ドル円見通し 世界連鎖株安、リスク回避的円高で1月14日安値試す(週報1月第4週)

1月21日はNYダウが6日続落、株売り債券買いで米10年債利回りは低下、ウクライナ情勢等の地政学的リスク等がドル円を押し下げた。

ドル円見通し 世界連鎖株安、リスク回避的円高で1月14日安値試す(週報1月第4週)

ドル円見通し 世界連鎖株安、リスク回避的円高で1月14日安値試す

〇ドル円、21日夜には113.58をつけ1/14安値113.47割れへ余裕乏しい
〇NYダウ6日続落、下げ幅は2,723ドルに達し昨年11月の下落規模超える
〇オミクロン株感染拡大による人手不足とインフレ高進、ウクライナ情勢緊迫化も重しに
〇1/25-26のFOMC、予想は現状維持だがサプライズあるか
〇種々の材料入り組み、ドル円は強弱反応の模索強いられることとなりそう
〇114.50以下での推移中は一段安余地あり、113円で支えられない場合112.50前後への下落へ
〇114.50超えからは上昇再開へ、115.05を超えれば1/4高値116.36を目指すか

【概況】

ドル円は1月4日高値で116.34円を付けて5年ぶり高値水準に到達してから1月14日夜安値113.47円まで2.87円の下落となり、1月18日昼に日銀の金融緩和継続等を背景に115.05円へ戻して1月14日への下げ幅に対する半値戻し=114.90円を若干超えたもののその後は再び売られて21日夜には113.58円を付けて14日夜安値割れへ余裕が乏しい状況で週を終えた。
1月4日への上昇は米長期債利回り上昇を背景としていたが、米連銀の金融引き締め姿勢については市場も織り込んだとしてドル安基調へと傾斜したことと、1月5日に史上最高値を付けたNYダウが調整安に入ったことで株安からのリスク回避的な円高が進んだことが重なった印象だ。1月21日はNYダウが6日続落、株売り債券買いで米10年債利回りは低下、ウクライナ情勢等の地政学的リスク等がドル円を押し下げた。

【NYダウの6日続落、世界連鎖株安による円高】

1月21日のNYダウは前日比450.02ドル安と下落したがこれで1月13日からは6日連続の下落、1月5日の史上最高値から21日安値までの下げ幅は2723ドル安となり11月8日高値から12月1日安値まで2559ドル安の下落となったところを超える規模に発展した。またナスダック総合指数も1月18日から21日へ4日続落となり21日安値では13764.24ポイントを付けて11月22日の史上最高値16212.23ポイントからの下落規模はパンデミック暴落以降の上昇期において最大となっている。
2020年春のパンデミック初期の暴落からの出直りを続けて史上最高値更新を繰り返して半ばバブル的な大上昇を続けてきた米国株価指数も大きな変調期に入っている。現状を押し目形成として切り返すならさらにバブル的な上昇が膨らむ可能性もあるが、既に2年近い上昇からの変化であり、今回は押し目形成にしても規模の大きな下落となる可能性が警戒される。

オミクロン株の感染急増でも欧米はロックダウンには入らずにウィズコロナ政策を継続して「インフレを伴った景気回復」感を維持してきたが、3週連続で新規失業保険申請件数が増加するなど、感染者急増による人手不足とインフレ高進による消費への圧迫感、米連銀等主要中銀によるインフレ対策としての金融引き締め姿勢の強化が株式市場には大きなプレッシャーとなっている。またカザフスタン暴動からUAEへの武装勢力の攻撃とサウジ等連合軍によるイエメンへの空爆、ウクライナとロシアの軍事緊張等が原油価格の高騰を一段と進めていることもインフレ進行感を強めている。

【1月25-26日のFOMC、予想は現状維持だがサプライズは?】

米10年債利回りは1月19日に1.90%を付けて2020年3月以降の高値を更新、パンデミック前の2020年1月以来の高水準に達している。株安が厳しいところでは株売り債券買いで利回りが低下する局面もあるが、基調としてはインフレ率を追いかける上昇基調にある。2年債利回りも1月19日に1.07%へ到達して2020年2月以来の水準に到達し、その後も高値圏にある。

1月25-26日に米連銀FOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)がある。12月のFOMCでは早期のテーパリング終了と年3回の利上げ見通しを示したが、インフレ進行が続く中で最近は年4回の利上げ予想も出始めている。今回のFOMCでは政策金利の現状維持が予想されているが、3月、6月、9月、12月の4回利上げ見通しが示される場合や、米連銀の総資産圧縮が早々に始まる姿勢が示される場合、あるいは市場予想を超えて今回の会合で利上げが決定される場合は米長期債利回り上昇、ドル高が進行しやすくなり、長期的な金融緩和継続姿勢にある日銀とのスタンスの差からドル円が反騰入りするきっかけとなる可能性がある。逆に、最近の景気鈍化懸念を踏まえて米連銀のタカ派シフトにブレーキがかかる場合や、やや連続利上げへの躊躇感がみられる場合はドル高反応も限定的となるかもしれない。

米連銀がタカ派姿勢を強めて株安反応が続く場合、長期債利回りの上昇が鈍ってドル円への押し上げも限定的となり、株安からのリスク回避的な円の買い戻しでドル円が一段と下落するケースも考えられる。特にウクライナ情勢が米ロ交渉を中心にいったん落ち着くならら金融市場全般への影響も限定的となるが、緊張が激化する場合は世界連鎖株安要因となり米長期債利回り上昇を抑え込む可能性も考えておく必要がある。FOMC、感染拡大による経済への影響度、ウクライナ情勢等が入り組むところでドル円としても強弱反応の模索を強いられることにもなりかねないところだ。

【今後の展開イメージと当面のポイント】

【今後の展開イメージと当面のポイント】

1月4日高値116.34円から1月14日安値113.47円までの下げ幅は2.87円。2021年1月6日底以降における大きな調整安は3月31日高値から4月23日安値までの3.50円、7月2日高値から8月4日安値への2.94円、11月24日高値から11月30日安値への2.99円である。
1月14日安値を割り込む場合、4月23日への下落時並みとして112.84円、さらに11月30日安値112.52円を試す可能性が考えられる。2021年1月6日底と9月15日安値を結ぶこれまでの上昇トレンドの下値支持線は112.50円近辺に来ているので、112.50円前後は下支えられるのではないかと考えられる。

チャートパターンとして出現しやすい傾向を踏まえて3つのパターンを想定しておく。
第一に、現状から112.50円前後へ下落してから115円前後までいったん戻し、その後に底割れへと一段安すれば1月4日高値を中心とした三尊天井型となり下落も長期化しやすくなると思われる。
第二に、112.50円前後まで下げてからの反騰で115円前後へ戻してから上昇一服による小反落しても底上げして高値切り上げへ進めば1月4日高値からの調整安を消化して上昇再開に入り一段高へ進みやすくなると思われる。
第三に、現状から113円台序盤までの下落にとどまって11月30日安値からの底上げ基調を維持し、1月4日夜高値以降の戻り高値を結ぶ抵抗線の来る114.50円を超えれば115円超えから上昇が勢い付く可能性が高まり、その場合は第二における想定よりも強く早い上昇基調で1月4日高値更新へ進む可能性も高まる流れと考えられる。

以上を踏まえて中勢のポイントを示す。
(1)当面、113.00円を下値支持線、114.50円を上値抵抗線とする。
(2)114.50円以下での推移中は一段安余地ありとみる。113円で支えられない場合は112.50円前後への下落を想定するが、112.70円以下は反発注意圏と考え、その後に1円を超える反騰に入るところからは上昇再開を考える。
(3)114.50円超えからは1月4日夜高値以降の下落一巡による上昇再開の可能性を優先して115.05円試しとみる。115円前後はいったん売られやすいとみるが、115.05円超えから続伸に入れば1月4日高値超えを目指す上昇を想定する。(了)


注:ポイント要約は編集部

【当面の主な予定】

1/24(月)
17:30 (独) 1月 製造業PMI速報値 (12月 57.4、予想 57.0)
17:30 (独) 1月 サービス業PMI速報値 (12月 48.7、予想 48.0)
18:00 (欧) 1月 製造業PMI速報値 (12月 58.0、予想 57.5)
18:00 (欧) 1月 サービス業PMI速報値 (12月 53.1、予想 52.2)
18:30 (英) 1月 製造業PMI速報値 (12月 57.9、予想 57.9)
18:30 (英) 1月 サービス業PMI速報値 (12月 53.6、予想 54.8)
23:45 (米) 1月 製造業PMI速報値 (12月 57.7、予想 56.8)
23:45 (米) 1月 サービス業PMI速報値 (12月 57.6、予想 55.0)
27:00 (米) 財務省2年債入札

1/25(火)
米連邦公開市場委員会(FOMC)初日
国際通貨基金(IMF)世界経済見通し
09:30 (豪) 10-12月期 消費者物価 前期比 (7−9月 0.8%、予想 1.0%)
09:30 (豪) 10-12月期 消費者物価 前年同期比 (7−9月 3.0%、予想 3.2%)
09:30 (豪) 12月 NAB企業景況感指数 (11月 12)
18:00 (独) 1月 IFO企業景況感指数 (11月 94.7、予想 94.7)
23:00 (米) 11月 連邦住宅金融局(FHFA)住宅価格指数 前月比 (10月 1.1%、予想 1.1%)
23:00 (米) 11月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年同月比 (10月 18.4%、予想 18.4%)
24:00 (米) 1月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (12月 115.8、予想 111.8)
24:00 (米) 1月 リッチモンド連銀製造業指数 (12月 16、予想 14)
27:00 (米) 財務省5年債入札

1/26(水)
06:45 (NZ) 12月 貿易収支 (11月 -8.64億NZドル)
08:50 (日) 12月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (11月 1.1%、予想 1.0%)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合(1月17-18日分)主な意見
14:00 (日) 11月 景気先行指数(CI)改定値 (10月 103.0)
14:00 (日) 11月 景気一致指数(CI)改定値 (10月 93.6)
22:30 (米) 12月 卸売在庫 前月比 (11月 1.2%、予想 1.3%)
24:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
24:00 (米) 12月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (11月 74.4万件、予想 75.0万件)
24:00 (米) 12月 新築住宅販売件数 前月比 (11月 12.4%、予想 0.8%)
24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
27:00 (米) 財務省2年物変動利付債入札
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC) 政策金利 (現行 0.00-0.25%、予想 0.00-0.25%)
28:30 (米) パウエル米連銀議長、定例記者会見

1/27(木)
未 定 (南) 南ア中銀 政策金利 (現行 3.75%、予想 4.00%)
06:45 (NZ) 10-12月期 消費者物価 前期比 (7−9月 2.2%、予想 1.2%)
06:45 (NZ) 10-12月期 消費者物価 前年同期比 (7−9月 4.9%、予想 5.6%)
09:30 (豪) 10-12月期 輸入物価指数 前期比 (7−9月 5.4%、予想 1.4%)
16:00 (独) 2月 GFK消費者信頼感 (1月 -6.8、予想 -8.0)

22:30 (米) 12月 耐久財受注 前月比 (11月 2.5%、予想 -0.5%)
22:30 (米) 12月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (11月 0.8%、予想 0.5%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 28.6万件、予想 26.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 163.5万人)
22:30 (米) 10-12月期 GDP速報値 前期比年率 (7−9月 2.3%、予想 5.6%)
22:30 (米) 10-12月期 GDP個人消費速報値 前期比年率 (7−9月 12.0%、予想 2.6%)
22:30 (米) 10-12月期 コアPCE速報値 前期比年率 (7−9月 4.6%、予想 4.8%)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前月比 (11月 -2.2%、予想 0.4%)
24:00 (米) 12月 住宅販売保留指数 前年同月比 (11月 0.2%)
27:00 (米) 財務省7年債入札

1/28(金)
08:30 (日) 1月 東京区部消費者物価 生鮮食料品除く 前年同月比 (12月 0.5%、予想 0.3%)
09:30 (豪) 10-12月期 生産者物価 前期比 (7−9月 1.1%)
09:30 (豪) 10-12月期 生産者物価 前年同期比 (7−9月 2.9%)
18:00 (独) 10-12月期 GDP速報値 前期比 (7−9月 1.7%、予想 -0.2%)
18:00 (独) 10-12月期 GDP速報値 前年同期比 (7−9月 2.5%)
19:00 (欧) 1月 経済信頼感 (12月 115.3、予想 114.5)
19:00 (欧) 1月 消費者信頼感確定値
22:30 (米) 10-12月期 雇用コスト指数 前期比 (7−9月 1.3%、予想 1.2%)
22:30 (米) 12月 個人所得 前月比 (11月 0.4%、予想 0.5%)
22:30 (米) 12月 個人消費支出(PCE) 前月比 (11月 0.6%、予想 -0.6%)
22:30 (米) 12月 PCEデフレーター 前年同月比 (11月 5.7%)
22:30 (米) 12月 PCEコアデフレーター 前月比 (11月 0.5%、予想 0.5%)
22:30 (米) 12月 PCEコアデフレーター 前年同月比 (11月 4.7%、予想 4.8%)
24:00 (米) 1月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 68.8、予想 68.6)

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