『ECB・BOJを通過し、来週はいよいよ大取のFOMCへ』
〇今週のドル円、週明け149.70まで上昇するも、介入観測、米指標の不冴えに145.11まで下落
〇週末にかけては対ユーロでのドル買い、黒田日銀総裁のハト派発言等に147円台半ばに持ち直す
〇ユーロドル、米長期金利低下等に週後半にかけ1.0094まで上昇するも0.9963前後に値を崩す
〇ECB理事会の声明文やラガルド総裁記者会見からの欧州利上げペース鈍化観測が重石に
〇ドル円、テクニカルの地合い強く、今週後半にかけての下落は一時的ポジション調整か
〇ファンダメンタルズも日米金融政策の方向性の明確化等ドル高円安材料揃う
〇来週は11/1ー11/2の日程で開催される米FOMC要注視、市場の関心は12月の利上げ幅に
〇但し、利上げペース鈍化が示された場合でもドル円下落への波及は一時的か
〇ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):145.00ー150.00、(EURUSD):0.9700−1.0100
今週のレビュー(10/24−10/28)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初147.57で寄り付いた後、先週末金曜日の大暴落(米ウォールストリート・ジャーナル紙のニック記者によるハト派的な発言や、政府・日銀による円買い介入を材料に151.95から146.23まで大暴落)に対する反動(自律反発)や、本邦個人投資家および輸入企業による旺盛な押し目買い圧力が支援材料となり、週明けアジア時間に、週間高値149.70まで上昇しました。しかし、心理的節目150.00をバックに伸び悩むと、政府・日銀による追加介入観測や、短期筋のロスカット(反発局面でロングを構築した短期筋のストップSELL)、米経済指標の冴えない結果(米10月製造業PMI、米10月サービス業PMI、米8月住宅価格指数、米10月コンファレンスボード消費者信頼感指数、米10月リッチモンド連銀製造業景況指数など)、米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りは10/21に記録した4.33%から3.89%へ急低下→米ドル指数急落)が重石となり、週後半にかけて、週間安値145.11(10/7以来、約3週間ぶり安値圏)まで急落する場面も見られました。
もっとも、心理的節目145.00をバックに下げ渋ると、対ユーロでのドル買い圧力(ECB理事会・ラガルド総裁記者会見後のユーロドル下落→ドル円連れ高)や、米第3四半期GDP速報値の力強い結果、日米金利差に着目した本邦個人投資家によるキャリートレード再開(ミセス・ワタナベによるドル円ロング再構築)、日銀金融政策決定会合での現状維持決定(金融緩和政策の継続)、黒田日銀総裁による「今すぐ金利を引き上げるとか、出口が来るとは考えていない」とのハト派的な発言、米10月PCEデフレータ及び米10月PCEコアデフレータの高止まり(市場予想を下回りつつも高水準を維持→米10年債利回りが節目4.00%を再び回復)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間10/29午前4時50分現在)では、147.43前後まで持ち直す動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初0.9867で寄り付いた後、欧州経済指標(ドイツ10月製造業PMI、ユーロ圏10月製造業PMI)の冴えない結果や、ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクが重石となり、週明け欧州時間に、週間安値0.9807まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、米経済指標の冴えない結果や、米金利低下に伴うドル売り圧力、ドイツ10月IFO景況感指数の市場予想を上回る結果、欧米株の堅調推移(リスク選好のドル売り圧力)、英国を巡る先行き不透明感の後退(スナク氏が新首相に就任→英ポンド上昇→ユーロ連れ高)、心理的節目パリティ突破に伴う仕掛け的なユーロ買い・ドル売り圧力、ECB理事会を控えたポジション調整が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0094(9/13以来、約1カ月半ぶり高値圏)まで上昇しました。
もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、注目されたECB理事会にて、75bpの大幅利上げが決定された一方、声明文でこれまで記載されていた「今後数回に渡って利上げを行う(over the next several meetings)」との文言が削除されたことや、ラガルドECB総裁による「量的引き締め(QT)についての議論はしなかった」との発言、それらに端を発した「ECBによる利上げペース鈍化観測再浮上→欧州債利回り急低下→ユーロ売り」の波及経路、米10月PCEコアデフレータの高止まりとそれに伴う米金利の持ち直し、パリティ割れに伴う失望感が重石となり、本稿執筆時点(日本時間10/29午前4時50分現在)では、0.9963前後まで値を崩す動きとなっております。
来週の見通し(10/31−11/4)
<ドル円相場>
ドル円は10/21に記録した約32年ぶり高値151.95(1990年7月以来の高値圏)をトップに反落に転じると、週後半にかけて一時145.11(約3週間ぶり安値圏)まで下げ幅を広げましたが、週末にかけては再び騰勢を取り戻し、結局147円台半ばまで持ち直す力強い動きとなりました。強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転」「強気のパーフェクトオーダー」「ダウ理論の上昇トレンド」が継続する中、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます(先週末から今週後半にかけての大幅下落は、あくまで上昇トレンドの過程で見られる一時的なポジション調整。トレンド転換は発生しておらず、一巡後に再びドル買い・円売り圧力が強まる公算大)。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、日米金融政策の方向性の違い(来週のFOMCで75bpの追加利上げが見込まれる一方、日銀は今週の金融政策決定会合で大規模金融緩和策の現状維持を決定)や、日米名目金利差に着目したミセス・ワタナベを中心としたキャリートレードの活発化、本邦貿易赤字拡大に伴う構造的な円売り圧力、米政府・米当局によるドル高容認スタンスなど、ドル高・円安トレンドの継続を連想させる材料が揃っています。
こうした中、来週は11/1ー11/2の日程で開催される米FOMC(米連邦公開市場委員会)に注目が集まります。市場コンセンサスは75bpの追加利上げとなっていますが、米FOMCメンバに近いとされる米ウォールストリート・ジャーナル紙のニック記者が「11月のFOMCでは次回12月FOMCでの利上げ幅縮小について議論する公算が大きい」と発言したことや、サンフランシスコ連銀デイリー総裁やセントルイス連銀ブラード総裁からもハト派的な発言が相次いだことで、市場の関心は次回12月FOMCでの利上げ幅に移っています。CMEが提供するFedWatchを確認すると、12月FOMCでの50bp利上げ確率が48.1%と、75bp利上げ確率の44.2%を上回ってきている他、足元の米経済指標の急速な悪化を受けて、25bp利上げの可能性も7.7%程度織り込まれる動きとなっています(米利上げペース鈍化観測を背景に、米10年債利回りは10/21に記録した4.33%から一時3.89%まで急低下)。
但し、仮に米利上げペースの鈍化が示された場合でも、米長期金利低下→ドル円下落の波及経路は一時的なものに留まりそうです。事実、今週は米国のみならずカナダ中銀やECBなど世界的に利上げペース鈍化の動きが広がったにも係わらず、ドル円の下げ幅は限定的となりました。こうした動きの背景には、「米金利低下→ドル円下落」の波及経路の一巡後に、「米金利低下→株式市場の持ち直し→リスク選好のクロス円買い→ドル円連れ高」の波及経路が意識されていることが挙げられます。また、世界的に利上げペース鈍化ムードが広がったとしても日本とその他各国との金融政策格差が埋まるわけではないことも構造的な円売りを促しています。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は米FOMC以外にも、米10月ISM製造業景況指数や、米10月ISM非製造業景況指数、米10月雇用統計など、注目イベントが目白押しとなるため、週を通してボラタイルな時間帯が続きそうです(米長期金利や米主要株価指数、本邦通貨当局による円安牽制や介入警戒感に振らされるシナリオを想定。ドル円は底堅さを見せつつも、心理的節目150円到達には相応の時間を要する可能性あり)。
来週の予想レンジ(USDJPY):145.00ー150.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/28に記録した約20年ぶり安値0.9535(2002年6月以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて心理的節目パリティを突破し、一時1.0094(9/13以来、約1カ月半ぶり高値圏)まで上値を伸ばしましたが、ECB理事会及びラガルドECB総裁記者会見のハト派的な結果を受けて、結局パリティを再度割り込む冴えない動きとなりました。ローソク足が一目均衡表雲上限をバックに反落に転じたことや、強い売りシグナルを示唆する弱気のパーフェクトオーダーが点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱い(下落→上昇のトレンド転換は発生していない)と判断できます。また、ファンダメンタルズ的に見ても、欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念)や、それに伴うECBによる利上げペース鈍化の動き(今週開催されたECB理事会は予想以上にハト派的な結果→欧州債利回り低下→ユーロ売り)、ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシアによる汚い爆弾投稿)など、ユーロドルの下落を連想させる材料が揃っています。
こうした中、来週は欧州経済指標(ユーロ圏10月HICP、ユーロ圏7−9月期GDP、ユーロ圏9月失業率、ドイツ9月製造業受注など)や、欧州当局者発言(レーンECB専務理事、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、ラガルドECB総裁、パネッタECB専務理事、デギンドスECB副総裁など)に注目が集まります。ECB理事会を終えた翌週ということもあり、欧州当局者が市場の解釈(ハト派的と捉えたこと)に対して、肯定するのか否定するのかに注目が集まります。当方は肯定すると見ているため、来週はECB当局者による相次ぐハト派発言を通じて、ユーロ売り圧力が強まるシナリオを想定いたします(尚、来週は米FOMCや米雇用統計など米国側の重要イベントも複数予定されているため、週後半にかけては米ドル主導の動きとなりそうです)。
来週の予想レンジ(EURUSD):0.9700−1.0100
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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