来週の為替相場見通し:『米NFPのポジティブサプライズで市場が急変。ドル高トレンド再開か?』(2/4朝)

ドル円は1/16に記録した約7カ月半ぶり安値127.22をボトムに反発に転じると、週末にかけて、131円台前半まで急伸する荒々しい値動きとなりました。

来週の為替相場見通し:『米NFPのポジティブサプライズで市場が急変。ドル高トレンド再開か?』(2/4朝)

『米NFPのポジティブサプライズで市場が急変。ドル高トレンド再開か?』

○今週のドル円、WSJのタカ派的な記事などで週明けの海外時間に一時130.62まで上昇
○買い一巡後は、米FOMC無難通過などによるドル売り圧力が重石となり週後半にかけて128.08まで急落
○ただ、ポジティブサプライズだった米雇用統計が支援材料となり週末には週間高値131.21まで急伸
○ユーロドル、1/31にかけて1.0802まで下落後、週後半に1.1034まで急伸
○ただ、買い一巡後はECB理事会のハト派的声明文などが重石、2/4早朝には1.08台前半まで値を崩す展開
○ドル円、ローソク足が主要レジスタンスポイントを上抜け、地合いの「好転」を印象づけるチャート形状
○ファンダメンタルズも、金融引き締め早期休止観測に再考の余地、短期的にはドル円上昇リスクが高まる
○来週は日銀総裁人事次第で、金融緩和の修正観測が再度意識される可能性
○超短期的なドル円続伸を見込みつつも、週後半にかけてはドル売り・円買い圧力が戻ってくると予想
○来週の予想レンジ(USDJPY):128.00ー133.00、(EURUSD):1.0600−1.1000

今週のレビュー(1/30−2/3)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初129.71で寄り付いた後、(1)米ウォールストリートジャーナル紙のニック記者による1/29付けの「米当局は労働市場が非常にタイトであるため、ディスインフレが短期間で終わる可能性があることに懸念を表明している」とのタカ派的な記事掲載や、(2)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(3)米1月ダラス連銀製造業活動指数(結果▲8.4、予想▲15.0)の市場予想を上回る結果が支援材料となり、週明け海外時間に、一時130.62まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)本邦輸出企業の月末仲値のドル売り圧力や、(5)米10ー12月期雇用コスト指数(結果+1.0%、予想+1.1%)の伸び率鈍化、(6)米1月シカゴ購買部協会景気指数(結果44.3、予想45.0)の冴えない結果、(7)米1月消費者信頼感指数(結果107.1、予想109.0)の市場予想を下回る結果、(8)米1月ADP雇用統計(結果+10.6万人、予想+18.0万人)の不冴な結果、(9)米1月ISM製造業景況指数(結果47.4、予想48.1)の更なる低下、(10)米FOMCおよびパウエルFRB議長記者会見の無難通過(※予想通りFF金利の25bp引き上げが行われると共に、声明文においても「継続的な利上げが適切」と次回利上げを示唆する表現が盛り込まれたが、パウエルFRB議長が「ディスインフレプロセスが現在進行中であることは喜ばしい」「引き締め過ぎは望んでいない」と発言したことで、市場では、事前に懸念されたほどタカ派的ではないとの解釈が広がる展開に)、(11)米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りは1/19以来となる3.33%へ急低下。米2年債利回りは昨年10/4以来の4.04%へ急低下)が重石となり、週後半にかけて、週間安値128.08まで急落しました。

もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(13)米1月非農業部門雇用者数(結果51.7万人、予想19.0万人)のポジティブサプライズや、(14)米1月失業率(結果3.4%、予想3.6%)の良好な結果、(15)米1月ISM非製造業景況指数(結果55.2、予想50.4)の力強い結果、(16)上記13、14、15を背景とした米長期金利の急上昇(米10年債利回りが3.33%から3.55%へ急上昇)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値131.21まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間2/4午前2時30分現在)では、131.12前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0875で寄り付いた後、(1)米ウォールストリートジャーナル紙のニック記者によるタカ派的な記事掲載や、(2)米金利上昇に伴うドル買い圧力、(3)欧米株の冴えない動き(リスク回避のドル買い圧力)、(4)ドイツ10ー12月期GDP速報値(結果+0.5%、予想+0.8%、※前年比)の市場予想を下回る結果、(5)ロンドンフィキシングに絡む大規模ユーロ売りフロー、(6)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力が重石となり、翌1/31にかけて、週間安値1.0802まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(7)ユーロ圏第4四半期GDP速報値(結果+1.9%、予想+1.8%、※前年比)の市場予想を上回る結果や、(8)米経済指標(米10ー12月期雇用コスト指数、米1月ADP雇用統計、米1月ISM製造業景況指数など)の市場予想を下回る結果、(9)ユーロ圏1月コアCPI速報値(結果+5.2%、予想+5.1%、前回+5.2%、※前年比)の市場予想を上回る結果、(10)パウエルFRB議長による「ディスインフレプロセスが現在進行中であることは喜ばしい」「引き締め過ぎは望んでいない」とのハト派的な発言、(11)米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.1034(昨年4/4以来、約10ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。

もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(12)ECB理事会のハト派的な声明文(政策金利の50bp引き上げ+次回3月会合での50bp利上げ示唆を行うも、その後については金融政策の道筋を見極めると言及)や、(13)ラガルドECB総裁による「インフレリスクはより均衡した」「3月に50bp利上げした後は経過を注視する」との慎重な発言、(14)上記12、13を背景としたECBによる金融引き締め早期休止観測、(15)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力(ドイツ10年債利回りは2.28%から2.04%へ24bp急低下)、(15)米経済指標(米1月雇用統計および米1月ISM非製造業景況指数)のポジティブサプライズ、(16)米長期金利の反転急上昇が重石となり、本稿執筆時点(日本時間2/4午前2時30分現在)では、1.0827前後まで値を崩す展開となっております。

来週の見通し(2/6−2/10)

<ドル円相場>
ドル円は1/16に記録した約7カ月半ぶり安値127.22をボトムに反発に転じると、週末にかけて、131円台前半まで急伸する荒々しい値動きとなりました。この間、ローソク足が主要レジスタンスポイント(一目均衡表転換線、一目均衡表基準線、21日移動平均線、ボリンジャーミッドバンド)を上抜けした他、遅行線と26日前のローソク足接触を経て強い売りシグナルを示唆する三役逆転も消失するなど、テクニカル的に見て、地合いの「好転」を印象づけるチャート形状となりつつあります。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、これまでドル円の下落要因とされてきた、(1)米FRBによる金融引き締め早期休止観測、(2)日銀による金融緩和の早期修正観測、(3)上記1、2を背景とした日米金利差縮小とそれに伴う円キャリートレード逆流懸念といった3つの材料の内、(1)についてが、週末に発表された米1月雇用統計および米1月ISM非製造業景況指数のポジティブサプライズを受けて、市場コンセンサスが再考されつつあるため(※市場はこれまで3月の25bp利上げで打ち止めと見ていたが、今回の結果を受けて、3月の25bp利上げに加えて、5月の25bp利上げを織り込む動きに転換)、短期的に見て、ドル円上昇リスクが高まってきていると判断できます。

とはいえ、アップサイドより一目均衡表の分厚い雲が垂れ下がってきていることや、ダウ理論の下落トレンドが継続していること等を踏まえれば、ここからどんどん上値を伸ばしていくシナリオも想定しづらく、いったとしても、132円台後半あたりでひとまず落ち着くのではないかと考えられます。一部でドル円のトレンド転換(下落→上昇)を予測する向きも出てきていますが、ダウ理論に則れば、前回高値(1/6高値)134.79を上抜けしない限り、下落トレンド終了とは言えないことから、足元の動きはあくまで下落トレンドの過程で見られる一時的な反発局面と整理することが出来そうです。

また、来週は日銀総裁人事次第で、金融緩和の修正観測が改めて意識される可能性もあります(事前報道によると2/10前後に人事案が国会に提出される見通し)。特に山口元日銀副総裁や翁日本総研理事長などが総裁・副総裁のいずれかに決まる場合には、日銀による金融緩和修正への想起を通じて、海外勢がドル円を一気に売ってくるシナリオも想定されます。以上を踏まえ、当方では超短期的な(来週前半の)ドル円続伸を見込みつつも、週後半にかけては、市場の焦点がドルから円にシフトするにつれ、ドル売り・円買い圧力が戻ってくると予想いたします。尚、来週は日銀人事以外に、ブラックアウト期間明けの米当局者発言(パウエルFRB議長、バーFRB副議長、ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、クックFRB理事、アトランタ連銀ボスティック総裁、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、ウォラーFRB理事など)や、米経済指標(米12月貿易収支、米新規失業保険申請件数、米2月ミシガン大消費者信頼感指数速報値など)に注目が集まります。

来週の予想レンジ(USDJPY):128.00ー133.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/2に記録した約10ヵ月ぶり高値1.1034をトップに反落に転じると、週末にかけて、一時1.0810まで急落しました。この間、主要レジスタンスポイント(一目均衡表転換線、ボリンジャーミッドバンド、21日移動平均線)を下抜けするなど、テクニカル的に見て、地合いの「悪化」を印象付けるチャート形状となりつつあります。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)これまでドル売り材料視されてきた米FRBによる金融引き締め早期休止観測が、週末の米雇用統計や米ISM非製造業景況指数のポジティブサプライズを受けて後退しつつあることや、(2)ECBによる金融引き締め早期休止観測のまさかの台頭(今週のECB理事会およびラガルドECB総裁記者会見が予想外にハト派的となったことで、欧州債利回り低下・ユーロ売りの流れが活発化)、(3)上記1、2を背景とした欧米名目金利差の再拡大観測(これまでは利上げ最終局面に立つ米国と、利上げ長期化が見込まれる欧州との政策コントラストが中長期的なユーロ買い・ドル売りを促してきたが、今週発表された米雇用統計、米ISM非製造業景況指数、ECB理事会を受けて、こうした流れが反転するリスクあり)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では、ユーロドル相場の短期的な見通しを、ブルからベアに変更いたします(※中長期的なユーロ買い・ドル売りトレンドは不変)。尚、来週はドイツ1月消費者物価指数速報値と、欧州当局者発言(オーストリア中銀ホルツマン総裁、シュナーベルECB専務理事、オランダ中銀クノット総裁、スペイン中銀デコス総裁、イタリア中銀ビスコ総裁)に注目が集まりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0600−1.1000

注:ポイント要約は編集部

『米NFPのポジティブサプライズで市場が急変。ドル高トレンド再開か?』

ドル円日足

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