ドル円見通し 7月14日水準まで往って来い、ダウ反騰に支えられての持ち直し(週報7月第4週)

ドル円は7月2日高値111.65円から7月19日安値109.05円まで2.60円の下落幅となったが、その後の反騰により直前の下げ幅に対して半値を超えて58%を戻している。

ドル円見通し 7月14日水準まで往って来い、ダウ反騰に支えられての持ち直し(週報7月第4週)

ドル円見通し 7月14日水準まで往って来い、ダウ反騰に支えられての持ち直し

〇ドル円数日から1週間単位の騰落の中7/19以降は株高米長期金利上昇で110円台半ばに持ち直す
〇週末のNYダウ史上最高値更新、リスク選好感優勢継続、一方で米長期金利上昇でドルも買われる
〇7/27-28FOMC、パウエル議長ハト派姿勢協調の中、量的緩和縮小開始議論されるか注目される
〇110.69越えから111円を目指す、111円手前は反落警戒だが110.50超の推移続けば111.65を目指す流れ
〇110円割れから109.70台109.50前後への下落想定、110.00以下での推移が続けば109.05を目指す流れ

【概況】

ドル円は7月19日夜にNYダウが一時900ドルを超える大幅下落となったところで109.05円まで一段安となり7月2日高値111.65円からの下げ幅は2.60円に拡大して4月23日以降では最大の下げ幅となったが、NYダウが反騰に転じたことで切り返しに入り、7月23日(×訂正20日)にはNYダウが史上最高値を更新する中で110.58円まで戻り高値を切り上げて7月14日高値110.69円に迫って週を終えた。
7月8日にNYダウが一時500ドルを超える急落となったところで米10年債利回りが3月31日以降の最低水準へ低下したためにドル円は109.52円まで下落したが、NYダウの持ち直しと米長期債利回りの上昇に加えて7月13日の米CPI上昇率が予想を大幅に超える上ブレとなったことで7月14日に110.69円まで戻したが、7月14日のパウエル米連銀議長による議会証言をきっかけに米長期債利回りが低下、変異株の感染拡大への懸念も重なってNYダウが下落する中で7月19日へと一段安した。そこから再び株高長期債利回り上昇を見てドル円が持ち直すという流れであり、米長期債利回り及びNYダウの動向を見ながら数日から1週間単位で騰落を繰り返す展開となっている。

【米主要株価指数は史上最高値更新、リスクオン優勢だがドル高も続く】

7月23日のNYダウ工業は前日比238.20ドル高の3万5061.55ドルで終了、取引時間中の史上最高値を更新した。終値ベースでも3万5000ドル台に初めて到達した。5月10日に35091.56ドルを付け、7月16日高値では35090.01ドルにとどまってダブルトップ型となって7月19日安値33741.76ドルまで1348ドル安の大幅下落となったが、6月18日の下落時安値を割り込まずに反騰入りから高値更新に至っている。昨年3月のコロナショック暴落からの歴史的大上昇を継続してきたが、6月15-16日のFOMCが量的緩和縮小議論の開始や利上げ想定時期を前倒ししたことでの売りも消化し、量的緩和縮小開始は急がれないとし、変異株の感染拡大への懸念も抱えつつも景気回復は続くとの楽観が優勢となっている。急落調整するところはバーゲンハント買いされて最高値を更新するパターンが続いているうちは多少下げてもまた買い拾われる。よほど市場がショックを受けるような悪材料が出てこない限り、株式市場のリスク選好感優勢は続き、ドル円もこの側面からは買われやすい環境にあるといえる。

一方では米長期債利回りは低下傾向にある。米10年債利回りは7月20日に1.12%まで低下して3月31日に付けた1.77%のピーク以降の最低水準となった。7月22日に1.31%まで戻して23日は1.28%近辺で終了しているが、数日間のリバウンドを入れながらも一段安を繰り返し下降トレンドで推移しており、3月末まで続いてきた先行きで2%以上へ上昇してゆくだろうという市場の見方は大きく後退している。ドル円にとっては3月末からの米10年債利回り下降トレンドが下落圧力となっているが、リバウンド局面ではドル円の上昇に寄与する展開が繰り返されている。ひとまず7月19日以降は米長期債利回りのリバウンドに合わせ、株高によるリスクオン優勢の心理も重なって戻しているところだが、株高が鈍る中で米10債利回りが再び低下し始めて3月31日以降の最低を更新するようだとドル円も7月19日安値を割り込んでもう一段安へ向かいかねない。

【7月27-28日に米FOMC ドル指数の上昇は継続か】

米連邦準備制度理事会(FRB=米連銀)は7月27-28日に連邦公開市場委員会(FOMC=金融政策決定会合)を開く。前回のFOMCでメンバーによる利上げ再開予想時期が前倒しされて量的緩和縮小に関する議論も始めると表明されたが、パウエル議長は量的緩和縮小を急がないとし、物価上昇の上ブレも一時的との見方を繰り返してきた。今回のFOMCで具体的な量的緩和縮小開始への条件、時期や規模及び手法について示されるのかどうか注目される。現状は月額1200億ドルの資産購入を実施しているが、このうち国債購入を継続しつつ住宅債券等の減額を始めるのではないかとの予想も出ている。

既にカナダ中銀、豪中銀、NZ中銀が量的緩和縮小に着手しているが、英中銀は様子見、欧州中銀(ECB)は緩和姿勢継続を強調するスタンスを維持している。各国の景気回復及び物価上昇率の上ブレ度合いには温度差もあるため、必ずしも米連銀が量的緩和縮小開始へ傾斜してもドル全面安とならない可能性もあるところだ。
ユーロドルは7月21日に1.175ドル台へ下落して5月25日以降の最安値を更新しているが、1月6日高値を5月25日高値で上抜けずにダブル天井型を形成して3月31日安値に迫る状況にある。ポンドドルは6月1日高値以降の最安値を7月20日に更新した後はやや反発しているものの4月12日安値を割り込んで2月24日と6月1日の両高値をダブル天井型としての下落感が強まっている。豪ドル米ドルは4月1日安値を大幅に割り込んで2月25日高値からの下落が5月10日に戻り高値を付けて二段下げに発展している。メジャー通貨の加重平均であるドル指数は7月21日に5月25日底以降の最高値を更新した後も小反落にとどまっている。

株高基調が続いて米長期債利回りが低下トレンドとなってもドルの強さが目立っているのは、世界全体としては徐々に量的緩和縮小へと舵が切られ始め、変異株による感染拡大も世界全体で見れば第三波開始の様相であることから投機的なポジション縮小へと市場心理が変化してきていることを示しているのではないかと思われるが、そうした市場心理のリスク回避への動きが株高によるリスクオンだけでは不足し始めてきたことでドル円も7月2日からの下落が4月23日以降では最大となるような状況を示現させたといえるのではなかろうか。

【7月19日からのV字反騰を継続できるか試す】

【7月19日からのV字反騰を継続できるか試す】

ドル円は7月2日高値111.65円から7月19日安値109.05円まで2.60円の下落幅となったが、その後の反騰により1.53円の戻り幅で直前の下げ幅に対して半値を超えて58%を戻している。7月14日高値を超えて111円に到達できれば、7月19日安値を当面の底とした上昇期として7月2日高値超えへ挑戦する可能性も出てくると思われる。そのためにはドル全面高とNYダウの史上最高値更新継続によるリスクオン優勢の展開が続くことが必要だ。

7月14日高値110.69円を超えないか一時的に超えても110円割れへと反落する場合、7月8日夜安値109.52円と対になる水準で下げ止まれば、60分足レベルでの逆三尊の右肩形成となり、その後に高値を更新するところからは上昇感が強まると思われるが、7月19日夜安値109.05円に迫るような下落が発生する場合は戻り一巡からの下げ再開、底割れからの一段安へ向かいやすくなると思われる。株高が続かず、米長期債利回りが低下し、日本及びアジアの感染拡大が一段と深刻化する場合にはリスク回避的な円高が意識されやすくなりこのケースに陥ると思われる。
日経平均等の日本株は基本的には緊急事態宣言も意に介さずにNYダウが騰勢を継続すれば同調して買われてきたが、NYダウが史上最高値を更新してきている中で日経平均が戻り高値切り下がり型での軟調さを見せていることは徐々にダウへの同調力がそがれていることを示している。このこともドル円には重圧となりかねないところだ。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.00円を下値支持線、111.00円を上値抵抗線とみておく。
(2)110円台序盤へ下げても買われる展開なら7月14日高値110.69円超えから111円を目指すとみる。110.85円から111円前後にかけては反落警戒とみるが、110.50円以上での推移が続くようだと先行きで7月2日高値111.65円を目指す流れへ進みやすくなるとみる。
(3)110円割れからは109.70円台、勢い付く場合は109.50円前後への下落を想定する。109.70円から109.50円にかけてのゾーンは買われやすいとみるが、110円を割り込んだ後も110.20円以下での推移が続く場合は下向きとし、110円以下での推移が続く場合は先行きで7月19日夜安値109.05円を目指す流れへ進みやすくなるとみる。

※ 7月29日未明の米FOMC声明及び議長会見、29日夜の米4-6月期GDP速報値、30日夜の米個人消費(PCE)及びPCEデフレーターの内容次第で大きく動きやすいと注目しておきたい。
※ 短期的には7月21日夜高値を超えてきているので26日の日中から27日にかけては高値試しへ進みやすい時間帯とみるが、27日夜から29日にかけては下げやすい時間帯とみる。後は29日未明のFOMCを強気反応するか弱気反応するのかで週末から来週序盤への展開も決まってゆくという流れと考える。(了)<25日13:30執筆>

注:ポイント要約は編集部

【当面の主な予定】

7/26(月)
休場 タイ(三宝節振替)
07:45 (NZ) 6月 貿易収支 (5月 4.69億NZドル)
17:00 (独) 7月 IFO企業景況感指数 (6月 101.8、予想 102.0)
23:00 (米) 6月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (5月 76.9万件、予想 80.0万件)
23:00 (米) 6月 新築住宅販売件数 前月比 (5月 -5.9%、予想 4.0%)
26:00 (米) 財務省2年債入札

7/27(火)
米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
08:50 (日) 6月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (5月 1.5%、予想 1.3%)
16:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、日本記者クラブで会見
17:00 (欧) 6月 マネーサプライM3 前年同月比 (5月 8.4%)

21:30 (米) 6月 耐久財受注 前月比 (5月 2.3%、予想 2.1%)
21:30 (米) 6月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (5月 0.3%、予想 0.7%)
21:35 (豪) デベル豪中銀副総裁、講演
22:00 (米) 5月 米連邦住宅金融局(FHFA) 住宅価格指数 前月比 (4月 1.8%、予想 1.6%)
22:00 (米) 5月 ケース・シラー住宅価格指数 前年同月比 (4月 14.9%、予想 16.4%)
23:00 (米) 7月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (6月 127.3、予想 124.0)
23:00 (米) 7月 リッチモンド連銀製造業指数 (6月 22、予想 20)
26:00 (米) 財務省5年債入札

7/28(水)
休場 タイ(国王誕生日)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合における主な意見(7月15-16日開催分)
10:30 (豪) 4-6月期 消費者物価 前期比 (1-3月 0.6%、予想 0.7%)
10:30 (豪) 4-6月期 消費者物価 前年同期比 (1-3月 1.1%、予想 3.7%)

14:00 (日) 5月 景気先行指数CI・改定値 (速報 102.6)
14:00 (日) 5月 景気一致指数CI・改定値 (速報 92.7)
15:00 (独) 8月 GFK消費者信頼感 (7月 -0.3、予想 -0.3)
15:00 (独) 6月 輸入物価指数 前月比 (5月 1.7%、予想 1.5%)
15:00 (独) 6月 輸入物価指数 前年同月比 (5月 11.8%、予想 12.6%)
15:00 (英) 7月 ネーションワイド住宅価格 前月比 (6月 0.7%、予想 0.3%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
26:00 (米) 財務省変動利付2年債入札
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC) 政策金利 (現行 0.00-0.25%、予想 0.00-0.25%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

7/29(木)
10:00 (NZ) 7月 NBNZ企業信頼感 (6月 -0.4)
10:30 (豪) 4-6月期 輸入物価指数 前期比 (1-3月 0.2%)
16:55 (独) 7月 失業者数 前月比 (6月 -3.80万人、予想 -2.80万人)
16:55 (独) 7月 失業率 (6月 5.9%、予想 5.8%、予想 5.8%)
18:00 (欧) 7月 消費者信頼感・確定値 (速報 -4.4)
18:00 (欧) 7月 経済信頼感 (6月 117.9、予想 118.5)

21:00 (独) 7月 消費者物価指数・速報値 前月比 (6月 0.4%、予想 0.5%)
21:00 (独) 7月 消費者物価指数・速報値 前年同月比 (6月 2.3%、予想 3.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 41.9万件、予想 38.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 323.6万人、予想 320.0万人)
21:30 (米) 4-6月期 GDP・速報値 前期比年率 (1-3月 6.4%、予想 8.5%)
21:30 (米) 4-6月期 GDP個人消費・速報値 前期比年率 (1-3月 11.4%、予想 10.5%)
21:30 (米) 4-6月期 コアPCE・速報値 前期比年率 (1-3月 2.5%、予想 6.0%)
23:00 (米) 6月 住宅販売保留指数 前月比 (5月 8.0%、予想 0.5%)
23:00 (米) 6月 住宅販売保留指数 前年同月比 (5月 13.9%)
26:00 (米) 財務省7年債入札

7/30(金)
07:45 (NZ) 6月 住宅建設許可件数 前月比 (5月 -2.8%)
08:30 (日) 6月 失業率 (5月 3.0%、予想 3.0%)
08:30 (日) 6月 有効求人倍率 (5月 1.09、予想 1.10)
08:50 (日) 6月 鉱工業生産・速報値 前月比 (5月 -6.5%、予想 5.0%)
08:50 (日) 6月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (5月 21.1%、予想 20.9%)
08:50 (日) 6月 小売業販売額 前年同月比 (5月 8.2%、予想 0.2%)
10:30 (豪) 4-6月期 生産者物価指数 前期比 (1-3月 0.4%)
10:30 (豪) 4-6月期 生産者物価指数 前年同期比 (1-3月 0.2%)
14:00 (日) 6月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (5月 9.9%、予想 7.1%)
17:00 (独) 4-6月期 GDP・速報値 前期比 (1-3月 -1.8%、予想 2.1%)
17:00 (独) 4-6月期 GDP・速報値 前年同期比 (1-3月 -3.1%、予想 9.6%)

18:00 (欧) 6月 失業率 (5月 7.9%、予想 7.9%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価指数・速報値 前年同月比 (6月 1.9%、予想 2.0%)
18:00 (欧) 7月 消費者物価コア指数・速報値 前年同月比 (6月 0.9%、予想 0.7%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP・速報値 前期比 (1-3月 -0.3%、予想 1.8%)
18:00 (欧) 4-6月期 GDP・速報値 前年同期比 (1-3月 -1.3%、予想 13.2%)
21:30 (米) 4-6月期 雇用コスト指数 前期比 (1-3月 0.9%、予想 0.9%)

21:30 (米) 6月 個人所得 前月比 (5月 -2.0%、予想 -0.5%)
21:30 (米) 6月 個人消費支出(PCE) 前月比 (5月 0.0%、予想 0.7%)
21:30 (米) 6月 PCEデフレーター 前年同月比 (5月 3.9%、予想 4.1%)
21:30 (米) 6月 PCEコア・デフレーター 前月比 (5月 0.5%、予想 0.6%)
21:30 (米) 6月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (5月 3.4%、予想 3.7%)
22:00 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演
22:45 (米) 7月 シカゴ購買部協会景況指数 (6月 66.1、予想 63.0)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値 (速報 80.8、予想 80.8)

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