ドル円見通し 11月10日夜からのドル全面安が落ち着き、米長期債利回り反発で140円台回復(22/11/18)

11月17日は日中を139円台でほぼ横ばいの持ち合いとし、夕刻に138.86円までいったん下げたものの買い戻されて18日未明には140.74円まで戻した。

ドル円見通し 11月10日夜からのドル全面安が落ち着き、米長期債利回り反発で140円台回復(22/11/18)

11月10日夜からのドル全面安が落ち着き、米長期債利回り反発で140円台回復

〇ドル円、11/17日中は139円台で横ばい、夕刻138.86まで下げるも買い戻され11/18未明140.74へ戻す
〇当面のドル売り材料消化、米FRB高官らの発言もあり、米長期債利回りの反発により押し上げられた印象
〇昨日発表の米経済指標は強弱まちまち、米地区連銀総裁のタカ派発言相次ぐ
〇米長期債利回りは大幅低下一巡で反発、NYダウは上昇一服感で小幅続落
〇140円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは、142円を目指す上昇を想定する
〇139.70割れからは下げ再開の可能性ありとみて、11/17夕安値138.86試しとする

【概況】

ドル円は11月10日夜の米10月CPI上昇が市場予想を下回ったことをきっかけとした米長期債利回り大幅低下とドル全面安により、146円台序盤の水準だったところから先週末の11月12日未明安値138.45円へ暴落的な下げに見舞われ、15日夜の米10月PPI上昇率も市場予想を下回ったことで137.67円まで安値を切り下げた。しかしその後は当面のドル売り材料を消化したとし、米FRB高官らの利上げペース減速観測への市場の楽観を戒める発言も相次いだことで持ち直しを図っている。

11月17日は日中を139円台でほぼ横ばいの持ち合いとし、夕刻に138.86円までいったん下げたものの買い戻されて18日未明には140.74円まで戻した。米セントルイス連銀総裁のややタカ派的な発言もあり、米長期債利回りが反発したことで押し上げられた印象だが、18日午前序盤も140円台を維持している。
17日午前に発表された日本の10月貿易統計速報(通関ベース)では貿易収支が2兆1623億円の赤字となり、赤字は15か月連続となった。10月としては過去最大の赤字であり、円安とインフレが要因ではあるが、貿易収支と経常収支の悪化によるファンダメンタルズ上の円売り圧力が続いている印象となった。

【米経済指標はまちまち】

11月17日夜の米経済指標は強弱まちまちの内容だった。
米商務省による10月の住宅着工件数(年換算)は前月比4.2%減の142.5万戸で2か月連続のマイナスとなったが市場予想の141万戸を上回った。先行指標となる住宅着工許可件数は前月比2.4%減の152.6万戸で9月の1.4%増から悪化して2020年8月以来の低水準となったが、市場予想の151.2万戸を上回った。
米労働省による新規失業保険申請件数は11月12日までの週間で前週比4000件減の22.2万件となり、市場予想の22.5万件を下回って2週ぶりに改善した。失業保険受給者総数は11月5日までの週間で150.7万人となり前週からは1万3000人増で市場予想の150万人を上回った。
米フィラデルフィア連銀による11月の製造業景況指数はマイナス19.4で10月のマイナス8.7から大幅に低下して市場予想のマイナス6.2を下回った。

【米地区連銀総裁のタカ派発言】

セントルイス地区連銀のブラード総裁は11月17日に、「FRBは今年急速な金融引き締めを行ったもののまだ十分に景気抑制的とされる水準に達していない」、「一段の利上げが必要」と述べた。また「政策金利を最低でも年5.00〜5.25%へ引き上げる必要がある」とし、適切な政策金利水準を算出する「テイラー・ルールにおいて緩い条件を当てはめても十分に景気抑制的とは判断されない」と述べた。この発言を受けて米長期債利回りが上昇してドル高反応が見られた。
またミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も「需給を均衡させるためにどれくらい利上げが必要なのかはオープン(まだ決まっていない)」とし、「需要の鈍化を確認するまでは利上げ完了の時期を見通せない」「インフレは極めて高い水準」と述べた。また10月の米CPIの上昇率が前年同月比7.7%上昇となり、市場予想を下回ったことについても「単月のデータを過信できない」とくぎを刺した。

米FRBは11月1-2日開催のFOMCで12月の利上げペース減速を検討するとしたものの政策金利のピーク水準については上方修正される可能性を指摘した。市場は利上げペースの鈍化への反応を優先させたために11月3日夜までにドル高が一巡してドル安へと基調転換し、11月10日の米CPI上昇率が予想を下回ったことを「逆CPIショック」と名付けてドル安の加速要因としてきたが、こうしたやや楽観的な市場動向を戒めるような発言という印象だった。

【米長期債利回り反発、ダウは上昇一服感】

11月17日の米10年債利回りは前日比0.08%上昇の3.77%となった。11月10日の米CPI発表を受けて前日比0.28%低下となり1日の下げ幅としては2009年3月以来最大となり、15日にも前日比0.09%低下、16日も0.08%低下と続落して一時は3.79%まで下げたが17日は大幅低下一巡で戻した。
30年債利回りは0.04%上昇の3.88%で、11月10日の0.22%低下から16日も0.13%低下したがひとまず大幅低下一巡で持ち直している。
利上げ規模に敏感な2年債利回りは0.10%上昇の4.46%となった。11月10日に前日比0.25%低下してからは下げ渋りが見られて10年債利回りとの逆イールドが拡大していたが、16日に0.01%上昇と下げ止まり、17日は反騰感をもたらす上昇となった。
一方でNYダウは前日比7.51ドル安となり16日の39.09ドル安からの小幅続落、ナスダック総合指数は前日比38.70ポイント安で16日に174.75ポイント安からの続落となった。10月後半からの株式市場の楽観的な反騰も一服感がみられる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

ドル円は11月10日夜からの暴落的な下げが11月15日夜安値137.67円で一服しており、11月17日夕刻安値で138.86円をつけたところからの反発で16日午後高値140.29円を上抜いてきた。11月15日夜安値を頭、12日未明安値138.45円を左肩、17日夕安値を右肩とすれば逆三尊型の形成であり、14日夜と16日午後の戻り高値を結んだ逆三尊完成目安のネックライン=上値抵抗線を突破している。
11月14日夜高値超えには至らないためまだ緩い逆三尊であり、大底形成の可能性もあるものの中勢の下落基調における中間的な逆三尊による二段戻しにとどまる可能性もあるが、ひとまず戻りを試す流れとみて18日の日中から21日夜にかけての間への上昇余地ありとみる。ただし11月17日夕安値割れからは新たな下落期入りとみて23日夕にかけての安値試しを続けやすくなると考える。

60分足の一目均衡表では、11月17日夜の上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンからいったん転落したところから上抜き返している。このため遅行スパン好転中は戻りを試す流れとみるが、先行スパンから再び転落する場合は下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月12日未明から15日夜にかけての一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せていたが、17日夜の上昇で70ポイントまで戻した。このため50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとするが、相場がさらに高値を切り上げる際に指数のピークが切り下がるようだと弱気逆行発生からの下落再開へと進みやすくなると注意し、50ポイント割れからは下げ再開とみて30ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、139.70円を下値支持線、11月18日未明高値140.74円を上値抵抗線とする。
(2)140円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは142円を目指す上昇を想定する。141.50円以上は反落注意とするが、140円台を維持しての推移か直前高値から1.50円を超えない反落にとどまるうちは週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)139.70円割れからは下げ再開の可能性ありとみて17日夕安値138.86円試しとし、安値更新からは15日夜安値137.67円前後を試す下落を想定する。138.86円を割り込んだ後も139.70円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

11/18(金)
アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議(19日まで)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -1.4%、予想 0.3%)
16:00 (英) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 -6.9%、予想 -6.5%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 -1.5%、予想 0.6%)
16:00 (英) 10月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (9月 -6.2%、予想 -6.9%)
17:30 (欧) ラガルドECB総裁、講演
22:00 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
22:15 (英) マン英中銀委員、講演
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数・年率換算 (9月 471万件、予想 440万件)
24:00 (米) 10月 中古住宅販売件数 前月比 (9月 -1.5%、予想 -6.6%)
24:00 (米) 10月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (9月 -0.4%、予想 -0.4%)


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