米PPI発表直後に137.67円へ急落、有事リスク報道で戻すも140円に届かず
〇ドル円、米PPI鈍化で137.67へ急落、16日未明の地政学リスク報道等に139.68まで戻す
〇米10月PPIコア6.7%に低下、事前予想も下回り、利上げペース鈍化観測強まる
〇未明に「ロシアのミサイル、ポーランド領内に着弾」との報道、有事リスクからドル買い強まる
〇一方有事リスク報道は米債買いも誘発、米長期金利低下傾向は変わらずドル円の上値は重い
〇米連銀総裁らは利上げ状態長期化を示唆、ドル円はCPI後の急落局面での落ち着きどころ探る展開か
〇138円割れからは137.67試し、底割れからは136円前後への下落を想定する
〇140円超えからは140.79試し、140.79超えからは強気転換で142円台回復を目指す上昇へ
【概況】
ドル円は11月15日夜の米PPI上昇率が市場予想を下回ったことで一時137.67円へ下落、10月21日高値151.94円以降の安値を更新した。短期的な売り一巡後は戻し、ロシアのミサイルがポーランド領域に着弾したとの報道から有事リスクが意識されてユーロやポンドが反落するなどドル高反応が見られたことに下支えられたが、有事リスクに対する安全資産買いで米国債が買われたことで米長期債利回りが低下傾向のままとなった為に16日未明に139.68円まで戻した後は上値の重い展開となった。
ロシアのミサイルがウクライナとポーランド国境近辺に着弾、ウクライナ側はポーランド領内に着弾したとし、死亡者も出ているとの報道もあり、ウクライナ戦争の泥沼化やロシア制裁長期化による先行き不透明感が拡大した。このため11月3日夜から連騰してきたユーロドルやポンドドルが下落している。
【米10月PPI上昇率は1年ぶり低水準に】
11月15日に米労働省が発表した10月のPPI(生産者物価指数)の上昇率は全体の前月比が0.2%となり、2ヶ月連続のプラスだったが、市場予想の0.4%を下回った。9月は速報の0.4%から0.2%へ下方修正された。前年同月比は8.0%となり、市場予想の8.3%を下回り2021年7月以来の低水準となった。9月は速報の8.5%から8.4%へ下方修正された。
コア指数の伸び率は前月比0.0%で市場予想の0.3%を下回り、9月は速報の0.3%から0.2%へ下方修正された。前年同月比は6.7%で市場予想の7.2%を下回り、9月は速報の7.2%から7.1%へと下方修正された。
11月10日夜に発表された米CPI上昇率が全体の前年同月比で7.7%となり市場予想の8.0%及び9月の8.2%を下回り、コアCPIの前年同月比が6.3%となり市場予想の6.5%及び9月の6.6%を下回ったことで米FRBによる12月利上げがペースダウンすると市場は受け止めてドル全面安となり、ドル円は発表前の146円台序盤から11日早朝に140.19円へ急落し、さらに11日夜も二夜連続の下落で12日未明には138.45円まで大幅続落となり、週間の下落規模は2021年1月以降で最大となった。
11月15日夜のPPIもCPIと同様のドル安反応となったものの、CPIショックでの急落後だったために安値を更新した後は材料消化として買い戻しも見られた。
11月15日夜に発表されたニューヨーク連銀の11月製造業景況指数は4.5となり、10月のマイナス9.1から改善して市場予想のマイナス5.0を上回った。
【FRBの超ハイペースの利上げが減速することへの市場の楽観がやや戒められる】
フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は11月15日に「インフレは依然としてあまりに高すぎる」「金融引き締めをやめる前にインフレの持続的な低下を目の当たりにする必要がある」と述べた。「今後の数か月でこれまでの金融引き締めを踏まえて十分に景気抑制的なスタンスに近づく中で利上げペースを減速する」としたが、「利上げ幅が0.5%に縮小したとしてもなお十分大幅な利上げだ」として米CPIに対する市場の楽観的な反応を若干戒めるような発言を行った。
アトランタ連銀のボスティック総裁も「FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数ではモノの物価上昇率が7月から9月へ鈍化したが、サービス価格上昇の鈍化はまだない」とし、「インフレを抑え込む上で十分に景気抑制的な政策スタンスに達した後もインフレが2%の目標に向かうとの確証を得るまで引き締め的なスタンスを維持する必要がある」とし、「金融引き締めがインフレ抑制へ効果を示すには18か月から2年かかる可能性がある」として利上げ状態の長期化を示唆した。
またFRBのクック理事も「金融政策は切れ味の悪い道具で扱い方には気をつける必要がある」と述べたが「インフレは明らかにあまりに高すぎる」として暫くは引き締めが続かざるを得ないとの認識を示している。
市場は11月のFOMCで12月会合における利上げペースダウンが示唆されたことにやや過剰反応を見せ、11月10日の米CPI発表をきっかけに米長期債利回りが大幅低下してドル円が暴落的な下落に見舞われた状況にあるが、利上げそのものは継続的であり、ドル円としては10月21日までの行き過ぎたドル高円安に対する修正局面として安値の落ち着きどころを探っている状況ではある。これまでのドル高円安を助長してきた土台的な環境はさほど変わらず、米長期債利回りの低下が落ち着くようだとドル円の大幅下落も落ち着くのではないかと思われる。
【米長期債利回りは低下継続、ダウは上げ幅削る】
11月15日の米10年債利回りは前日比0.09%低下の3.77%となった。米CPI発表からの急落で11月10日は前日比0.28%低下して1日の低下幅としては2009年3月以来最大となり、11日の祝日休場明けの11月14日は急低下一服で前日比0.04%上昇と戻したが、15日は米PPIとロシアのミサイル攻撃報道による安全資産買いで再び低下した。30年債利回りは前日比0.07%低下の3.97%となり4%を割り込んだ。11月10日のCPIショック時に前日比0.22%低下となり、14日も0.02%低下していたところから3営業日続落となった。
2年債利回りは前日比0.04%低下の4.35%となったが、11月10日に0.25%低下したところから14日に0.05%上昇と戻したものの再び低下しており11月4日に付けたピークの4.88%以降の最低水準近辺にある。
一方、NYダウは前日比56.22ドル高と上昇したが、一時は400ドルを超える上昇だったところから上げ幅の大半を削った。ナスダック総合指数は162.19ポイント高と上昇したが、高値からは100ポイントを超える低下となった。米FRBによる利上げペースの鈍化や先行き見通しに加え、ロシア・ウクライナ戦争情勢が深刻になることへの懸念も強まっており先行き不透明な状況に入ってきている印象だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
ドル円は11月10日夜からの暴落一服で11月12日未明安値138.45円を目先の底として戻りを試していたが、14日夜高値で140.79円をつけた後は伸びずに15日夜に137.67円まで一段安となった。このため14日夜高値を起点として新たな下落期に入っている状況とみて、19日未明にかけての安値試しを続けやすい状況と考える。強気転換には14日夜高値を上抜き返す反騰が必要であり、140円以下での推移中は一段安余地ありとし、138円割れからは下げ再開に入るとみる。
60分足の一目均衡表では、11月15日夜の一段安で遅行スパンが悪化して先行スパンからも転落しているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンから転落しているうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところから下げ再開とみる。先行スパンを上抜き返す反騰が見られる場合は戻りを試す流れとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は11月10日夜から12日未明への一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行を見せてから60ポイント到達まで戻したが、その後は伸びずに15日夜には30ポイント台序盤へ低下し、50ポイント台回復へ戻ずにいる。50ポイント以下での推移中は20ポイント割れを試す可能性ありと注意するが、50ポイント超えからは戻りをもう一度試す流れとして60ポイント前後への上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月15日夜安値137.67円を下値支持線、11月14日夜高値140.79円を上値抵抗線とする。
(2)140円以下での推移中は一段安警戒とし、138円割れからは15日夜安値137.67円試しとし、底割れからは136円前後への下落を想定する。
(3)140円超えからは14日夜高値140.79円を試すとみるが、140円を超えても14日夜高値に届かずに140円を再び割り込むところからは下げ再開とみる。強気転換は14日夜高値超えからとし、その場合は142円台回復を目指す上昇を想定する。
【当面の主な予定】
11/16(水)
13:30 (日) 9月 第三次産業活動指数 前月比 (8月 0.7%、予想 0.6%)
16:00 (英) 10月 消費者物価指数(CPI) 前月比 (9月 0.5%、予想 1.8%)
16:00 (英) 10月 消費者物価指数(CPI) 前年同月比 (9月 10.1%、予想 10.7%)
16:00 (英) 10月 CPIコア指数 前年同月比 (9月 6.5%、予想 6.4%)
16:00 (英) 10月 小売物価指数(RPI) 前年同月比 (9月 12.6%、予想 13.6%)
22:30 (米) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.0%、予想 1.0%)
22:30 (米) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 0.1%、予想 0.5%)
22:30 (米) 10月 輸入物価指数 前月比 (9月 -1.2%、予想 -0.4%)
22:30 (米) 10月 輸出物価指数 前月比 (9月 -0.8%、予想 -0.3%)
23:15 (米) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 0.4%、予想 0.1%)
23:15 (米) 10月 設備稼働率 (9月 80.3%、予想 80.4%)
23:15 (英) ベイリー英中銀総裁、議会証言
23:50 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
24:00 (米) 11月 NAHB住宅市場指数 (10月 38、予想 36)
24:00 (米) 9月 企業在庫 前月比 (8月 0.8%、予想 0.5%)
24:00 (欧) ラガルドECB総裁、講演
24:00 (欧) パネッタECB理事、講演
24:00 (米) バーFRB副議長、下院委員会証言
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省20年債入札
28:35 (米) ウォラーFRB理事、講演
11/17(木)
06:45 (NZ) 7-9月期 生産者物価指数(PPI) 前期比 (4-6月 2.4%)
08:50 (日) 10月 通関貿易収支・季調前 (9月 -2兆940億円、予想 -1兆6714億円)
08:50 (日) 10月 通関貿易収支・季調済 (9月 -2兆98億円、予想 -1兆9864億円)
09:30 (豪) 10月 新規雇用者数 (9月 0.09万人、予想 1.50万人)
09:30 (豪) 10月 失業率 (9月 3.5%、予想 3.6%)
19:00 (欧) 9月 建設支出 前月比 (8月 -0.6%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価指数(HICP)改定値 前年同月比 (速報 10.7%、予想 10.7%)
19:00 (欧) 10月 HICPコア指数改定値 前年同月比 (速報 5.0%、予想 5.0%)
21:30 (英) ピル英中銀理事、講演
21:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.5万件、予想 22.2万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 149.3万人)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数・年率換算 (9月 143.9万件、予想 141.1万件)
22:30 (米) 10月 建設許可件数・年率換算 (9月 156.4万件、予想 151.5万件)
22:30 (米) 11月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (10月 -8.7、予想 -6.0)
23:15 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
23:30 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
23:40 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
24:40 (米) ジェファーソンFRB理事、パネル討論会
27:45 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、質疑応答
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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