ドル円見通し 114円に届かずに失速気味の展開、恒大集団の部分デフォルト認定が重石
〇ドル円、中国恒大集団の部分的デフォルト認定が報じられ、リスク回避感から12/9夕113.26まで下落
〇米新規失業保険申請件数の好結果を受け113.64まで戻すが勢いに欠け、その後113.50を挟んだ揉み合い
〇格付け大手フィッチ、恒大集団に対し部分的デフォルト認定、佳兆業集団を格下げと報じられる
〇米新規失業保険申請件数は52年ぶり低水準、FOMCで利上げ予想時期前倒しか
〇インフレ進行感強まれば114円超えのきっかけとなり得るが、リスク回避要因からドル円の動きは慎重
〇113.70を下回るうちは一段安余地ありとし、113.26割れからは113.00前後試しを想定する
〇113.70超えからは113.95試しとし、高値更新からは114円台中盤を目指す流れとみる
【概況】
ドル円はオミクロン株感染拡大に対する過度の悲観が後退したことで12月4日早朝安値112.54円と11月30日深夜安値112.52円とのダブルボトムとして戻しに入り、12月8日夜には113.95円を付けた。11月29日深夜高値と同値としたところからは失速、114円には届かずに戻り一巡となり下落気味の推移に入っている。12月9日夕刻には中国恒大集団に対するフィッチ・レーティングスによる部分的デフォルト認定が報じられてリスク回避感が再燃したことに圧されて113.26円まで下落、9日夜の米新規失業保険申請件数が予想を大幅に下回ったことでのドル高局面も113.64円まで戻したものの勢いに欠け、その後は113.50円を挟んで揉み合いとなっている。
【中国恒大集団の一部でデフォルトと認定】
格付け大手フィッチ・レーティングスは12月9日夕刻にかねてから経営危機にありデフォルト回避の綱渡りが続いてきた中国不動産デベロッパー大手の中国恒大集団に対して「一部債務不履行=部分的デフォルト」に陥ったと認定した。恒大集団に対するデフォルト認定は大手格付け会社としては初めてだが、今のところ破産申し立てはなされておらず事業も継続しているものの、正式にデフォルトとなると不履行となった社債以外の他の外貨建て社債も同時にデフォルトと見なされる可能性が高い。恒大集団は6月末時点で1兆9665億元(約35兆円)規模とされ、このうち外貨建て債務は約190億ドル(約2兆円)だった。
もう一つ、中国の不動産デベロッパーの佳兆業集団が120億ドル規模のオフショア社債について再編作業を開始したとの報道がある。同社は12月7日満期の社債4億ドルを償還できずに全てのオフショア社債についてクロスデフォルト条項を発動し、格付け会社フィッチ・レーティングスは同社について「一部債務不履行(RD)」へ格下げした。恒大集団に続く負債規模であり、これらの問題解決と市場反応がどこまで深刻化するのか、材料を消化してゆくのか注目される。
【米新規失業保険申請件数は52年ぶり低水準、FOMCの利上げ予想時期も前倒しか】
米労働省による新規失業保険申請件数は12月4日までの週間で18万4000件となり前週から4万3000件減少、市場予想の21万5000件を大幅に下回り1969年9月以来凡そ52年ぶりの低水準となった。昨年パンデミック発生以降の最低を更新しており労働市場改善と物価上昇により米連銀が12月14-15日のFOMC(16日未明に声明発表、議長会見)でテーパリング(量的金融緩和縮小)の早期終了と利上げ想定時期の前倒しを決定しやすい状況となった。
12月10日夜には米11月消費者物価上昇率の発表があるが、市場の事前予想では全体の前年比が6.8%となり10月の6.2%から伸びが加速、コア指数の前年比も4.9%の予想で10月の4.6%を上回ると見込まれている。
インフレ進行感が一段と強まれば米連銀のインフレ対策姿勢もより鮮明となり米長期債利回り上昇に反映すればドル円も114円超えへのきっかけを得る可能性があるところだが、中国恒大集団に対する部分的デフォルト認定が新たなリスク回避要因となっていることや、オミクロン株感染拡大に対する楽観の継続性にもまだ注意が必要なためにドル円の動きも慎重な状況にとどまっている。
12月9日の米10年債利回りは前日比0.02%低下の1.50%、30年債利回りは同0.01%低下の1.88%、2年債利回りは同0.01%上昇の0.69%だった。NYダウは前日比0.06ドル安と確りしたが、ナスダック総合指数は269.62ポイント安と大幅下落している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、11月30日夜安値と12月4日未明安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしたとして12月8日夜から10日夜にかけての間への上昇を想定していたが、9日午前時点では12月8日夜の反落時安値113.29円割れからは弱気サイクル入りとした。
12月9日夜の下落で8日夜安値を割り込んだため、12月8日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は9日午後から13日朝にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、8日夜高値を超えないうちはボトム形成期の延長入りも含めてもう一段安余地ありとみる。
60分足の一目均衡表では12月9日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とする。先行スパンを上抜き返すところからは上昇再開の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は12月7日午後から8日夜にかけての高値切り上げに際して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられてから50ポイントを割り込んでいる。50ポイント以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは30ポイント割れを試す可能性ありとするが、60ポイントを超えてからも50ポイント以上を維持する推移に入る場合は上昇再開とみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、113.26円を下値支持線、113.95円を上値抵抗線とする。
(2)113.70円を下回るうちは一段安余地ありとし、113.26円割れからは113.00円前後試しを想定する。下げ足が速まる場合は112.50円を目指す可能性もあるとみる。また113.50円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)113.70円超えからは反発入りの可能性ありとみて12月8日夜高値113.95円試しとし、高値更新からは114円台中盤(114.30円から114.70円)を目指す流れとみる。114.30円以上は反落注意とするが、113.95円を超えた後も113.70円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
12/10(金)
休場、タイ(憲法記念日)
16:00 (独) 11月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
16:00 (独) 11月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 5.2%、予想 5.2%)
16:00 (英) 10月 月次GDP 前月比 (9月 0.6%、予想 0.4%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -0.4%、予想 0.1%)
16:00 (英) 10月 鉱工業生産 前年同月比 (9月 2.9%、予想 2.2%)
16:00 (英) 10月 貿易収支・物品 (9月 -147.36億ポンド、予想 -144.00億ポンド)
16:00 (英) 10月 貿易収支・全体 (9月 -27.77億ポンド、予想 -24.00億ポンド)
22:30 (米) 11月 消費者物価指数 前月比 (10月 0.9%、予想 0.7%)
22:30 (米) 11月 消費者物価指数 前年同月比 (10月 6.2%、予想 6.8%)
22:30 (米) 11月 消費者物価コア指数 前月比 (10月 0.6%、予想 0.5%)
22:30 (米) 11月 消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 4.6%、予想 4.9%)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報 (11月 67.4、予想 68.0)
28:00 (米) 11月 月次財政収支 (10月 -1651億ドル)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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