ドル円見通し 米長期債利回り低下で円高収まらず(22/8/2)

7月14日高値から8月2日朝時点の安値までの下げ幅は7.93円に拡大、2021年1月6日底102.57円以降では最大の下げとなっている。

ドル円見通し 米長期債利回り低下で円高収まらず(22/8/2)

ドル円見通し 米長期債利回り低下で円高収まらず

〇ドル円、8/2朝131.46まで続落、7/14高値からの下げ幅7.93に拡大
〇米7月製造業景況指数52.8で6月から悪化、米GDP速報値は2四半期連続マイナス、景気減速感強まる
〇10年債利回り2.58%へ低下、2年債との逆イールド継続、NYダウは4日ぶり反落
〇利上げペースの鈍化観測背景に、長期債利回り低下とドル全面安の状況
〇今週はISMサービス業景況指数、貿易収支、新規失業保険申請件数、米雇用統計を発表予定
〇132.50以下での推移中は一段安警戒、131円割れをスルーして続落の場合130円試しへ向かうとみる
〇130円台序盤以下は反騰注意、132円以下での推移中は8/3日中も安値試しへ向かいやすいとみる

ドル円は8月1日午前に132.05円へ下落して7月29日午後安値132.49円を割り込み7月14日夕高値139.39円以降の安値を更新、夜には132円を割り込み、8月2日朝には131.46円まで続落した。
7月14日高値から8月2日朝時点の安値までの下げ幅は7.93円に拡大、2021年1月6日底102.57円以降では最大の下げとなっているが、これまでの調整安による下落規模は今年5月9日から5月24日への4.99円や昨年3月31日から4月23日への3.50円等であり、今回はそれらのレベルをはるかに超えている。
今後の米FOMCによる利上げペースが鈍化するとして米長期債利回りが低下に転じ、日米金利差拡大を主要因として歴史的な大上昇を継続してきたドル円にとっては強気の梯子を外された格好であり、今週末の米雇用統計を前後して落ち着き切り返せるのか、さらに安値試しを続けるのか試される状況と思われる。

【米ISM製造業指数は2年ぶり低水準】

8月1日夜にサプライ管理協会(ISM)が発表した7月の米製造業景況指数は52.8となり6月の53.0から悪化、市場予想の552.0を上回ったものの2020年6月以来2年1か月振りの低水準となった。好不況の分岐点である50を上回っているものの、先週の主要米経済指標などの悪化も含めて景気減速感が強まってきた印象だ。
ISMの内訳では新規受注が2か月連続で50を割り込み6月の49.2から48.0へ悪化、雇用は6月の47.3から49.9へ改善したが3か月連続で50を下回った。また価格指数は6月の78.5から60.0へ大幅低下した。
S&Pグローバルが発表した7月の米製造業PMI確報値も速報の52.3から52.2へとわずかに下方修正されて6月の52.7から悪化した。

7月28日に発表された4-6月期の米GDP速報値がマイナス0.9%となり1-3月期のマイナス1.6%から2四半期連続でマイナスとなったことでテクニカルなリセッション入りの可能性が高まり、住宅関連統計の悪化なども含めて金融引き締め強化による景気後退への懸念が強まり、米FOMCによる利上げペースも鈍化するのではないかとの観測が強まったことが米長期債利回り低下とドル全面安を招いている。8月3日には米ISMサービス業景況指数確報値、8月4日に貿易収支と週間新規失業保険申請件数、8月5日に7月米雇用統計の発表と続くが、景気減速感が強まるようだと米長期債利回り低下と同調したドル円の下落も続きやすいところだ。

【米10年債利回りは6月14日以降の最低を更新、逆イールドも続く】

8月1日の米10年債利回りは先週末比0.07%低下の2.58%、30年債利回りは同0.09%低下の2.92%となり3%を割り込み、2年債利回りも同0.01%低下の2.88%となった。
ISM製造業景況指数の悪化に加え、建設支出も低調で景気鈍化懸念となりNYダウが4日ぶりに反落、ペロシ米下院議長が台湾を訪問するとの報道が米中関係悪化を助長するとして地政学的リスクも意識されて米国債への安全資産買いが利回り低下を招いた印象だ。
リセッション入りのサインとされる2年債と10年債利回りの逆イールドも継続している。今後も利上げが続くことを踏まえて2年債利回りの低下は限定的だが、10年債利回りは6月14日の3.50%をピークに二段下げ型の低下で4月7日以来の低水準となった。

一方で8月1日のNYダウは前日比46.73ドル安と4日ぶりに反落した。先週末までは3連騰で千ドル強の上昇だったために利食い売り優勢となったことや景気後退懸念、原油の急落なども響いたようだ。ナスダック総合指数も4日ぶり反落で先週末比21.71ポイント安と下落した。
株安債券高・利回り低下が続けばドル円としては昨年来の大上昇要因が後退することを意味し、1年半の大上昇で140円手前へ到達したことに対する高値警戒感から利益確定売りが急がれて売りの連鎖反応を招いている印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、7月22日夜安値をサイクルボトムとした上昇が28日未明高値で一巡して弱気サイクル入りしたとして7月28日午前から29日深夜にかけての間への下落を想定していた。
7月29日午後安値で132円台半ばへ下落したところから29日夜高値まで2円を超える反騰となり、その後に底割れへ進んだため、7月22日夜安値から5日目となる29日午後安値で直近のサイクルボトムをつけたものの29日夜高値で直近のサイクルトップをつけて既に底割れから新たな弱気サイクル入りしたと思われる。次のボトム形成期は8月3日午後から5日午後にかけての間と想定されるのでまだ一段安余地ありとするが、週末の米雇用統計前にはいったん戻しを入れる可能性もあると考える。

60分足の一目均衡表では7月28日未明高値からの急落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したが、その後も両スパンそろっての悪化が続いているので遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。先行スパンが分厚い戻り抵抗帯となりやすいため、先行スパンからの転落中は一時的に遅行スパンが好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は7月28日午後安値から一段安した際に指数のボトムは切り上がっているものの50ポイント以下での推移が続いているので下落余地ありとし、40ポイント割れからは30ポイント割れを試す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、131.00円を下値支持線、132.50円を上値抵抗線とする。
(2)132.50円前後では戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)132.50円以下での推移中は一段安警戒とみる。131円到達では買い戻しも入りやすいとみるが、131円割れをスルーして続落の場合は130円試しへ向かうとみる。130円台序盤以下は反騰注意とするが、132円以下での推移が続くうちは8月3日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/2(火)
10:30 (豪) 6月 住宅建設許可件数 前月比 (5月 9.9%、予想 -5.0%)
13:30 (豪) 豪中銀(RBA)、政策金利 (現行 1.35%、予想 1.85%)
15:00 (英) 7月 ネーションワイド住宅価格 前月比 (6月 0.3%、予想 0.5%)
23:00 (米) 6月 雇用動態調査(JOLT)
23:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、メディア向け朝食会

8/3(水)
英中銀(BOE)金融政策委員会初日
07:45 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
07:45 (NZ) 4-6月期 就業者数 前期比 (1-3月 0.1%、予想 0.4%)
07:45 (NZ) 4-6月期 就業者数 前年同期比 (1-3月 2.9%、予想 2.3%)
07:45 (NZ) 4-6月期 失業率 (1-3月 3.2%、予想 3.1%)
10:45 (中) 7月 財新サービス業PMI (6月 54.5、予想 54.0)

15:00 (独) 6月 貿易収支 (5月 -10億ユーロ、予想 2億ユーロ)
16:55 (独) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 49.2、予想 49.2)
17:00 (欧) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 50.6 予想 50.6)
17:30 (英) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 53.3 予想 53.3)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数(PPI) 前月比 (5月 0.7%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数(PPI) 前年同月比 (5月 36.3%、予想 35.7%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.2%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 0.2%、予想 -1.6%)
22:45 (米) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 47.0、予想 47.0)
23:00 (米) 7月 ISMサービス業景況指数 (6月 55.3、予想 53.5)
23:00 (米) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 1.6%、予想 1.2%)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計

注:ポイント要約は編集部

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