重要米指標の発表相次ぐ、波乱含みの展開も(週報8月第5週)

先週のドル/円相場は、レンジ取引。週間を通した値幅はわずか85ポイントで、これは6月7-11日週以来の小動きだった。

重要米指標の発表相次ぐ、波乱含みの展開も(週報8月第5週)

重要米指標の発表相次ぐ、波乱含みの展開も

〇先週のドル円、109.75で寄り付き110.26まで上昇するも押し戻され、109.85レベルで終える
〇週間を通し109.41-110.26の値幅85ポイントのレンジ取引、ジャクソンホール会合を控え小動き
〇パウエル氏発言、テーパリング開始時期は年内が適切とするも、時期については明言を避け折衷的な内容
〇今週は米雇用統計などの重要な米経済指標が連日発表予定、内容次第では再びドル買いに弾みがつくか
〇今週のドル/円予想レンジは、109.00-111.00
〇ドル高・円安は先週高値110.26、超えれば8月の月間高値110.80がターゲット
〇ドル安・円高は先週安値109.11、割り込むと月間安値108.72が視界内に

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場は、レンジ取引。週間を通した値幅はわずか85ポイントで、これは6月7-11日週以来の小動きだった。

前週末はアフガニスタン政権が崩壊して一週間。タリバンで新政権樹立の動きが観測されるなど、市場筋の関心は依然として高い。一方、実施された横浜市長選で菅首相肝煎り候補が惨敗、このあとの自民党総裁選あるいは衆院選へ向け暗雲が垂れ込めてきた。
そうした状況下、ドル/円は109.75円で寄り付いたのち、ややドル売り優勢。週間安値の109.41円を示現している。そののち、一転してドル買いが観測され110.26円まで上昇するも、ドルは高値圏を維持できず。むしろ調整売りがかさむ展開となり、週末NYは109円台へと押し戻されるとほぼ「行って来い」。109.85円レベルで取引を終えている。
なお、先週はNZドルを中心にオセアニア通貨が強含みとなったことが目を引いたほか、南ア・ランドの強さも意識されていた。ランド/円は週間を通して「寄り付き安・大引け高」の様相で、週末には一時7.47円台の高値も。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「米金融政策」と「アフガン情勢」について。
前者は、週末のジャクソンホール会合・パウエルFRB議長の講演待ちといった様相を呈するなか、複数の米当局者からタカ派発言が当初相次いだ。たとえば、カンザスシティ連銀総裁からは「FRBは早めのテーパリングを始めるべき」とのコメントが聞かれている。しかし、新型コロナの感染拡大が止まらないこともあってか、発表される米経済指標は総じて冴えない。4-6月期のGDP改定値も事前予想値にはとどかなかった。なお、実際の講演でパウエル氏は「テーパリング開始時期は年内が適切」との見方を示しながらも、具体的な時期については明言を避けるなど折衷的な内容となっている。

対して後者は、前述したような環境下、「中露首脳」や「独露首脳」など二国間のトップクラスによる協議が週間を通して複数観測されている。ただ、西側諸国からの厳しい見解に対し、中国は「アフガンの主権と独立を尊重し干渉しない」、ロシアもプーチン大統領が「他国は自国の価値観をアフガニスタンに押し付けるべきではない」と述べるなど、中露からは容認コメントが相次ぎ国際世論が二極化している感も否めない。そうしたなか、週末に掛けてアフガニスタンの首都カブールの空港周辺で起きた自爆攻撃とみられる爆発を受け、為替市場も一時荒れ模様に。

<< 今週の見通し >>

先週のドル/円相場は、前述したように週間を通し109.41-110.26円のわずか85ポイントレンジ。週末にジャクソンホール会合という注目材料を抱えているなか、やや寂しい値動きだった。好意的に解釈すれば、いわゆる夏枯れ商状がいまだ続いており、「笛吹けども踊らず」といったところだったのかもしれない。いずれにしても今週は、そんなレンジ取引が続くのか否かにまずは注目だ。材料的には今週も注目要因があるだけに、レンジ放れへの期待感は強いが果たしてどうなるか。
前述したような状況下、マーケットでもっとも注視されているものはこのあとも米ファンダメンタルズならびに金利動向。ただ、先週の講演で具体的な時期については明言を避けつつも、パウエル氏が「テーパリング開始時期は年内が適切」との見方を示しており、思惑をさらに増幅させるような米経済指標が発表されるのかが注視されている。特にとなると、週末発表の米雇用統計がやはりカギを握る存在か。今週も週末を中心に向け、上下に荒れる展開には注意を払いたい。

テクニカルに見た場合、先週85ポイントレンジに終わったドル/円は、期間によっていくつものレンジを形成している。もっとも狭いものは、その85ポイントレンジ(109.41-110.26円)で、仮に抜けても「中レンジ」の109.11-110.80円、さらに3円幅に近い「大レンジ」も存在している。今週はそれらのうち、どこまでこなしていけるのか、市場筋のサマーバカンスも終わりに入るタイミングだけに、予想以上の変動にも期待せずにはいられない。「大レンジ」はともかく、「中レンジ」であれば週内にブレークする可能性もありそうだ。

材料的に見た場合、中長期的には、日米などに対抗するためロシアとの結び付きを強めつつある「中国情勢」や、石破元幹事長の出馬観測も取り沙汰されてきた自民総裁選などを含めた「日本の政局」、「アフガン情勢」、「新型コロナウイルス変異種(デルタ株)」−−などが注視されている。
そうしたなか今週は、8月の消費者信頼感指数や同ISM製造業景況指数、同雇用統計といった重要な米経済指標が連日発表される予定だ。先週末のパウエル発言で織り込み過ぎていた分が吐き出された格好となったが、指標内容次第では今週再びドル買いに弾みがつく展開も否定できない。

そんな今週のドル/円予想レンジは、109.00-111.00円。ドル高・円安については、先週高値の110.26円をめぐる攻防にまず注視。超えれば8月の月間高値110.80円がターゲットに。
対するドル安・円高方向は、同じく先週安値の109.41円は最初のサポートで、割り込むと109.11円を目指す。それも下回ると月間安値108.72円が視界内に捉えられそうだ。

重要米指標の発表相次ぐ、波乱含みの展開も

ドル円日足


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