『米金利を睨みながらの神経質な展開を想定。米雇用統計に注目』
〇今週のドル円109.42に下落後長期金利上昇、リスク選好回復、米当局者のタカ派発言に110.26まで上昇
〇ジャクソンホールでのパウエル議長講演はテーパリング年内開始を支持するも、慎重姿勢崩さず
〇早期テーパリング観測後退に、ドル円は109円台に反落して越週
〇ユーロドル週明けは1.1690台ではじまるも、週末にかけ1.18近辺まで上昇
〇リスク選好回復、ECB議事要旨のタカ派的内容、週末パウエル議長講演のハト派スタンス等が要因
〇ドル円ジャクソンホール会合を受けても方向感出ず、議長はデータ次第との姿勢崩さず
〇テクニカルも主要ポイントが実勢相場付近に集中、気迷い確認される
〇来週金曜の雇用統計要注視、ドル高・円安をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):108.50ー111.00、(EURUSD):1.1650−1.1900
今週のレビュー(8/23−8/27)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初109.81で寄り付いた後、@米テーパリングの後ズレ観測や、A米金利低下に伴うドル売り圧力、B米8月製造業PMI及び、C米8月サービス業PMIの冴えない結果、D欧米株の下落を背景としたリスク回避の円買い圧力が重石となり、翌8/24にかけて、週間安値109.42まで下落しました。しかし、一巡後に下げ渋ると、E米長期金利上昇に伴うドル高圧力や、F株高・商品高を背景としたリスク選好の円売り圧力(クロス円上昇→ドル円連れ高)、G米7月耐久財受注の良好な結果、H米当局者による相次ぐタカ派的な発言(カンザスシティ連銀ジョージ総裁や、セントルイス連銀ブラード総裁、ダラス連銀カプラン総裁、クリーブランド連銀メスター総裁、アトランタ連銀ボスティック総裁など)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値110.26まで上昇しました。
もっとも、I注目されたジャクソンホール会合にてパウエルFRB議長が慎重なスタンス(年内テーパリング開始の適切性を肯定しつつも、新型コロナウイルスなどの不確実要素を踏まえ、具体的な開始時期について言明せず)に徹すると、市場では米早期テーパリング観測後退→米長期金利低下→米ドル売りの波及経路が活発化し、本稿執筆時点(日本時間8/28午前5時30分現在)では、109.80近辺まで反落する動きとなっております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1694で寄り付いた後、早々に週間安値1.1691まで下落しました。しかし、前週末金曜日に記録した約9ヶ月ぶり安値1.1664をバックに下げ渋ると、@ジャクソンホール会合を控えたポジション調整(ユーロショートの手仕舞い)や、A米経済指標の冴えない結果、B株式市場および原油先物価格の堅調推移(リスク選好のドル売り圧力)、CECB議事要旨(7/22開催分)のタカ派的な内容(フォーワードガイダンスの変更について少数のメンバーが賛成表明を見送ったことが明らかとなったこと)、DパウエルFRB議長の慎重なスタンス(ジャクソンホール会合)が支援材料となり、週末にかけて、週間高値1.1802(8/16以来の高値圏)まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間8/28午前5時30分現在)では、1.1795近辺で推移しております。
来週の見通し(8/30−9/3)
<ドル円相場>
ドル円はジャクソンホール会合を受けても尚方向感を見出すには至りませんでした。一目均衡表転換線や基準線、一目均衡表雲上下限、21日移動平均線や90日移動平均線といった主要チャートポイントが実勢相場近辺に集結するなど、テクニカル的にも、市場参加者の「気迷い」が確認されます(上下共に方向感を見出しづらい時間帯)。
こうした小康状態の背景には、米金融政策の先行き不透明感が挙げられます。パウエルFRB議長を除く大半の米当局者からはタカ派的な発言が繰り返しなされていますが、パウエル氏本人はジャクソンホール会合においてもデータ次第との慎重姿勢を崩しませんでした。
この為、市場では来週末金曜日(9/3)に発表される米雇用統計への注目度が高まっております。米8月非農業部門雇用者数が市場予想を上回る場合や、米8月失業率が市場予想を下回る場合には、9月FOMCでのテーパリング宣言を織り込む形で、米長期金利上昇→米ドル高→ドル円急伸に繋がる可能性が想定されます(但し、この場合は米長期金利上昇でも米主要株価指数が崩れないことが前提となります。米主要株価指数が崩れる場合はリスク回避の円買いを通じて一巡後に反落に転じる恐れあり)。一方、米8月非農業部門雇用者数が市場予想を下回る場合や、米8月失業率が市場予想を上回る場合には、米年内テーパリング開始観測後退→米長期金利低下→米ドル売りを通じて、ドル円には強い下押し圧力が加わると予想されます。以上の通り、ドル円相場は足元小康状態が続いていますが、来週末金曜日の米雇用統計をトリガーにトレンドが形成される可能性があります。新型コロナウイルスの感染拡大といった不確実要素はあるものの、当方では引き続き、日米金融政策格差を背景としたドル高・円安をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(USDJPY):108.50ー111.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は8/20に記録した約9ヵ月ぶり安値1.1664をボトムに反発に転じると、今週末にかけて、約2週間ぶり高値となる1.1802まで急伸しました。この間、一目均衡表転換線や基準線を上抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転も消失(遅行線が26日前のローソク足に接触)するなど、地合いの強さを印象付けるチャート形状となりつつあります。但し、上方には「分厚い雲」が位置している為、ここからの更なる続伸は容易では無いと考えられます(来週は戻り売り圧力が強まる展開を想定。今週の急伸はあくまで下落トレンドの過程で見られる一時的な反発局面と整理。一巡後の反落リスクに要警戒)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@ユーロ圏における新型コロナウイルスの感染再拡大懸念や、A欧州経済の先行き不透明感、B欧米金融政策の方向性の違い(米年内テーパリング開始が織り込まれつつある米国と、金融緩和の長期化が見込まれるECBとの金融政策格差)、Cアフガニスタンを巡る地政学的リスク(アフガニスタンからの難民受け入れ問題→欧州各国の政治リスクに波及する恐れ)など、ユーロドルの下落を意識させる材料が複数残っております。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は8/30に予定されているユーロ圏8月企業景況感・消費者信頼感指数、8/31のユーロ圏8月消費者物価指数、9/1のユーロ圏8月製造業PMI、9/3のユーロ圏8月サービス業PMIといった欧州経済指標に加えて、米国経済イベント(8/31の米8月コンファレンスボード消費者信頼感指数、9/1の米8月ISM製造業景況指数、米8月ADP雇用統計、9/3の米8月雇用統計、米8月ISM非製造業景況指数など)も目白押しとなる為、欧米の主要株価指数、欧米長期金利の動向を睨みながらの神経質な展開が予想されます。特に週末に予定されている米雇用統計への注目度は高く、非農業部門雇用者数の予想比増加や、失業率の予想比低下が確認できれば、米早期テーパリング観測の再燃(9月FOMCでのテーパリング宣言→11月FOMCでのテーパリング決定)を通じて、米長期金利上昇→米ドル高→ユーロドル下落の波及経路が想定される為、来週は一巡後の反落リスクに注意が必要と考えられます。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1650−1.1900
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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