来週の為替相場見通し:『来週は米FOMC後のドル全面高に要警戒』(7/23朝)

今週は米FOMCを控えたポジション調整も加わり、一時135.57まで値を崩す展開となりました。

来週の為替相場見通し:『来週は米FOMC後のドル全面高に要警戒』(7/23朝)

『来週は米FOMC後のドル全面高に要警戒』

〇今週のドル円、日銀政策決定会合後に138.88まで急伸後、週末にかけ135.57まで急落
〇米指標の不冴え、米10年債利回りの急低下等が重石に
〇ユーロドルECBの予想外の0.5%利上げ等で週後半1.0279まで急伸、週末1.02近辺に反落
〇ドル円テクニカルには下方に複数のサポート控え、買いサインも継続、地合いは崩れていないと判断
〇ファンダメンタルズもドル円相場の上昇を連想させる材料揃う
〇ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想
〇米FOMC後ドル円が持ち直し、心理的節目140.00に向かって上値を伸ばすシナリオに注意
〇来週の予想レンジ(USDJPY):134.75ー139.75、(EURUSD):0.9900−1.0400

今週のレビュー(7/18−7/22)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初138.54で寄り付いた後、@米7月ミシガン大学消費者信頼感指数(7/15)の期待インフレ鈍化や、Aウォールストリート・ジャーナル紙のFEDウォッチャーであるニック・ティミラオス記者による「7月FOMCは100bpではなく75bpの利上げになる」との慎重な発言、B上記@Aを背景とした米FRBによる7月100bp利上げ観測の後退(米金利低下→米ドル売り)、C対ユーロでのドル売り圧力(ユーロドルの大規模ショートカバー)、D米7月住宅市場指数の冴えない結果が重石となり、翌7/19にかけて、一時137.38まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、E株式市場の堅調推移(市場心理改善→リスク選好の円売り圧力)や、F日銀金融政策決定会合のハト派的な内容(現行政策の現状維持が決定されると共に、展望レポートでCPI見通しの上方修正とGDP見通しの下方修正を公表)、G黒田日銀総裁による「金利を引き上げるつもりは全くない」「プラスマイナス0.25%程度としているイールドカーブコントロールのレンジを変更するつもりは全くない」「必要あれば躊躇なく追加緩和を講じる」とのハト派的な発言、H日米金融政策の方向性の違いが支援材料となり、週後半にかけて、週間高値138.88まで急伸しました。

もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、I米新規失業保険申請件数(結果25.1万件、予想23.9万件、前回24.4万件)の冴えない結果や、J米7月フィラデルフィア連銀景況指数(結果▲12.3、予想1.7、前回▲3.3)の冴えない結果、K米6月景気先行指数(結果▲0.8%、予想▲0.5%、前回▲0.6%)の冴えない結果、Lバイデン米大統領のコロナ陽性報道、M米7月総合PMI速報値(結果47.5、予想52.4、前回52.3)の冴えない結果、N米金利低下に伴うドル売り圧力(米10年債利回りは5/27以来となる2.72%へ急低下)が重石となり、週末にかけて、週間安値135.57まで急落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間7/23午前3時15分現在)では、136.20前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0085で寄り付いた後、早々に週間安値1.0078まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、@米FOMC(7/26ー7/27)を控えたポジション調整(100bpの利上げ観測後退→ドル全面安)や、Aイタリアを巡る政局不透明感の後退(ドラギ首相の辞意表明に対してマッタレッラ大統領は辞表受理を拒否)、B短期筋の大型ショートカバー、C一部通信社による「ロシアと欧州を結ぶ主要ガスパイプライン『ノルドストリーム1』が7/21に供給量を減らして再開する」との観測報道、DECB理事会での市場予想を上回る50bpの利上げ実施(マイナス金利からの脱却を決定すると共に、分断化阻止を目的とした債券買い入れ措置であるTPI=Transmission Protection Instrumentについて発表)、E上記Dを背景とした欧州債利回りの急上昇、F米経済指標の冴えない結果が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0279(7/5以来の高値圏)まで急伸しました。

もっとも、買い一巡後に伸び悩むと(一目均衡表基準線や21日移動平均線に続伸を阻まれると)、GラガルドECB総裁による「最終的な金利水準は変えない」との慎重な発言(市場の過度な織り込みを牽制)や、H短期ロング勢のロスカット、Iドイツやフランスの7月PMI速報値の冴えない結果、Jドイツ10年債利回りの大幅低下が重石となり、週末にかけて、一時1.0131まで反落する場面も見られました。その後は、K米7月総合PMI速報値の冴えない結果や、L米金利低下に伴うドル売り圧力、Lスロバキア中銀カジミール総裁による「次回9月の利上げ幅は25bpの可能性も50bpの可能性もある」とのタカ派的な発言が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間7/23午前3時15分現在)では、1.0205前後で推移しております。

来週の見通し(7/25−7/29)

<ドル円相場>
ドル円は1/24に記録した年初来安値113.47をボトムに反発に転じると、7/14に約23年10ヵ月ぶり高値となる139.40(1998年9月以来)まで急伸しましたが、今週は米FOMCを控えたポジション調整も加わり、一時135.57まで値を崩す展開となりました。但し、ダウンサイドに一目均衡表基準線などの複数のサポートポイントが控えていることや、日足・週足・月足の全てで強い買いシグナル(一目均衡表三役好転+強気のパーフェクトオーダー+ダウ理論の上昇トレンド)が点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは崩れていないと判断できます(今週の下落はあくまで上昇トレンドの過程で見られる一時的な押し目。一巡後の反発リスクに要警戒)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派傾斜観測(来週の米FOMCは75bpの利上げ実施がメインシナリオ)や、A日銀による金融緩和の長期化方針(日銀は今週開催した金融政策決定会合で金融緩和の長期化方針を再強調)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、C米政府・当局によるドル高容認姿勢(米国はインフレ抑制に繋がるドル高を容認する構え)、D上記Cを背景とした日銀によるドル売り・円買い為替介入のやりづらさ(例え円安がもう一段進んだとしても、日本は米国に配慮する形で為替介入に踏み切りづらい)、E日本とその他各国との金融政策格差(今週はECBや南アフリカ中銀が市場予想を上回る大幅利上げを実施→円全面安に繋がりやすい外部環境)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は7/26の米7月消費者信頼感指数、米6月新築住宅販売件数、7/27の米6月耐久財受注、7/28の米FOMC及びパウエル FRB 議長記者会見、米4ー6月期GDP速報値など重要イベントが目白押しとなりますが、市場の関心は特に米FOMCに集まっています。市場では75bpの利上げがメインシナリオ、100bpの利上げがリスクシナリオとなっていますが、今週のECB理事会や南ア中銀会合がそうであったように、市場予想を上回る利上げに踏み切る可能性も残されているため注意が必要でしょう。

また、市場予想通り75bpの利上げに留まったとしても、その後のパウエルFRB議長記者会見にて、足元の冴えない米経済指標を踏まえても尚、景気よりインフレ抑制を重視する構えが示される場合や、9月利上げの予告がなされる場合などには、米FRBによるタカ派傾斜観測→日米金融政策格差拡大→米長期金利再上昇の経路でドル買い・円売りの流れに拍車がかかる恐れも警戒されます。以上のことから、来週は米FOMC後にドル円が持ち直し、週末にかけて心理的節目140.00に向かって上値を伸ばすシナリオに注意が必要でしょう。

来週の予想レンジ(USDJPY):134.75ー139.75

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した年初来高値1.1496をトップに反落に転じると、7/14に約19年7ヵ月ぶり安値となる0.9952(2002年12月以来の安値圏)まで急落しましたが、今週はECBによる大幅利上げが支援材料となり、一時1.0279まで反発する展開となりました。但し、上方に複数のレジスタンスポイントを控えていることや、日足・週足・月足の全てで強い売りシグナル(一目均衡表三役逆転+弱気のパーフェクトオーダー+ダウ理論の下落トレンド)が点灯していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、トレンド転換(下落→上昇)は発生していないと判断できます(今週の上昇は下落トレンドの過程で見られる一時的な反発局面。一巡後の反落リスクに引き続き警戒)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、A欧州経済の下振れリスク(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締めは欧州経済の逆風。先週発表されたドイツ7月ZEW景況感指数は2011年11月以来の低水準。今週発表されたドイツやフランスのPMI速報値も冴えない結果)、B欧米金融政策の方向性の違い(積極利上げに踏み切る米国と、これ以上の大幅利上げに踏み切りづらい欧州との政策格差→欧米名目金利差拡大に伴うドル買い・ユーロ売りに繋がる恐れ)、Cイタリアを巡る政局不透明感(ドラギ首相は7/21に辞任)、D欧州圏のエネルギー逼迫懸念(懸念されていたノルドストリーム1の点検期間延長は回避されたが、引き続きロシアによる欧州各国へのガス供給量削減を巡る警戒感あり)など、ユーロドル相場の更なる下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は7/25に予定されているドイツ7月IFO景況指数、7/28のユーロ圏7月企業景況感指数、ドイツ6月消費者物価指数、7/29のユーロ圏 7月HICP速報値、ユーロ圏4ー6月期GDPなどに注目が集まります。特にユーロ圏7月HICPへの注目度が高く、仮に市場予想を上回る結果となれば、次回ECB理事会での追加利上げを織り込む形で初期的にはユーロ買いで反応するシナリオが想定されます。但し、スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締めはユーロ圏経済への逆風との見方も強いことから、一巡後はECBによるタカ派傾斜観測→欧州経済の下振れ懸念→ユーロ売りの波及経路も警戒されます。一方、HICPが市場予想を下回る場合は、利上げ観測後退を通じて、素直にユーロ売りで反応しそうです。米FOMCの結果を睨みつつも、来週はユーロドルがパリティ割れに向かって再び下げ幅を広げるシナリオを想定いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):0.9900−1.0400

注:ポイント要約は編集部

『来週は米FOMC後のドル全面高に要警戒』

ドル円日足

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