を想定するが、60ポイント超えからは上昇再開感を優先して70ポイント台後半を目指す上昇を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、135.73円を下値支持線、136.93円を上値抵抗線とする。
(2)136円以上での推移か一時的に割り込んでも切り返すうちは一段高余地ありとし、136.93円超えからは137円台前半(137.20円から137.50円)への上昇を想定する。137.50円以上は反落注意とするが、136円以上を維持しての推移なら3月2日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)135.73円割れからは135.30円前後への下落を想定する。135.73円を割り込んだ後も136円以下での推移が続く場合は3月2日も安値試しへ向かう可能性があるとみるが、135.30円以下は反騰警戒とし、136円超えからは上昇再開に入るとみる。

【当面の主な予定】

3/1(水)
休場、韓国
10:00 (中) 2月 国家統計局製造業PMI (1月 50.1、予想 50.5)
10:30 (日) 中川日銀審議委員、金融経済懇談会出席・会見
10:45 (中) 2月 財新製造業PMI (1月 49.2、予想 50.2)
14:30 (日) 中川日銀審議委員、記者会見
17:55 (独) 2月 失業者数 前月比 (1月 -2.20万人、予想 -1.00万人)
17:55 (独) 2月 失業率 (1月 5.5%、予想 5.5%)
17:55 (独) 2月 製造業PMI・改定値 (速報 46.5、予想 46.5)
18:00 (欧) 2月 製造業PMI・改定値 (速報 48.5、予想 48.5)
18:30 (英) 2月 製造業PMI・改定値 (速報 49.2、予想 49.2)
19:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、講演
19:00 (独) ナーゲル独連銀総裁、独連銀年次報告書説明
22:00 (独) 2月 消費者物価指数(CPI)・速報値 前月比 (1月 1.0%、予想 0.8%)
22:00 (独) 2月 消費者物価指数(CPI)・速報値 前年同月比 (1月 8.7%、予想 8.5%)

23:45 (米) 2月 製造業PMI・改定値 (速報 47.8、予想 47.8)
24:00 (米) 2月 ISM製造業景況指数 (1月 47.4、予想 48.0)
24:00 (米) 1月 建設支出 前月比 (12月 -0.4%、予想 0.2%)
24:30 (米) EIA週間石油在庫統計

3/2(木)
08:50 (日) 10-12月期 法人企業統計・全産業設備投資額 前年同期比 (7-9月 9.8%、予想 7.1%)
08:50 (日) 2月 マネタリーベース 前年同月比 (1月 -3.8%)
09:30 (豪) 1月 住宅建設許可件数 前月比 (12月 18.5%、予想 -7.5%)
10:30 (日) 高田日銀審議委員、金融経済懇談会出席・会見
14:00 (日) 2月 消費者態度指数・一般世帯 (1月 31.0、予想 32.0)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数(HICP)・速報値 前年同月比 (1月 8.6%、予想 8.2%)
19:00 (欧) 2月 HICPコア指数・速報値 前年同月比 (1月 5.3%、予想 5.3%)
19:00 (欧) 1月 失業率 (12月 6.6%、予想 6.6%)
21:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨

22:30 (米) 10-12月期 非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 3.0%、予想 2.6%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.2万件、予想 19.7万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 165.4万人、予想 167.5万人)
24:00 (米) ピル英中銀理事、講演
28:00 (米) ウォラーFRB理事、講演


注:ポイント要約は編集部

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