来週の為替相場見通し:『インフレ加速でドル高地合い継続。ドル円は節目140円が視野に』(7/16朝)

ドル円は1/24に記録した年初来安値113.47をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、1998年9月以来、約23年10ヵ月ぶり高値となる139.40まで急伸しました

来週の為替相場見通し:『インフレ加速でドル高地合い継続。ドル円は節目140円が視野に』(7/16朝)

『インフレ加速でドル高地合い継続。ドル円は節目140円が視野に』

〇今週のドル円、週後半にかけ約23年10ヵ月ぶり高値となる139.40まで急伸
〇米財務長官の日銀為替介入牽制、米CPIの伸び率加速からの米利上げ幅拡大観測等が背景
〇ユーロドル、週後半にかけドル買い地合い継続に約19年7ヵ月ぶり安値となる0.9952まで急落
〇ドル円、テクニカル的に見て、地合いは極めて強い
〇ファンダメンタルズもドル円相場の更なる上昇を連想させる材料揃う
〇引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):137.00ー141.00、(EURUSD):0.9800−1.0200

今週のレビュー(7/11−7/15)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初136.02で寄り付いた後、早々に週間安値135.99まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、@先週末7/8に発表された米6月雇用統計が良好な結果となったことや、A週末の参議院選で自民・公明与党が圧勝したこと、B黒田日銀総裁による「必要があれば躊躇なく追加緩和」とのハト派的な発言、C日米財務相会合にてイエレン米財務長官が「米国の見解ではG7諸国の為替相場は市場で決定」「円買い支え介入の可能性は議論せず」「外為市場介入はまれで例外的な場合のみ正当化される」と日銀による為替介入の選択肢を牽制したこと、D米6月消費者物価指数(結果9.1%、予想8.8%、前回8.6%、※前年比)の伸び率加速(1981年11月以来、約40年7ヵ月ぶり高水準を記録)、

E米6月生産者物価指数(結果11.3%、予想10.7%、前回10.9%、※前年比)の伸び率加速、F米当局者による相次ぐタカ派発言(アトランタ連銀ボスティック総裁、リッチモンド連銀バーキン総裁、クリーブラン連銀メスター総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁、イエレン米財務長官など)、G上記DEFを背景とした米FRBによるタカ派傾斜観測(7月FOMCでの100bp利上げを織り込む動き→米長期金利の急上昇)、H心理的節目(137.00、138.00、139.00)突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り(市場参加者に注目される大台140.00を試す動き)が支援材料となり、週後半にかけて、1998年9月以来、約23年10ヵ月ぶり高値となる139.40まで急伸しました。週末にかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間7/16午前5時30分現在)では、138.55前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0173で寄り付いた後、早々に週間高値1.0185まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まりや、A上記@を背景としたユーロ圏諸国へのエネルギー供給不安(ノルドストリーム1の定期点検で7/11から約10日間にわたって供給が完全停止することも一因)、B欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締め→欧州経済への強い逆風)、Cドイツ7月ZEW景況感指数(結果▲53.8、予想▲38.3、前月▲28.0)の冴えない結果(2011年11月以来の低水準)、D米6月消費者物価指数の伸び率加速、E米6月生産者物価指数の伸び率加速、F米当局者による相次ぐタカ派的な発言、

G上記DEFを背景とした米FRBのタカ派傾斜観測(7月FOMCでの100bp利上げを織り込む動き→米長期金利急上昇→欧米名目金利差拡大)、H欧州株の冴えない動き、Iドラギ・イタリア首相の辞任表明(イタリアを巡る政局不透明感)、Jパリティ割れに伴う仕掛け的なユーロ売り・ドル買い(ロング勢の見切り売り)が重石となり、週後半にかけて、2002年12月以来、約19年7ヵ月ぶり安値となる0.9952まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、J週末を控えたポジション調整や、K上記Iの辞任表明をマッタレラ大統領が認めなかったこと(政局不透明感後退)、L米金利低下に伴うドル売り圧力が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間7/16午前5時30分現在)では、1.0085前後で推移しております。

来週の見通し(7/18−7/22)

<ドル円相場>
ドル円は1/24に記録した年初来安値113.47をボトムに反発に転じると、今週後半にかけて、1998年9月以来、約23年10ヵ月ぶり高値となる139.40まで急伸しました(わずか半年で25.93円もの急騰劇)。この間、主要レジスタンスポイントを軒並み上抜けした他、日足・週足・月足の全てで強い買いシグナル(一目均衡表三役好転+強気のパーフェクトオーダー+ダウ理論の上昇トレンド)が成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによるタカ派傾斜観測(今週発表された米CPIや米PPIが市場予想を大幅に上回る伸びを記録→インフレ懸念を背景に7月FOMCでの100bp利上げ観測浮上→ブラックアウト期間突入直前に米当局者より相次いでタカ派的な発言あり)や、A日銀による金融緩和の長期化方針(黒田日銀総裁は参議院選挙後の7/11に「必要があれば躊躇なく追加緩和を実施する」とのハト派的な見解発表)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、C米政府・当局によるドル高容認姿勢(米国はインフレ抑制に繋がるドル高を容認する構え)、

D上記Cを背景とした日銀によるドル売り為替介入のやりづらさ(市場では日銀が米国に配慮する形で為替介入に踏み切れないとの見方が大勢。事実、松野官房長官は今週「急速な円安動向見られ憂慮している」「為替、一層の緊張感を持って注視」と足元の円急落に対して牽制するも市場は無反応)、E日本国民による円安容認観測(先週末の参議院選で自民・公明与党が圧勝したため、市場では日本国民が足元の円安を容認しているとの見方が増加)など、ドル円相場の更なる上昇を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の続伸をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は7/19の米6月住宅着工件数、7/20米6月中古住宅販売件数、7/21の日銀金融政策決定会合(展望リポート+黒田日銀総裁記者会見)、米7月フィラデルフィア連銀製造業指数などに注目が集まります。米経済指標が市場予想を上回る場合には、米経済を巡る過度な悲観論後退を通じて、株高→円安と、米金利上昇→米ドル買いが組み合わさるシナリオが想定されます。また、日銀金融政策決定会合や黒田日銀総裁記者会見で金融緩和の長期継続方針が示される場合にも、日米金融政策格差が改めて意識されるため、ドル円には上昇圧力が加わるものと推察されます。来週はブラックアウト期間突入で米当局者イベントは予定されていないものの、7月100bpの利上げ観測が燻る中、週を通して上昇圧力が加わり易い地合いが続きそうです(目先は心理的節目140.00を試すシナリオを想定。同水準の上抜けに成功できれば、1998年8月に記録した高値147.68に向かって急ピッチで上昇する恐れあり)。

来週の予想レンジ(USDJPY):137.00ー141.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した年初来高値1.1496をトップに反落に転じると、今週後半にかけて、2002年12月以来、約19年7ヵ月ぶり安値となる0.9952まで急落しました。この間、主要サポートポイント(一目均衡表転換線や基準線、90日移動平均線や21日移動平均線、心理的節目1.0000など)を軒並み下抜けした他、日足・週足・月足の全て強い売りシグナル(一目均衡表三役逆転+弱気のパーフェクトオーダー+ダウ理論の下落トレンド)が点灯するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、A上記@を背景としたロシアからのエネルギー輸入に対する不確実性(特に天然ガス輸入を巡る先行き不透明感)、B欧州経済の下振れリスク(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締めは欧州経済の逆風。今週発表されたドイツ7月ZEW景況感指数は2011年11月以来の低水準。また、欧州委員会が7/14に発表した経済見通しにおいても、CPI見通しを上方修正する一方、実質GDP見通しを下方修正)、C欧米金融政策の方向性の違い(積極利上げに踏み切る米国と、慎重さを維持する欧州との政策格差→欧米名目金利差拡大に伴うドル買い・ユーロ売り)、Dイタリアを巡る政局不透明感(ドラギ首相の辞任表明)など、ユーロドル相場の更なる下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は7/20に予定されているユーロ圏7月消費者信頼感指数、7/21のECB理事会、7/22のユーロ圏製造業・サービス業PMI速報値に注目が集まります。欧州経済指標が市場予想を下回る場合には、欧州経済の後退懸念を通じて、素直にユーロ売りで反応する展開が想定されます。ECB理事会は25bpの政策金利引き上げが見込まれていますが、既に織り込み済みであるため、市場の反応は限定的となりそうです。

従って、今回のECB理事会では、次回9月ECB理事会での利上げ幅や分断化措置に関する追加情報を探る動きとなりそうです。また、来週は7/11−7/21の期間で行われていたノルドストリーム1のメンテナンスが終了後の再稼働の動向にも注意が必要でしょう。市場ではメンテナンス終了後にロシアがガス供給を遮断するのではないかとの懸念も燻っており、仮にガス供給遮断がなされる場合には、エネルギー供給懸念顕在化→エネルギー価格急騰→欧州経済に大打撃の経路で、ユーロドルには強い下押し圧力が加わるものと推察されます。このようにユーロ相場は悪材料噴出の状態であるため、来週もダウンサイドリスクに注意を要する神経質な1週間となりそうです。


来週の予想レンジ(EURUSD):0.9800−1.0200

『インフレ加速でドル高地合い継続。ドル円は節目140円が視野に』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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