来週の為替相場見通し:『リスクオフ到来で急落するも下値は堅い。来週は130円台の回復を想定』(5/14朝)

ドル円は週後半にかけて一時127.51まで急落しましたが、週末にかけて再び129円台半ばまで値を戻すなど、ボラタイルな相場展開が続いています。

来週の為替相場見通し:『リスクオフ到来で急落するも下値は堅い。来週は130円台の回復を想定』(5/14朝)

『リスクオフ到来で急落するも下値は堅い。来週は130円台の回復を想定』

〇今週のドル円、週明け早々週間高値131.35(約20年ぶり高値圏)まで上昇
〇買い一巡後は伸び悩み、リスク回避の動きと米長期金利低下に週後半にかけ127.51まで急落
〇ユーロドル週末にかけて一時1.0350に急落(約5年4ヵ月ぶり安値)
〇欧州経済の先行き不透明感、フィンランドによるNATO加盟申請の方針発表等もユーロの重石に
〇ドル円ボラタイルな動きとなっているが一目均衡表基準線がサポートラインとして機能、底堅い
〇一時的にリスク回避の円買いが優勢となったが、リスクオフ時はドル買いも強く一方向で下落しにくい
〇ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):128.00ー132.00、(EURUSD):1.0150−1.0550

今週のレビュー(5/9−5/13)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初130.51で寄り付いた後、@本邦輸入企業と思しき実需のドル買い・円売りや、A米金利上昇に伴うドル買い圧力(米5年債利回りは2008年9月以来となる3.10%へ急上昇。米10年債利回りは2018年11月以来となる3.20%へ急上昇)、B直近高値突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り、Cバイデン米大統領によるインフレ対策への期待感が支援材料となり、週明け早々に、週間高値131.35(2002年4月以来、約20年ぶり高値圏)まで上昇しました。しかし、買い一巡後に伸び悩むと、D急ピッチな上昇に対するポジション調整(反動売り→短期円ショート勢のストップロスを誘発)や、E米FRBによる強力な金融引き締め観測(過剰流動性相場逆流リスク→株安→市場心理悪化→リスク回避の円買い圧力)、G中国経済の失速懸念(新型コロナウイルスの感染拡大→ロックダウンなどコロナ対策の長期懸念→世界経済の減速懸念→株安→市場心理悪化→リスク回避の円買い圧力)、

H米金利低下に伴うドル売り圧力(質への逃避の米債買い圧力→米10年債利回りは5/9に記録した3.20%から5/12には2.81%まで急低下)が重石となり、週後半にかけて、4/27以来、約2週間ぶり安値となる127.51まで急落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、I急ピッチな下落の反動や、J米10年債利回りの反転上昇、K欧米株の持ち直しが支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間5/14午前5時30分現在)では、129.35前後まで回復する動きとなっております。尚、注目された米4月消費者物価指数(結果+8.3%、予想+8.1%)および米4月コア消費者物価指数(結果+6.2%、予想+6.0%)は共に市場予想を上回る結果となりましたが、ドル買いでの反応は一時的なものに留まりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0552で寄り付いた後、@プーチン露大統領が戦勝記念日の式典で「特別軍事作戦」から「戦争宣言」へのフェーズ変更に踏み切らなかったことに対する安堵感を背景に、週前半は1.05台後半での底堅い動きが継続しました。しかし、一目均衡表転換線をバックに伸び悩むと、Aロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、B上記Aを背景とした欧州経済の先行き不透明感(欧米諸国による対露制裁強化→ロシアからのエネルギー供給制約→欧州圏におけるエネルギー不足→インフレ高止まり→欧州経済への下押し圧力)、C米インフレ指標の高止まり(米4月CPIおよび米4月PPI)、D上記Cを背景とした米FRBによるタカ派スタンスの継続懸念(米FRBによる二重引き締め→過剰流動性相場逆流への警戒感→株安・リスクアセット下落→資産現金化需要のドル買い圧力)、

EフィンランドによるNATO加盟申請の方針発表(フィンランドはロシアと国境を接しているため、ロシア側の反発必至→ロシア・ウクライナ問題に加えて、今後はロシア・フィンランドを巡る地政学的リスクに進展する恐れ)が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0350(2017年1月以来、約5年4ヵ月ぶり安値圏)まで急落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間5/14午前5時10分現在)では、1.0400前後で推移しております。尚、今週はECB高官(フランス中銀ビルロワドガロー総裁、エストニア中銀ミュラー総裁、ドイツ連銀ナーゲル総裁、ラガルドECB総裁など)よりタカ派的な発言が相次ぎましたが、市場の反応は限定的となりました(年内25bp×3回という市場の織り込み度合を変えるには至らず)。

来週の見通し(5/16−5/20)

<ドル円相場>
ドル円は5/9に記録した約20年ぶり高値131.36をトップに反落に転じると、週後半にかけて一時127.51まで急落しましたが、週末にかけて再び129円台半ばまで値を戻すなど、ボラタイルな相場展開が続いています。下落局面においても一目均衡表基準線が確りサポートラインとして機能したこと(下値の堅さを再確認)や、日足・週足・月足の全てにおいて一目均衡表三役好転や強気パーフェクトオーダーなどの強い買いシグナルが点灯していることを踏まえると、テクニカル的に見て、トレンドは崩れていないと判断できます(今週の下落は上昇トレンドの過程で見られる一時的なポジション調整と整理。一巡後にドル高・円安トレンドが再開する見込み)。また、ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによる金融引き締めスタンスの明確化(今週発表された米CPI・米PPIは共に高止まり→インフレ抑制を目的に米FRBによる50bp連続利上げ+バランスシート圧縮方針は不変)や、A日銀によるハト派スタンスの継続姿勢(指値オペを通じた10年債利回りの抑制方針と黒田総裁による円安容認スタンスの組み合わせ)、

B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、C資源価格上昇に伴う本邦貿易赤字の拡大懸念(構造的な円売り要因)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。今週はリスクオフの到来を受けて一時的に「リスク回避の円買い」が優勢となりましたが、リスクオフ到来時は、「リスク回避の円買い」と同様に、「リスク回避のドル買い=資産現金化需要のドル買い」も強まる傾向にあるため、ドル円相場が一方向に下落する可能性は低いと考えられます。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします(※上述の通り、株安などリスクオフ相場到来時は、ドルと円が綱引き状態となるため身動きが取りづらい。従ってドル円相場を見通す上では、現在は米株の動向よりも米金利の動向がより重要性が高い)。

尚、来週は中国の主要経済指標(中国4月小売売上高、同固定資産投資、同鉱工業生産)に加えて、米4月小売売上高や米当局者発言(ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁、セントルイス連銀ブラード総裁、フィラデルフィア連銀ハーカー総裁、パウエルFRB議長、クリーブランド連銀メスター総裁、シカゴ連銀エバンス総裁など)、本邦の4月消費者物価指数などに注目が集まります。

来週の予想レンジ(USDJPY):128.00ー132.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した約3ヵ月ぶり高値1.1496(昨年11/10以来の高値圏)をトップに反落に転じると、今週末にかけて2017年1月以来、約5年4ヵ月ぶり安値となる1.0350まで急落しました(わずか3ヵ月で1146ポイントの急落劇)。この間、主要テクニカルポイント(一目均衡表転換線や基準線、雲上下限や短・中・長期移動平均線など)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転や弱気のパーフェクトオーダーが成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを決定づけるチャート形状となりつつあります(パリティ割れが射程圏内)。また、ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、Aロシア・フィンランドを巡る地政学的リスクの発動懸念、B上記@Aを背景とした欧州経済への下押し圧力(欧州圏におけるエネルギー不足→インフレ昂進リスク→スタグフレーション懸念)、C米FRBによるタカ派スタンスの明確化(米FRBは通常時の2倍となる50bpの利上げを続ける意向を示している他、バランスシートの圧縮も開始→二重引き締め→欧米金融政策格差→ユーロ売り・ドル買い)、

Dドイツを巡る政局不透明感(ショルツ首相率いる社会民主党=SPDの支持率低下)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロ売り・ドル買い基調の継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はロシア・ウクライナを巡るヘッドラインや、フィンランドのNATO加盟に関する続報に加えて、欧州高官発言(パネッタ ECB専務理事、レーンECB専務理事、ラガルドECB総裁、デギンドスECB副総裁、オーストリア中銀ホルツマン総裁など)に注目があつまります。「地政学的リスク×米金融引き締め×リスクオフ」の組み合わせが当面ユーロ売り・ドル買い材料として重くのしかかってくると予測されるため、来週以降はいよいよ心理的節目1.0000(パリティ)割れを見据えたギアチェンジが必要となりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0150−1.0550

注:ポイント要約は編集部

『リスクオフ到来で急落するも下値は堅い。来週は130円台の回復を想定』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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