ドル円見通し FOMC議事録公開後のドル高とリスク回避的円高が交錯(21/8/20)

ドル円としてはドルストレートでのドル高とクロス円の下落及びリスク回避的な円高が交錯する状況となっている印象だ。

ドル円見通し FOMC議事録公開後のドル高とリスク回避的円高が交錯(21/8/20)

ドル円見通し FOMC議事録公開後のドル高とリスク回避的円高が交錯

〇ドル円、ドル全面高の様相で8/19昼に110.22をつけるも急落に転じ、夕刻には109.47まで下落
〇デルタ株感染拡大による株安もありリスク回避的な円買いが勝り、夕刻への急落発生したか
〇ドル円、ドルストレートでのドル高と、クロス円の下落及びリスク回避的円高が交錯する状況
〇米10年債利回りは低下、量的緩和縮小開始時期に敏感な米2年債利回りは上昇
〇NYダウは続落、ナスダックは上昇、米経済指標まちまちの結果に
〇109.70以上での推移中は上向きとし、110円超えからは110.22試し、110.50前後への上昇を想定する
〇109.47割れからは、8/16夜安値109.10試しへ向かうとみる

【概況】

ドル円は8月19日未明に110.06円まで上昇、FOMC議事録公開直後にいったん売られて109.74円まで下げたが、FOMC議事録公開後の初期的乱高下が収まってからはドル全面高の様相となったことで19日昼には110.22円まで一段高となった。しかし高値更新からさらに続伸するかに見えたところで急落に転じて19日夕刻には109.47円まで下落、109.50円割れは買い戻されたものの110円台回復へは進めずにいる。

FOMC議事録では米連銀による物価上昇の上ブレへの懸念が大きく9月会合で量的金融緩和縮小開始を決定する可能性が高まったと市場は受け止めてドル高反応が進んだ。ドル円の19日昼への上昇も全般的なドル高を反映したものだが、一方ではクロス円全般が大幅下落となりデルタ株感染拡大による株安もありリスク回避的な円買いが勝ったことで夕刻への急落が発生した印象だ。トヨタ自動車が9月の世界生産を計画比で4割減らすと報道されたことで19日の東京株式市場では自動車関連銘柄が急落したが、東南アジアでのデルタ株感染爆発の影響が深刻なことを示したことも影響したと思われる。
夕刻以降は全般的なドル高基調を受けて戻しているが、ドル円としてはドルストレートでのドル高とクロス円の下落及びリスク回避的な円高が交錯する状況となっている印象だ。

【米長期債利回りは2年債上昇も10年債は低下、NYダウ続落、米経済指標まちまち】

8月19日の米10年債利回りは前日比0.01%低下の1.25%で終了。8月12日の1.37%台から17日に1.21%台まで低下してからは下げ渋りの様相で19日未明に1.30%へ上昇した後は失速、19日安値では1.22%台まで下げている。一方で2年債利回りは19日未明の0.23%から0.20%までいったん低下したものの0.22%台へ持ち直した。終値ベースでは8月16日から4日連続の上昇であり、10年債利回りの低下とは異なる動きとなっている。

6月のFOMCで量的金融緩和縮小議論の開始姿勢が示された時に10年債利回りの動きは鈍くまだ縮小開始には時間があるとして低下反応へ向かったが、2年債利回りは利上げ及び量的緩和縮小開始時期に敏感なために急伸した経緯がある。8月19日のFOMC議事録では早ければ9月会合で縮小開始が決定される可能性があるとされたが、2年債利回りは今回も10年債利回りよりもやや過敏な反応を見せている印象だ。
ドル円にとっては2年債利回り上昇がドル高円安要因となりつつも指標の10年債利回りが低下傾向の範囲ないしは横ばい程度の動きにとどまればドル安円高要因となり強弱交錯となる。また長期債利回り動向が決め手にならない場合にはデルタ株の感染爆発に対するリスク回避的な円高が勝った動きへ進む可能性もあるところだ。

8月19日のNYダウは前日比66.57ドル安と3日間の続落だったが、ナスダック総合指数は同15.87ポイント高と上昇した。NYダウは安値で34690.25ドルを付けたところから34894.12ドルまで戻して終了しているが、8月16日の史上最高値35631.19ドルから19日安値まで941ドル安の下げ幅となっており、千ドル弱のレベルで切り返せば上昇トレンドの継続となるところだが、千ドルを超えて続落する場合には5月10日から6月18日への1820ドル安、9月3日から10月30日への3056ドル安等の規模に発展しかねないと注意したい局面だ。株安が不安感を強めるとリスク回避的円高へなびきやすくなる。

米経済指標はまちまちで、景況感は最近の低下傾向を示したが失業保険申請件数の減少は米連銀の量的緩和縮小開始に寄与する内容だった。
米労働省が発表した新規失業保険申請は8月14日までの週間で前週比2万9000件減の34万8000件となり市場予想の36万3000件を下回り4週連続で改善してコロナショック発生以降の最低となった。8月7日までの失業保険受給者総数は282万人で前週から7万9000人減少した。
米フィラデルフィア連銀の8月製造業景況指数は19.4となり7月の21.9から低下して市場予想値の23.0を下回った。米コンファレンス・ボードによる7月の景気先行指数は前月比0.9%上昇となり市場予想の0.8%上昇を上回り6月の0.5%上昇から伸びが加速した。
米連銀はパウエル議長が日本時間8月27日23時からワイオミング州ジャクソンホールで経済見通しをテーマに講演すると発表した。量的緩和縮小への判断目安、時期、方法等について示される可能性もあると注目される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、8月16日夜安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしてきたが、19日昼へ一段高してから109.50円割れへ失速したため、19日昼高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。安値形成期は19日夜から23日夜にかけての間と想定されるので既に19日夕安値でボトムを付けた可能性があるが、19日昼高値を超えないうちは一段安余地ありとし、110円超えから強気転換注意とし、19日昼高値110.22円超えからは新たな強気サイクル入りとみて24日午前から26日昼にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では19日夕刻への反落で遅行スパンが悪化したが先行スパンからの転落は回避しているので遅行スパンが再び好転するところからは高値試し優先とみる。ただし先行スパン転落からは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は19日未明高値から19日昼高値への一段高に対して指数のピークが切り下がる弱気逆行を発生させて失速したが、19日夕安値からの反発で50ポイント台を回復してきた。50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとし60ポイント超えからは70ポイント台を目指す上昇に入るとみる。ただし40ポイント割れからは下げ再開として20ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月19日夕安値109.47円を下値支持線、19日昼高値110.22円を上値抵抗線とする。
(2)109.70円以上での推移中は上向きとし、110円超えからは19日昼高値110.22円試しとし、高値更新からは110.50円前後への上昇を想定する。110.50円以上は反落警戒とするが、110円台を維持しての推移なら週明けも高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)109.47円割れからは8月16日夜安値109.10円試しへ向かうとみる。109円台序盤は買い戻しも入りやすいとみるが109.50円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/20(金)
15:00 (独) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 1.3%、予想 0.8%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.5%、予想 0.4%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 9.7%、予想 6.0%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.3%、予想 0.2%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (6月 7.4%、予想 5.7%)



※ポイント要約は編集部

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