ドル円見通し 145円手前からの調整局面だが、143円台序盤で買われて確り
〇ドル円、高値警戒感と米長期債利回り低下から調整局面入り、9/8朝に143.66、夜には143.30まで下落
〇その後144.42まで戻し、9/9早朝にかけ144円挟んだ揉み合い、米長期債利回りの再上昇がドル円支える
〇ECBが0.75%の大幅利上げ決定、ユーロ導入以降最大の利上げ幅、今後もさらなる利上げの見通し
〇米FRB議長、9月FOMCでの具体的な利上げ幅について言及しなかったものの、0.75%利上げが優勢
〇米長期債利回り総じて上昇、ダウ・ナスダックともに2連騰
〇9/8夜安値143.30割れからは、142円台後半(143.00から142.50)への下落を想定する
〇9/7夜高値144.98超えからは、146円台への上昇を想定する
【概況】
ドル円は米国の大幅利上げ継続姿勢と主要国の利上げが続く中で9月7日夜に144.98円をつけて2021年1月6日底102.57円以降の高値を更新したが、6日午前安値140.23円から4.75円の急上昇となったことに対する高値警戒感と9月6日に大幅上昇した米長期債利回りが低下したことから上昇一服となり調整局面入りしている。
9月8日朝に143.66円まで下げ、8日夜には143.30円まで安値を切り下げたが、その後に144.42円まで戻し、9日早朝にかけては144円を挟んだ揉み合いで確りしている。9月8日夜はECBの大幅利上げ決定によりユーロが上昇したが、米新規失業保険申請件数が4週連続で改善したことやシカゴ連銀総裁とパウエルFRB議長が大幅利上げへの積極姿勢を示したために米長期債利回りが再び上昇してドル円を支えた。
米労働省が発表した新規失業保険申請は9月3日までの週間で前週比6000件減の22万2000件となり4週連続で改善した。
本邦財務省は9月8日に政府・日銀・財務省の3者会合を開催、その後に財務官が「市場動向や急速な円安を高い緊張感もって注視する」と述べたが従来からのトーンと変わらず口先介入の効果は乏しい。
【ECBが0.75%の大幅利上げを決定】
欧州中銀(ECB)は9月8日の定例理事会で政策金利を0.75%引き上げた。7月に続いて2会合連続の利上げだが、0.75%利上げは1999年1月にユーロが導入されて以降で最大の利上げ幅となった。中銀への預入金利は現行の0.0%から0.75%に、政策金利は0.5%から1.25%へ引き上げられたが、ECB声明では「今後複数回の会合でさらなる利上げを行う」とした。
ECBは今後の見通しについて2022年の消費者物価上昇率を8.1%として6月時点の6.8%から上方修正し、2023年を5.5%として6月時点の3.5%から大幅に引き上げた。一方で2022年のGDPを3.1%として6月時点の2.8%から上方修正したが2023年は6月時点の2.1%から0.9%へ下方修正した。
今週は9月6日に豪中銀が政策金利を1.85%から2.35%へ0.50%引き上げ、9月7日にはカナダ中銀が2.50%から3.25%へ0.75%引き上げており、主要国の大幅利上げと米国の大幅利上げ継続見通しにより金融緩和から抜け出せない日銀とのスタンスの差が一層顕著となり円安感をエスカレートさせる状況となってきている。
【9月FOMCでは0.75%利上げの可能性が優勢】
パウエル米FRB議長は9月8日の討論会において「FRBはインフレ抑制に強くコミットしている」とし、9月FOMCでの具体的な利上げ幅については言及しなかったもののインフレ抑制への強い決意を改めて示した。議長は今年6月の議会証言で「景気よりも物価抑制」と述べて多少の景気後退が発生することへのリスクよりもインフレを抑制することが最重要との立場を強く示し、8月26日のジャクソンホール講演でもこのスタンスを強調している。
9月8日にシカゴ連銀のエバンス総裁は「高すぎるインフレを抑えることが最優先の課題」、「9月FOMCでは0.75%の追加利上げが十分にあり得る」と述べた。
イエレン米財務長官はバイデン大統領の政策により米経済は新型コロナウイルス感染拡大前よりも強くなったとした上でバイデン政権は物価対応を最優先の経済課題と認識していると述べ、FRBの大幅利上げ姿勢を側面から支持している。
ブレイナードFRB副議長は7日に「米国のインフレ率はあまりにも高い」「物価安定回復を最優先」とし、クリーブランド連銀のメスター総裁は「来年初めまでに政策金利を4%を上回る水準へ引き上げることが必要」と述べており、3会合連続での0.75%利上げの可能性が高まっている印象だ。
米ゴールドマン・サックスとバンカメはともに9月の利上げについては従来の0.50%利上げ予想から0.75%利上げ予想へと修正し、11月会合についても従来の0.25%利上げから0.50%利上げへとし、年末時点で3.75-4.00%になるとの見通しを示した。
【米長期債利回り総じて上昇、ダウ・ナスダックともに連騰】
9月8日の米長期債利回りは総じて上昇、10年債利回りは米国市場連休明けの9月6日に前週末比0.16%上昇して3.35%をつけたところから7日は反動で0.08%低下の3.27%となったが、8日は3.22%までさらに下げてから切り返して前日比0.05%上昇の3.32%とした。30年債利回りも0.06%上昇の3.48%で6日につけた2014年5月以来の高値水準となった3.51%へ迫っている。2年債利回りは0.07%上昇の3.51%とし、9月1日につけた15年ぶり高値水準の3.55%へ再び迫りつつある。
一方で8日のNYダウは前日比193.24ドル高と上昇して7日の435.98ドルからの連騰となった。ナスダック総合指数も70.23ポイント高と上昇して7日の246.99ポイント高からの連騰となった。ともに8月後半からの大幅下落一服でやや買い戻されているところだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、9月6日午前安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして9月7日夜から9日夜にかけての間への上昇を想定していたが、9月7日夜に145円に迫ってから1円を超える反落となったために8日朝時点では7日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして9日午前から13日午前にかけての間への下落を想定した。また調整安を短縮して上昇再開に入る可能性もあるとし、9月7日夜高値超えからは新たな強気サイクル入りとした。
9月8日夜へ安値を切り下げてからやや戻しているところだが、引き続き9月7日夜高値を超えないうちは一段安余地ありとし、7日夜高値超えからは強気サイクル入りとして12日夜から14日夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では9月7日夜高値からの調整入りで遅行スパンは悪化したが、先行スパンの上限が下支えとなっている。144円を挟んで揉み合いの様相でもあり遅行スパンは実線と交錯を繰り返しやすいところのため、9月7日夜高値超えからは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、8日夜安値割れからは遅行スパン悪化中の安値試し優先として先行スパン下限試しとし、先行スパンから転落する場合は下げ足が早まる可能性に注意する。
60分足の相対力指数は9月8日夜に40ポイント台へ低下した後は50ポイント台へ戻している。60ポイント以下での推移中はまだ30ポイント前後への下落余地ありとするが、60ポイント超えからは上昇再開の可能性ありとみて70ポイント台回復を目指す上昇を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月8日夜安値143.30円を下値支持線、9月7日夜高値144.98円を上値抵抗線とする。
(2)143.30円割れからは142円台後半(143.00円から142.50円)への下落を想定する。142.50円以下は反騰注意とするが、144円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)144.98円超えからは146円台への上昇を想定する。146円到達では売られやすいと注意するが、7日夜高値を超えた後も144.50円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
9/9(金)
EUエネルギー担当相、臨時会合
10:30 (中) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 2.7%、予想 2.8%)
10:30 (中) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 4.2%、予想 3.2%)
23:00 (米) 7月 卸売売上高 前月比 (6月 1.8%、予想 0.8%)
23:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、開会挨拶
25:00 (米) ウォラーFRB理事、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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