ドル円見通し 米CPIショックによる暴落一服するも下げ渋り程度にとどまる(週報11月第三週)

11月17日午前発表の10月貿易統計速報(通関ベース)では貿易収支が2兆1623億円の赤字となり、赤字は15か月連続で10月としては過去最大の赤字となった。

ドル円見通し 米CPIショックによる暴落一服するも下げ渋り程度にとどまる(週報11月第三週)

米CPIショックによる暴落一服するも下げ渋り程度にとどまる

〇ドル円、11/15の米PPI発表後137.67の安値をつけて以降は、ドル売り一巡でやや持ち直す動き
〇ポジション調整的な下落を継続する可能性はあるが、全般的なドル高感が再燃すれば上昇再開も
〇日銀は金融緩和継続、FRBは減速しても利上げを続けることから、歴史的円安の土台そのものは変わらず
〇先週末にかけてはFRB関係者のタカ派発言相次ぐ、利上げが大きく減速するとの期待に対する戒めか
〇139円以上で推移の内は上昇余地あり、11/14戻り高値140.79を超える場合は142.48手前を試すか
〇11/17夕安値138.86割れから11/15安値137.67試し、底割れからは136円〜135円台後半への下落想定

【概況】

ドル円は11月10日夜の米10月CPI発表をきっかけとしたドル全面安により発表前水準の146円台序盤から11月12日未明安値138.45円まで暴落商状となり、11月15日夜の米PPI発表直後に137.67円の安値を付けるところまで一段安したが、当面のドル売り材料一巡感によりその後はやや持ち直している。
11月10日から16日にかけて大幅低下が続いていた米長期債利回りは17日、18日と連騰で戻しており、11月3日夜から続いていたユーロやポンド等の上昇も一服してドル安が落ち着いた状況にある。我が国の貿易収支の悪化と物価上昇の継続及び米FRBの利上げペースが鈍化する可能性を見せているものの利上げそのものは継続する環境に変わりはない。昨年1月6日安値102.57円から今年10月21日高値151.94円までの大上昇に対する修正局面としてまだポジション調整的な下落を継続する可能性を残しているものの、全般的なドル高感が再燃するようだと大幅下落一巡として上昇再開を試す可能性もあるところと思われる。

【円安の土台は変わらず】

11月17日午前発表の10月貿易統計速報(通関ベース)では貿易収支が2兆1623億円の赤字となり、赤字は15か月連続で10月としては過去最大の赤字となった。
11月18日午前発表の10月全国消費者物価指数は生鮮食品を除いて前年同月比3.6%上昇となり、第2次石油危機時代の1982年2月以来40年8か月ぶりの高水準となった。ガソリン代は政府補助金効果で2.9%上昇にとどまったもののエネルギー価格は15.2%上昇、電気代が20.9%上昇、都市ガス代が26.8%上昇して家計を直撃している。

パンデミックからの景気回復によるサプライチェーン混乱が人手不足とモノ不足によるインフレ進行を招き、ウクライナ戦争とロシア制裁及び中国のゼロコロナ政策による規制発動の繰り返しが混乱に拍車をかけたことで世界規模のインフレが進行していることに加え、主要国が利上げに走る中で低成長により日銀がマイナス金利を維持しているために長期金利差からの円安が助長され、輸入インフレによる貿易収支と経常収支の悪化がさらに円安材料となる悪循環に陥っている状況だが、黒田総裁在任中は金融緩和政策の継続が見込まれ、米FRBも利上げペースを減速しても利上げは続くため、歴史的な円安の土台そのものは変わらないという印象だ。

【週末の米経済指標はまちまち】

11月18日に米不動産業者協会(NAR)が発表した10月の中古住宅販売件数(年換算)は前月比5.9%減の443万戸となり、9か月連続のマイナスで市場予想の438万戸を下回った。前年同月比は28.4%減となったが、住宅ローン金利の急上昇と価格高騰が住宅市況を悪化させており、販売価格中央値は前月比1.1%低下の37.91万ドルとなったが前年同月比では6.6%の値上がりで128か月連続と過去最長を更新している。
米調査会社コンファレンス・ボードによる10月の景気先行指数は114.9で前月比0.8%低下となり、市場予想の0.4%を下回った。8か月連続での低下であり、同社は「恐らくリセッション入りしたことを示唆している」とし、「高インフレと金利上昇による消費者の先行き見通しの悪化、住宅・建設・製造業のさえない見通しが反映されている」としている。

【米地区連銀総裁らの市場に対する戒め的なタカ派発言続く】

11月18日にボストン連銀のコリンズ総裁は、12月のFOMCにおける0.75%利上げの可能性について「依然として検討の対象だ」と述べた。同総裁は「FRBが金融引き締めで行き過ぎるリスクが増大していることを踏まえて利上げ幅についてはあらゆる可能性を検討するべき」としたが、「引き締めの行き過ぎと少なすぎの両方のリスクがある」とし、「FRBの政策金利のピークは従来の想定よりも引き上げられる」と述べた。
11月17日にはセントルイス地区連銀のブラード総裁が「FRBの利上げはまだ十分に景気抑制的とされる水準に達していない」、「一段の利上げが必要」とし、「政策金利を最低でも年5.00〜5.25%へ引き上げる必要がある」と述べたことが米長期債利回り再上昇のきっかけとなったが、最近の米地区連銀総裁らによる発言は、市場が超ハイペースでの利上げが大きく減速するとの楽観的な期待に対して過剰反応を戒めている印象がある。次回FOMCは12月19-20日に開催予定。

【米長期債利回りは週末に連騰】

11月18日の米長期債利回りは総じて上昇した。指標の10年債利回りは前日比0.06%上昇の3.83%となった。10年債利回りは10月21日の4.34%をピークとしていったん3.90%まで下げたところから11月8日に4.24%の戻り高値を付けた後、11月10日の米CPI発表で前日比0.28%の大幅低下となり、11月16日には一時3.79%まで水準を切り下げていたが、11月17日に0.08%上昇となり18日も連騰で持ち直しつつある。
30年債利回りは前日比0.05%上昇の3.93%となったが、10月24日に4.43%のピークを付けていったん下げてから11月8日に4.35%まで戻していたところからCPIショックで11月10日に0.22%の大幅低下となり14日から16日への続落で3.83%まで水準を切り下げていたが、17日の0.04%上昇からの連騰となった。

2年債利回りは0.07%上昇の4.53%で週を終えたが、11月4日に4.88%まで急伸したところから11月10日に0.25%の大幅低下で4.29%としたもののその後は下げ渋り、11月6日から3連騰での反発となっている。
米長期債利回りはパンデミック発生ショックで付けた歴史的低水準を起点として大上昇してきたが、これまでも何度か大きな調整的な低下を入れて一段高を繰り返してきた。11月10日の米CPIショックによる急低下も同様の調整的な低下としてもう一段高へと進んでも不思議ない状況と思われる。
11月18日に米大手金融機関のゴールドマン・サックスは、FRBは2024年まで金融緩和へ転換しないためにドル高のピークはまだ数四半期先になるとの見通しを示した。

【ドル円の週足は「入り首線」、日足は11月11日の陰線レンジを解消できず】

【ドル円の週足は「入り首線」、日足は11月11日の陰線レンジを解消できず】

日足チャートでは11月10日に前日比5.30円の下落幅となる大陰線で下げ、11月11日に前日比2.55円の下落幅となる大陰線の続落となったが、その後は11月15日に安値を切り下げて戻したものの11月11日の陰線レンジ=高値142.48円を超えない範囲にとどまっている。大陰線連続で下げた後だけに、反騰入りへ向かうには二本目の陰線を解消する上昇が前提になり、それができないうちはもう一段安しかねないところだ。
ドル円の歴史的な上昇を支える土台の環境は変わらないが、まだ10月21日高値を当面のピークとした調整局面から抜け出せずもう一段安の余地があるところと思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月17日夕安値138.86円を下値支持線、11月14日夜の戻り高値140.79円を上値抵抗線とする。
(2)139円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上昇余地ありとし、140.79円を超える場合は11月11日午前の戻り高値142.48円手前を試すとみる。142円台序盤以降は反落警戒とし、その後に140.50円を割り込むところからは下げ再開とする。
(3)138.86円割れからは下げ再開を警戒して11月15日夜安値137.67円試しとし、底割れからは136円台序盤、勢い付く場合は135円台後半への下落を想定する。

注:ポイント要約は編集部

【当面の主な予定】

11/21(月)
休場、メキシコ
16:00 (独) 10月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (9月 2.3%、予想 0.6%)
25:30 (米) 財務省2年債入札
26:30 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
27:00 (米) 財務省5年債入札

11/22(火)
OECD経済見通し
06:45 (NZ) 10月 貿易収支 (9月 -16.15億NZドル)
16:00 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
18:00 (欧) 9月 経常収支・季調済 (8月 -263億ユーロ)
24:00 (欧) 11月 消費者信頼感速報値 (10月 -27.6、予想 -26.0)
24:00 (米) 11月 リッチモンド連銀製造業指数 (10月 -10、予想 -8)
25:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、イベント挨拶
27:00 (米) 財務省7年債入札、変動利付2年債入札
28:15 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、パネル討論会
28:45 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

11/23(水)
休場、日本
10:00 (NZ) ニュージーランド中銀(RBNZ) 政策金利 (現行 3.50%、予想 4.25%)
17:30 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
17:30 (独) 11月 製造業PMI速報値 (10月 45.1、予想 45.1)
17:30 (独) 11月 サービス業PMI速報値 (10月 46.5、予想 46.2)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI速報値 (10月 46.4、予想 46.0)
18:00 (欧) 11月 サービス業PMI速報値 (10月 48.6、予想 48.0)
18:30 (英) 11月 製造業PMI速報値 (10月 46.2、予想 45.8)
18:30 (英) 11月 サービス業PMI速報値 (10月 48.8、予想 48.0)

22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 22.5万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 150.7万人、予想 152.0万人)
22:30 (米) 10月 耐久財受注 前月比 (9月 0.4%、予想 0.4%)
22:30 (米) 10月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (9月 -0.5%、予想 0.0%)
23:45 (米) 11月 製造業PMI速報値 (10月 50.4、予想 50.0)
23:45 (米) 11月 サービス業PMI速報値 (10月 47.8、予想 48.0)
24:00 (米) 11月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 54.7、予想 55.1)
24:00 (米) 10月 新築住宅販売件数・年率換算 (9月 60.3万件、予想 57.0万件)
24:00 (米) 10月 新築住宅販売件数 前月比 (9月 -10.9%、予想 -5.5%)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

11/24(木)
休場、米国(感謝祭)
14:00 (日) 9月 景気先行指数CI改定値 (速報 97.4)
18:00 (独) 11月 IFO企業景況指数 (10月 84.3、予想 85.0)
21:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨
22:00 (欧) シュナーベルECB理事、講演
25:00 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演

11/25(金)
米国(ブラックフライデー)で株式・債券市場は短縮取引
08:30 (日) 11月 東京都区部CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (10月 3.4%、予想 3.5%)
08:50 (日) 10月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (9月 2.1%、予想 2.1%)
16:00 (独) 12月 GFK消費者信頼感 (11月 -41.9、予想 -39.6)
16:00 (独) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
16:00 (独) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 1.1%、予想 1.1%)
26:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演

オーダー/ポジション状況

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