ドル円見通し 中国恒大集団のデフォルト懸念でリスク回避の株安円高(21/9/21)

NYダウの大幅下落に対する債券への安全資産買いによる米長期債利回り低下を見てのドル売り円買いから続落となり21日未明には109.31円へ急落した。

ドル円見通し 中国恒大集団のデフォルト懸念でリスク回避の株安円高(21/9/21)

ドル円見通し 中国恒大集団のデフォルト懸念でリスク回避の株安円高

〇ドル円、9/17夜に110.07をつけたが、ドル売り円買いから続落となり9/21未明109.31へ急落
〇中国恒大集団デフォルト懸念背景に株安・リスク回避により、ドル円においては円高が勝ったことで下落
〇米長期債利回り、週末まで3連騰だったが、週明け世界連鎖株安の中債券買いへ向かい利回り低下
〇中国恒大ショックにより、NYダウ・ナスダックの大幅下落など世界連鎖株安の様相
〇中国恒大のデフォルト懸念、9/23にも社債利払い期日控え中国当局の対応注目される
〇109.64以下での推移中は一段安余地ありとし、109.25割れから109.09試しとみる
〇109.50超えからは強気転換注意とするが、109.64近辺は戻り売りにつかまりやすいとみる

【概況】

ドル円は9月15日夜安値109.09円で8月16日夜安値109.10円をわずかに割り込んだところから反騰して17日夜には110.07円をつけたが、週明けは中国不動産開発大手・中国恒大集団のデフォルト懸念による株安とリスク回避による円高、夜はNYダウの大幅下落に対する債券への安全資産買いによる米長期債利回り低下を見てのドル売り円買いから続落となり21日未明には109.31円へ急落した。
昨日夕刻にかけてはドル全面高が継続してユーロドルが9月3日以降の安値を更新、豪ドル米ドルは夜へ続落、ポンドドルは21日未明まで安値を更新しておりドル全面高の様相は継続しているが、一方でNYダウが一時970ドルを超える大幅下落となったことでリスク回避の円高感が強まり、米10年債利回り低下によりドル円においては円高が勝ったことで下落した。クロス円も総じて下落地合いが観測。

【中国恒大ショックで世界連鎖株安、米長期債利回り低下】

中国不動産大手の経営危機報道から米長期債利回りは総じて低下した。10年債利回りは週末まで3連騰して一時は1.38%台を付けていたが週明けは世界連鎖株安の中で安全資産としての債券買いへ向かい前日比0.06%低下の1.31%へ低下、30年債利回りも同0.05%低下の1.85%、2年債利回りも同0.01%ポイント低下の0.22%となった。
NYダウは前日比614.41ドル安(1.78%安)の大幅下落で一時は970ドル安を超えた。ナスダック総合指数も330.06ポイント安(2.19%)安。英FT100指数が0.86%安、独DAX指数が2.31%安、CMEの日経先物は945円安(3.10%安)となった。中国市場は中秋節で20日と21日が休場となっており、22日の休場明けまでインパクトが見えない。

【2つのデフォルト問題】

中国恒大のデフォルト懸念、米国政府の債務上限問題によるデフォルト懸念、この二つが金融市場心理に警戒感をもたらせている。米FOMCが迫る中で為替市場はドル高へ傾斜しているが、株安もあってリスク回避的なクロス円の下落がドル円においても円高感を強めて上昇にブレーキを掛けている。
中国の不動産開発大手「中国恒大集団」が債務不履行に陥っており、中国住宅都市農村建設省は先週末に同社が主要金融機関に対して9月20日に融資の利払いを行えない見通しと伝えた。23日にも同社の社債2本の利払い期日を控えており、不履行となれば中国の金融市場全般が揺らぐ可能性もあると注目されている。同社は3000億ドル規模の債務不履行を発生させる可能性がある。中国当局が金融市場へのショックを回避するような支援対応を見せるのか、このままデフォルトの連鎖で中国版リーマンショック型危機へ発展するのか注目される。

米下院は近く28兆ドル規模の債務上限引き上げについての採決を行うが共和党が反対している。債務上限引き上げが決まらなければ米国政府は来月にもデフォルトに陥る恐れがあるため、イエレン財務長官は「デフォルトに陥れば歴史的な金融危機を引き起こし、公衆衛生上の危機のダメージを悪化させ、米国をリセッションに追い込む」と議会による迅速な行動を要請している。何度も繰り返されてきた問題だが、中国大手企業のデフォルト問題や米連銀FOMCも控えていることで金融市場全般の先行き不安が増している。VIX恐怖指数は20日に前日比23.55%高と急伸している。

【米FOMCも始まる】

9月21-22日の米FOMC(連邦公開市場委員会=金融政策決定会合)が始まる。23日未明には声明発表と議長会見がある。9月3日に発表された米8月雇用統計での非農業部門就業者数の伸びが予想を大幅に下回ったことで今回の会合ではテーパリング(量的金融緩和政策による資産買い入れの縮小開始)は決まらないと市場は見ているが、年内にテーパリングを開始するとの基本姿勢は変わらないとされ、市場に対するテーパリング開始への地ならし的な内容になるのだろうとみられている。
6月会合以来となるFOMCメンバーによる金利見通しで利上げ想定時期が前倒しされるかどうか注目されているが、6月会合では2023年に利上げされるというのがメンバーの中心的予想だったが、最近の連銀高官による発言等を踏まえれば利上げを前倒しするタカ派が増えれば2022年中に1回以上の利上げ予想となる可能性もあるところだ。ただ、デルタ株の感染拡大による7-9月期の米GDP減速懸念、中国大手企業のデフォルト問題での不透明感等を踏まえればあまり市場を悲観的に刺激しないような内容になることも考えられる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、9月10日未明安値から4日目となる15日夜安値で直近のサイクルボトムを付けて反騰入りしたが、17日夜高値でサイクルトップを付けて下落に転じている。ボトム形成期は20日夜から22日夜にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、20日夜反発時の高値109.64円を超えないうちは一段安余地ありとし、109.64円超えからは強気サイクル入りとして22日夜から24日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では9月20日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。その後も両スパン揃っての悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとし先行スパンからの転落中は一時的に遅行スパンが好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とする。
60分足の相対力指数は20日夜に20ポイント台まで低下してから下げ渋っている。50ポイントを超えないうちは一段安余地ありとし強気転換は50ポイント超えからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月15日安値109.09円を下値支持線、20日夜反発時の高値109.64円を上値抵抗線とする。
(2)109.64円以下での推移中は一段安余地ありとし、109.25円割れから109.09円試しとし、さらに安値更新の場合は109円処、108円台後半(109.00円から108.50円)を試すとみる。108.70円以下は反騰注意とするが、109.50円以下での推移なら22日の日中も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.50円超えからは強気転換注意とするが109.64円近辺は戻り売りにつかまりやすいとみる。ただし109.64円超えからは60分足の先行スパン雲入りとなり上値余地が出てくるため、110円手前を試す上昇を意識したい。また109.64円を超えた水準での動きが続くなら22日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

9/21(火)
休場 中国、台湾、韓国
日銀・金融政策決定会合1日目
米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
各国の政策金利発表 インドネシア、スウェーデン ハンガリー
10:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨公表
16:05 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
18:00 (世) OECD経済見通し
21:30 (米) 4-6月期 経常収支 (1-3月 -1957億ドル、予想 -1910億ドル)
21:30 (米) 8月 住宅着工件数・年率換算件数 (7月 153.4万件、予想 155.5万件)
21:30 (米) 8月 住宅着工件数 前月比 (7月 -7.0%、予想 1.0%)
21:30 (米) 8月 建設許可件数・年率換算件数 (7月 163.5万件、予想 160.0万件)
21:30 (米) 8月 建設許可件数 前月比 (7月 2.6%、予想 -1.8%)
26:00 (米) 財務省20年債入札

9/22(水)
休場 韓国、香港
英中銀金融政策委員会(MPC)1日目
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
09:30 (豪) 8月 ウエストパック景気先行指数 前月比 (7月 -0.12%)
11:00 (豪) ブロック豪中銀総裁補 講演
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
23:00 (米) 8月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (7月 599万件、予想 583万件)
23:00 (米) 8月 中古住宅販売件数 前月比 (7月 2.0%、予想 -2.7%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省2年物変動利付債入札
23:00 (欧) 9月 消費者信頼感速報値 (8月 -5.3、予想 -5.9)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利 (現行 0.00-0.25%、予想 0.00-0.25%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見


※ポイント要約は編集部

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