『ジャクソンホールでのパウエルFRB議長講演に注目』
〇今週のドル円、アフガン情勢急転、米中の指標不冴え、コロナ感染拡大で週明け109.11まで下落
〇その後主要通貨に対するリスク回避のドル買いが強まり、ドル円にも波及し上昇
〇FOMC議事要旨でテーパリング観測も高まり、週後半にかけ110.23まで急伸
〇週末にかけてポジション調整圧力から反落し、109.79レベルで越週
〇ユーロドル週初1.1802の高値をつけるも、リスク回避ムードと米テーパリング観測に1.1664まで下落
〇ドル円上下しつつも方向感出ず、主要チャートポイントも実勢付近に集中、市場の気迷い示す
〇来週は8/26-28に今月のメインイベント、ジャクソンホール会合、パウエル議長発言で動意づくか
〇パウエル議長がテーパリングの地均しを行いドル買いの流れとなることをメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):108.50ー111.00、(EURUSD):1.1550−1.1800
今週のレビュー(8/16−8/20)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初109.71で寄り付いた後、@アフガニスタン情勢を巡る地政学的リスクの高まり(反政府組織タリバンがアフガニスタン政権を20年ぶりに掌握)や、A中国の主要経済指標の不冴な結果(7月小売売上高・7月鉱工業生産・7月固定資産投資が軒並み悪化)、B新型コロナウイルス・デルタ株の世界的な感染拡大、C上記@ABを背景とした伝統的金融市場のリスクオフ(クロス円下落→ドル円連れ安。リスク回避の円買い)、D米長期金利の急低下(ドル売り)、E米8月ニューヨーク連銀製造業景気指数の冴えない結果が重石となり、週明け海外時間に、週間安値109.11(8/4以来、約2週間ぶり安値圏)まで下落しました。
しかし、心理的節目109.00をバックに下げ渋ると、F米長期金利の反転上昇や、Gリスク回避のドル買い圧力(リスク回避の円買いからリスク回避のドル買いに地合いがシフト)、H短期筋のショートカバー、IFOMC議事要旨(7/27ー7/28開催分)を控えたポジション調整、Jセントルイス連銀ブラード総裁によるタカ派的な発言(FRBはインフレショックを考慮しなければならない。来年第1四半期までにテーパリングを完了させると共に、必要に応じて利上げの選択肢も確保すべき)、K米早期テーパリング観測の高まり(FOMC議事要旨で米当局者の多く=mostがテーパリング開始に必要な条件は年内に達成できる公算が大きいとの見解を示唆)が支援材料となり、週後半(8/19)にかけて、週間高値110.23(8/13以来、約1週間ぶり高値圏)まで急伸しました。もっとも、週末にかけては、来週予定されているジャクソンホール会合への思惑からポジション調整圧力が強まり、本稿執筆時点(日本時間8/21午前6時00分現在)では、109.79近辺で推移しております。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1794で寄り付いた後、早々に週間高値1.1802まで上昇しました。しかし、一目均衡表転換線に続伸を阻まれると、@欧州圏で広がる新型コロナウイルス・デルタ株の感染拡大懸念や、A欧州経済の先行き不透明感、Bアフガニスタン情勢を巡る地政学的リスク(リスク回避のドル買い・円買いを誘発)、C上記@ABを背景とした世界的なリスク回避ムード(欧米株安→リスク回避のドル買い圧力)、Dユーロ圏第2四半期GDP改定値(結果13.7%、予想13.6%)の市場予想を下回る結果、E米当局者によるタカ派的な発言、F米早期テーパリング観測の再燃、G年初来安値を割り込んだことに伴うロング勢のロスカットが重石となり、週末にかけて、週間安値1.1664(昨年11/4以来の安値圏)まで下落しました。引けにかけて持ち直すも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間8/21午前6時00分現在)では、1.1695近辺で推移しております。
来週の見通し(8/23−8/27)
<ドル円相場>
ドル円は上下しつつも方向感を見出すには至りませんでした(8/16安値109.11→8/19高値110.23→8/20終値109.79)。一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や90日移動平均線といった主要チャートポイントも実勢相場近辺に密集するなど、テクニカル的にも、市場参加者の気迷い状態が確認できます。こうした動きの背景には「リスク回避のドル買い」と「リスク回避の円買い」の綱引き状態の継続が挙げられます(リスク回避局面において米ドルと円は共に買われ易くなる傾向あり)。今週はアフガニスタンを巡る地政学的リスクや、新型コロナウイルスの感染再拡大懸念、世界経済の先行き不透明感など、複数のファンダメンタルズ的な悪材料が噴出しましたが、これらは全て、「ドル買い」で且つ「円買い」要因でもある為、ドル円相場の方向性を決定づけるには至りませんでした。
但し、来週は週末にかけて(8/26ー8/28)、今月のメインイベントでもあるジャクソンホール会合が予定されている為、パウエルFRB議長の発言次第でドル円相場がどちらか一方に動意づく可能性が高いと考えられます(パウエルFRB議長の講演は日本時間8/27午後11時00分を予定)。今週発表された米FOMC議事要旨では、「多くの参加者が年内テーパリング開始を適切と判断した」との記述がある一方、「新型コロナウイルスの感染拡大が広がれば、数人の参加者は当該見解を変更する可能性がある」とも付されており、最後の最後までどちらに転ぶか分からない状態となっています(市場参加者のコンセンサスが未だに定まっていない状態)。
仮にパウエルFRB議長が他のFRB当局者の主張に歩み寄って、テーパリングの必要性を説いた場合は、米早期テーパリング観測再燃→米長期金利上昇→米ドル高の経路でドル円が急伸する可能性がありますし、一方、パウエルFRB議長がこれまで同様、「インフレ圧力は一時的」「新型コロナウイルスの感染拡大に鑑みテーパリングを急ぐ必要はない」といった姿勢を貫く場合は、米早期テーパリング観測後退→米長期金利低下→米ドル売りの経路でドル円が急落する恐れもあります。オプション市場では当該イベントに係る値動きの急拡大を織り込むプライシングがなされており、パウエルFRB議長講演時の乱高下に注意が必要でしょう。尚、当方では引き続き、8/27にパウエルFRB議長がテーパリングの必要性を説き(地均しを行い)、9/3の米雇用統計を確認した後、9/21ー9/22の米FOMCでテーパリング開始(手段・方針)を決定するシナリオを想定している為、日米金融政策の方向性の違いに着目した「米ドル買い・円売り」の流れを来週のメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ(USDJPY):108.50ー111.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は7/30に記録した直近高値1.1910をトップに反落に転じると、今週末にかけて、昨年11/4以来、約9ヶ月ぶり安値となる1.1664まで急落しました(年初来安値を更新)。この間、一目均衡表基準線や転換線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転や弱気のパーフェクトオーダー、弱気のバンドウォークも成立するなど、テクニカル的に見て「地合いは極めて弱い」と判断できます。目先は11/4安値1.1603を試すシナリオが想定されます。
ファンダメンタルズ的に見ても、@ユーロ圏における新型コロナウイルスの感染再拡大懸念や、A欧州経済の先行き不透明感、B米早期テーパリング観測の高まりを背景とした欧米金融政策の方向性の違い(FOMC議事要旨で年内テーパリング開始が適切であることが示された米国と、金融緩和の長期化が見込まれるECBとの金融政策格差)、Cアフガニスタンを巡る地政学的リスク(欧州の場合、アフガニスタンからの難民受け入れ問題が出てくるため、欧州各国の政治リスクに繋がり易い)など、ユーロドルの下落を意識させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は8/23に予定されているユーロ圏8月PMI速報値や、8月消費者信頼感指数、8/25のドイツ8月ifo景況感指数、8/26ー8/28のジャクソンホール会合に注目が集まります。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で欧州経済指標が不冴な結果となった場合や、ジャクソンホール会合でパウエル氏よりテーパリングの地均しがなされた場合などには、欧州経済の先行き不安を背景とした「ユーロ売り」と、米早期テーパリング観測を背景とした「米ドル買い」が組み合わさることから、ユーロドル相場がもう一段大きく値を下げる恐れがあり、来週はダウンサイドリスクに特に注意が必要でしょう。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1550−1.1800
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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