ドル円見通し 連騰から一転して急落、押し目形成で踏み止まれるか試される(週報8月第3週)

ドル円は8月13日夜に110円を割り込んで14日早朝には109.53円まで急落した。

ドル円見通し 連騰から一転して急落、押し目形成で踏み止まれるか試される(週報8月第3週)

ドル円見通し 連騰から一転して急落、押し目形成で踏み止まれるか試される

〇ドル円、8/13夜に110円を割り込み14日早朝には109.53円まで急落
〇13日夜のミシガン大消費者信頼感指数の予想外の悪化が要因
〇ドル円の8/13下落は8/4安値からの反騰一服による調整安の範囲か
〇ただし8/4安値108.71を割り込んでの円高加速の可能性も警戒
〇109.75以下での推移中は下向き、109.50割れから続落の場合は109円前後を試す
〇109.70超えから続伸に入れば110円試しへ、さらに110.25を超えれば110.79を目指すとみる

【概況】

ドル円は8月13日夜に110円を割り込んで14日早朝には109.53円まで急落した。8月4日夜の米7月ISMサービス業景況指数が予想を大幅に超えて過去最高となったことをきっかけに反騰に転じ、8月6日の米雇用統計も予想を上回る改善を示したことで110円を突破、米長期債利回りが連日の上昇となりドル全面高が続いたことで8月11日には110.79円まで高値を切り上げて8月4日夜安値からの上昇幅は2.08円に拡大した。
しかし、8月11日夜の米7月消費者物価上昇率ではコアCPI伸び率が前月から鈍化したことで米長期債利回りが低下、ドル高一服となりドル円は失速、12日から13日の日中にかけては110.30円台を下値支持線として横ばい推移にとどまっていたが、13日夕刻に110.30円を割り込んで下げ渋り持ち合いから下放れに入り、13日夜のミシガン大8月消費者信頼感指数が予想外に低下、前月比で過去50年間において三番目の悪化となったことでドル全面安が加速、110円割れからさらに続落して8月11日高値からの下げ幅は8月14日早朝安値までで1.26円となり、8月4日からの上昇幅に対しては半値押しを超えて3分の2押しラインの109.40円に迫るところとなった。

【米長期債利回りは連騰ストップから急低下】

6月17日未明の前々回米FOMC声明でパンデミック対策としての量的金融緩和による資産購入政策を縮小する=テーパリングの議論を始めると宣言され、7月29日未明の前回FOMCではテーパリングを急がないものの議論は進んでいることが示唆され、8月第1週にはクラリダ米連銀副議長が年内にもテーパリングは可能との見解を示し、ウォラー米連銀理事は「7月分と8月分の雇用統計で就業者数が80〜100万人増なら10月からテーパリング開始は可能」との条件を示した。
市場は米経済指標を見ながらテーパリング着手が速まるのか先送りされるのか、一喜一憂の反応を見せており、8月4日の米ADP民間雇用統計での就業者増加数が冴えなかったところでドル円は7月2日以降の最安値を付け、その後の米経済指標良好さから米長期債利回りが連騰に入ってドル全面高となる中で8月11日高値へ上昇してきた。その梯子が8月11日の米コアCPI上昇率の鈍化とミシガン大消費者信頼感指数の悪化で外れた状況にある。

米10年債利回りは8月4日に1.12%へ低下して7月20日と同値としてダブル底を形成し、8月10日まで5連騰、11日には1.37%を付けてダブル底の中間にあった7月22日の1.31%を大きく超えた。しかし8月13日には1.28%まで急落している。3月31日に1.77%のピークを付けた後は、数日のリバウンドを消化しながら一段安を繰り返してきた流れがダブル底形成からの戻り高値切り上げに入って流れが変わってきた印象だが、いったん仕切り直し的な低下となった印象だ。
ただ、米連銀は景気回復と雇用改善を踏まえてテーパリングへ向かい始めており、今後の米経済指標が再び持ち直し傾向を示して9月3日の米8月雇用統計が良好ならその後のFOMCでテーパリングに入る可能性が高い。そうした目論見を崩すような経済指標の悪化が無ければ米長期債利回りは上昇一服での調整安を押し目形成として次の上昇期に水準を切り上げてゆき、為替市場もドル高基調を再開する可能性があるところだ。デルタ株感染拡大による景気回復の鈍化という懸念は多少あるものの、今のところは景気回復の足取りはしっかりしているのではないかと思われる。

【2円超えの上昇後の1円超えの調整安】

ドル円の8月13日の日足は前日比で0.81円の下落幅となる大陰線となった。当日の高値から安値まで1円近い下げ幅だが、戻り一巡後の反落としては5月25日から6月4日まで1.78円の上昇直後の6月4日に前日比0.80円の下落幅となった大陰線に近い印象もある。また8月11日高値から14日早朝安値までの下げ幅は1.26円だが、4月23日底からの上昇途中における調整的な下落幅としては5月7日への1.37円、5月25日への1.23円、6月7日への1.16円等に近い規模にある。
1月6日の大底から3月31日高値へと大上昇した時も2月5日高値から2月10日安値まで1.36円の下落が入ったところから一段高へ進んでいる。これらを踏まえれば現状も8月4日安値からの反騰一服による調整安の範囲にまだあるといえる。しかし、8月4日安値に迫る水準まで続落するようだと、それら調整安の規模をこえてくること、8月4日安値を割り込んで円高ドル安がさらに加速するリスクが出てくることも警戒される。

概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルでは、1月6日底から4か月弱となる4月23日安値で前回の底を付け、そこから3か月半となる8月4日安値で直近の底を付けたと思われる。このため8月4日安値割れを回避するうちは8月11日高値を超えて4か月サイクルレベルの上昇期をさらに継続して7月2日高値超えに挑戦する可能性があるわけだが、8月4日安値を割り込む場合には4か月サイクルの底割れとして次の底形成期となる11月前半から12月序盤にかけての間への下落継続性が高まると思われる。その場合は4月23日安値107.46円を割り込むレベルまで下落幅も拡大すると思われる。騰勢継続か、底割れから下落長期化か、当面は米連銀のテーパリング開始へ向けたスタンスの強弱を見定めつつ探ってゆくところと思われる。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

(1)現状は109円台中盤への下落により押し目形成となって上昇再開のきっかけを得るか、もう一段下げて8月4日夜安値108.71円を試すのか、見定めるところにあると思われる。
(2)109.75円以下での推移中は下向きとし、109.50円割れから続落の場合は109円前後を試す流れとみる。109円以下は反発警戒とするが、109.50円を下回っての推移が続くようだと下落基調を継続しやすいと思われる。
(3)109.70円超えから続伸に入れば110円試しへ向かい、さらに110.25円を超えれば反騰から一段高を伺う流れとして8月11日高値を目指すとみる。110円前後や、110円台序盤(110.00円から110.25円)ではいったん売られやすいとみるが、110円台に到達した後も8月11日以降の安値更新を回避すれば目先の押し目形成となりその後の上昇で8月11日高値を試しに向かいやすくなると予想する。(了)<14日13:20執筆>

【当面の主な予定】

8/16(月)
08:01 (英) 8月 ライトムーブ住宅価格 前月比 (7月 0.7%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP速報値 前期比 (1-3月 -1.0%、予想 0.2%)
08:50 (日) 4-6月期 GDP速報値 年率換算 (1-3月 -3.9%、予想 0.7%)
11:00 (中) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 12.1%、予想 11.5%)
11:00 (中) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 8.3%、予想 7.8%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 6.2%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 22.6%)
13:30 (日) 6月 設備稼働率 前月比 (5月 -6.8%)
21:30 (米) 8月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (7月 43.0、予想 29.0)
29:00 (米) 6月 対米証券投資 (5月 1053億ドル)
29:00 (米) 6月 対米証券投資・短期債除く (5月 -302億ドル)

8/17(火)
休場 インドネシア(独立記念日)
10:30 (豪) 豪中銀、金融政策会合議事要旨公表
13:30 (日) 6月 第三次産業活動指数 前月比 (5月 -2.7%、予想 1.8%)
15:00 (英) 7月 失業保険申請件数 (6月 -11.48万件)
15:00 (英) 7月 失業率 (6月 5.8%)
15:00 (英) 6月 失業率・ILO方式 (5月 4.8%、予想 4.8%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP改定値 前期比 (1-3月 2.0%、予想 2.0%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP改定値 前年同期比 (1-3月 13.7%、予想 13.7%)
21:30 (米) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.6%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 1.3%、予想 0.2%)
22:15 (米) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 0.4%、予想 0.5%)
22:15 (米) 7月 設備稼働率 (6月 75.4%、予想 75.7%)
23:00 (米) 6月 企業在庫 前月比 (5月 0.5%、予想 0.8%)
23:00 (米) 8月 NAHB住宅市場指数 (7月 80、予想 80)
26:30 (米) パウエル米連銀議長、講演
28:45 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、タウンホール会議

8/18(水)
07:45 (NZ) 4-6月期 生産者物価指数 前期比 (1-3月 1.2%)
08:50 (日) 7月 貿易収支・通関・季調前 (6月 3832億円、予想 2049億円)
08:50 (日) 7月 貿易統計・通関・季調済 (6月 -902億円、予想 2927億円)
08:50 (日) 6月 機械受注 前月比 (5月 7.8%、予想 -3.0%)
08:50 (日) 6月 機械受注 前年同月比 (6月 12.2%、予想 15.2%)
09:30 (豪) 7月 ウエストパック景気先行指数 前月比 (6月 -0.07%)
10:30 (豪) 4-6月期賃金コスト指数 前期比 (1-3月 1.5%)
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.50%)

15:00 (英) 7月 消費者物価指数 前月比 (6月 0.5%、予想 0.3%)
15:00 (英) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 2.5%、予想 2.3%)
15:00 (英) 7月 消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 2.3%、予想 2.1%)
15:00 (英) 7月 小売物価指数 前月比 (6月 0.7%、予想 0.3%)
15:00 (英) 7月 小売物価指数 前年同月比 (6月 3.9%、予想 3.7%)
18:00 (欧) 6月 建設支出 前月比 (5月 0.9%)
18:00 (欧) 6月 建設支出 前年同月比 (5月 13.6%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価指数 改定値 前年同月比 (速報 2.2%、予想 2.2%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価コア指数 改定値 前年同月比 (速報 0.7%、予想 0.7%)

21:30 (米) 7月 住宅着工件数・年率換算件数 (6月 164.3万件、予想 160.8万件)
21:30 (米) 7月 住宅着工件数 前月比 (6月 6.3%、予想 -2.2%)
21:30 (米) 7月 建設許可件数・年率換算件数 (6月 159.8万件、予想 161.0万件)
21:30 (米) 7月 建設許可件数 前月比 (6月 -5.1%、予想 1.0%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省20債入札
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

8/19(木)
休場 インド(イスラム教新年)
10:30 (豪) 7月 新規雇用者数 (6月 2.91万人、予想 -5.00万人)
10:30 (豪) 7月 失業率 (6月 4.9%、予想 5.0%)
17:00 (欧) 6月 経常収支・季調済 (5月 117億ユーロ)
17:00 (欧) 6月 経常収支・季調前 (5月 43億ユーロ)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 37.5万件、予想 36.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 286.6万人、予想 280.0万人)
21:30 (米) 8月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (7月 21.9、予想 24.0)
23:00 (米) 7月 コンファレンスボード景気先行指数 前月比 (6月 0.7%、予想 0.7%)
26:00 (米) 財務省インフレ指数連動30年債入札

8/20(金)
08:01 (英) 8月 GFK消費者信頼感 (7月 -7、予想 -7)
08:30 (日) 7月 全国消費者物価指数 前年同月比 (6月 0.2%、予想 -0.4%)
08:30 (日) 7月 全国消費者物価指数・生鮮食品除く 前年同月比 (6月 0.2%、予想 -0.4%)
08:30 (日) 7月 全国消費者物価指数・生鮮食品・エネルギー除く 前年同月比 (6月 -0.2%、予想 -0.8%)
15:00 (独) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 1.3%、予想 0.8%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前月比 (6月 0.5%、予想 0.2%)
15:00 (英) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 9.7%、予想 5.8%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 0.3%、予想 0.2%)
15:00 (英) 7月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (6月 7.4%、予想 5.8%)

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