ドル円見通し 主要国の利上げに対する日銀の取り残され感強まり143円台へ急伸
〇ドル円、米長期債利回り大幅上昇受け6日午前141円台到達、深夜143.07まで急伸
〇米8月ISMサービス業景況指数が予想上回り、FRBの大幅利上げ見込み強まる
〇米10年債利回りは前日比0.16%上昇の3.35%、NYダウは続落で前日比173.14ドル安
〇欧米主要中銀が大幅利上げの一方、日銀は金融緩和継続、全般的なドル高感と円の弱さ際立つ
〇9月米FOMCでは0.75%利上げ可能性が優勢、豪中銀は0.5%利上げを決定
〇142円以上での推移中は144円台への上昇を想定する
〇141.70割れからは急騰後の修正安として、141円台前半への下落を想定する
【概況】
ドル円は9月2日の米雇用統計後につけた高値140.79円以降は上昇一服となり、140円割れは買い戻されて確りしていたが、6日午前に140.23円までやや下げたところでも底固さを見せ、米国市場休場明けの米長期債利回りが上昇で開始したことから午後に9月2日高値を超えて141円台に到達すると高値更新によるドル買い円売りの連鎖となり、6日夜には142円台に乗せ、さらに深夜には143円に到達する急伸となった。深夜に143.07円をつけてからいったん143円を割り込んだものの7日午前序盤には143.50円台をつけている。
6日夜は米8月のISMサービス業景況指数が56.9となり7月の56.7及び市場予想の55.1を上回ったことが米FRBの大幅利上げ決定に寄与するとして米長期債利回りが大幅上昇してユーロドルが昨年来安値を更新する一段安となるなどドルストレートでのドル高感が強まったが、クロス円全般が急伸して円安感がドル高感以上に強まったことで、ドル円は日米金利差によるドル高円安とクロス円の大上昇による円安の両面から押し上げられる展開となっている。
既に140円台到達により1998年以来24年ぶりの高値水準に来ているが、9月6日は当日の安値から高値まで3円近い上昇で終値ベースの前日比は2.20円の上昇であり、1日の上昇規模としては6月17日に前日比2.77円の上昇となる日足大陽線をつけて以来の勢いとなっており、1998年8月11日天井の147.63円も射程圏に迫ってきた印象だ。仮に1998年8月天井を超える場合、月足チャートにおける高値目途は1990年4月天井の160.36円まで見当たらなくなる。
【米長期債利回りは大幅上昇、ダウは続落】
9月6日の米長期債利回りは総じて上昇した。指標の米10年債利回りは前日比0.16%上昇の3.35%となり、8月2日安値2.52%以降の高値を更新して6月14日につけた昨年来最高値3.50%へ迫ってきている。
30年債利回りは0.16%上昇の3.51%となり8月1日の2.92%以降の高値を更新して6月14日の3.49%を超えて2014年5月以来の高水準に達した。
2年債利回りは0.12%上昇の3.51%となり、9月1日につけた15年ぶり高値3.55%に迫っている。
一方でNYダウは先週末からの続落で前日比173.14ドル安となり8月16日高値以降の安値を更新した。8月26日のパウエル米FRB議長講演から大幅利上げ姿勢は継続すると受け止められて当日を前日比1008.38ドル安の大幅下落としてから8月31日まで4営業日続落し、9月1日に下げ一服で戻したものの9月2日の米雇用統計でも大幅利上げ姿勢は変わらないとして失速したところから休場を挟んでの続落に終わっている。ナスダック総合指数は85.95ポイント安となり8月25日からの続落が7営業日に伸びている。
【主要国の大幅利上げと日銀の金融緩和継続姿勢のギャップ】
米FRBは9月20-21日の連邦公開市場委員会(FOMC)において0.50%ないしは0.75%の大幅利上げを決定すると予想されているが、現状では0.75%利上げの可能性が優勢のようだ。一方で量的金融引き締めも継続しており、FRBは今月から資産圧縮ペースを月額950億ドルに拡大している。
米FRBを先導役として主要国も大幅利上げで後を追っている。9月6日は豪中銀理事会が0.50%の利上げを決定したが、予想通りとして発表後豪ドルは失速した。9月7日にはカナダ中銀が現行の2.50%から3.25%へと0.75%の利上げを行うと予想され、9月8日のECB理事会では現行の0.50%から1.25%へと0.75%の利上げが予想されている。来週は9月15日に英中銀MPCがあり0.50%の利上げが予想されるがマンMPC委員は0.75%利上げを主張している。
主要国の利上げが継続する中で日銀が金融緩和政策から抜け出せず取り残されていることで全般的なドル高感に加えて円の弱さも一層際立ってきている状況といえる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月30日夜高値以降の持ち合いを上放れたために9月1日午前時点では持ち合い後半の8月31日夕安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして9月2日夜から6日夜にかけての間への上昇を想定した。
9月2日夜高値の後は新たな高値更新へ進めずにいたため、6日午前時点では9月2日夜高値を直近のサイクルトップとして高値更新からは新たな強気サイクル入りとしたが、6日の一段高により9月6日午前安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクル入りとなった。高値形成期は7日夜から9日夜にかけての間とし、弱気転換は6日午前安値からの急騰幅に対して半値近くを削る急落が必要と思われる。
60分足の一目均衡表では9月6日の急伸で遅行スパンが好転、先行スパンの上限に到達したところから大きく上方へ乖離しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。先行スパンを上回っての推移が続きやすい状況のため、遅行スパンが一時的に悪化してもその後に好転するところからは上昇再開とみる。
60分足の相対力指数は9月6日深夜の急騰時に90ポイントに到達し、その後は高値を更新してもやや低下しているので弱気逆行の可能性があるが、70ポイント前後を支持線として持ち直せば再び90ポイントを目指すとみる。小反落後の高値更新に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行続く場合は弱気転換注意とし、60ポイント割れからはいったん下げに入る可能性を優先する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、142.00を下値支持線、144.00円を上値抵抗線とする。
(2)142円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは144円台への上昇を想定する。144.50円以上は反落注意とするが、勢い付く場合は145円に迫る可能性もあるとみる。
(3)141.70円割れからは急騰後の修正安として141円台前半への下落を想定するが、141.35円以下は買い戻しから反騰入りしやすいとみる。
【当面の主な予定】
9/7(水)
未 定 (中) 8月 貿易収支・米ドル建て (7月 1012.6億ドル、予想 927.0億ドル)
未 定 (中) 8月 貿易収支・人民元建て (7月 6826.9億元、予想 6618.5億元)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前期比 (1-3月 0.8%、予想 1.0%)
10:30 (豪) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 3.3%、予想 3.5%)
14:00 (日) 7月 景気先行指数速報値 (6月 100.9、予想 100.2)
14:00 (日) 7月 景気一致指数速報値 (6月 98.6、予想 100.0)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 0.4%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -0.5%、予想 -2.1%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP確定値 前期比 (改定値 0.6%、予想 0.6%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP確定値 前年同期比 (改定値 3.9%、予想 3.9%)
21:30 (米) 7月 貿易収支 (6月 -796億ドル、予想 -703億ドル)
23:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
24:55 (米) ブレイナードFRB副議長、講演
27:00 (米) バーFRB副議長、講演
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
9/8(木)
07:45 (NZ) 4-6月期 製造業売上高 前期比 (1-3月 1.2%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.5%、予想 0.7%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP改定値 年率換算 (速報 2.2%、予想 2.9%)
08:50 (日) 7月 経常収支・季調前 (6月 -1324億円、予想 8009億円)
08:50 (日) 7月 経常収支・季調済 (6月 8383億円、予想 199億円)
08:50 (日) 7月 貿易収支・国際収支ベース (6月 -1兆1140億円、予想 -1兆1374億円)
10:30 (豪) 7月 貿易収支 (6月 176.70億豪ドル、予想 145.00億豪ドル)
12:05 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー現状判断 (7月 43.8、予想 43.8)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー先行判断 (7月 42.8、予想 44.3)
21:15 (欧) ECB(欧州中銀)、政策金利 (現行 0.50%、予想 1.25%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.2万件、予想 24.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 143.8万人、予想 143.8万人)
21:45 (欧) ラガルドECB総裁、記者会見
22:10 (米) パウエル米FRB議長、講演
28:00 (米) 7月 消費者信用残高 前月比 (6月 401.5億ドル、予想 325.0億ドル)
24:00 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
25:00 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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