議長講演を経てももみあい継続
〇先週のドル円、パウエル議長講演控え、110円台前半の売りと109円台後半の買いに挟まれての様子見
〇議長講演を前に、複数の地区連銀総裁のタカ派発言が続き、米金利じり高、為替もドル高に
〇パウエル議長、年内テーパリング開始を適当としながらも具体的な時期言及せず、ハト派スタンス踏襲
〇パウエル発言受け、米金利低下、株式市場は株価上昇、為替市場はドル安となる
〇今週は経済指標の発表続く、注目は今週末の雇用統計、また8/14発表のCPIも注目度高い
〇今週は、109.50レベルをサポートに110.25レベルをレジスタンスとする
今週の週間見通し
先週のドル円は、ドル円の材料で動くことは無く、米金利と株式市場を見ながら一時的に資源国通貨の影響も受けといった流れでしたが、金曜にパウエル議長講演を控えていることもあって、基本的に110円台前半の売りと109円台後半の買いに挟まれての様子見が続いていました。
注目のパウエル議長講演を前に複数の地区連銀総裁が早期テーパリングを支持するタカ派な発言が続いたことで米金利はじり高、為替もドル高に動いての講演待ちとなりましたが、パウエル議長は年内のテーパリング開始を適当としながらもテーパリングは利上げのシグナルとはならないとし、従来のハト派スタンスを踏襲する内容となりました。唯一の変化は年内のテーパリング開始という時期を示したことですが、具体的な開始時期には言及していません。
講演前の複数の地区連銀総裁によるタカ派発言が続かなければ状況は違っていたとも思えますが、事前に市場参加者がタカ派に傾いていたところにパウエル議長のこれまで同様の発言が繰り返されたことで、ハト派と受け取られ米金利は低下、株式市場は株価上昇、為替市場はドル安と低金利が継続するであろうという見方に素直な反応だったと言えます。
個人的な見解としてはジャクソンホールの講演ではあえて金融政策に触れないか、触れても従来のスタンスを変えないと見ていましたので、特に驚きはなく、逆に年内のテーパリングを示したことで9月FOMCへと着実にテーパリング議論継続の流れを作った上で、タカ派にもハト派にも傾かず9月の経済指標を見ていくという姿勢を示したと考えられます。
本命としては9月FOMCでテーパリング議論をしてもすぐに決定することなく、そこから更なる地ならしをして11月3日のFOMCでテーパリング開始を決定し、それまでの状況次第で即時開始となるか12月開始となるかではないかと思います。9月22日FOMCでは早期開始を主張するメンバーを抑えられるかどうかに焦点は移っていくと考えられますが、9月22日に決定し10月開始というのは時間的に短い感があり、十分な周知期間を設けられるという点で11月3日決定を考える可能性が高いと見ています。
9月FOMCまでにまずは今週末の雇用統計、そして14日CPIは注目度が高まるでしょう。ただ、金曜の欧州市場からNY市場までの動きを見ても、ブレるのは市場参加者で一貫した姿勢を貫くのがFRB議長というこれまでのスタンスが再認識されたように思います。
今週は月初ということで経済指標の発表が続きますが、最大の注目は金曜の米国雇用統計です。今回のコンセンサスは失業率が前回の5.4%から5.2%へ改善する一方で、NFPは+94.3万から+74万へとやや減少する見通しです。ただ、相変わらず予想の幅は広く、どのような数字が出て来てもおかしくはない状況ですし、今週の雇用統計と14日CPIをセットで考えるべきであり、一時的な動きは出ても方向性は出て来ないという見方でいます。
テクニカルにも見てみましょう。日足チャートをご覧ください。
先週と全く同じラインを残してありますが、ピンクの太線で示した7月高値と8月高値を結んだレジスタンスラインと8月安値を2点結んだサポートラインが依然として有効なようです。これらのラインは今週末時点で、109.65レベルと110.25レベルに位置します。多少上下に抜ける動きがあってもヒゲで抜ける程度ではないかと思いますが、議長講演を受けて若干上値が重たいという流れを考えたいところです。
今週は109.50レベルをサポートに110.25レベルをレジスタンスとする一週間を考えておきます。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
8月30日(月)
**:** LDN、トルコ市場休場
18:00 ユーロ圏消費者信頼感
21:00 ドイツ8月CPI速報値 ☆
23:00 米国7月住宅販売保留件数
8月31日(火)
07:45 NZ住宅建設許可
08:30 本邦7月失業率・有効求人倍率
10:00 中国8月製造業PMI ☆
10:00 NZ8月企業信頼感
10:30 豪州7月住宅建設許可
15:45 フランス7月PPI
15:45 フランス4〜6月期GDP改定値
15:45 フランス8月CPI速報値
16:00 トルコ7月貿易収支
16:55 ドイツ8月失業率
18:00 ユーロ圏8月CPI速報値 ☆
18:00 オーストリア中銀総裁・オランダ中銀総裁講演 ☆
21:00 南ア7月貿易収支
22:00 米国6月住宅価格
22:00 米国6月ケースシラー住宅価格
22:45 米国8月シカゴ購買部協会景況指数
23:00 米国8月消費者信頼感
9月1日(水)
10:30 豪州4〜6月期GDP
10:45 中国8月MarkIt製造業PMI
15:00 ドイツ7月小売売上高
15:00 英国8月住宅価格
16:00 トルコ4〜6月期GDP
16:00 トルコ8月製造業PMI
16:50 フランス8月製造業PMI
16:55 ドイツ8月製造業PMI
17:00 ユーロ圏8月製造業PMI
17:30 英国8月製造業PMI
18:00 ユーロ圏7月失業率
21:00 ドイツ連銀総裁講演 ☆
21:15 米国8月ADP全国雇用者数 ☆
22:45 米国8月製造業PMI
23:00 米国8月ISM製造業景況指数 ☆
23:00 米国7月建設支出
23:30 週間原油在庫統計
9月2日(木)
10:30 豪州7月貿易収支
18:00 ユーロ圏7月PPI
20:30 米国8月チャレンジャー人員削減予定数
21:30 米国7月貿易収支
21:30 米国4〜6月期非農業部門生産性
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国7月製造業新規受注
9月3日(金)
10:45 中国8月MarkItサービス業PMI
16:00 トルコ8月CPI
16:50 フランス8月サービス業PMI
16:55 ドイツ8月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏8月サービス業PMI
17:30 英国8月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏7月小売売上高
21:30 米国8月雇用統計 ☆
22:45 米国8月サービス業PMI
23:00 米国8月ISM非製造業景況指数 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
8月23日(月)
週明けのドル円は日経平均上昇と米金利上昇を材料にドル買いが先行し、欧州市場昼頃には一時110.15レベルの高値をつけました。しかし、先週に続いて110円台前半の利食いに押される中、米金利が反転し先週末の水準へと押す動きとともにドル円は109.62レベルと日中安値を更新し、安値圏での引けとなりました。
8月24日(火)
ドル円は前日の下げに対する調整が先行したものの上値は重く、米金利の動きを見ての動きが続いていました。しかしNY市場に入り原油をはじめ商品価格が強い地合いとなっていたことから、豪ドル、NZドルの買いが入り一時的にドル売りが強まることとなりました。ドル円は一時109.41レベルの安値をつけ、その後すぐに下げ始める前の水準へと戻しもみあいのまま引けました。
8月25日(水)
ドル円は日経先物に追随して早朝には買いが先行したものの、前場が始まると下げと株価のリスクオン・オフに反応しての動きが続きましたが、欧州市場昼頃に前日高値を上抜けるとテクニカルな買いが目立ちました。NY市場に入ると米金利上昇も手伝ってドル円は110.13レベルまで上昇しましたが、110円の大台超えではまだドル売りオーダーも残っている様子で月曜高値はトライできず反落して引けました。
8月26日(木)
ドル円は米金利に沿った動きとなり、東京市場では上値が重く欧州市場早朝に米金利が上昇すると、前日高値を超え110.22レベルまで上昇。その後も多少の上下を挟みNY前場には地区連銀総裁のタカ派発言が続いたことから110.23レベルの高値をつけました。しかしパウエルFRB議長講演を前に大きな動きは出ず、終日のレンジも30銭に留まりました。
8月27日(金)
金曜東京前場のドル円は日経平均株価の下げから円買いが先行しましたが、欧州市場序盤以降はイベント前の買い戻しに加え、複数の地区連銀総裁によるテーパリングを支持する発言を受け一時110.27レベルの高値を見てのパウエル議長講演待ちとなりました。議長講演は年内のテーパリング開始を適当としながらもテーパリングは利上げのシグナルとはならないとし、従来の議長のハト派スタンスを踏襲する内容となったことから米金利低下、株式市場は株価上昇、為替市場はドル安となりました。
ディスクレーマー
アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:橋本 光正
2021.08.30
パウエルFRB議長のジャクソンホールでの講演要旨(2021年8月27日開催分)
先週金曜日、ジャクソンホールでパウエルFRB議長の経済見通しに関する講演がありました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2021.08.30
重要米指標の発表相次ぐ、波乱含みの展開も(週報8月第5週)
先週のドル/円相場は、レンジ取引。週間を通した値幅はわずか85ポイントで、これは6月7-11日週以来の小動きだった。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。