ドル高基調が再開か。FOMCとPCEコアデフレータに注目
〇今週のドル円、コロナ感染拡大と欧米株の急落、長期金利急低下に109.07まで急落
〇その後、米主要株価指数が全値戻し、長期金利が急上昇、ドル円も110.60まで反発
〇ユーロドル、欧州圏のコロナ感染再拡大、欧州株下落米長期金利急上昇に週央にかけ1.1752まで下落
〇売り一巡後は欧州株急伸に1.1831まで反発、ECB理事会はサプライズなし、インフレ目標変更を明確化
〇週末にかけてはユーロ圏指標の不冴え、ECB金融緩和長期化観測に再下落、1.1775近辺まで値を崩す
〇ドル円90日線等のテクニカルポイント上抜け三役好転も点灯、地合い好転
〇ファンダメンタルズも米経済の回復期待、リスク選好の回復等ドル円上昇材料増える
〇来週はPCEコア等の米指標および7/27-28のFOMCに要注目
〇来週の予想レンジ(USDJPY):109.50ー112.00、(EURUSD):1.1650−1.1850
今週のレビュー(7/19−7/23)
<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初109.92で寄り付いた後、@新型コロナウイルスの感染再拡大懸念や、A上記@を背景とした世界経済の先行き不透明感、B欧米株の急落を受けたリスク回避の円買い圧力(米ダウ平均株価は一時945ドル超の急落劇)、C米長期金利の急低下(米10年債利回りは1.20%の大台を割り込み急低下)、D主要テクニカルポイント(90日移動平均線や一目均衡表雲上下限)を下回ったことに伴う短期筋のロスカットが重石となり、週明け海外時間に、5/27以来、約2ヵ月ぶり安値となる109.07まで急落しました。
しかし、売り一巡後に下げ渋ると(短期間で大きく下げた反動で持ち直すと)、E米主要株価指数が反発に転じたこと(全値戻し達成)や、F原油先物価格が下げ止まったこと、G上記EFを背景としたリスク選好の円売り圧力(クロス円上昇→ドル円連れ高)、H米長期金利の急上昇(米10年債利回りは一時2/11以来となる1.12%まで急低下した後、1.31%へ急上昇)が支援材料となり、週末にかけて、高値110.60(7/14以来、1週間ぶり高値)まで反発しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、結局110.54近辺での越週となっております。尚、7/22に発表された米新規失業保険申請件数(結果41.9万件、予想35.0万件)は予想外に悪化する結果となりましたが、市場の反応は限定的となりました。
<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1808で寄り付いた後、@欧州圏における新型コロナウイルスの感染再拡大懸念や、A欧州経済の先行き不透明感、B欧州株や原油先物価格の急落を受けたリスク回避のドル買い圧力(ドイツ・ベルギーを襲った豪雨・洪水の影響も重なり欧州株が急落)、CECBによる金融緩和の長期化観測(ECB理事会を控えた警戒感)、D米長期金利の急上昇が重石となり、週央にかけて、4/5以来、約3ヶ月半ぶり安値となる1.1752まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると、E欧州株や原油先物価格の急伸を背景としたリスク選好のドル売り圧力や、F注目されたECB理事会およびラガルド総裁記者会見がサプライズなく終わったことに伴う材料出尽くし感(※)、G米新規失業保険申請件数の大幅悪化が支援材料となり、翌7/22にかけて、一時1.1831まで反発する場面も見られました。
もっとも、21日移動平均線に続伸を阻まれると、Hユーロ圏7月消費者信頼感指数(結果▲4.4、予想▲2.6)の冴えない結果や、IECBによる金融緩和の長期化観測が重石となり、結局1.1775近辺まで値を崩しての越週となっております。尚、今週発表されたECB理事会では、「フォワードガイダンス」の変更を通じて、物価の一時的な上振れを容認する姿勢が明確化されました。また、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)についても、現行の1兆8500億ユーロを少なくとも2022年3月末まで継続する方向性が示されました。更に、ラガルドECB総裁からも、「PEPPの終了議論は絶対的に時期尚早」「インフレ圧力は一時的」といった見解が強調され、総じてハト派的な内容に終始しました(ユーロドルは直後に材料出尽くし感から買戻しが優勢となるも、一巡後は欧米金融政策の方向性の違いを背景に再び下落)。
来週の見通し(7/26−7/30)
<ドル円相場>
ドル円は週初に記録した約2ヵ月ぶり安値109.07をボトムに反発に転じると、週末にかけて、約1週間ぶり高値となる110.60まで急伸しました。この間、一目均衡表雲上下限や90日移動平均線、一目均衡表転換線や基準線を上抜けした他、下位足(60分足や240分足)で強い買いシグナルを示唆する三役好転が点灯するなど、テクニカル的に見て地合いの好転(ポジション調整一巡→再びドル高・円安トレンドへ回帰)を意識させるチャート形状となっております。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策格差を背景としたドル高・円安圧力(年内テーパリング開始が織り込まれている米国と、出口の見えない日本との金融政策格差)や、A米経済の回復期待(景気回復→雇用改善→インフレ高進への波及経路)、B米主要株価指数の堅調推移を背景としたリスク選好の円売り圧力、C新型コロナウイルスの感染拡大を巡る過度な悲観論の後退(週初に発生した世界的なリスクオフを通じてポジション調整が一巡→悪材料出尽くし感)など、ドル円相場の上昇を想起させる材料が増えつつあります。
こうした中、来週は7/26に予定されている米6月新築住宅販売件数や、7/27 の米6月耐久財受注、7/29 の米第2四半期GDP速報値、7/30の米6月PCEデフレータ、米7月シカゴ購買部協会景気指数に加えて、7/27ー7/28に開催される米FOMCに注目が集まります。米経済指標が市場予想を上回る結果となった場合は、米早期テーパリング観測再燃→米長期金利上昇→米ドル高の経路でドル円が一段と上昇する可能性が考えられます(特にFRBがインフレ指標の中で最重要視しているPCEコアデフレータが市場予想を上回るか否かに注目)。
また、7/27ー7/28のFOMCについても、現行政策の現状維持が見込まれる一方、テーパリング開始に向けて何かしらの示唆(声明文やパウエルFRB議長記者会見でテーパリング議論についての進展)が報じられる可能性もあり、来週は特にアップサイドリスクに注意が必要な時間帯が続きそうです。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします(目先は7/14に記録した直近高値110.71を上抜けられるか否かに注目。同水準を突破出来れば、心理的節目111.00や、7/2に記録した年初来高値111.67の突破も視野に入る)。
来週の予想レンジ(USDJPY):109.50ー112.00
<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は5/25に記録した直近高値1.2267をトップに反落に転じると、週央にかけて、約3ヵ月半ぶり安値となる1.1752まで下落しました(直近2ヵ月で▲4.2%の急落劇)。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや雲上下限、短中長期全ての移動平均線を下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転やパーフェクトオーダーも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを印象付けるチャート形状となっております(週後半にかけて持ち直した場面でも1.1800台では戻り売り意欲が根強く定着できず)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@欧米金融政策格差を背景としたユーロ売り・ドル買い圧力(年内テーパリング開始が意識される米国と、慎重なスタンスを強調し続けるECBとの金融政策格差。今週発表されたECB理事会およびラガルドECB総裁記者会見からもECBによる金融緩和の長期化姿勢が明確化)や、A欧州圏における新型コロナウイルスの感染再拡大リスク、B上記Aを背景とした欧州経済の先行き不透明感など、ユーロドルの下落を意識させる材料が複数残っております。
以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は7/26に予定されているドイツ7月Ifo景況感指数や、ドイツ6月小売売上高、7/29のユーロ圏7月消費者信頼感指数、7/30のユーロ圏7月消費者物価指数、ユーロ圏第2四半期実質GDP速報値に注目が集まります。これらの経済指標が市場予想を下回る結果となれば、欧州経済の先行き不透明感を通じて、欧州株下落→欧州債利回り低下→ユーロ売りの波及経路でユーロドルに下押し圧力が加えられる可能性がある為、来週はユーロドルの下落リスクに特に注意が必要でしょう(尚、ECBは今週の理事会でフォワードガイダンスを変更し、インフレの一時的な上振れを容認するスタンスを決めたことから、7/30に予定されているユーロ圏消費者物価指数が仮に市場予想を上回る結果となったとしても、ユーロ買いでの反応は限定的と予想されます)。目先は3/31に記録した年初来安値1.1703を試すシナリオが想定されます。
来週の予想レンジ(EURUSD):1.1650−1.1850
注:ポイント要約は編集部
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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