戻り高値を見て109円台前半を狙う動き
〇先週のドル円、週前半は緩やかなドル高の流れ、水曜に週間高値となる110.70レベルをつける
〇パウエル議長のハト派発言により米金利低下・ドル売り、木曜には一時109.72レベルをつける
〇パウエル議長の議会証言、6月FOMCにおけるメンバーのハト派な見方がそのまま反映された形
〇東京オリンピックや欧米夏休みシーズンのため、大きな動きは期待できない週となるか
〇現状は7月高値を起点とした下降チャンネルへと流れが変化しつつある段階と思われる
〇今週中に先週安値をトライする可能性、下回った際は109円近辺がターゲットに
〇今週は109.30レベルをサポートに110.30レベルをレジスタンスとする流れ
今週の週間見通し
先週のドル円は週前半は緩やかなドル高の流れが続き、水曜東京市場で週間高値となる110.70レベルをつけました。しかし、110円台後半ではまだドル売りオーダーが残っている中でパウエルFRB議長の議会証言において、これまでのハト派なスタンスを貫いたことで、米金利は低下、為替市場はドル売りで反応しました。その後木曜には一時109.72レベルと高値から1円ほど円高水準を見たものの、下がったところでの買いも根強く週末にかけてはやや買い戻されての引けとなりました。
先週のパウエルFRB議長の議会証言では6月FOMCにおける同議長をはじめとするFOMCメンバーのハト派な見方がそのまま反映されたと言ってよいでしょう。金融政策においては今後の複数回のFOMC会合(meetingsと複数形)においてテーパリングに関する協議を継続すること、またテーパリングを始める前に市場に知らせるということも繰り返しています。
CPIは年率で想定以上の伸びを示しているもののFRBとしては今後鎮静化していくとの見方は崩していませんが、7月と9月のFOMCを迎えても沈静化していないという場合には、市場に知らせるタイミングが思ったよりも早くなるという可能性も否定はできません。ただ現時点では8月最終週のジャクソンホールもFRBとしてのスタンスを知らせる(昨年はそうだった)機会となるため、9月のFOMCも含めて9月以降のテーパリング開始というタイミングで見ていてよいでしょう。
今週は米国関連ではあまり目立ったイベントが無いため、あえて言うならば高値から下げてきている米国株が続落するのか下げ止まるのかを見極めることとなりそうですが、先週一週間の夜間取引も含めてのダウ先物の動きを見ているといったん高値をつけてしまったという感が強く、反発しても戻りは限られるというイメージです。そうなると円相場に関しては先週のパウエルFRB議長議会証言以降の円高地合いが継続しやすいと言えそうです。
また東京ではいよいよオリンピックが始まりますし、欧米でも夏休みシーズンとなりますので、あまり大きな動きは期待できない一週間となりそうです。チャートも見てみましょう。いつもの日足チャートもご覧ください。
4月安値を起点とした平行チャンネル(ピンク)をそのまま残してありますが、いったん下抜け後に先週の議会証言前にチャンネル内に戻し、議会証言で改めてチャンネルの下に来ている流れです。そしてまだ確定では無いものの、現状は7月高値を起点とした下降チャンネル(青)へと流れが変化しつつある段階と見てよさそうです。
この下げが確定するには7月安値109.53レベルを明確に下抜けることが条件となりますが、その場合4月安値と7月高値の61.8%押しとなる109.06と7月高値から7月安値への下げ、その後の先週高値を3点とする逆N波動を想定すると78.6%(61.8%の平方根)エクスパンションが109.02となり、先週安値を下回った際のターゲットとして、ほぼ109円という数字が見えてきます。
今週中にそこまで下げるかどうかはわかりませんが、先週安値をトライする局面はあるのではないかという見立てです。いっぽうで着実に上値は重くなってきているため、金曜の戻り高値水準を超えていくほどの勢いも無さそうです。
今週は109.30レベルをサポートに110.30レベルをレジスタンスと先週安値を割り込んで次のテクニカルなターゲットを視野に入れる一週間を考えています。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
7月19日(月)
08:01 英国7月住宅価格
18:00 ユーロ圏5月建設支出
23:00 米国7月NAHB住宅指数
7月20日(火)
**:** シンガポール、トルコ市場休場
08:30 本邦6月CPI
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表
15:00 ドイツ6月PPI
16:30 フランス中銀総裁講演
21:30 米国6月住宅着工、建築許可件数
7月21日(水)
**:** トルコ市場休場
10:30 豪州6月小売売上高
17:00 南ア6月CPI
23:30 週間原油在庫統計
7月22日(木)
**:** 東京、トルコ市場休場
15:45 フランス7月企業景況感
**:** 南ア中銀政策金利発表
20:45 ECB理事会
21:30 ラガルドECB総裁会見
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 ユーロ圏7月消費者信頼感
23:00 米国6月景気先行指数
23:00 米国6月中古住宅販売
7月23日(金)
**:** 東京、トルコ市場休場
08:01 英国7月消費者信頼感
15:00 英国6月小売売上高
16:15 フランス7月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ7月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏7月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 英国7月製造業・サービス業PMI速報値
22:45 米国7月製造業・サービス業PMI速報値
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
7月12日(月)
週明けのドル円は先週末の流れを受けて底堅い地合いでスタートしたものの、ダウ先が下げる動きもありNY市場までは110.10レベルを中心としたもみあいが続きました。NY市場ではダウが回復し史上最高値を更新する動きとともにドル円にも買いが入り110.40レベルの高値をつけましたが、一日のレンジは42銭に留まりました。
7月13日(火)
ドル円は東京前場こそ株高の動きからドル買いが先行しましたが値幅は伴わず。後場以降はバイデン大統領が香港リスクに言及したこともあって、その後はNYの引けまで株はじり安となりました。そうした中でドル円はNY市場まではユーロ円とともに円買いの動きとなっていたのですが、ユーロドルの下げが大きくドルの動きに追随し上昇、110.65レベルをつけ高値圏での引けとなりました。
7月14日(水)
ドル円は東京朝方に仕掛けっぽいドル買いが入り110.70レベルの高値をつけましたがすぐに押し、その後はNY市場に入るまで110円台半ばの狭いレンジで膠着状態を続けました。NY市場に入り公表されたパウエルFRB議長の議会証言原稿において「今後の会合で議論を継続」とハト派な内容から米金利が低下、ドル円も急速に値を下げる展開となりました。引けにかけては109.93レベルまで水準を下げ安値引けとなりました。
7月15日(木)
ドル円は前日の流れを受けてドル売りが先行、ジリジリと水準を下げ欧州市場前場には109.71レベルの安値をつけました。その後それまで下げていた米金利が上昇に転じる動きとともにドル買い戻しが入ったものの戻りも鈍く、110円台の大台超えでは売りオーダーが見られました。NY後場には再び米金利が下げる動きとともにドル円も安値圏へと押して引けました。
7月16日(金)
ドル円は東京早朝に下押ししたものの前日安値はトライできず、その後はNY市場まで底堅い米金利とともにドル買いの動きが続きました。NY市場朝方に発表された小売売上高が強かったことから110.34レベルの高値をつけましたがそこまで。その後は弱い指標とダウの下げに引っ張られて110円大台間近まで押しての週末クローズとなりました。
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