ドル円見通し ユーロ急落、米経済指標強くドル高で114円台回復(21/11/16)

NY連銀の製造業景況指数が予想を大幅に超えたことも加わって米長期債利回りが上昇、ドル高感が強まったことでドル円は114円台序盤を回復した。

ドル円見通し ユーロ急落、米経済指標強くドル高で114円台回復(21/11/16)

ドル円見通し ユーロ急落、米経済指標強くドル高で114円台回復

〇ドル円、11/15午前113.74まで下げたものの11/15夜114円台序盤を回復
〇NY連銀景況指数改善による米長期金利上昇等が背景、米製造業の回復進行裏づける
〇ECB総裁利上げへの消極発言を受けユーロは一段安、ドル指数は上昇し年初来高値を更新
〇米連銀のテーパリング始まる、インフレ進行への危機感を踏まえテーパリング規模を加速させるか注目
〇114円台を維持する内は上向きとし、114.30超えからは114.69超えを試し、115円を目指す流れとみる
〇113.74を割り込む場合は、113.50前後への下落を想定する

【概況】

ドル円は11月10日夜の米消費者物価上昇率が予想を大幅に上回ったことによるインフレ懸念深刻化を背景とした米長期債利回りの急反発とドル全面高により114円台を回復して12日午前には114.30円まで高値を伸ばしたが、その後は上昇一服となりミシガン大消費者信頼感指数の悪化などから114円を割り込み12日深夜には113.74円まで失速した。15日午前は113.74円の同値まで下げたものの安値更新を回避して確り推移、15日夜はECBのラガルド総裁が利上げへの消極姿勢を示したことでユーロが急落、NY連銀の製造業景況指数が予想を大幅に超えたことも加わって米長期債利回りが上昇、ドル高感が強まったことでドル円は114円台序盤を回復した。

【米長期債利回り上昇、インフレ懸念進行でのドル高円安感】

11月15日の米長期債利回りは総じて上昇、10年債利回りは前週末比0.06%上昇の1.62%、30年債利回りは同0.06%上昇で2.00%。2年債利回りは横ばいの0.5%だったが10日の急伸後も高止まりしており、10月28日に付けた年初来高値0.56%に迫った状況にある。インフレ懸念の深刻化が債券売り・利回り上昇の背景であり、米連銀に対する利上げ催促的な動きに入っている印象だ。
11月15日のNYダウは前週末比12.86ドル安、ナスダック総合指数は7.11ポイント安と下落。NY連銀景況指数の大幅上昇やバイデン大統領が巨額インフラ投資法案に署名成立したことはプラスだが、長期債利回り上昇とインフレ進行による景気の腰折れ、欧州の感染拡大などを意識した動きと思われる。株式市場はまだまだ楽観的だがインフレが景気を圧迫するレベルに到達するとパンデミックからの景気回復を背景に楽観的に史上最高値を更新し続けてきた株高基調にもひびが入る可能性がある。

【NY連銀景況指数大幅上昇、ECB総裁は利上げに消極発言、ドル指数は昨年7月来高値】

11月15日に発表されたニューヨーク連銀の11月製造業景況指数は前月から11.1ポイント上昇して30.9となり市場予想の21.2を大幅に上回った。製造業の回復が急ピッチで進んでいることを示すが、内訳では雇用が過去最高の26.0へ上昇、出荷が前月の8.9から28.2へ大幅上昇した。ただし6か月先の景況感については36.9へと低下した。

欧州中銀(ECB)のラガルド総裁は11月15日の欧州議会の経済通貨委員会で証言に立ち、「ユーロ圏のインフレ高進は当初の想定よりも長引く可能性があるが、来年には低下に転じる」とし「インフレ率は中期的には2%の目標を下回ると予測している」として早期利上げ観測を否定した。総裁は「エネルギー価格の高騰で購買力が圧迫されている現状では資金調達環境の過度の引き締めは望ましくなく、回復のための不当な逆風となる」としてパンデミック対策の資産購入政策が終了した後も資産購入を含む金融政策による景気回復支援が重要だ」とした。
ラガルド総裁発言をきっかけにユーロは一段安となり1.135ドル台へ低下、連日の年初来安値更新となり1月6日高値1.2349ドルと5月25日高値1.2266ドルによるダブル天井からの下落基調継続感を強めた。ユーロドルと概ね逆相関するドル指数は95.60ポイントへ上昇して年初来高値を更新、昨年7月以来の高値水準に達した。93ポイントから94ポイント台までの水準がこの1年間の上値抵抗帯だったが上抜けてきておりドル高感が強まってきている。

【米連銀のテーパリング始まる】

米連銀における政策的な市場調節を担当するニューヨーク連銀行は11月15日にテーパリング(量的金融緩和による資産購入の規模縮小)を開始した。向こう1か月の買入については国債を700億ドル、MBS(住宅ローン担保証券)を350億ドルとし、前月から合計で150億ドル減額した。12月中旬からは国債600億ドル、MBSが300億ドルとなり、2022年半ばには終了する。インフレ進行に対するバイデン政権の危機感を踏まえてテーパリング規模を加速させるのかどうかも今後は注目されるところだ。
米WSJ紙によるとバイデン大統領は早ければ今週に次期米連銀議長を指名する予定という。パウエル議長の再任かブレイナード理事の昇格かのいずれかと見込まれるが、両者ともに金融政策スタンスが近いため議長交代でも米連銀の政策スタンスは大きくは変わらないと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、11月9日午後安値を前回のサイクルボトムとした上昇が12日午前高値で一巡して調整安に入っていたが、12日深夜と15日午前に113.74円の同値を付けてから114円台序盤を回復しているので、既に新たな強気サイクル入りしていると思われる。12日午前高値を基準として高値形成期は17日午前から19日午前にかけての間と想定されるので15日午前安値割れ回避のうちは上昇余地ありとするが、12日午前高値とのダブルトップに終わる可能性もあると注意し、15日午前安値割れからは弱気サイクル入りとして18日午前から22日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11月16日早朝への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも突破したため、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。ただし両スパン揃って悪化するところからは下げ再開を警戒し、15日午前安値割れからは新たな下落期入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は12日深夜と15日午前の下落時に40ポイントを割り込んだところから60ポイント台へ持ち直しているので50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとし、50ポイント割れからは下げ再開を警戒する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月15日午前安値113.74円を下値支持線、12日午前高値114.30円を上値抵抗線とする。
(2)114円台を維持するか一時的に割り込んでも回復する内は上向きとし、12日午前高値超えからは10月20日高値114.69円超えを試し、高値更新からは115円を目指す流れとみる。114.75円以上は反落注意とするが、114円台を維持しての推移なら17日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)113.74円を割り込む場合は113.50円前後への下落を想定する。113.50円以下は押し目買いされやすい水準とみるが、113.74円以下での推移なら17日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

11/16(火)
世界経済フォーラム関連イベント(11/18まで、中国天津)
国際エネルギー機関(IEA)月報
11:30 (豪) ロウ豪中銀総裁、講演
13:30 (日) 9月 第三次産業活動指数 前月比 (8月 -1.7%、予想 0.8%)
16:00 (英) 10月 失業保険申請件数 前月比 (9月 -5.11万件)
16:00 (英) 10月 失業率 (9月 5.2%)
16:00 (英) 9月 失業率・ILO方式 (8月 4.5%、予想 4.4%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP改定値 前期比 (速報 2.2%、予想 2.2%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP改定値 前年同期比 (速報 3.7%、予想 3.7%)

22:30 (米) 10月 小売売上高 前月比 (9月 0.7%、予想 1.2%)
22:30 (米) 10月 小売売上高・除自動車 前月比 (9月 0.8%、予想 1.0%)
22:30 (米) 10月 輸入物価指数 前月比 (9月 0.4%、予想 1.0%)
22:30 (米) 10月 輸出物価指数 前月比 (9月 0.1%、予想 1.0%)
23:15 (米) 10月 鉱工業生産 前月比 (9月 -1.3%、予想 0.7%)
23:15 (米) 10月 設備稼働率 (9月 75.2%、予想 75.8%)
24:00 (米) 9月 企業在庫 前月比 (8月 0.6%、予想 0.6%)
24:00 (米) 11月 NAHB住宅市場指数 (10月 80、予想 80)
25:10 (欧) ラガルドECB総裁、発言
26:00 (米) リッチモンド連銀、アトランタ連銀、カンザスシティ連銀の各総裁、イベント参加
28:55 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
29:30 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演

11/17(水)
06:45 (NZ) 7-9月期 生産者物価指数 前期比 (4-6月 2.6%)
08:30 (豪) 10月 ウエストパック景気先行指数 前月比 (9月 -0.02%)
08:50 (日) 10月 貿易統計・通関・季調前 (9月 -6228億円、予想 -3200億円)
08:50 (日) 10月 貿易統計・通関・季調済 (9月 -6248億円、予想 -6092億円)
08:50 (日) 9月 機械受注 前月比 (8月 -2.4%、予想 1.8%)
08:50 (日) 9月 機械受注 前年同月比 (8月 17.0%、予想 17.7%)
09:30 (豪) 7-9月期 賃金指数 前期比 (4-6月 0.4%、予想 0.6%)
16:00 (英) 10月 消費者物価指数 前月比 (9月 0.3%、予想 0.8%)
16:00 (英) 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 3.1%、予想 3.9%)
16:00 (英) 10月 消費者物価コア指数 前年同月比 (9月 2.9%、予想 3.1%)
18:00 (欧) ECB金融安定報告

19:00 (欧) 9月 建設支出 前月比 (8月 -1.3%)
19:00 (欧) 9月 建設支出 前年同月比 (8月 -1.6%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (9月 4.1%、予想 4.1%)
19:00 (欧) 10月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (9月 2.1%、予想 2.1%)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数・年率換算件数 (9月 155.5万件、予想 158.0万件)
22:30 (米) 10月 住宅着工件数 前月比 (9月 -1.6%、予想 1.6%)
22:30 (米) 10月 建設許可件数・年率換算件数 (9月 158.9万件、予想 163.0万件)
22:30 (米) 10月 建設許可件数 前月比 (9月 -7.7%、予想 2.8%)
23:10 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演

24:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
25:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
25:20 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、ウォラーFRB理事、講演
26:40 (米) ウォラーFRB理事、講演
27:00 (米) 財務省20年債入札



注:ポイント要約は編集部

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