来週の為替相場見通し:『金融政策を巡る不確実性を背景にレンジ相場が継続か』(9/4朝)

ドル円は8/27のジャクソンホール会合・9/3の米雇用統計を通過しても尚方向感を見出すには至りませんでした。

来週の為替相場見通し:『金融政策を巡る不確実性を背景にレンジ相場が継続か』(9/4朝)

『金融政策を巡る不確実性を背景にレンジ相場が継続か』

〇今週のドル円、109.58-110.43レンジの持ち合い続く
〇8月米雇用統計は、NFP予想73.3万人増に対し結果23.5万人増のネガティブサプライズ
〇日本の政局のドル円の反応は限定的
〇ユーロドル、ジャクソンホール以降のドル安・株高、ECB関係者のタカ派発言、雇用統計不冴えで急伸
〇週末にかけて約1か月ぶりの高値1.1910まで上昇、1.1870近辺で越週
〇ドル円ジャクソンホール会合、米雇用統計を経ても方向感を見出せず
〇テクニカルにも主要チャートポイントが実勢値付近に集中、米金融政策の不確実性の中気迷いムード反映
〇今週相次ぐ米FRB関係者の発言に注目
〇来週の予想レンジ(USDJPY):109.00ー111.00、(EURUSD):1.1775−1.2000

今週のレビュー(8/30−9/3)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初109.86で寄り付いた後、@ジャクソンホール会合後のドル売りの流れ(パウエルFRB議長は先週末金曜日のジャクソンホールで慎重なスタンスを強調→米長期金利低下→米ドル売り)や、A米経済指標の冴えない結果(米7月住宅販売保留指数、米8月シカゴ購買部協会景気指数、米8月コンファレンスボード消費者信頼感指数)が重石となり、翌8/31にかけて、週間安値109.58(8/24以来、約1週間ぶり安値圏)まで下落しました。しかし、B月末ロンドンフィキシングに絡むドル買いフローが反発を誘うと、C短期筋のショートカバーや、D世界的なリスク選好ムード(株高→クロス円上昇→ドル円連れ高)、E本邦解散総選挙への期待感が支援材料となり、週央にかけて、週間高値110.43まで急伸しました(約3週間ぶり高値圏)。

もっとも、8/13に記録した直近高値110.46をバックに伸び悩むと、F米8月ADP雇用統計(結果37.4万人、予想61.3万人)および、G米8月非農業部門雇用者数(結果23.5万人、予想73.3万人)のネガティブサプライズや、H上記FGを背景とした短期筋の失望売り(俄かロングのロスカット)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間9/4午前5時40分現在)では、109.74近辺まで反落する動きとなっております。尚、菅首相は9/3に自民党総裁選への不出馬を発表しましたが、市場の反応は限定的となりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1793で寄り付いた後、早々に週間安値1.1782まで下落しました。しかし、一目均衡表基準線に続落を阻まれると、@ジャクソンホール会合後のドル売りの流れや、Aユーロ圏8月消費者物価指数(結果3.0%、予想2.7%)の伸び率高進、Bオーストリア中銀ホルツマン総裁によるタカ派的な発言(次回会合でテーパリングについて議論する予定)、Cオランダ中銀クノット総裁によるタカ派的な発言(ECBによる刺激策の減速が可能)、Dドイツ連銀ワイトマン総裁によるタカ派的な発言(ECBはパンデミック緊急購入プログラムの終了に向けて準備を始める必要がある)、E上記ABCDを背景としたECBによる早期テーパリング観測(来週9/9に予定されているECB理事会でパンデミック緊急購入プログラムの買い入れペースを第4四半期から「縮小すること」を決定するのではないかとの思惑→欧州債利回り上昇→ユーロ買い)、F欧米株の堅調推移(リスク選好のドル売り圧力)、G米雇用統計のネガティブサプライズが支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.1910(7/30以来、約1ヵ月ぶり高値圏)まで急伸しました。

引けにかけて反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間9/4午前5時40分現在)では、1.1876近辺で推移しております。

来週の見通し(9/6−9/10)

<ドル円相場>
ドル円は8/27のジャクソンホール会合・9/3の米雇用統計を通過しても尚方向感を見出すには至りませんでした。テクニカル的にも、一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や90日移動平均線といった主要チャートポイントが実勢相場近辺に密集するなど、市場参加者の気迷いムード(米金融政策を巡る不確実性が残存する中、上下共ポジションを取りづらい状況)が透けて見えます。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによる早期利上げ観測の後退(パウエルFRB議長はジャクソンホール会合で慎重なスタンスを強調した他、今週末金曜日に発表された米雇用統計は市場予想を大幅に下回る冴えない結果)や、A上記@を背景としたリスク選好ムード(過剰流動性相場の逆流リスク後退→リスクオンのドル売りと円売りが併存)、Bアフガニスタンを巡る地政学的リスク、C中国経済の先行き不透明感、D上記BCを背景としたリスク回避ムード(リスクオフのドル買いと円買いが併存)など、ドル円相場のレンジ入りを意識させる材料が増えつつあります(リスクオンの局面、リスクオフの局面双方において、米ドルと円は同じ方向に動く傾向が出ている為、ドル円は方向感を見出しにくい)。

こうした中、来週は米当局者発言を睨みながらの神経質な展開が予想されます(冴えない米雇用統計の結果を受けて米当局者がどのようなスタンスを示すのかに注目)。9/9のニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁を皮切りに、地区連銀経済報告、ダラス連銀カプラン総裁、9/10のサンフランシスコ連銀デイリー総裁、ボウマンFRB理事、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、ボストン連銀ローゼングレン総裁、クリーブランド連銀メスター総裁など、複数の当局者発言が予定されており、ブラックアウト期間突入前最後の週として、いつも以上に注目度の高いイベントとなりそうです(※ブラックアウト期間はFOMC開催日の前々週土曜日から開始。9月FOMCは9/21ー9/22に開催される為、米当局者が金融政策に関する発言を控えるブラックアウト期間は前々週土曜日に該当する9/11から始まる予定)。

米当局者がタカ派的なスタンスを継続する場合には、「9/3に発表された米雇用統計の悪化は新型コロナウイルス感染再拡大に伴う一時的な要因」と受け止められ、米長期金利上昇→米ドル高の経路でドル円には上昇圧力が加わると予想されます。一方、米当局者が慎重なスタンスを示す場合には、「冴えない米雇用統計を受けて、テーパリングおよび利上げの後ずれ観測」が台頭し、米長期金利低下→米ドル売りの経路でドル円には下落圧力が加わると考えられます。しかし、上記で示した通り、前者については米長期金利上昇→米ドル高→リスクオフ→株安→円高の経路が考えられる他(上昇一服後に反落し易い)、後者については、米長期金利低下→米ドル安→リスクオン→株高→円安の経路(下落一服後に反発し易い)が想定される為、結果としてドル円はレンジ内での上下に留まると予想いたします(ドルと円が同一方向に動き易い相場環境)。

来週の予想レンジ(USDJPY):109.00ー111.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は8/20に記録した約9ヵ月ぶり安値1.1664をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約1ヵ月ぶり高値となる1.1910まで急伸しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や一目均衡表雲下限を上抜けした他、強い上昇トレンド入りを示唆する強気のバンドウォーク(ローソク足がボリンジャーバンド上限に沿って上昇し続ける現象)も実現するなど、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます。目先は90日移動平均線(1.1938)や200日移動平均線(1.2004)、一目均衡表雲上限(1.2009)を試す動きとなりそうです。

ファンダメンタルズ的に見ても、@欧州圏におけるインフレ懸念(今週発表されたユーロ圏の消費者物価指数、生産者物価指数は共に市場予想を大幅に上回る結果)や、AECB当局者によるタカ派的な発言、B米FRBによる早期利上げ観測の後退(パウエルFRB議長はジャクソンホール会合で慎重なスタンスを強調した他、今週末金曜日に発表された米雇用統計は市場予想を大幅に下回る冴えない結果)、C上記ABを背景とした欧米金融政策格差の縮小など、ユーロドル相場の続伸を期待させる好材料が増えつつあります。

こうした中、来週は9/9に開催予定のECB理事会に注目が集まります。市場の関心は、ECBがパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い入れペース減額(第4四半期)に踏み切るか否かに集中しており、足元で高まりつつあるインフレ懸念とECB当局者による相次ぐタカ派発言を踏まえれば、来週のECB理事会でテーパリングに関する具体的なアナウンス(買い入れ縮小額およびテーパリング終了時期)が発される可能性は相応に高いと判断できます。以上を踏まえ、当方では、ユーロドル相場の続伸を来週のメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1775−1.2000

注:ポイント要約は編集部

『金融政策を巡る不確実性を背景にレンジ相場が継続か』

ドル円日足

オーダー/ポジション状況

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