ドル円見通し 米雇用統計から下落するも8月16日以降の持ち合い範囲(週報9月第1週)

ドル円は9月3日夜の米雇用統計での非農業部門就業者数の伸びが予想外の低調さだったことで売られて3日深夜には109.58円まで下げたが8月31日安値109.57円割れを回避

ドル円見通し 米雇用統計から下落するも8月16日以降の持ち合い範囲(週報9月第1週)

ドル円見通し 米雇用統計から下落するも8月16日以降の持ち合い範囲

〇ドル円、米雇用統計のNFPの伸び予想外に低調で109.58まで下げる
〇9月テーパリング開始は遠のくも、失業率、平均時給改善しドル全面安には至らず
〇雇用統計後、米10年債利回りは上昇、米主要株価指数はまちまち
〇110円以下での推移中は下向き、109.58割れからは109.40、109.10等を試すか
〇110.10超えからは9/1高値110.41超えを目指し、110.50超えからはさらなる高値追及へ進む可能性も

【概況】

ドル円は9月3日夜の米雇用統計での非農業部門就業者数の伸びが予想外の低調さだったことで売られて3日深夜には109.58円まで下げたが8月31日安値109.57円割れを回避して4日早朝にかけてはやや戻した。
米雇用統計発表直後はドル全面安の様相だったが、このドル安は長続きせず、ユーロドルや豪ドル等は発表直後に付けた高値を超えられずに上値が重くなり終盤はやや下げた。
就業者増加数が低調だったことで米連銀が9月会合でテーパリング開始を決定することはなさそうだとしても、失業率が予想以上に改善したことや平均時給の伸び等も踏まえれば年末までにはテーパリングも着手されるだろうとの見方もあり、8月20日からのドル全面安で織り込んできた状況を超えてドル全面安を一段と加速させる動きには至らなかったと思われる。このためドル円も持ち合い範囲の下限でひとまず下げ渋った格好だ。

【米雇用統計の就業者増加数は低調だったが米長期債利回りは上昇に終わる】

米労働省が発表した8月雇用統計では非農業部門就業者数が前月比23万5000人増となり市場予想の72.8万人増を大幅に下回った。7月分は速報の94.3万人増から105.3万人増へ上方修正された。予想外の低調さではあったが、先行して発表されたADP民間雇用報告もさえない内容だったために市場もあり得る数字と認識していたために反応も大きくはならなかった。直近3か月は6月の96.2万人増を含めて平均75万人であり、次回の9月分が8月の低調さからの反動で拡大するようだと、景気回復継続感も維持されると思われる。

失業率は5.2%で7月の5.4%から低下した。6月の5.9%からの改善が続いている。
平均時給は前月比0.6%上昇で市場予想の0.3%を大幅に上回り、前年同月比は4.3%上昇で7月の4.0%からさらに伸びた。物価上昇と賃金の上昇は米連銀のテーパリング開始への必要十分条件を満たしている。後は現状の雇用回復レベルで満足するかどうか、物価上昇リスクへの警戒感を優先するのかどうかという議論になるのだろう。
雇用統計後の発表だった米サプライ管理協会(ISM)の8月サービス業景況指数は61.7となり過去最高であった8月の64.1からは低下したが市場予想の61.5を上回った。

米10年債利回りは前日比0.04%上昇の1.33%となった。30年債利回りも前日比0.05%上昇の1.95%、2年債利回りは前日比変わらずの0.21%だった。米10年債利回りは雇用統計発表前は1.30%を割り込んでいたが、発表から1.33%へ反騰、その後にやや低下する動きだった。2年債利回りも週後半は小動きで雇用統計後の反応も鈍かった。

NYダウは前日比74.73ドル安と下落、ナスダック総合指数は32.34ポイント高、SP500指数は1.52ポイント安とまちまちだった。
雇用の伸びが鈍化した理由はデルタ株による飲食等への影響であり、年後半にかけての不透明感を示しているとしてダウは若干下げたがナスダックは相変わらず楽観的だ。平均時給の伸びと失業率改善を踏まえれば、9月21-22日のFOMCでのテーパリング開始決定はないだろうが、10月8日発表の米9月雇用統計と10月28日の7-9月期GDPが強ければ11月2-3日のFOMCでテーパリング開始決定、年末ないし年初には着手という展開になるのではないかと市場は受け止めたと思われる。
為替市場は発表当初のドル全面安が続かなかったが、8月20日からのドル全面安の流れを一段と加速する内容ではなかったとして発表直後の買いが一巡した後は落ち着いてしまった印象だ。

【ドル円は8月16日以降のやや右肩上がりの持ち合い下限】

ドル円は8月16日夜安値109.10円以降は8月24日夜安値109.40円から8月31日夜安値109.57円へと安値を切り上げてきたが、9月3日夜安値は109.58円にとどまった。戻り高値は8月19日昼の110.22円から27日夜の110.26円、9月1日夕の110.41円と若干切り上げてきていたので、ここまではやや右肩上がりで1円強のレンジでの持ち合いといえる。
また8月11日高値110.79円から8月16日安値まで下げた後はこの高安レンジ内だが、9月1日高値は7月2日高値と8月11日高値を結んだ抵抗線に丁度ぶつかっており、9月3日夜安値は8月4日安値と8月16日安値を結ぶラインにぶつかっている。このため8月4日以降をレンジ縮小型の三角持ち合いとみれば、9月3日夜安値割れからは三角持ち合い下放れに進みやすくなるといえる。

9月6日は米国市場がレーバーデーで祝日となるので手掛かりに欠けるところだが、8月31日夜安値を割り込んで8月24日安値109.40円も割り込むような展開になると持ち合い下放れに入り7月2日高値をピークとした下落基調の継続感が強まると思われるが、109.40円台までで下げ止まり110円台回復へ戻せば持ち合いの継続として持ち合い中の高値切り上げを試す可能性も出てくると思われる。
ドル円にとっては米長期債利回りが上昇したことが下支えであり、8月20日以降のドル全面安の流れが週替わりでいったんドル高へと変わるようだと浮上しやすくなるところと思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月24日夜安値109.40円を下値支持線、110.10円を上値抵抗線とする。
(2)110円以下での推移中は下向きとし、3日夜安値109.58円割れからは8月24日安値109.40円試しとし、割り込む場合は8月16日夜安値109.10円を試しに向かうとみる。109円台序盤から持ち直せば110円超えへ切り返してゆく流れも考えられるが、109.50円以下にとどまる動きとなる場合は先行きで109円割れ及び8月4日安値108.71円試しへ向かう可能性が高まるとみる。仮に8月4日安値を割り込めば、7月2日高値からの下落は二段目に入り、今年の天井を付けて当面は安値試しを続けてゆく流れへ入るのだろうと考える。
(3)週明け序盤を下げ渋りから反発に向かい、110.10円を超えるところからは9月1日高値110.41円超えを目指すとみる。8月19日以降の戻り高値切り上がりラインは110.50円前後に来るので110.50円前後は戻り売りにつかまりやすいとみるが、米長期債利回り上昇や8月20日からのドル全面安が一巡して全般的なドル高がぶり返してくるようだと110.50円超えからさらに高値追及へ進む可能性も浮上するかもしれない。

ドル円見通し 米雇用統計から下落するも8月16日以降の持ち合い範囲

ドル円日足

【当面の主な予定】

9/6(月)
休場、米国(レーバーデー)、カナダ(レーバーデー)
10:30 (豪) 8月 ANZ求人広告件数 前月比 (7月 -0.5%)
15:00 (独) 7月 製造業新規受注 前月比 (6月 4.1%、予想 -1.0%)
15:00 (独) 7月 製造業新規受注 前年同月比 (6月 26.2%、予想 18.9%)
17:30 (英) 8月 建設業PMI (7月 58.7、予想 56.9)

9/7(火)
休場 ブラジル(独立記念日)
未 定 (中) 8月 貿易収支・米ドル建て (7月 565.8億ドル、予想 480.0億ドル)
未 定 (中) 8月 貿易収支・人民元建て (7月 3626.7億元、予想 3230.0億元)
07:30 (豪) 8月 AiGサービス業指数 (7月 51.7)
08:01 (英) 8月 英小売連合(BRC)小売売上高 前年同月比 (7月 4.7%、予想 3.2%)
08:30 (日) 7月 全世帯消費支出 前年同月比 (6月 -5.1%、予想 2.9%)
13:30 (豪) 豪中銀、政策金利 (現行 0.10%、予想 0.10%)
14:00 (日) 7月 景気先行指数CI速報値 (6月 104.1、予想 103.5)
14:00 (日) 7月 景気一致指数CI速報値 (6月 94.5、予想 94.3)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -1.3%、予想 0.7%)
15:00 (独) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 5.1%、予想 5.1%)

18:00 (独) 9月 ZEW景況感 (8月 40.4、予想 30.0)
18:00 (欧) 9月 ZEW景況感 (8月 42.7)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP確定値 前期比 (速報 2.0%、予想 2.0%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP確定値 前年同期比 (速報 13.6%、予想 13.6%)
18:30 (南) 4-6月期 GDP 前期比年率 (1-3月 4.6%、予想 2.2%)
18:30 (南) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 -3.2%、予想 17.4%)
26:00 (米) 財務省3年債入札

9/8(水)
08:50 (日) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.4%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP改定値 年率換算 (速報 1.3%、予想 1.6%)
08:50 (日) 7月 経常収支・季調前 (6月 9051億円、予想 2兆3000億円)
08:50 (日) 7月 経常収支・季調済 (6月 1兆7790億円、予想 1兆8508億円)
08:50 (日) 7月 貿易収支・国際収支ベース (6月 6485億円、予想 6345億円)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー現状判断DI (7月 48.4、予想 45.2)
14:00 (日) 8月 景気ウオッチャー先行判断DI (7月 48.4、予想 46.2)
17:10 (豪)デベル豪中銀副総裁、オンライン会議で発言
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
23:00 (米) 7月 雇用動態調査(JOLT)
24:00 (英) ベイリー英中銀総裁、発言
26:00 (米) 財務省10年債入札
26:10 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
28:00 (米) 7月 消費者信用残高 前月比 (6月 376.9億ドル、予想 265.0億ドル)

9/9(木)
07:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、同連銀主催のバーチャル会合
07:45 (NZ) 4-6月期 製造業売上高 前期比 (1-3月 2.1%)
08:01 (英) 8月 英RICS住宅価格指数 (7月 79、予想 75)
08:50 (日) 8月 マネーストックM2 前年同月比 (7月 5.2%、予想 4.6%)
10:30 (中) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 1.0%、予想 1.0%)
10:30 (中) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 9.0%、予想 9.0%)
15:00 (独) 7月 貿易収支 (6月 163億ユーロ、予想 146億ユーロ)
15:00 (独) 7月 経常収支 (6月 225億ユーロ、予想 180億ユーロ)

20:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ラガルド欧州中銀総裁、定例記者会見
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 34.0万件、予想 34.3万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 274.8万人、予想 274.4万人)
24:00 (米) EIA週間石油在庫統計
24:05 (米) エバンズ・シカゴ連銀総裁、イベント挨拶
24:05 (加) マックレム・カナダ中銀総裁、会見
24:05 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、討論会参加
26:00 (米) ボウマンFRB理事、講演
26:00 (米) 財務省30年債入札
27:00 (米) ニューヨーク連銀総裁、他3連銀総裁、経済における人種差別に関する会議参加

9/10(金)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 3.9%、予想 3.9%)
15:00 (英) 7月 月次GDP 前月比 (6月 1.0%、予想 0.5%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産指数 前月比 (6月 -0.7%、予想 0.4%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産指数 前年同月比 (6月 8.3%、予想 3.0%)
15:00 (英) 7月 貿易収支・物品 (6月 -119.88億ポンド、予想 -107.50億ポンド)
15:00 (英) 7月 貿易収支・全体 (6月 -25.14億ポンド、予想 -16.00億ポンド)
18:30 (欧) ラガルド欧州中銀行(ECB)総裁、発言

21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前月比 (7月 1.0%、予想 0.6%)
21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 7.8%、予想 8.2%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前月比 (7月 1.0%、予想 0.5%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前年同月比 (7月 6.2%、予想 6.6%)
22:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
23:00 (米) 7月 卸売在庫 前月比 (6月 1.1%、予想 0.6%)
23:00 (米) 7月 卸売売上高 前月比 (6月 2.0%)

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