FOMC利上げ時期前倒し、中国恒大の破綻懸念後退、米長期債利回り上昇で円安
〇ドル円、米長期債利回り上昇で110円台前半に急騰、戻り高値切り下がりの抵抗線を突破
〇ドルストレートはFOMC結果発表当初はドル高反応となったが、23日午前までに市場反応は落ち着く
〇米連銀の利上げ想定時期前倒し・欧州主要国長期債利回り上昇で、米長期債利回り急上昇
〇FOMC11月会合でのテーパリング開始決定を示唆、メンバーによる利上げ予想時期を2022年内に前倒し
〇中国恒大集団によるデフォルト発生からの危機連鎖への懸念は後退
〇110円以上での推移中は上昇余地ありとし、110.44超えからは110.50から110.75を試すとみる
〇110円割れからは調整安に入るとみて、109.75から109.50前後にかけてを目指す下落を想定する
【概況】
米連銀は9月21-22日のFOMC(23日未明声明発表、議長会見)で早ければ11月会合でテーパリング(量的緩和縮小)に着手する可能性を示唆、FOMCメンバーによる利上げ予想時期を2022年内に前倒しした。発表当初はドル高反応となったものの23日午前までに市場反応は落ち着いてドルストレートではユーロやポンド等が反騰に転じてユーロドルはFOMC前の水準へ切り返し、ポンドドルはFOMC前水準を超える上昇となりドル安再燃の動きとなった。一方で米長期債利回りはFOMC直後は小動きだったものの23日の日中から夜にかけては大幅上昇となった。このためドルストレートでドル安、クロス円は全面高、ドル円は米長期債利回り上昇を見て急騰となった。
ドル円は9月8日午後高値110.44円から戻り高値を切り下げて15日夜に109.09円を付けて8月16日安値109.10円をわずかに割り込んだが、22日午前安値は109.11円にとどまって底割れを回避、15日夜安値と22日午前安値がダブルボトム型となって反騰入りし、23日夜から24日早朝への急伸で17日夜高値、14日夜高値を超えて戻り高値切り下がりの抵抗線を突破した。
【米長期債利回り急上昇でドル円は押し上げられる】
9月23日の米10年債利回りは前日比0.13%上昇の1.43%へ急伸して7月上旬以来約2か月振りの高水準となった。30年債利回りも同0.13%上昇の1.94%、2年債利回りも同0.02%上昇の0.26%だった。
米10年債利回りはFOMC声明発表直後に1.34%へ上昇したところから低下に転じて22日終値(23日早朝)は1.30%まで下げていたが、23日夜へ急伸して1.38%台にあった8月4日安値1.12%以降の壁を突破して一段高に入った。2年債利回りは22日終値時点で0.02%上昇したところからの続伸で8月4日以降の高値を更新した。米連銀による利上げ想定時期前倒しに加え、欧州主要国の長期債利回りも上昇したことで相乗効果となっての上昇だった。株高によるリスク回避感の後退での債券売り=利回り上昇も見られた。
NYダウは前日比506.50ドル高で22日の338.48ドル高から大幅続伸した。米連銀のテーパリング姿勢及び利上げ想定時期の前倒しについては想定内とし不透明感が解消されたことで逆に安心となり、中国恒大集団のデフォルトへの警戒感が和らいだとみてリスク選好的に反騰入りした印象だ。
9月23日発表の米経済指標はまちまち。米労働省の新規失業保険申請件数は前週比1万6000件増の35万1000件で市場予想の32万件を上回り2週間連続で悪化した。失業保険受給者総数も284万5000人で前週比13万1000人増だった。
米コンファレンスボードによる8月の景気先行指数は、117.1で前月から0.9%上昇して市場予想の0.7%上昇を上回った。IHSマークイットによる9月の米製造業PMI速報値は60.5で市場予想の61.5を下回り、サービス業PMI速報値は54.4で市場予想の55.0を下回った。
【FOMC 利上げ想定時期を前倒し】
米連銀FOMC(連邦公開市場委員会)は政策金利を年0〜0.25%に据え置き、量的金融緩和による債券買い入れペースを月額1200億ドルで維持した。声明では「資産購入ペースの減速が近く正当化される」として11月会合でのテーパリング開始決定を示唆した。FOMCメンバーによる利上げ想定時期については従来の2023年から2022年に前倒しした。2022年に1回、2023年と2024年は3回ずつの利上げ予想となった。
パウエル議長は記者会見で「テーパリング終了前に利上げはしない」と述べたが「インフレ上昇が深刻な懸念となれば対応する」とし、「2022年中頃に量的緩和縮小を完了するのが適切」と述べた。
インフレ見通しについては2021年の予想中央値が前回6月の3.4%から4.2%へ大幅に上方修正された。一方で失業率見通しは2021年を4.8%として6月の4.5%から上方修正したものの2022年は3.8%へ低下するとした。GDP見通しについてはデルタ株拡大の影響を踏まえて2021年を5.9%として6月時点の7.0%から下方修正したが2022年は3.8%として従来の3.3%から上方修正した。
【主要国の金融政策正常化=引き締めへの動きでドル安】
FOMCの内容については総じて市場の予想範囲といえる。ひとまずイベント通過として一時的なドル高反応の後は揺れ返しでドル安となっているが、米長期債利回りの上昇と共に独英等の長期債利回りも上昇したためにかえってドルストレートでのドル安が発生している。
9月23日にはECBのPEPP(パンデミック対策での資産購入拡大)については来年3月に終了させるべきとの議論がECB内で優勢になっているとの報道があり、英中銀も金融政策決定会合で政策金利と量的緩和政策の現状維持を決めたものの「年末時点のインフレ率が4%を超えて目標の2%を大きく上回る見通し」として「金利上昇の根拠が強まった」とした。またノルウェー中銀が利上げを決定、南ア中銀が11月会合での利上げを示唆するなど、主要国中銀による金融政策の正常化の動きが堅調となった。
【中国恒大の破綻リスクは後退】
週末に経営危機とデフォルト懸念が報じられた中国不動産デベロッパー大手の中国恒大集団は9月23日に期日を迎えたドル建て社債3350万ドルの利払いができなかったと報じられたが、中国当局がデフォルト回避を指示したとも報じられており、同グループによるデフォルト発生からの危機連鎖への懸念が後退した。
利払いができずに30日を経過するとデフォルト認定となる。中国当局の出方についての正式報道はなく、まだ不透明感が残るが、株式市場の反応は世界的な金融市場危機のトリガーにはならないとの見方が強まっている。恒大は9月29日及びそれ以降にもドル建て社債の利払い期限が相次いで到来し、総額では1兆9700億元(約33兆4000億円)規模の負債を抱えているという。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、9月15日夜安値から5日目となる22日午前安値で直近のサイクルボトムを付けて反騰入りした。17日夜高値を基準とすれば高値形成期は22日夜から24日夜にかけての間と想定されるのでまだ110円台後半への伸びしろもあるが、反落警戒期として110円割れからは弱気サイクル入りの可能性を優先して来週前半における109円台中後半(109.75円から109.50円)への下落を想定する。
60分足の一目均衡表ではFOMC後の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも突破した。その後も両スパン揃っての好転が続いているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からはいったん下げに入るとみて先行スパンの上下限を試すとみる。ただし先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパンが悪化した後に再び好転するところからは上昇再開とみる。
60分足の相対力指数は24日早朝への上昇で70ポイント台へ到達している。相場の高値更新に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行はまだ見られていないので60ポイント以上での推移中は上昇余地ありとするが、60ポイント割れへ低下するところからは下げ再開を疑う。またいったん小反落してから高値を更新する際に指数の弱気逆行が発生する場合は反動安入り警戒とする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.00円を下値支持線、9月8日夕高値110.44円を上値抵抗線とする。
(2)110円以上での推移中は上昇余地ありとし、9月8日夕高値超えからは110円台中後半(110.50円から110.75円)を試すとみる。110.50円以上は反落警戒圏とするが、110円以上での推移なら週明けも高値を試す可能性が残る。
(3)110円割れからはいったん調整安に入るとみて109.75円から109.50円前後にかけてのゾーンを目指す下落を想定する。109.75円から109.50円にかけては押し目買いも入りやすい水準とみるが、110円以下での推移が続く場合は週明けも調整安へ進みやすいとみる。
【当面の主な予定】
9/24(金)
休場 南ア、タイ
日米豪印「クアッド」首脳会議(ワシントン)
17:00 (独) 9月 IFO企業景況感指数 (8月 99.4、予想 98.9)
21:45 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
23:00 (米) 8月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (7月 70.8万件、予想 71.5万件)
23:00 (米) 8月 新築住宅販売件数 前月比 (7月 1.0%、予想 1.0%)
23:00 (米) FRBオンラインイベント、パウエル議長、クラリダ副議長、ボウマン理事参加
23:05 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、経済見通しについて講演
※ポイント要約は編集部
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