来週の為替相場見通し:『ドル円は約3週間ぶり安値圏へ続落も来週は底固めの展開を想定』(5/21朝)

ドル円は5/9に記録した約20年ぶり高値131.36をトップに反落に転じると、週後半にかけて、約3週間ぶり安値127.03まで急落しました。

来週の為替相場見通し:『ドル円は約3週間ぶり安値圏へ続落も来週は底固めの展開を想定』(5/21朝)

『ドル円は約3週間ぶり安値圏へ続落も来週は底固めの展開を想定』

〇今週のドル円、中国経済を巡る過度な悲観論の後退等に週前半129.79まで上昇。
〇その後パウエルFRB議長のタカ派発言、米指標の不冴え等に週後半にかけ127.03まで急落
〇ユーロドル、フィンランドやスウェーデンによるNATO加盟申請に週明け早々に1.0388まで下落
〇週後半にかけては、ECB関係者のタカ派発言、米経済指標不冴え等に一時1.0607まで急伸
〇ドル円、テクニカルには転換線や基準線を下抜けるも、上位足での買いシグナル継続
〇ファンダメンタルズもドル円相場の上昇を連想させる材料揃う
〇ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):126.50ー129.50、(EURUSD):1.0350−1.0700

今週のレビュー(5/16−5/20)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初129.27で寄り付いた後、@黒田日銀総裁による「金融緩和を粘り強く継続する」との発言や、A中国経済を巡る過度な悲観論の後退(中国上海市で隔離地域外における新型コロナウイルス新規感染者数が3日連続でゼロ)、B本邦輸入企業と思しき実需のドル買い・円売り、C株式市場の堅調推移(リスク選好の円売り圧力)、D米金利上昇に伴うドル買い圧力、E米4月小売売上高の良好な結果、F米4月鉱工業生産(結果1.1%、予想0.5%)の力強い結果が支援材料となり、翌5/17にかけて、週間高値129.79まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、GパウエルFRB議長による「必要ならばFRBはさらに積極的な行動を検討する必要がある」とのタカ派的な発言や、H上記Gを契機とした過剰流動性相場の逆流懸念(株式市場急落→市場心理悪化→リスク回避の円買い圧力)、

I米4月住宅着工件数の冴えない結果、J米小売大手ウォルマートやターゲットの決算のネガティブサプライズ、K米金利低下に伴うドル売り圧力(安全資産の米債買い→米10年債利回りは3.01%から2.77%へ急低下)、L米5月フィラデルフィア連銀製造業景気指数の冴えない結果、M米4月景気先行指標総合指数のマイナス転落、N米国経済のリセッション入り懸念などが重石となり、週後半にかけて、4/27以来、約3週間ぶり安値となる127.03まで急落しました。もっとも、心理的節目127.00をバックに下げ渋ると、週末にかけて持ち直し、本稿執筆時点(日本時間5/21午前4時45分現在)では、127.80前後で推移しております。尚、週末に発表された本邦の4月消費者物価指数は前年比+2.1%を記録し、約7年1カ月ぶりに政府・日銀の2%目標に達しましたが、市場の反応は限定的となりました(一部で警戒されていたような日銀による金融政策修正を織り込む円買いには繋がらず)。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0405で寄り付いた後、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、AフィンランドやスウェーデンによるNATO(北大西洋条約機構)への加盟申請(ロシアを巡る地政学的リスクがウクライナから北欧に飛び火するリスク)、B中国経済の失速懸念(中国の主要経済指標の不冴な結果→市場心理悪化→リスク回避のドル買い圧力)が重石となり、週明け早々に、週間安値1.0388まで下落しました。しかし、前週末金曜日(5/13)に記録した約5年4ヵ月ぶり安値1.0350(2017年1月以来の安値圏)をバックに下げ渋ると、Cフランス中銀ビルロワドガロー総裁による「ECBはユーロの実効レートを注視している」「弱過ぎるユーロは物価安定の目標に反する」とのユーロ安牽制発言や、

D米経済指標の冴えない結果(米経済のリセッション懸念→米金利急低下→米ドル売り)、Eオランダ中銀クノット総裁による「7月会合での25bp利上げを支持する」「データ次第でより大きな利上げに踏み切ることも除外しない」とのタカ派的な発言、Fスペイン中銀デコス総裁による「ECBは第3四半期の早い時期に債券買い入れプログラムを終了し、その後間を置かずに利上げを開始する公算が大きい」とのタカ派的な発言、GECB理事会議事要旨のタカ派的な内容(4/13ー4/14開催のECB理事会の議事要旨の中で一部の委員による「中期的な物価安定を達成するという政策委員会の決意を示すため遅滞なく行動することが重要」「もはやインフレ見通しには一致しない」との見解公表)などが支援材料となり、週後半にかけて、5/5以来、約2週間ぶり高値となる1.0607まで急伸しました。引けにかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間5/21午前4時45分現在)では、1.0558前後で推移しております。

来週の見通し(5/23−5/27)

<ドル円相場>
ドル円は5/9に記録した約20年ぶり高値131.36をトップに反落に転じると、週後半にかけて、約3週間ぶり安値127.03まで急落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線を下抜けするなど、短期的に見て、地合いの悪化(円ショートの巻き戻し)を意識させるチャート形状が続いております。但し、上位足を用いて相場の動きをハイレベルで捉えれば、強い買いシグナルを示唆する一目均衡表三役好転や強気のパーフェクトオーダー、ダウ理論の上昇トレンドが継続しているため、地合いはまだまだ崩れていないと判断できます(上昇→下落のトレンド転換は確認できず。今週の下落は上昇トレンドの過程で見られる一時的なポジション調整と整理)。また、ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによる金融引き締めスタンスの明確化(パウエルFRB議長は今週「必要ならばFRBはさらに積極的な行動を検討する必要がある」と発言)や、

A日銀による金融緩和スタンスの明確化(本邦CPIが約7年1カ月ぶりに政府・日銀の2%目標を上回る結果となりましたが、市場は今回のCPIの結果を以て日銀による金融緩和修正に繋がるとは想定せず)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、C資源価格上昇に伴う本邦貿易赤字の拡大懸念(経常収支の悪化懸念→構造的な円売り要因)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています(万が一リスクオフ相場が再来したとしても、「リスク回避の円買い」と「リスク回避のドル買い」が綱引き状態になることが見込まれるため、ドル円相場の一方向の下落は想定しづらい)。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は5/24の米4月新築住宅販売件数に加え、5/26の米第1四半期GDP改定値や、5/27に発表される米FRBが重視する4月PCEデフレータなどに注目が集まります。

米経済指標が市場予想を上回る場合には、米経済を巡る過度な悲観論の後退と、米インフレ懸念の高まりが組み合わさることで、米株上昇と米金利上昇が併存する形となり、ドル円相場には再び上昇圧力が加わるものと推察されます(一方、米4月PCEデフレータが市場予想を下回る場合は、インフレがピークアウトを迎えたとの思惑から米金利が低下する恐れあり)。また、来週はアトランタ連銀ボスティック総裁発言や、カンザスシティ連銀ジョージ総裁発言に加えて、FOMC議事要旨も予定されているため、米当局者によるタカ派的な発言や、FOMC議事要旨のタカ派的な内容を通じた、米金利上昇→米ドル高の波及経路にも注意が必要でしょう(ドル円相場は底固めのステージに入ったと整理)。

来週の予想レンジ(USDJPY):126.50ー129.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した約3ヵ月ぶり高値1.1496をトップに反落に転じると、5/13にかけて、約5年4ヵ月ぶり安値となる1.0350(2017年1月以来の安値圏)まで急落しましたが、今週はショートカバー主導で持ち直し、一時1.06台まで回復する動きとなりました。但し、上方に複数のレジスタンスポイントを控えていることや、強い売りシグナルを示唆する一目均衡表三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーが継続していることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、上値余地は限定的と判断できます(今週の反発は下落トレンドの過程で見られる一時的なショートカバーと判断。引き続き、1ユーロ=1ドルのパリティ割れが射程圏内に入っており、一巡後の反落リスクに要警戒)。また、ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシアを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシア・ウクライナ問題に加えて、今後はフィンランドやスウェーデンへの飛び火リスクに要警戒)や、A欧州経済のスタグフレーション懸念(欧州圏におけるエネルギー不足→景気減速下でのインフレ昂進→スタグフレーション懸念)、

B米FRBによるタカ派スタンスの明確化(パウエルFRB議長は今週も金融引き締めスタンスを強調)、Cドイツを巡る政局不透明感(ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州で実施された州議会選挙で、ショルツ現首相率いる社会民主党が第1党を獲得できず)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の反落を来週のメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は上記Aの状況を確認する上で、5/23に予定されているドイツ5月IFO景況感指数や、ユーロ圏5月製造業・サービス業PMI速報値に注目が集まります。市場予想を下回る不冴な結果となる場合には、欧州経済の先行き不安を通じて、ユーロドルに下押し圧力が加わる恐れもあり、来週は週明け欧州時間のダウンサイドリスクに注意が必要でしょう(尚、来週は今週同様、ECB当局者よりタカ派的な発言が相次ぐ可能性があるものの、既に織り込まれている「年4回の利上げ」を更に上回る織り込みに繋がる可能性は低いことから、例えタカ派的な発言が相次いだとしても、ユーロ買いでの反応は鈍くなると予想されます)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0350−1.0700

注:ポイント要約は編集部

『ドル円は約3週間ぶり安値圏へ続落も来週は底固めの展開を想定』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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