ドル円 議長講演を経てももみあい継続(週報8月第5週)

110円台前半の売りと109円台後半の買いに挟まれての様子見が続いていました。

ドル円 議長講演を経てももみあい継続(週報8月第5週)

議長講演を経てももみあい継続

〇先週のドル円、パウエル議長講演控え、110円台前半の売りと109円台後半の買いに挟まれての様子見
〇議長講演を前に、複数の地区連銀総裁のタカ派発言が続き、米金利じり高、為替もドル高に
〇パウエル議長、年内テーパリング開始を適当としながらも具体的な時期言及せず、ハト派スタンス踏襲
〇パウエル発言受け、米金利低下、株式市場は株価上昇、為替市場はドル安となる
〇今週は経済指標の発表続く、注目は今週末の雇用統計、また8/14発表のCPIも注目度高い
〇今週は、109.50レベルをサポートに110.25レベルをレジスタンスとする

今週の週間見通し

先週のドル円は、ドル円の材料で動くことは無く、米金利と株式市場を見ながら一時的に資源国通貨の影響も受けといった流れでしたが、金曜にパウエル議長講演を控えていることもあって、基本的に110円台前半の売りと109円台後半の買いに挟まれての様子見が続いていました。

注目のパウエル議長講演を前に複数の地区連銀総裁が早期テーパリングを支持するタカ派な発言が続いたことで米金利はじり高、為替もドル高に動いての講演待ちとなりましたが、パウエル議長は年内のテーパリング開始を適当としながらもテーパリングは利上げのシグナルとはならないとし、従来のハト派スタンスを踏襲する内容となりました。唯一の変化は年内のテーパリング開始という時期を示したことですが、具体的な開始時期には言及していません。

講演前の複数の地区連銀総裁によるタカ派発言が続かなければ状況は違っていたとも思えますが、事前に市場参加者がタカ派に傾いていたところにパウエル議長のこれまで同様の発言が繰り返されたことで、ハト派と受け取られ米金利は低下、株式市場は株価上昇、為替市場はドル安と低金利が継続するであろうという見方に素直な反応だったと言えます。

個人的な見解としてはジャクソンホールの講演ではあえて金融政策に触れないか、触れても従来のスタンスを変えないと見ていましたので、特に驚きはなく、逆に年内のテーパリングを示したことで9月FOMCへと着実にテーパリング議論継続の流れを作った上で、タカ派にもハト派にも傾かず9月の経済指標を見ていくという姿勢を示したと考えられます。

本命としては9月FOMCでテーパリング議論をしてもすぐに決定することなく、そこから更なる地ならしをして11月3日のFOMCでテーパリング開始を決定し、それまでの状況次第で即時開始となるか12月開始となるかではないかと思います。9月22日FOMCでは早期開始を主張するメンバーを抑えられるかどうかに焦点は移っていくと考えられますが、9月22日に決定し10月開始というのは時間的に短い感があり、十分な周知期間を設けられるという点で11月3日決定を考える可能性が高いと見ています。

9月FOMCまでにまずは今週末の雇用統計、そして14日CPIは注目度が高まるでしょう。ただ、金曜の欧州市場からNY市場までの動きを見ても、ブレるのは市場参加者で一貫した姿勢を貫くのがFRB議長というこれまでのスタンスが再認識されたように思います。

今週は月初ということで経済指標の発表が続きますが、最大の注目は金曜の米国雇用統計です。今回のコンセンサスは失業率が前回の5.4%から5.2%へ改善する一方で、NFPは+94.3万から+74万へとやや減少する見通しです。ただ、相変わらず予想の幅は広く、どのような数字が出て来てもおかしくはない状況ですし、今週の雇用統計と14日CPIをセットで考えるべきであり、一時的な動きは出ても方向性は出て来ないという見方でいます。

テクニカルにも見てみましょう。日足チャートをご覧ください。

先週と全く同じラインを残してありますが、ピンクの太線で示した7月高値と8月高値を結んだレジスタンスラインと8月安値を2点結んだサポートラインが依然として有効なようです。これらのラインは今週末時点で、109.65レベルと110.25レベルに位置します。多少上下に抜ける動きがあってもヒゲで抜ける程度ではないかと思いますが、議長講演を受けて若干上値が重たいという流れを考えたいところです。

今週は109.50レベルをサポートに110.25レベルをレジスタンスとする一週間を考えておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

8月30日(月)
**:** LDN、トルコ市場休場
18:00 ユーロ圏消費者信頼感
21:00 ドイツ8月CPI速報値 ☆
23:00 米国7月住宅販売保留件数

8月31日(火)
07:45 NZ住宅建設許可
08:30 本邦7月失業率・有効求人倍率
10:00 中国8月製造業PMI ☆
10:00 NZ8月企業信頼感
10:30 豪州7月住宅建設許可
15:45 フランス7月PPI
15:45 フランス4〜6月期GDP改定値
15:45 フランス8月CPI速報値
16:00 トルコ7月貿易収支
16:55 ドイツ8月失業率
18:00 ユーロ圏8月CPI速報値 ☆
18:00 オーストリア中銀総裁・オランダ中銀総裁講演 ☆
21:00 南ア7月貿易収支
22:00 米国6月住宅価格
22:00 米国6月ケースシラー住宅価格
22:45 米国8月シカゴ購買部協会景況指数
23:00 米国8月消費者信頼感

9月1日(水)
10:30 豪州4〜6月期GDP
10:45 中国8月MarkIt製造業PMI
15:00 ドイツ7月小売売上高
15:00 英国8月住宅価格
16:00 トルコ4〜6月期GDP
16:00 トルコ8月製造業PMI
16:50 フランス8月製造業PMI
16:55 ドイツ8月製造業PMI
17:00 ユーロ圏8月製造業PMI
17:30 英国8月製造業PMI
18:00 ユーロ圏7月失業率
21:00 ドイツ連銀総裁講演 ☆
21:15 米国8月ADP全国雇用者数 ☆
22:45 米国8月製造業PMI
23:00 米国8月ISM製造業景況指数 ☆
23:00 米国7月建設支出
23:30 週間原油在庫統計

9月2日(木)
10:30 豪州7月貿易収支
18:00 ユーロ圏7月PPI
20:30 米国8月チャレンジャー人員削減予定数
21:30 米国7月貿易収支
21:30 米国4〜6月期非農業部門生産性
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国7月製造業新規受注

9月3日(金)
10:45 中国8月MarkItサービス業PMI
16:00 トルコ8月CPI
16:50 フランス8月サービス業PMI
16:55 ドイツ8月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏8月サービス業PMI
17:30 英国8月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏7月小売売上高
21:30 米国8月雇用統計 ☆
22:45 米国8月サービス業PMI
23:00 米国8月ISM非製造業景況指数 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月23日(月)
 週明けのドル円は日経平均上昇と米金利上昇を材料にドル買いが先行し、欧州市場昼頃には一時110.15レベルの高値をつけました。しかし、先週に続いて110円台前半の利食いに押される中、米金利が反転し先週末の水準へと押す動きとともにドル円は109.62レベルと日中安値を更新し、安値圏での引けとなりました。

8月24日(火)
 ドル円は前日の下げに対する調整が先行したものの上値は重く、米金利の動きを見ての動きが続いていました。しかしNY市場に入り原油をはじめ商品価格が強い地合いとなっていたことから、豪ドル、NZドルの買いが入り一時的にドル売りが強まることとなりました。ドル円は一時109.41レベルの安値をつけ、その後すぐに下げ始める前の水準へと戻しもみあいのまま引けました。

8月25日(水)
 ドル円は日経先物に追随して早朝には買いが先行したものの、前場が始まると下げと株価のリスクオン・オフに反応しての動きが続きましたが、欧州市場昼頃に前日高値を上抜けるとテクニカルな買いが目立ちました。NY市場に入ると米金利上昇も手伝ってドル円は110.13レベルまで上昇しましたが、110円の大台超えではまだドル売りオーダーも残っている様子で月曜高値はトライできず反落して引けました。

8月26日(木)
 ドル円は米金利に沿った動きとなり、東京市場では上値が重く欧州市場早朝に米金利が上昇すると、前日高値を超え110.22レベルまで上昇。その後も多少の上下を挟みNY前場には地区連銀総裁のタカ派発言が続いたことから110.23レベルの高値をつけました。しかしパウエルFRB議長講演を前に大きな動きは出ず、終日のレンジも30銭に留まりました。

8月27日(金)
 金曜東京前場のドル円は日経平均株価の下げから円買いが先行しましたが、欧州市場序盤以降はイベント前の買い戻しに加え、複数の地区連銀総裁によるテーパリングを支持する発言を受け一時110.27レベルの高値を見てのパウエル議長講演待ちとなりました。議長講演は年内のテーパリング開始を適当としながらもテーパリングは利上げのシグナルとはならないとし、従来の議長のハト派スタンスを踏襲する内容となったことから米金利低下、株式市場は株価上昇、為替市場はドル安となりました。

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