ドル円見通し 118円台到達で2016年12月高値に迫る(22/3/15)

ドル円は米長期債利回りの連騰を見ながら3月14日夜に118円台に到達、15日午前序盤には118.30円台まで高値を伸ばしている。

ドル円見通し 118円台到達で2016年12月高値に迫る(22/3/15)

ドル円見通し 118円台到達で2016年12月高値に迫る

〇ドル円、3/14夜に118円台に到達、3/15午前序盤に118.30台まで高値を伸ばす
〇FOMCで予想以上の金融引き締め姿勢示す可能性をみて米長期債利回り連騰、それを背景に118円台到達
〇米10年債利回りは大幅上昇で2.14%をつける、2年8か月ぶりの高水準
〇3/14夜からロシア・ウクライナの停戦協議開始、一定の成果への期待も
〇NY原油・NY金ともに下落、戦争と制裁によるリスク取りの買いはいったん仕切り直しの印象
〇118円以上での推移中は上向きとし、118.50超えからは119円台を目指す流れとみる
〇117.70割れからはいったん下げに入るとみて、117円台前半(117.50から117.00)を試すとみる

【概況】

ドル円は米長期債利回りの連騰を見ながら3月14日夜に118円台に到達、15日午前序盤には118.30円台まで高値を伸ばしている。
1月4日高値116.34円と2月10日高値116.33円がダブルトップ型となって失速し、2月後半からは116円手前を上値抵抗線とした持ち合いを形成していたが、3月7日から米10年債利回り等が連騰に入ったことで押し上げられ、3月10日に116円台に到達して持ち合い上放れしたところから勢い付き、週末から週明けへ米10年債利回りがさらに水準を切り上げたことで118円台に到達した。

3月15日と16日の両日には米連銀FOMCが開催され17日未明には声明発表と議長会見があるが、3月10日の米2月消費者物価上昇率が前年比7.9%で1982年以来40年ぶりの高水準となり、ウクライナ情勢及びロシア制裁によるインフレ深刻化への懸念が強まる中で、市場予想以上に金融引き締め姿勢を示す可能性もあるとみて長期債利回りの上昇が勢い付き、日米金利差でドル円の上昇も加速している。
既に2016年12月15日高値118.65円以来の高値水準に達しているが、2016年12月高値を超えるようだとチャート上の上値抵抗となる過去の高値は2015年11月18日高値123.73円、同年6月5日高値125.84円まで見当たらなくなる。輸入インフレ進行による円安感、ウクライナ情勢でもリスク回避先としての円買いがさほど活発化しなかったことで円が売られている印象だ。

【米10年債利回りは2年8か月ぶりの高水準】

米長期金利の指標である10年債利回りは前週末比で0.14%高の大幅上昇となり2.14%を付けた。2019年7月以来2年8か月ぶりの高水準であり、パンデミック発生前の水準へ切り返している。30年債利回りも0.11%上昇の2.47%を付けて2021年3月18日の2.45%及び2019年11月8日の2.43%を超えて2.50%台回復に迫っている。2年債利回りも0.12%上昇の1.87%を付けてパンデミック以降の最高水準を更新している。
一方でNYダウは前日比1.05ドル高とわずかな上昇、ナスダック総合指数は長期金利上昇を嫌って262.59ポイント安と下落した。ウクライナ情勢とロシア制裁による影響、大量の難民発生による欧州景気への悪影響も重なる。

【停戦協議見守る】

ロシアとウクライナは3月14日夜からオンラインでの停戦協議を開始、いったん中断したところから15日は再開している。

3月14日に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はウクライナ難民が280万人を超えたと発表した。3月11日の1日で11万人が脱出したとし、第2次世界大戦以降における欧州で最大の難民発生事案となっているとした。欧州各国は隣接の欧州民として難民受け入れに積極的だが、膨大な難民が押し寄せることでの経済的な負担も大きく限界にきているとの見方もある。またロシア制裁は通商関係の依存度が高い欧州経済にとっても大きな打撃となる。ロシア債がデフォルト寸前と懸念されているものの貸し倒れによる欧州金融機関の打撃、ロシア進出企業の撤退による損失、原油や天然ガス、石炭、非鉄金属、穀物・飼料の高騰による物価上昇も影響が大きい。
3月14日からの停戦協議に対しては一定の成果があるのではないかとの期待もある。ウクライナ代表団のポドリャク大統領府顧問は「ロシアは我々の提案を注意深く聞いている」と述べ、3月10日にトルコで行われた両国の外相会談後にはプーチン大統領が「幾つかの前向きな進展があった」と述べたとの報道もあった。

3月14日のNY原油は前日比6.32ドル安と下落して安値では99.76ドルを付けた。3月7日にロシア産原油禁輸検討報道から急騰したところが危機感による買い殺到のピークとなり3月入りしてからの急騰分を解消する反落となっている。有事の金買いで大上昇していたNY金も3月8日に2078.8ドルを付けて2020年8月天井の2078.0ドルをわずかに超えたところから3月14日には安値で1952.0ドルまで大幅下落している。ひとまず戦争と制裁によるリスク取りの買いもいったん仕切り直しに入っている印象だが、停戦協議が再び不調に終わるようだと制裁のエスカレートを警戒して原油と金の上昇も再開しかねないところと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、3月4日深夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りしたとして3月8日夜から10日夜にかけての間への上昇を想定していたが、10日夜を超えて高値更新が続いたため3月11日午前時点では3月4日深夜安値から3日目となる3月9日深夜安値を直近のサイクルボトムとして既に新たな強気サイクル入りしている可能性が高まったとして高値形成期を14日夜から16日夜にかけての間と想定した。
118円台に到達して既に前回サイクルトップから3日を経過しているので反落注意期にあるため、117.70円以上での推移中は高値更新余地ありとするが、117.70円割れからは弱気サイクル入りとみて15日の日中から16日深夜ないしは17日にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では3月8日早朝時点で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いたが、その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とする。連騰後の反動安も警戒がいるところとみて遅行スパン悪化からは下落期として安値試し優先とし、その際は先行スパンを試す流れとみる。ただし遅行スパンがいったん悪化してもその後に好転するところからは上昇再開に入る可能性が高いのではないかと考える。

60分足の相対力指数は14日から15日早朝への高値更新に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られるので反落注意とし、60ポイント割れからは40ポイント前後を試す下落を想定する。また高値を更新しても14日の指数のピークを超えなければ弱気逆行型としてその後の反落注意とする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、117.70円を下値支持線、118.50円を上値抵抗線とする。
(2)118円以上での推移か一時的に割り込んでも回復するうちは上向きとし、118.50円超えからは119円台を目指す流れとみる。118.85円以上は反落警戒とするが、118円以上での推移なら16日も高値試しを続けやすいとみる。
(3)117.70円割れからはいったん下げに入るとみて117円台前半(117.50円から117.00円)を試すとみる。117.25円以下は反騰注意とするが、117.70円以下での推移なら16日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

3/15(火)
米連銀、連邦公開市場委員会(FOMC)初日
11:00 (中) 2月 小売売上高 年初来前年比 (12月 12.5%、予想 3.0%)
11:00 (中) 2月 鉱工業生産 年初来前年比 (12月 9.6%、予想 3.9%)
16:00 (英) 2月 失業保険申請件数 (1月 -3.19万件)
16:00 (英) 2月 失業率 (1月 4.6%)
16:00 (英) 1月 失業率・ILO方式 (12月 4.1%、予想 4.0%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 1.2%、予想 0.1%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 1.6%、予想 -0.5%)
19:00 (独) 3月 ZEW景況感 (2月 54.3、予想 10.0)
19:00 (欧) 3月 ZEW景況感 (2月 48.6)

21:30 (米) 3月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (2月 3.1、予想 7.0)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 1.0%、予想 0.9%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 9.7%、予想 10.0%)
21:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前月比 (1月 0.8%、予想 0.6%)
21:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前年同月比 (1月 8.3%、予想 8.7%)

3/16(水)
北大西洋条約機構(NATO)臨時国防相会合
06:45 (NZ) 10-12月期 経常収支 (7-9月 -83.00億NZドル、予想 -63.50億NZドル)
08:50 (日) 2月 通関貿易収支・季調前 (1月 -2兆1911億円、予想 -1241億円)
08:50 (日) 2月 通関貿易収支・季調済 (1月 -9326億円、予想 -3909億円)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 -1.3%)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 -0.9%)
13:30 (日) 1月 設備稼働率 前月比 (12月 -0.4%)

21:30 (米) 2月 小売売上高 前月比 (1月 3.8%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 小売売上高・除自動車 前月比 (1月 3.3%、予想 0.9%)
21:30 (米) 2月 輸入物価指数 前月比 (1月 2.0%、予想 1.6%)
21:30 (米) 2月 輸出物価指数 前月比 (1月 2.9%、予想 1.2%)
23:00 (米) 1月 企業在庫 前月比 (12月 2.1%、予想 1.1%)
23:00 (米) 3月 NAHB住宅市場指数 (2月 82、予想 81)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 0.00-0.25%、予想 0.25-0.50%)
27:30 (米) パウエル米銀議長、定例記者会見



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