来週の為替相場見通し:『ドル高の巻き戻しは一時的。来週は再びドル全面高に転じる恐れ』(9/10朝)

今週のドル円相場(USDJPY)は、週初140.18で寄り付いた後、早々に週間安値140.08まで下落しました。

来週の為替相場見通し:『ドル高の巻き戻しは一時的。来週は再びドル全面高に転じる恐れ』(9/10朝)

『ドル高の巻き戻しは一時的。来週は再びドル全面高に転じる恐れ』

〇今週のドル円、週初の安値140.08から週央にかけ、約24年ぶり高値となる144.99まで急伸
〇直近高値140.80を上抜けたことに伴う仕掛け、好調な米指標、当局の円安容認姿勢等が背景
〇その後週末欧州時間に一時141.51まで急落、142円台半ばで越週
〇急ピッチなドル高・円安に対する反動売り、本邦当局の円安けん制の動きが急落要因に
〇ユーロ、欧州エネルギー危機懸念に週初0.9864まで下落するもECB理事会後1.0112に急伸
〇ドル円、週末にかけての急反落は上昇トレンドの過程で見られる一時的な押し目か
〇ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想、来週は米重要指標の発表多く、ボラタイルな展開予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):140.00ー145.00、(EURUSD):0.9800−1.0200

今週のレビュー(9/5−9/9)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初140.18で寄り付いた後、早々に週間安値140.08まで下落しました。しかし、心理的節目140.00をバックに下げ渋ると、@日米金融政策格差を背景としたドル買い・円売りや、A日本とその他各国との金融政策の方向性の違い(クロス円上昇→ドル円連れ高)、B先週末金曜日に記録した直近高値140.80を上抜けたことに伴う仕掛け的なドル買い・円売り、C米8月ISM非製造業景況指数(結果56.9、予想55.1、前回56.7)の良好な結果、D米金利上昇に伴うドル買い圧力(米10年債利回りは6/16以来となる3.36%へ急上昇)、E本邦通貨当局による期待外れの円安牽制発言(松野官房長官や鈴木財務相から円安牽制が入るも為替介入観測を高めるには至らず。むしろ、松野官房長官からは「水際対策見直し、円安メリットを生かせると想定している」との円安容認発言あり)、

Fリッチモンド連銀バーキン総裁による「インフレが収まりつつあると確信するまで高金利を維持する必要がある」とのタカ派的な発言が支援材料となり、週央にかけて、1998年8月26日以来、約24年ぶり高値となる144.99まで急伸しました。しかし、心理的節目145.00トライに失敗すると、G急ピッチなドル高・円安に対する反動売り(ロング勢のポジション手仕舞い)や、H米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回り3.36%から3.20%へ急低下)、I本邦通貨当局による円安牽制強化のスタンス(財務省・日銀・金融庁による3者会合実施。神田財務官からは「明らかに過度な変動と思われる」「米国を含めて各国当局とは緊密に連携を取っており確りと意思疎通はできている」「あらゆる選択肢を検討対象としている」との発言あり)、

JパウエルFRB議長講演をこなした材料出尽くし感(パウエル氏は「早急な緩和のリスクを歴史が警告」「インフレを抑制することに強くコミット」「FRBは真っすぐに力強く行動する必要がある」とタカ派的な発言を行うも既に9月FOMCでの75bp利上げを概ね織り込んでいたためドル高での反応は限定的)、K黒田日銀総裁による「為替相場が1日に2円も3円も動くのは急激な変化」「為替市場の動向を今後とも注視する」とのやや踏み込んだ円安牽制発言、L週末を控えたポジション調整が重石となり、週末欧州時間にかけて、一時141.51まで急落する場面も見られました。もっとも、一目均衡表転換線に続落を阻まれると、ショートカバー主導で持ち直し、本稿執筆時点(日本時間9/10午前5時00分現在)では、142.65前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初0.9950で寄り付いた後、@ロシア国営ガスプロム社によるノルドストリーム1の無期限停止発表や、A上記@を背景としたユーロ圏のエネルギー危機顕在化への警戒感(欧州ガス価格高騰→欧州圏のインフレ懸念→欧州経済の先行き不透明感)、B8/23に記録した直近安値0.9901を割り込んだことに伴う仕掛け的なユーロ売り・ドル買い、C米金利上昇に伴うドル買い圧力、Dドイツ7月製造業受注(結果▲13.6%、予想▲13.4%、前回▲9.0%、※前年比)の冴えない結果、Eドイツ10年債利回り低下に伴うユーロ売り圧力が重石となり、翌9/6にかけて、2002年12月以来、約19年9ヵ月ぶり安値となる0.9864まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、Fプーチン露大統領による「ノルドストリームはタービンがあれば明日にでも供給再開が可能」との楽観的な発言(天然ガス価格急落→欧州エネルギー危機後退期待)や、G米金利低下に伴うドル売り圧力、HECB理事会での75bp利上げ決定(2022年から2024年までのインフレ見通しをいずれも上方修正。声明文では「今後数回の会合で、さらに金利を引き上げることを想定している」との見解が盛り込まれ、また、ラガルド総裁からも「数回とは今回を含めて 2 回以上5 回以下を想定する」との発言あり)、

I一部通信社による「10月会合でECBは75bpの利上げを排除していない」との観測報道(ラガルド総裁による「次回利上げは75bpである必要はない」「75bpは標準ではない」との慎重発言の火消し)、J独債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、Kスロバキア中銀カジミール総裁による「ユーロ圏のインフレは許容できないほど高い」とのタカ派的な発言、Lオランダ中銀クノット総裁による「0.75%は強力なシグナルだが更にステップが必要」とのタカ派的な発言が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.0112まで急伸しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、引けにかけて反落し、本稿執筆時点(日本時間9/10午前5時00分現在)では、1.0045前後で推移しております。

来週の見通し(9/12−9/16)

<ドル円相場>
ドル円(USDJPY)は8/2に記録した直近安値130.40をボトムに反発に転じると、週央にかけて、約24年ぶり高値となる144.99(1998年8月26日以来の高値圏)まで急伸しました。僅か1ヵ月で14円59銭ものドル高・円安が進行するなど、歴史的大相場が続いております。週末にかけてポジション調整主導の反落が見られたものの、一目均衡表転換線がサポートとして確り機能したことや、強い買いシグナルを示唆する一目均衡表三役好転や強気のパーフェクトオーダー、ダウ理論の上昇トレンドが継続していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます(週末にかけての急反落は上昇トレンドの過程で見られる一時的な押し目。短期間の内に反発に転じるシナリオを想定)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策の方向性の違い(パウエルFRB議長はブラックアウト期間入り最後の講演でタカ派的なスタンスを再強調→市場は9/21FOMCでの75bp利上げ確率を概ね織り込む展開→日米名目金利差拡大→ドル買い・円売り)や、A日本とその他先進国との金融政策格差(今週はRBAによる50bp利上げに続いてBOCおよびECBが各々75bpの利上げを決定→日本とその他各国との金融政策格差拡大→クロス円上昇→ドル円連れ高)、B米政府・米当局によるドル高容認スタンス(今週はブレイナードFRB副議長が「強いドルがインフレ鎮静化に影響する可能性がある」と発言した他、シカゴ連銀エバンズ総裁も「ドル高は投資家のFRBへの信頼を反映」と発言。また前ニューヨーク連銀総裁のダドリー氏も「FEDはインフレ抑制に効果をもたらすドル高を望んでいる」と発言→米政府・米当局はインフレ抑制に繋がるドル高を当面の間黙認する構え)、

C本邦貿易赤字拡大に伴う構造的な円売り圧力など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。リスクシナリオとして、本邦通貨当局による「円買い為替介入」や「金融政策変更」に伴う円ショートの巻き戻しが意識されますが、上記Bを背景にドル売り・円買い介入に踏み切ることは容易では無く、また黒田総裁任期中の政策変更(イールドカーブコントロールの見直し等)も実現性に乏しいことから(焦燥感に駆られた政策変更は市場の餌食となり易いため)、ドル円相場の下値余地は限定的と判断できます。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は既にブラックアウト期間に入っているため、米当局者の発言は予定されていませんが、9/13に予定されている米8月消費者物価指数をはじめ、9/14の米8月生産者物価指数や、9/15の米9月ニューヨーク連銀製造業景況指数、米8月小売売上高、米8月鉱工業生産、米9月フィラデルフィア連銀製造業景況指数、9/16の米9月ミシガン大消費者信頼感指数など、米経済イベントが目白押しとなります。特に米8月消費者物価指数への関心度合が強く、市場予想を上回る場合には、米FRBによる更なるタカ派傾斜を織り込む形で、「米長期金利上昇→米ドル買い」の流れが加速すると考えられます。9/21に予定されている米FOMCや、9/22の日銀金融政策決定会合を終えるまでは、米長期金利の動向や本邦通貨当局の円安牽制の思惑に振らされる神経質で且つボラタイルな相場展開が続きそうです。

来週の予想レンジ(USDJPY):140.00ー145.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場(EURUSD)は、9/7に一時0.9864(2002年12月以来、約19年9ヵ月ぶり安値圏)まで下げ幅を広げましたが、週後半にかけてパリティを回復すると、週末には一時1.01台まで上昇する展開となりました。但し、上方に複数のレジスタンスポイント(一目均衡表基準線やボリンジャーバンド上限、一目均衡表雲下限や90日移動平均線)を控えていることや、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーが成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます(週後半以降の持ち直しは下落トレンドの過程で見られる一時的な反発局面。一巡後の反落リスクに要警戒)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@欧州圏で燻るエネルギー危機顕在化への警戒感(ロシア国営ガスプロム社によるガス供給停止懸念)や、A欧州経済の先行き不透明感(ECBによる積極利上げ姿勢は一時的なユーロ上昇要因になるものの、スタグフレーション懸念が燻る中での利上げは景気への逆風にもなり得ることから一巡後は欧州株の下押しを通じてユーロ下落要因に繋がる公算大)、B欧米名目金利差に着目したユーロ売り・ドル買い圧力、C米政府・米当局によるドル高容認スタンスなど、ユーロドルの下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ安・ドル高トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は9/13に予定されているドイツ9月ZEW景況感調査に注目が集まります。市場予想を下回る場合には、欧州経済の先行き不透明感を通じて、ユーロドルに再び強い下押し圧力が加わるものと考えられます。ECBによる利上げを通じたユーロ上昇の効果は上記Aの理由で長期化が難しく(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締めはユーロ圏景気への強い逆風)、来週は一巡後の下落リスクに警戒が必要でしょう(パリティを再び割れ込むシナリオを想定)。

来週の予想レンジ(EURUSD):0.9800−1.0200

注:ポイント要約は編集部

『ドル高の巻き戻しは一時的。来週は再びドル全面高に転じる恐れ』

ドル円日足

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