ドル円見通し 日銀の金融緩和政策継続、調整入れつつ円安容認水準試し続く
〇先週のドル円、4/27の安値126.93から4/28深夜に131.24まで上昇、週末には129.30まで反落
〇日銀政策決定会合での毎営業日指値オペ実施決定、総裁の円安許容姿勢に新たな円安水準試しへ
〇岸田首相の日銀政策支持姿勢、IMF高官の円安許容姿勢もサポートし、歴史的大上昇継続の印象強まる
〇米FRBの金融引き締め姿勢強まり米ドルの上昇目立つ、5/3-4のFOMC結果次第でドル高強まる可能性も
〇130.50超えからは一段高覗う展開、131.24超えれば132-133台を目指す
〇129円割れから続落の場合調整継続で128円前後への下落、129円以下での推移長引けば127円台序盤へ
【概況】
ドル円は4月13日に126.31円を付けて2015月年6月5日高値125.84円を超え、日銀による円安容認姿勢を背景に20日には129.40円に到達、昨年1月6日底102.57円以降の高値追いを観測した。4月28日の日銀金融政策決定会合を控え、4月27日安値126.93円までポジション調整的に下げたものの、28日の金融政策決定会合で日銀がマイナス金利の維持、金融緩和政策の継続、毎営業日の指値オペによる長期金利抑制を決定したことから一段高となり、4月28日深夜に131.24円を付けた。130円台到達と当面の材料消化としてその後は調整安に入り、30日未明には129.30円まで下げたが、4月27日安値126.93円からの上昇幅に対する半値押しラインとなる129.08円割れには至らずに週を終えた。
【日銀は頑固な金融緩和を維持、指値オペ常態化による長期金利抑制も強調】
日銀は4月28日の金融政策決定会合で現行のマイナス金利と金融緩和政策の維持を決定し、さらに毎営業日における指値オペ実施による長期金利抑制姿勢を強調した。黒田総裁は会見で「為替の急激な変動はマイナスに作用するという認識は鈴木財務相と同じ」と述べたが円安へのけん制意識は乏しいと市場は受け止めて政策発表前の129円弱の水準から28日深夜高値131.24円へ急伸した。
2015年6月5日高値125.84円を超えた段階から市場はかつての125円台=黒田ラインを突破して新たな円安容認水準を試しに入っている。
4月26日に岸田首相は「日銀は2%の物価目標の下に政策を進めている。引き続き努力を続けていただくよう期待している」と述べて日銀の姿勢を支持、IMF高官は「現状の円安はファンダメンタルズを反映したもので無秩序ではない」として円安を容認、日銀は今回の政策決定会合でさらに指値オペの毎日運用を強調することでかえって円安を推し進める結果となった。
円安は一部大手輸出企業にはプラスだがサプライチェーンが世界規模に拡散して現地生産が進んでいる現状ではかつてのような円安=輸出促進で日本経済に大きなプラスということにはならず、輸入インフレによる国内企業及び家計への圧迫感を強めるものだが、日銀はそれでも大手輸出企業支援と円安による株高を通しての投資家支援を優先するスタンスを示したともいえる。
4月28日深夜高値で131.24円をつけたところからはいったん材料消化としてドルストレートでのドル全面高のゆるみもあって30日未明には129.30円まで下げたが、基調としては昨年1月底102.57円を起点とした歴史的大上昇が続くという印象が強まったと思われる。
【ドル全面高基調続く】
歴史的な円安に目が行くところだが、円安よりも下落率は若干低いがユーロやポンドの下落も目立ち、先週は豪ドルやNZドル、南アランド等の新興国通貨安も際立ってきており、ドル全面高の様相だ。
ドル指数は4月28日に103.93へ上昇して2017年1月3日の103.82と2020年3月20日の102.99によるダブル天井ラインを突破して2002年12月以来20年ぶりの高値に達している。まだ2015年以降の90割れを買われて100以上を売られるボックス型の長期的な持ち合いの範囲でやや上限を超えたところともいえるが、この間のレンジを超えて一段高に入ってきている可能性もある。ドル指数の2021年1月底89.21からの上昇率は116.5%であり、ドル円の同時期における上昇率128%よりは低いが、ユーロドルはこの間に凡そ15%下げ、ポンドドルも凡そ13%下落している。
昨年来の世界的なインフレがウクライナ戦争とロシア制裁により一段と深刻化したことで米連銀による金融引き締め姿勢が一段と強まっていることがドル全面高の主要因だが、ロシア制裁の影響が米国に対しては軽微でありエネルギーや穀物輸出面ではメリットもあるのに対してロシア経済への依存度が大きい欧州、英国はロシア制裁による悪影響も厳しくなり始めていることでのユーロやポンドへの売り圧力も大きい。また中国の感染拡大による景気減速懸念がコモディティ通貨への売り圧力となり豪ドル等も反落している。
こうしたドル全面高の中で一段と弱い円という印象が強まっているが、既に1年を超える円安続きの中で円建て資産の目減りをカバーするために投資家が外貨への逃避買いへ走るとスパイラル的な円安の加速という事態も警戒される。
5月3-4日に米連銀のFOMCがあり、市場は0.50%利上げと量的金融引き締め開始を想定しているが、FOMCによる利上げペース加速姿勢が鮮明となり他の主要中銀よりもタカ派姿勢が示されればドル高感が強まり、主要通貨の中で最も弱い円が売られやすくなると思われる。
【月足チャートレベルでの上昇感】
2021年1月底からの上昇幅はすでに28.67円に拡大している。1990年以降においては、2005年1月17日底101.66円から2007年6月22日高値124.15円までの22.49円を超えており、2011年10月31日底75.57円から2015年6月5日高値125.84円までの上昇幅50.27円における前半戦の2013年5月22日高値103.73円までの上昇幅28.16円も超えている。
今後の目安とされる水準は、1999年11月26日底101.22円から2002年1月31日高値135.15円までの上昇幅33.93円、2015年への50.27円であり、今回の上昇幅を33.93円とすれば136.50円、50.27円とすれば152.84円と計測される。
過去の主要高値としては2002年1月31日高値135.15円、その上は1998年8月11日高値147.63円がある。
現状は概ね8年周期(7年から10年)の底打ちサイクルにおける大上昇期といえる。前回の天井が2015年6月高値であり既にほぼ7年を経過しているところだが、まだ伸び代も残るところであり、1か月で8円を超える大上昇を実現している勢いのため、向こう1か月、2か月を現状ペースで急伸しても不思議はないと心得る。
2011年10月31日底を中心として相場の揺れ返しで左右対称性を見れば、2007年6月高値と2015年6月高値が対であり、現状は2002年1月天井ないしは1999年8月天井を対とした揺れ返しの最中という見方もできるのではないか。
【当面のポイント】
日足チャートレベルでは今年1月4日高値116.34円と2月10日高値116.33円による上値抵抗線を突破しての急伸だが、上昇起点である2月24日安値から2か月を経過、1月24日安値からは3か月を経過しており、相対力指数も80ポイント台後半を3月28日高値時と4月20日高値時の二度つけているため、長期的な大上昇は継続するとしてもいったんは数週レベルの調整が入っても不思議ないところには来ていると注意したい。現状から一段高したところから調整を入れるか、4月28日深夜高値を当面のピークとしてやや深い調整が入る可能性も考えられる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、129.00円を下値支持線、4月28日深夜高値131.24円を上値抵抗線とする。
(2)130.50円超えからは一段高を窺う展開とし、131.24円超えからは132円から133円台を目指すとみる。
(3)129円を割り込まないか一時的に割り込んでも130円台回復へ切り返す場合は、上昇再開からの一段高余地ありとするが、129円割れから続落の場合は4月28日深夜高値からの調整継続として128円前後への下落を想定する。128円割れは買われやすいとみるが、129円以下での推移が長引く場合は調整安が引き継がれ127円台序盤へ向かう可能性があるとみる。
【当面の主な予定】
5/2(月)
休場 香港、中国、台湾、シンガポール、マレーシア、タイ、南ア、インドネシア、ベトナム、トルコ、英国、ロシア
14:00 (日) 4月 消費者態度指数・一般世帯 (3月 32.8)
14:00 (日) 4月 軽自動車・新車販売台数
16:55 (独) 4月 製造業PMI改定値 (速報 54.1)
17:00 (欧) 4月 製造業PMI改定値 (速報 55.3)
18:00 (欧) 4月 経済信頼感 (3月 108.5、予想 108.0)
18:00 (欧) 4月 消費者信頼感確定値 (速報 -16.9、予想 -16.9)
22:45 (米) 4月 製造業PMI改定値 (速報 59.7 ―
23:00 (米) 4月 ISM製造業景況指数 (3月 57.1、予想 58.0)
23:00 (米) 3月 建設支出 前月比 (2月 0.5%、予想 0.8%)
5/3(火)
休場 日本、中国、ベトナム、インド、インドネシア、シンガポール、マレーシア、ポーランド、トルコ、ロシア
米連邦公開市場委員会(FOMC)初日
07:45 (NZ) 3月 住宅建設許可件数 前月比 (2月 10.5%)
13:30 (豪) 豪中銀 政策金利 (現行 0.10%、予想 0.50%)
16:55 (独) 4月 失業者数 前月比 (3月 -1.80万人)
16:55 (独) 4月 失業率 (3月 5.0%)
17:30 (英) 4月 製造業PMI改定値 (速報 55.3)
18:00 (欧) 3月 生産者物価指数 前月比 (2月 1.1%)
18:00 (欧) 3月 生産者物価指数 前年同月比 (2月 31.4%)
18:00 (欧) 3月 失業率 (2月 6.8%)
23:00 (米) 3月 製造業新規受注 前月比 (2月 -0.5%、予想 1.2%)
5/4(水)
休場(日本、中国、マレーシア、インドネシア、タイ、トルコ
英中銀金融政策委員会(MPC)初日
06:00 ニュージーランド中銀、金融安定性報告書公表
07:45 (NZ) 1-3月期 就業者数 前期比 (10-12月 0.1%)
07:45 (NZ) 1-3月期 就業者数 前年同期比 (10-12月 3.7%)
07:45 (NZ) 1-3月期 失業率 (10-12月 3.2%)
10:30 (豪) 3月 小売売上高 前月比 (2月 1.8%)
10:30 (豪) 3月 持家住宅ローン件数 前月比 (2月 -4.7%、予想 -0.2%)
15:00 (独) 3月 貿易収支 (2月 115億ユーロ)
16:55 (独) 4月 サービス業PMI改定値 (速報 57.9)
17:00 (欧) 4月 サービス業PMI改定値 (速報 57.7)
18:00 (欧) 3月 小売売上高 前月比 (2月 0.3%)
18:00 (欧) 3月 小売売上高 前年同月比 (2月 5.0%)
21:15 (米) 4月 ADP非農業部門民間就業者数 前月比 (3月 45.5万人、予想 37.0万人)
21:30 (米) 3月 貿易収支 (2月 -892億ドル、予想 -866億ドル)
22:45 (米) 4月 サービス業PMI改定値 (速報 54.7)
23:00 (米) 4月 ISM非製造業景況指数 (3月 58.3、予想 59.0)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 0.25-0.50%、予想 0.75-1.00%)
27:30 (米) パウエル米連銀議長 定例記者会見
5/5(木)
休場 日本、韓国、インドネシア
英地方選・北アイルランド議会選挙、OPECプラス閣僚級会合
06:30 ブラジル中銀、政策金利発表
10:30 (豪) 3月 住宅建設許可件数 前月比 (2月 43.5%)
10:30 (豪) 3月 貿易収支 (2月 74.57億豪ドル)
10:45 (中) 4月 財新サービス業PMI (3月 42.0、予想 41.0)
15:00 (独) 3月 製造業新規受注 前月比 (2月 -2.2%)
15:00 (独) 3月 製造業新規受注 前年同月比 (2月 2.9%)
17:30 (英) 4月 サービス業PMI改定値 (速報 58.3)
20:00 (英) 英中銀 政策金利 (現行 0.75%)
20:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性速報値 前期比 (10-12月 6.6%、予想 -2.3%)
21:30 (米) 1-3月期 単位労働コスト速報値 前期比年率 (10-12月 0.9%、予想 6.6%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 18.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 140.8万人)
5/6(金)
休場 インドネシア
08:30 (日) 4月 東京区部消費者物価指数・生鮮食品除く 前年同月比 (3月 0.8%、予想 1.8%)
08:50 (日) 4月 マネタリーベース 前年同月比 (3月 7.9%)
10:30 (豪) 豪中銀 四半期金融政策報告
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 0.2%)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 3.2%)
18:15 (英) マン英中銀委員、講演
20:15 (英) ピル英中銀理事、講演
21:30 (米) 4月 非農業部門就業者数 前月比 (3月 43.1万人、予想 40.0万人)
21:30 (米) 4月 失業率 (3月 3.6%、予想 3.6%)
21:30 (米) 4月 平均時給 前月比 (3月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 平均時給 前年同月比 (3月 5.6%、予想 5.5%)
22:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、イベント挨拶
24:00 (英) テンレイロ英中銀委員、講演
28:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、挨拶
28:00 (米) 3月 消費者信用残 前月比 (2月 418.2億ドル、予想 200.0億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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