ドル円見通し 米10年債利回りは2020年3月以降で最大級の下落、ドル円も上げ渋りに(週報7月第一週)

長期金利の指標である米10年債利回りは7月1日に前日比0.14%低下の2.88%で終了、一時は2.79%を付けた。

ドル円見通し 米10年債利回りは2020年3月以降で最大級の下落、ドル円も上げ渋りに(週報7月第一週)

ドル円見通し 米10年債利回りは2020年3月以降で最大級の下落、ドル円も上げ渋りに

〇ドル円、6/29に137円をつけるも7/1に134.70台まで反落して越週、高値警戒感強まる
〇米6月ISM米製造業景況指数悪化、10年債利回りは一時2.79%に急低下、NYダウは金利低下受け反発
〇今週の週末米雇用統計、来週の米6月CPI、7/26-27FOMCでの利上げ幅占ううえで要注視
〇134.25を割り込まないうちは、136円台回復から上昇再開、高値更新を目指す
〇134.25を割り込む場合、131.48を目指す下落を想定

【概況】

ドル円は6月29日夜に137円を付けて6月22日朝高値136.71円を超えて2021年1月6日底102.57円以降の最高値を更新、1998年8月11日天井147.63円直後だった1998年9月以来の高値水準に達したが、その後は高値警戒感と米長期債利回り低下により戻り売り優勢となって7月1日午後には134.74円へ安値を切り下げた。1日夕刻に135.66円までいったん戻したものの1日深夜に134.79円まで反落、135円台序盤へ戻した後も6月29日夜高値からの右肩下がりの展開にとどまって週を終えた。
6月15日に135.58円を付けたところから6月16日夜安値131.48円まで4.10円の下落、6月22日高値へ一段高したところから6月23日夜安値134.25円まで2.46円の下落、6月29日夜高値から7月1日午後安値まで2.26円の下落となっており、昨年1月以降の高値更新を続けながらも一段高したところでの伸びが鈍り、その後の反動安も大きくなり徐々に高値警戒感が強まる情勢と思われる。米長期債利回りの上昇基調と概ね同調してきたわけだが、米10年債利回りも6月14日からの下落規模が大きく、ドル円の上昇に対する逆流の圧力となりつつある。

【6月のISM製造業景況指数は2年ぶり低水準】

7月1日に米サプライ管理協会(ISM)が発表した6月の米製造業景況指数は53.0となり5月の56.1から悪化、市場予想の54.9を下回り2020年6月以来2年ぶりの低水準となった。好不況の分岐点である50ポイント以上を維持しているもののインフレの深刻化と金融引き締めによる景気減速感を反映した印象だ。
内訳では生産が5月の54.2から54.9へ若干上昇したものの、新規受注が5月の55.1から49.2へ低下、雇用も5月の49.6から47.3へ低下、価格も82.2から78.5へ低下している。

【米長期債利回りは3%を割り込んで週を終える】

長期金利の指標である米10年債利回りは7月1日に前日比0.14%低下の2.88%で終了、一時は2.79%を付けた。パンデミック発生に対する大規模金融緩和開始により2020年3月に0.32%まで急低下したところから反騰に転じ、今年6月14日には3.50%を付けてパンデミック発生前の2018年10月に付けた3.26%を超えて2011年4月以来の最高水準に達したが、その後の低下幅は5月9日の3.20%から5月26日の2.70%まで低下したところを超えており、2021年3月の1.78%から8月初旬に1.13%まで低下した時以来の低下幅をわずか3週弱で超えている。
7月1日のNYダウは前日比321.83ドル高と上昇して当日安値からは500ドルを超える規模となり、金融引き締めによる景気後退懸念を背景とした株安に一服感も出たが、それよりも先行きのリセッション懸念による株安基調の継続感や安全資産としての米債券買いによる利回り低下反応が優先された印象だ。
米30年債利回りも7月1日は前日比0.08%低下の3.11%、2年債利回りも0.13%低下の2.83%まで下げている。

【週末に米雇用統計、FOMCの大幅利上げペースが鈍ぶるのか試される】

米連銀は7月に0.50%ないし0.75%の大幅利上げを行い、年末にかけてはさらに利上げを継続して政策金利を3.5%程度へ引き上げてゆく公算であり、6月中盤からの米長期債利回り低下もやや大きめの調整安とすれば、その後の上昇再開により米長期債利回り動向と同調してきたドル円も昨年来の最高値更新へ進むのだろうと推察するが、米国の景気減速懸念が強まり原油や穀物市場の高騰が落ち着いた状況からさらに低下するようだと、過剰な大幅利下げが避けられて米連銀の利上げペースが鈍化する可能性もあるところだ。

NYダウは1月5日に史上最高値3万6952.65ドルを付けたところから6月17日安値2万9653.29ドルまで下落してきた。3万ドル割れをひとまず買い戻されたものの中間反騰を入れながら右肩下がりの下落基調を継続して既に昨年1月からの上昇分を解消している。ナスダック総合指数は6月16日に10565.14ポイントを付けて昨年11月の史上最高値16212.23ポイントからの下落率は35%で2020年9月以来の安値水準まで下げている。
パンデミック対策による大規模金融緩和終了見込みから米国株は本格的な調整安期に入っており、そこにウクライナ情勢によるインフレの深刻化と米連銀による大幅利上げ開始が追い打ちをかけてきた。株安は特に世界連鎖株安型となる場合は金融市場全般の手仕舞い・換金売りを助長するためにクロス円の下落がドル円に波及して円高感が強まる可能性もあると注意したい。

6月22日と23日のパウエル米連銀議長による米上下院での議会証言や6月29日のECBフォーラムにおいて「景気よりもインフレ抑制」「景気後退リスク」等への言及があり、市場はリセッション入りへの警戒感を強めている。米GDPも1-3月の前期比年率がマイナス1.6%で確定したが4-6月もマイナス成長が見込まれている。
今週は週末に米6月雇用統計の発表があり、7月13日に6月の米CPI上昇率の発表がある。雇用統計が強くCPIも鈍化なら米連銀が7月FOMCにおける利上げを0.50%引き上げに留めて金融市場の不安心理も落ち着くと思われるが、雇用統計が景気減速を反映して冴えない数字となりCPIが予想を超える上昇や高止まりなら米連銀は景気後退リスクを踏まえた上でも0.75%利上げを決断してその後も利上げペースを落とさない可能性も高まる。そのあたりを見ながら米長期債利回りが再上昇期に入るのかどうか試され、ドル円も米長期債利回り動向に左右されてゆく展開で進むのだろうと思われる。次回の米FOMCは7月26-27日に開催予定。

【日足相対力指数の弱気逆行感解消せず】

【日足相対力指数の弱気逆行感解消せず】

ドル円の日足チャートでは概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルが見られる。2021年1月6日底以降は4か月弱で同年4月23日安値、3か月目の8月4日安値、4か月目の11月30日、3か月目の今年2月24日安値と底を付けて2月24日安値から3か月目の5月24日安値で直近のサイクルボトムを付けて一段高に入っている。
高値形成期は前回のサイクルトップが4月28日高値と5月9日高値によるダブルトップ型だったため、7月後半から8月後半にかけての間と想定されるが、サイクルのトップ形成は上昇基調の序盤では長引き終盤では短くなる傾向もあるので、既に2か月を経過しているためにいつ当面のサイクルトップを付けて調整期に入っても不思議はないところだ。

そこで気になるのが相対力指数の弱気逆行(ダイバージェンス)であり、3月から4月への一段高において指数のピークが80ポイント台後半でほぼフラットとなり、6月への一段高では80ポイントに届かずに切り下がる弱気逆行型となり、6月15日から6月21日、6月29日と高値更新が続いた局面でも再び指数のピークが切り下がる逆行型が見られる。3月の上昇期や5月末から6月前半への上昇期にみられるような連日の上昇でどんどん高値を切り上げてゆく勢いは後退している印象となっている。それでも6月16日夜から6月23日夜へと調整安の底上げは継続しているので、6月23日夜安値134.25円を割り込まないうちはもう一段高へと向かってよい流れだが、6月23日夜安値を割り込む場合は5月9日高値から5月24日安値へと下落した時並みの時間をかけた下落規模となる可能性が出てくると注意したい。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、6月23日夜安値134.25円を下値支持線、6月29日夜高値137.00円を上値抵抗線とする。
(2)6月23日夜安値を割り込まないうちは136円台回復から上昇再開とみて137円台での高値更新を目指すとみる。137円台中盤(137.30円から137.70円)では売られやすいとみるが、米長期債利回りの再上昇が始まる場合は138円台へ、さらに米雇用統計から勢い付く場合は139円や140円を目指してゆく流れへ進み始めるとみる。
(3)6月23日夜安値134.25を割り込む場合は5月24日以降の底上げ基調が崩れるため、6月16日安値131.48円を試す下落を想定する。132円以下は反発警戒とするが、米長期債利回り低下がさらに進むようだと130円台へ向かう可能性にも注意する。

【当面の主な予定】

7/4(月)
休場、米国(独立記念日)
08:50 (日) 6月 マネタリーベース 前年同月比 (5月 4.6%)
10:30 (豪) 5月 住宅建設許可件数 前月比 (4月 -2.4%、予想 -1.8%)
15:00 (独) 5月 貿易収支 (4月 35億ユーロ、予想 27億ユーロ)
18:00 (欧) 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 1.2%、予想 1.0%)
18:00 (欧) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 37.2%、予想 36.7%)
23:00 (独) ナーゲル独連銀総裁、講演
24:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演

7/5(火)
スウェーデンとフィンランドのNATO加盟議定書署名
10:45 (中) 6月 財新サービス業PMI (5月 41.4、予想 49.0)
13:30 (豪) 豪中銀 政策金利 (現行 0.85%、予想 1.35%)
16:55 (独) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 52.4、予想 52.4)
17:00 (欧) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 52.8、予想 52.8)
17:30 (英) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 53.4、予想 53.4)
23:00 (米) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 0.3%、予想 0.5%)
25:30 (英) テンレイロ英中銀委員、講演

7/6(水)
15:00 (独) 5月 製造業新規受注 前月比 (4月 -2.7%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 5月 製造業新規受注 前年同月比 (4月 -6.2%、予想 -5.0%)
18:00 (欧) 5月 小売売上高 前月比 (4月 -1.3%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 3.9%、予想 -0.2%)
22:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、開会閉会挨拶
22:45 (米) 6月 サービス業PMI改定値 (速報 51.6、予想 51.6)
23:00 (米) 6月 ISMサービス業景況指数 (5月 55.9、予想 54.5)
23:00 (米) 5月 雇用動態調査(JOLT)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC 6/14-15開催分)議事要旨

7/7(木)
10:30 (豪) 5月 貿易収支 (4月 104.95億豪ドル 104.95億豪ドル)
14:00 (日) 5月 景気先行指数CI速報値 (4月 102.9、予想 101.5)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.7%、予想 0.4%)
15:00 (独) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 -2.2%、予想 -1.8%)
20:30 (欧) 欧州中銀 理事会議事要旨
21:15 (米) 6月 ADP民間非農業部門就業者数 前月比 (5月 12.8万人、予想 20.0万人)
21:30 (米) 5月 貿易収支 (4月 -871億ドル、予想 -850億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.1万件、予想 23.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 132.8万人、予想 132.0万人)
22:00 (英) マン英中銀委員、講演
24:00 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
26:00 (米) ウォラーFRB理事、インタビュー
26:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

7/8(金)
08:30 (日) 5月 全世帯消費支出 前年同月比 (4月 -1.7%、予想 2.1%)
08:50 (日) 5月 経常収支・季調前 (4月 5011億円、予想 1620億円)
08:50 (日) 5月 経常収支・季調済 (4月 5115億円、予想 1549億円)
08:50 (日) 5月 貿易収支・国際収支ベース (4月 -6884億円、予想 -2兆316億円)
14:00 (日) 6月 景気ウオッチャー現状判断DI (5月 54.0、予想 55.0)
14:00 (日) 6月 景気ウオッチャー先行判断DI (5月 52.5、予想 53.6)
20:55 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、講演
21:30 (米) 6月 非農業部門就業者数 前月比 (5月 39.0万人、予想 24.0万人)
21:30 (米) 6月 失業率 (5月 3.6%、予想 3.6%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前月比 (5月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 6月 平均時給 前年同月比 (5月 5.2%、予想 5.1%)
23:00 (米) 5月 卸売売上高 前月比 (4月 0.7%)
24:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
28:00 (米) 5月 消費者信用残高 前月比 (4月 380.7億ドル、予想 309.0億ドル)

7/9(土)
中国の6月消費者物価、生産者物価
7/10(日)
参院選投開票


注:ポイント要約は編集部

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