『ドル円は安値圏で一進一退。来週は米感謝祭前が勝負所か』
〇今週のドル円、FRB関係者のタカ派発言や米上院の民主党勝利等に週明け140.80まで上昇
〇週央にかけ、ブレイナードFRB副議長のハト派発言、PPIの予想以上の低下に137.68まで急落
〇売り一巡後は米指標の好調、対英ポンドでのドル買い圧力等に140円台前半に持ち直す
〇ユーロドル、週明け1.0271から米PPI後に1.0481まで上昇、週末は1.03台前半に値を崩す
〇ドル円、テクニカルの地合い弱く、三役逆転の成立も秒読み段階
〇ファンダメンタルズも弱い米PPIが米利上げペース鈍化期待を強める等ドル下落材料増える
〇ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想、来週は感謝祭で後半は静寂相場か
〇来週の予想レンジ(USDJPY):138.50ー141.50、(EURUSD):1.0200−1.0500
今週のレビュー(11/14−11/18)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初138.54で寄り付いた後、(1)先週後半に活発化したドル円大暴落(146.61→138.46)の反動や、(2)ウォラーFRB理事による「利上げを停止するまでにはまだ道のりは長い」とのタカ派的な発言、(3)米中間選挙における民主党の上院過半数確定(共和党のレッドウェーブが阻まれたことに伴うドル売り観測後退)、(4)黒田日銀総裁による「現在は金融緩和の継続で経済活動しっかり支えていくべき局面」とのハト派的な発言、(5)本邦個人投資家による日米金融政策格差に着目したキャリートレードの再開観測が支援材料となり、週明け早々に、週間高値140.80まで急伸しました。
しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(6)ブレイナードFRB副議長による「利上げペース減速に移行するのに適切となる時期は近い」「急激な引き締めは経済に波及効果を生み出す」とのハト派的な発言や、(7)米10月生産者物価指数(結果8.0%、予想8.3%、前回8.4%)および、米10月生産者物価コア指数(結果6.7%、予想7.1%、前回7.1%)の市場予想を下回る結果、(8)米金利低下に伴うドル売り圧力が重石となり、週央にかけて、週間安値137.68(8/29以来、約2ヵ月半ぶり安値圏)まで急落しました。
もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、(9)米11月ニューヨーク連銀製造業景況指数(結果4.5、予想▲5.8、前回▲9.1)の良好な結果や、(10)米10月小売売上高(結果+1.3%、予想+1.0%、前回±0.0%)の市場予想を上回る結果、(11)対英ポンドでのドル買い圧力(ハント英財務相が中期財政計画の中で2023年のGDP予測を+1.8%から▲1.4%へ大幅下方修正→英ポンド急落→ドル買い再開)、(12)セントルイス連銀ブラード総裁による「インフレ抑制を目的にさらに金利を引き上げる必要がある」「十分抑制的な政策金利は5ー7%レンジになる可能性がある」とのタカ派的な発言、(13)短期筋のショートカバーが支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間11/19午前2時25分現在)では、140.20前後まで持ち直す動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0366で寄り付いた後、(1)ウォラーFRB理事によるタカ派的な発言や、(2)米民主党の上院過半数確定報道(レッドウェーブ回避に伴うドルショートの巻き戻し)、(3)パネッタECB専務理事による「過度な引き締めは生産能力を破壊しリセッションを深刻化させる恐れがあるため避ける必要性がある」「決定的な根拠がない前提で積極的な引き締めを行うのは見当違い」とのハト派的な発言、(4)欧州債利回り低下に伴うユーロ売り圧力が重石となり、週明け早々に週間安値1.0271まで下落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(5)ブレイナードFRB副議長によるハト派的な発言や(6)ドイツ11月ZEW景況感指数(結果▲36.7、予想▲52.2、前回▲59.2)の力強い結果、(7)米10月生産者物価指数および、米10月生産者物価コア指数の市場予想を下回る結果、(8)上記を背景とした米金利低下とそれに伴うドル売り圧力が支援材料となり、翌11/15にかけて、週間高値1.0481(7/1以来、約4カ月半ぶり高値圏)まで上昇しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、(9)フランス中銀ビルロワドガロー総裁による「今後の利上げはより柔軟かつ恐らく速度を落としたペースになる可能性がある」とのハト派的な発言や、(10)イタリア中銀ビスコ総裁による「制約的な政策を続ける必要があることは明らかだが、より積極的ではないアプローチを取るべきという理由が増えている」とのハト派的な発言、
(11)スペイン中銀デコス総裁による「金利が到達しなければならない具体的な水準は経済データに完全依存」「時間とともに変化する可能性があるため不確実」とのハト派的な発言、(12)英ポンドの大幅下落(ハント英財務相が2023年の英国GDP予測を+1.8%から▲1.4%まで大幅下方修正→英ポンド急落→ユーロ連れ安)、(13)セントルイス連銀ブラード総裁によるタカ派的な発言などが重石となり、本稿執筆時点(日本時間11/19午前2時25分現在)では、1.0335前後まで値を崩す展開となっております。尚、今週はポーランド外務省によるロシアのロケット弾がポーランド国内に着弾したとの正式発表を受けて地政学的リスクが一時的に高まる局面が見られましたが、バイデン米大統領が「ポーランドへの着弾は軌道を見る限りロシアから発射された可能性は低い」と発言したこと等を受けて、ひとまず落ち着きを取り戻す形となりました。
来週の見通し(11/21−11/25)
<ドル円相場>
ドル円は10/21に記録した約32年ぶり高値151.95(1990年7月以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、8/29以来、約2ヵ月半ぶり安値となる137.68まで急落しました。この間、ローソク足が主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や90日移動平均線、一目均衡表雲上限)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転の成立も秒読み段階に入るなど(来週月曜日の終値が140.30を下回れば一目均衡表三役逆転が成立予定)、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米利上げペースの鈍化期待(逆CPIショックに続き、今週は逆PPIショックが発生)や、(2)上記を背景とした米長期金利の低下圧力(日米名目金利差縮小→円キャリートレードの逆流懸念)、
(3)米議会のねじれ発生に伴うドル高政策の緩和観測、(4)黒田日銀総裁によるタカ派転換の思惑(黒田総裁は11/2の衆院財務金融委員会での答弁の中で、「将来的に2%の物価安定目標の実現が見通せる状況になればその前段階でイールドカーブコントロールを柔軟化していくことは一つのオプションとしてあり得る」と発言。自身の任期が残り4カ月半に迫る中、市場では日銀による金融緩和脱却観測が浮上)、(5)米政府・米当局による円買い介入容認観測(米財務省は先週、半期に一度の為替報告書の中で日本の為替操作国認定を見送り)など、ドル売り・円買いを連想させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は、米感謝祭(Thanksgiving Day)の影響で週後半以降の「静寂相場」入りが見込まれる為、トレードチャンスは週前半に集中しそうです。米経済指標(米10月耐久財受注速報値、新規失業保険申請件数、米11月ミシガン大消費者信頼感指数確定値、米FOMC議事要旨)、米当局者発言(クリーブランド連銀メスター総裁、カンザスシティ連銀ジョージ総裁、セントルイス連銀ブラード総裁)共に11/23に予定されている為、来週は11/23(水)が実質的な週の終わりとなりそうです。米経済指標が冴えない結果となる場合や、米当局者よりハト派的な発言が出てくる場合には、ドル円が今週11/15に記録した約2ヵ月半ぶり安値137.68に向けて下げ足を速めるシナリオも想定されるため、米感謝祭前の下値トライに注意が必要でしょう。
来週の予想レンジ(USDJPY):138.50ー141.50
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/28に記録した約20年ぶり安値0.9535(2002年6月以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週前半にかけて、7/1以来、約4カ月半ぶり高値となる1.0481まで上昇しました。この間、ローソク足が主要レジスタンスポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」も点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いの好転を印象付けるチャート形状となっております。目先は最後の砦として意識される200日移動平均線を終値ベースで突破できるか否かに注目が集まります。同水準の突破に成功できれば、約1年半に亘って持続したユーロドルの中長期下落トレンドの終焉が意識されるため、中長期ユーロショート勢のロスカットを巻き込みながら、ユーロドルにもう一段強い上昇圧力が加わりそうです。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)米FRBによる利上げペースの鈍化期待(先週のCPIに続き、今週はPPIも市場予想を大幅に下回る結果)や、(2)上記を背景とした欧米名目金利差の縮小期待(利上げペースの鈍化が織り込まれる米国と、利上げペースの維持が見込まれる欧州との金融政策格差)、(3)欧州圏のエネルギー供給を巡る不安の後退(欧州経済の持ち直し期待)など、ユーロドル相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。
尚、来週は欧州経済イベント(ユーロ圏11月消費者信頼感指数、ユーロ圏11月製造業PMI、ユーロ圏11月サービス業PMI、ドイツ11月IFO景況指数、ECB議事要旨)や、欧州当局者発言(スロベニア中銀バスレ総裁、オーストリア中銀ホルツマン総裁、リトアニア中銀シムカス総裁、ポルトガル中銀センテノ総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、フィンランド中銀レーン総裁、デギンドスECB副総裁、シュナーベルECB理事、エストニア中銀ミュラー総裁など)が目白押しとなりますが、米感謝祭(Thanksgiving Day)の影響で週後半以降は「静寂相場」入りすることが見込まれるため、マーケットの動意は週前半に限られそうです。欧州経済指標が市場予想を上回る場合や、欧州当局者よりタカ派的な発言(ここ最近は欧州当局者より慎重な発言が相次いでいる為、タカ派的な発言に反応し易い相場環境)が出てくる場合には、ユーロドルが200日移動平均線を突破して上値を一気に伸ばすシナリオが想定されるため、来週は米感謝祭前のユーロドル上昇リスクに注意が必要でしょう。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.0200−1.0500
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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