ドル円見通し ドル高緩み130円台回復へ進めず、4月28日と5月9日のダブルトップ感を引きずる(22/5/17)

午前序盤129.63円をつけてからいったん128.68円へ下落、夜に129.61円まで戻したものの戻り高値切り上げへ進めずに失速して129円割れを試す状況となっている。

ドル円見通し ドル高緩み130円台回復へ進めず、4月28日と5月9日のダブルトップ感を引きずる(22/5/17)

ドル高緩み130円台回復へ進めず、4月28日と5月9日のダブルトップ感を引きずる

〇ドル円、5/16午前序盤129.63をつけて後いったん128.68へ下落、夜129.61まで戻したが失速
〇米長期債利回りの上昇一服、ドル高緩む中ユーロ・ポンド等やや持ち直し129円台中盤で引っかかる展開
〇昨日発表の経済指標、中国・欧州の景気減速示す、NY連銀景況指数も予想外の悪化
〇米長期債利回りの低下傾向と高値警戒感でドル円は上昇にブレーキかかる、調整的な低下続く可能性も
〇129.63以下での推移中は一段安余地警戒とし、128.68割れからは128円前後への下落を想定する
〇129.63を超える反騰が発生する場合は130円超えへ向かう流れとし、高値試しへ向かいやすいとみる

【概況】

ドル円は5月9日につけた昨年1月底以降の高値131.34円から5月12日夜安値127.50円まで3.84円の円高ドル安となったが、大幅下落に対する突っ込み警戒感から買い戻されて129円台を回復して先週を終えたが、16日は午前序盤129.63円をつけてからいったん128.68円へ下落、夜に129.61円まで戻したものの戻り高値切り上げへ進めずに失速して129円割れを試す状況となっている。
米連銀の大幅利上げと先行きの金融引き締め姿勢強化を背景とした米長期債利回りの大上昇が一服して先週は低下傾向に入り、週末はやや戻したものの週明けも低下傾向の範囲にとどまったことでドル円としては反騰継続へ進み切れず、全般的なドル高が緩む中でユーロやポンド等がやや持ち直したために129円台中盤で引っかかる展開となり急落後の戻り一巡感もみられるところだ。

【中国、欧州の景気減速、NY連銀景況指数も予想外の悪化】

5月16日午前に中国国家統計局が発表した4月の鉱工業生産は前年同月比2.9%減となり市場予想の0.4%増を下回って3月の5.0%増から大幅に悪化、パンデミック発生時の2020年3月以来2年1か月振りのマイナスとなった。上海における感染急増と3月末からのロックダウンが長期化したことが影響した。4月の自動車生産台数は43.5%減、半導体等も10%減を超える落ち込みとなった。
4月の小売売上高は前年比11.1%減で3月の3.5%減からさらに悪化して市場予想の6.1%減を大幅に下回った。4月の都市部固定資産投資も累計の前年比で6.8%増となり3月の9.3%増から減速した。また4月の失業率は6.1%で3月の5.8%から悪化した。

EUの欧州委員会は5月16日、2022年のユーロ圏GDP見通しについて全体が前年比2.7%増として2月時点の4.0%増から大幅下方修正し、2023年の見通しも2.3%として2月の2.7%増から下方修正した。2月末のウクライナ戦争勃発とロシア制裁による欧州景気への打撃を反映したものと思われる。2022年の国別ではフランスが2月時点の3.6%から3.1%へ、イタリアが同4.1%から2.4%へ、ドイツが同3.6%から1.6%へと下方修正された。

5月16日に米ニューヨーク連銀が発表した5月NY製造業景況指数は市場予想のプラス17.0%に反してマイナス11.6となり4月の24.6から急激に悪化した。米国におけるロシア制裁の影響は限定的と思われるが、米連銀が3月の0.25%利上げに続いて5月に0.50%の大幅利上げを行ったことによる金融引き締めの影響が出ていることと、ガソリン価格高騰等によるインフレの高止まりが消費抑制へ動いていることを反映したと思われる。6か月後の先行きについては15.2から18.0へと改善予想となり、雇用も前月の7.3から14.0へと改善したが、現況については「改善した」とするのが19.9%で4月の39.6%から大幅に低下し、「悪化した」が前月の15.0%から31.5%へと急増した。

【米長期債利回り 週明けも前週の低下傾向から抜け出さず】

5月16日の米10年債利回りは先週末比0.04%低下の2.89%となった。米連銀の引き締め姿勢を反映して5月9日に3.20%をつけて2018年10月天井の3.26%に迫ったところから5月12日へ4営業日続落して一時2.81%まで低下し、13日は2.93%まで小反発していたものの中国、欧州、米国の経済指標がさえなかったことから反騰継続へと進めずに低下した。
2年債利回りは5月11日の米CPI発表直後に2.86%まで上昇して2018年11月天井2.98%へ迫る勢いとなったが、12日に2.51%まで失速した後は高止まりながら軟調推移で16日は前週末比0.01%低下の2.58%となった。
ドル円としては日銀の金融緩和政策維持と米連銀の金融引き締め姿勢強化との対比、日米金利差の拡大を背景として歴史的な大上昇を継続してきたが、131円台に到達したことの高値警戒感と共に米長期債利回りの大上昇が落ち着いたことで上昇にブレーキがかかっている。

米長期債利回りは昨年来の大上昇において、数日から週をまたぐ範囲で調整的な低下局面を何度か見せながら一段高してきており、現状もそうした調整レベルと思われる。しかし米経済指標の上ブレが収まり始めていることや株安の進行も踏まえ、米連銀が6月と7月に0.50%ずつの利上げを進めても0.75%利上げというような超大幅利上げは回避されるという見方が強まっていることで、大上昇にややブレーキがかかっているため、数日程度の規模を超える調整的な低下が続く可能性もあるところだ。

5月16日のNYダウは前週末比で26.76ドル高と小幅上昇にとどまり、5月5日から12日まで6営業日の大幅続落後となった13日に466.36ドル高の反発を入れて週を終えていたが、週明けは勢いが鈍い印象だった。ナスダック総合指数は142.21ポイント安とさえない展開だった。
上海市が感染拡大が落ち着いてきたことで段階的な規制緩和に動き始めるとの報道が支えだが、一挙に景気を押し上げられるのかどうか、北欧2国のNATO加盟申請によるロシア制裁情勢がどうなるのかも見定めたいところだろう。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、5月12日夜安値で直近のサイクルボトムを付けて反騰入りしたが、16日午前高値129.63円と夜高値129.61円がミニダブルトップとなって下落に転じている印象だ。このため16日午前反落時安値128.68円を割り込まないうちは129.63円超えからの上昇再開となる可能性を残すものの、16日午前安値を割り込む場合は弱気弱気サイクル入りとして17日夜から19日夜にかけての間への下落が想定される。

60分足の一目均衡表では5月16日夜からの下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しやすい位置へ下げているため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。両スパンが揃って好転して16日午前高値を超える場合は上昇再開とするが、先行スパンからの転落が継続して実線との乖離が拡大する場合は下げ足も早まりやすいとみる。また先行スパンから転落した後は遅行スパンが一時的に好転しても先行スパンを上抜き返せないうちはその後に遅行スパンが悪化するところから下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は5月16日の高値時には60ポイント前後が抵抗となり17日午前の129円割れで50ポイントを割り込んできているため、30ポイント割れを目指す下落へ進みやすいと思われる。上昇再開には60ポイント超えへ切り返す必要があると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月16日午前安値128.68円を下値支持線、16日午前高値129.63円を上値抵抗線とする。
(2)129.63円以下での推移中は一段安余地警戒とし、128.68円割れからは128円前後への下落を想定する。128円以下は反発注意とするが、128.68円以下での推移なら17日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)129.63円手前は戻り売りにつかまりやすいとみるが、情勢好転で129.63円を超える反騰が発生する場合は130円超えへ向かう流れとし、17日も高値試しへ向かいやすいとみる。
中勢レベルでは、4月28日と5月9日のダブルトップ型形成で下落した後のリバウンドが一巡してもう一段安を試しやすい流れと思われる。

【当面の主な予定】

5/17(火)
13:30 (日) 3月 第三次産業活動指数 前月比 (2月 -1.3%、予想 1.1%)
15:00 (英) 4月 失業保険申請件数 (3月 -4.69万件、予想 -4.25万件)
15:00 (英) 3月 失業率・ILO方式 (2月 3.8%、予想 3.8%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 1-3月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 5.0%、予想 5.0%)
19:05 (英) カンリフ英中銀副総裁、講演
21:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
21:30 (米) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.5%、予想 0.9%)
21:30 (米) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (3月 1.1%、予想 0.4%)

22:15 (米) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.9%、予想 0.5%)
22:15 (米) 4月 設備稼働率 (3月 78.3%、予想 78.6%)
22:15 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
23:00 (米) 3月 企業在庫 前月比 (2月 1.5%、予想 1.9%)
23:00 (米) 5月 NAHB住宅市場指数 (4月 77、予想 75)
26:00 (欧) ラガルドECB総裁、講演
27:00 (米) パウエルFRB議長、WSJ主催会議インタビュー
27:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、オンラインフォーラム挨拶

5/18(水)
G7財務相・中銀総裁会議(独、5/20日まで)
07:45 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
08:50 (日) 1-3月期 GDP速報値 年率換算 (10-12月 4.6%、予想 -1.8%)
08:50 (日) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (10-12月 1.1%、予想 -0.4%)
10:30 (豪) 1-3月期 賃金指数 前期比 (10-12月 0.7%、予想 0.8%)
13:30 (日) 3月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 0.3%)
13:30 (日) 3月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -1.7%)
13:30 (日) 3月 設備稼働率 前月比 (2月 1.5%)

15:00 (英) 4月 消費者物価指数 前月比 (3月 1.1%、予想 2.6%)
15:00 (英) 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 7.0%、予想 9.1%)
15:00 (英) 4月 消費者物価コア指数 前年同月比 (3月 5.7%、予想 6.2%)
15:00 (英) 4月 小売物価指数 前月比 (3月 1.0%、予想 0.5%)
15:00 (英) 4月 小売物価指数 前年同月比 (3月 9.0%、予想 11.0%)
18:00 (欧) 4月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 7.5%、予想 7.5%)
18:00 (欧) 4月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 3.5%、予想 3.5%)

21:30 (米) 4月 住宅着工件数・年率換算件数 (3月 179.3万件、予想 176.5万件)
21:30 (米) 4月 住宅着工件数 前月比 (3月 0.3%、予想 -1.6%)
21:30 (米) 4月 建設許可件数・年率換算件数 (3月 187.3万件、予想 182.0万件)
21:30 (米) 4月 建設許可件数 前月比 (3月 0.4%、予想 -2.7%)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省20年債入札
29:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演


注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る