ドル円見通し オミクロン・ショック継続で一段安、米連銀議長発言から乱高下(21/12/1)

ドル円は11月30日夜安値で112.52円へ下落して11月25日未明高値115.51円以降の安値を更新した。

ドル円見通し オミクロン・ショック継続で一段安、米連銀議長発言から乱高下(21/12/1)

ドル円見通し オミクロン・ショック継続で一段安、米連銀議長発言から乱高下

〇ドル円、11/30夜安値112.52へ下落、11/25未明高値115.51以降の安値更新
〇オミクロン株への不安が下落要因、夜半以降はFRB議長のタカ派発言で乱高下、113円台を回復
〇米長期債利回り10年債低下、2年債は上昇、NYダウは大幅下落し1か月半ぶり安値
〇9月全米住宅価格指数、11月消費者信頼感指数など米経済指標は総じて鈍化
〇113.69を下回るうちは一段安警戒、112.90割れからは112.52試しを想定する
〇113.95超えからは反騰入りの可能性ありとみて、114円台中盤を目指す上昇を想定する

【概況】

ドル円は11月30日夜安値で112.52円へ下落して11月25日未明高値115.51円以降の安値を更新した。オミクロン株発生報道から金融市場全般が動揺したことにより先週末26日深夜に113.03円へ下落、29日午後に112.97円まで下げたところはいったん買い戻されて29日深夜に113.95円まで戻していたが、30日はモデルナ社CEOによるワクチンの有効性が低い旨の発言報道から再び株安となり、ドル円も30日夜に一段安となった。
11月30日深夜にかけては米連銀のパウエル議長が「インフレは一時的」としてきた従来の見通しを撤回してテーパリング終了を急ぐ姿勢を示した事がサプライズとなり、113.69円まで一時反騰してから1日未明に113円割れまで再び反落するなど乱調な展開となっている。
11月30日夜安値で11月9日安値112.70円を割り込んだため、底上げからの高値切り上げという強気パターンが崩れている。11月25日未明高値115.51円からの下げ幅は2.99円に拡大、7月2日高値から8月4日安値までの調整期における2.94円の下落幅を超えてきた。

【米長期債利回りは10年債が低下で2年債が上昇、ダウは大幅下落】

11月30日の米長期債利回りはまちまちとなった。指標の10年債利回りは前日比0.05%低下して1.45%。一時は1.42%まで低下していたところからは反発した。オミクロン・ショックによる株売り債券買いで利回りが低下していたものの、米連銀議長発言が予想外にタカ派だったことで再上昇している。
米2年債利回りは前日比0.08%上昇の0.57%となった。一時は0.44%台まで低下していたところから急伸して前日比でも大幅プラスとなった。
一方でNYダウは前日比652.22ドル安と大幅下落、一時は700ドルを超える下げ幅となり凡そ1か月半ぶりの安値となった。26日に前日比905.04ドル安、29日は236.60ドル高といったん戻したが一段安に入っている。ナスダック総合指数も前日比245.14ポイント安と下落した。オミクロン株への不安継続と米連銀によるテーパリング終了を急ぐ姿勢の両面を嫌気して売られた印象だ。
原油相場の下落も目立っているが、NY原油期近は前日比5%を超える下落で66.18ドルへ下落、凡そ3か月振り安値となっている。10月25日に85.41ドルを付けて昨年4月以降の最高値を付けたところからの下落だが、下落規模は昨年4月以降で最大となっている。

【米経済指標は総じて鈍化】

米連邦住宅金融局(FHFA)による9月の全米住宅価格指数は前年同月比17.7%上昇で8月の18.5%を下回り、前月比は0.9%上昇で8月の1.0%上昇から伸びが鈍化した。S&Pケース・シラー全米住宅価格指数の9月は前年同月比19.5%上昇で8月の19.8%を下回り、前月比も1.0%上昇で8月の1.2%からは低下した。主要20都市では前年同月比19.1%上昇で8月の19.6%を下回った。
米コンファレンス・ボードによる11月の消費者信頼感指数は109.5で10月の111.6から低下して市場予想の111.0も下回った。また11月のシカゴ購買部景況指数は61.8となり10月の68.4から低下して市場予想の67.0を大幅に下回った。

【米連銀議長、「インフレは一時的」を撤回】

米連銀のパウエル議長は11月30日の米上院銀行委員会での証言において、物価上昇は一時的としてきた従来見解の撤回が適切な時期だと述べ、インフレ抑制のためにテーパリング=量的緩和縮小ペースを加速させて終了時期を前倒しすることを12月14-15日の次回FOMCで議論するとした。オミクロン株の感染拡大問題については「リスクだがロックダウンなどが導入された昨年3月のコロナ危機時に匹敵するとは考えていない」と述べた。
11月10日に米消費者物価上昇率が上ブレした際にバイデン大統領がインフレ抑制を最優先課題とし、11月22日にパウエル議長の再任を決定した際に議長もインフレ対策に取り組む姿勢を示しており、その流れに沿った発言だが、オミクロン・ショックで金融市場が動揺し始めたばかりのところだったため発言はサプライズ感をもたらした。

【オミクロン・ショックは一時的か深刻に長期化するか】

米モデルナのバンセルCEOが同社製ワクチンの有効性は従来株と比較してかなり弱まると発言したことで30日の日経平均は前場に300円高を超える上昇だったところから一時500円安を超えるところまで急落した。ワクチンが効かないとなれば感染拡大が深刻化しかねず、世界各国での感染確認報道も相次いだことで市場の不安も再び強まった。
米リジェネロン・ファーマシューティカルズ社も同社製の抗体カクテル治療薬の効果が低下する可能性があるとの見解を示した。米ファイザーのブーラCEOは現在のワクチンの効果が低下した場合に備えて新しいワクチンを作る作業を始めたと述べているが、開発は「100日以内」としている。欧州医薬品庁(EMA)はオミクロンに特化したワクチンが開発された場合は「3か月から4か月以内に承認することが可能」と述べているが、開発にも承認にも時間を要するようだ。

これら不安要素に対して楽観的な情報もある。欧州疾病予防管理センター(ECDC)は「EUは30日時点で域内11カ国で少なくとも合計44件の感染を確認したが、今のところ全て無症状か軽症だった」と述べている。オミクロンが弱毒性ならリセッションへの懸念は後退して景気回復継続感が強まる可能性があるが、重症者や死者が多数で始めるのかどうかの判断は時期尚早だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、11月25日早朝高値を直近のサイクルトップとして急落し、26日深夜と29日午後の両安値をダブルボトムとしていったん戻したものの30日夜に一段安したため、現状は29日夜高値を起点とした新たな弱気サイクルに入っているところと思われる。ボトム形成期は12月1日夜から3日深夜、長引く場合は週明けの12月6日にかけての間と想定される。強気転換には29日夜高値113.95円を超える必要があると思われる。

60分足の一目均衡表では11月30日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからの転落が続いている。30日夜安値から戻してその後は新たな安値更新を回避しているので遅行スパンは好転しやすい位置にあるが、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とみる。先行スパンを上抜くところからはいったん戻しに入るとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は11月26日夜から30日夜への一段安に際して指数のボトムが切り上がる強気逆行がみられる。60ポイントを超えてこないうちは40ポイント割れから下げ再開とみるが、60ポイントを超えてその後も50ポイント以上での推移を続ける場合は戻りを試す流れとみて70ポイント試しを想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月30日夜安値112.52円を下値支持線、30日深夜高値113.69円を上値抵抗線とする。
(2)113.69円を下回るうちは一段安警戒とし、112.90円割れからは30日夜安値112.52円試しとし、底割れからは112.00円前後への下落を想定する。112円以下は反発注意とするが下げ足が速まる場合は111円台中盤(111.70円から111.30円)へ下値目途を引き下げる。
(3)113.69円から29日夜高値113.95円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。113.95円超えからは反騰入りの可能性ありとみて114円台中盤(114.30円から114.70円)を目指す上昇を想定する。

【当面の主な予定】

12/1(水)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前期比 (4-6月 0.7%、予想 -2.7%)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP 前年同期比 (4-6月 9.6%、予想 3.0%)
10:45 (中) 11月 財新製造業PMI (10月 50.6、予想 50.5)
16:00 (独) 10月 小売売上高 前月比 (9月 -2.5%、予想 1.0%)
16:00 (独) 10月 小売売上高 前年同月比 (9月 -0.7%、予想 -1.7%)
17:55 (独) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 57.6)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 58.6)
18:30 (英) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 58.2)
22:15 (米) 11月 ADP非農業部門民間就業者 前月比 (10月 57.1万人、予想 52.5万人)
23:00 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
23:45 (米) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 59.1)
24:00 (米) 11月 ISM製造業景況指数 (10月 60.8、予想 61.0)
24:00 (米) 10月 建設支出 前月比 (9月 -0.5%、予想 0.4%)
24:00 (米) パウエル米連銀議長とイエレン財務長官、下院金融委員会で証言
24:30 (米) 米エネルギー省週間石油在庫統計
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

12/2(木)
08:50 (日) 11月 マネタリーベース 前年同月比 (10月 9.9%)
09:30 (豪) 10月 持家住宅ローン件数 (9月 1.4%)
09:30 (豪) 10月 貿易収支 (9月 122.43億豪ドル、予想 110.00億豪ドル)
14:00 (日) 11月 消費者態度指数・一般世帯 (10月 39.2)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数 前月比 (9月 2.7%、予想 3.6%)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 16.0%、予想 19.0%)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 7.4%、予想 7.3%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 19.9万件、予想 25.0万件)
22:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 204.9万人、予想 200.0万人)
22:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会の司会
25:00 (米) クオールズ米連銀理事、講演
25:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、インタビュー応答
25:30 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演


注:ポイント要約は編集部

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