ドル円見通し 米10年債利回り低下続き、7月8日夜安値割れへ余裕乏しい
〇ドル円、7/15夕刻109.70へ下落、夜110.08へいったん戻すも110円台を維持できず深夜から失速
〇パウエル議長のハト派姿勢により米10年債利回り続落、ドル円の上値を抑え7/8夜安値割れへ余裕乏しい
〇テーパリングに踏み込むタイミング、今後の物価動向及び経済指標を見ながら判断か
〇昨日発表の米経済指標はまちまちの結果
〇109.70割れを回避するうちは、110.08超えから110.69円を目指す可能性
〇109.70割れからは109.52試し、さらに底割れから109円台序盤試しへ向かう流れとみる
【概況】
ドル円は7月15日夕刻に109.70円へ下落して7月8日夜安値109.52円に迫ったが底割れをひとまず回避して15日夜高値で110.08円へいったん戻した。しかし110円台を維持できずに深夜からは失速、15日夕安値及び8日夜安値割れへの余裕が乏しい状況だ。
7月15日夜の米経済指標は強弱まちまちだったが景気回復感を継続、パウエル米連銀議長が前日の下院に続いて上院において半期に一度の議会報告を行ったものの量的緩和縮小開始を急がない姿勢を繰り返し強調したことで米10年債利回りが前日から続落となったことがドル円の上値を抑えた。
7月15日はユーロドルが夕刻高値から下落に転じて1.1850ドル近辺まで戻したところから16日未明に1.180ドル割れとなり、ポンドドルも15日夜へ反騰したところから反落、豪ドル米ドルも9日午前安値に迫るところまで反落するなどドルストレートではドル高感も続いているのだが、ドル円は米長期債利回り動向をみての展開を優先して下落した印象だ。
【米経済指標まちまち、米10年債利回り続落】
7月15日の米長期債利回りは総じて低下。10年債利回りは前日比0.05%低下の1.30%となった。10年債利回りは7月8日に1.25%へ低下して3月31日の1.77%以降の最低水準となったところから7月13日の米消費者物価上昇率の上ブレにより1.42%へ上昇したが、14日のパウエル米連銀議長の下院証言から低下に転じて15日も続落となった。30年債利回りも前日比0.05%低下の1.92%となり7月8日の1.93%を割り込んで3月19日に付けた2.45%以降での最低水準へと一段安した。利上げ時期に敏感な2年債利回りは前日比変わらずの0.23%だが一時は0.219%まで低下しており、7月8日の0.19%から13日に0.267%までリバウンドしたところから反落している。
パウエル米連銀議長は15日の米上院銀行委員会公聴会での証言で前日の下院金融サービス委員会での証言と同様に「米経済回復に向けた強力な支援を提供する」、インフレ進行についても従来からの姿勢を維持して一時的な上ブレにとどまるとして「連銀による経済支援策を急いで縮小する必要はない」と述べた。
6月15-16日のFOMCにおいて量的緩和縮小議論の開始と利上げ予想時期の前倒しが示されたことで米2年債利回りが急上昇したが、その後はやや過剰反応だったとして落ち着いている。7月8日から長期債利回りが再び上昇したもののこれまで繰り返してきたリバウンド程度にとどまって低下し始めており、市場は米連銀が量的緩和縮小を急がないとの見方を強めている。しかしいずれはテーパリングに踏み込むであろうことは市場も認識しており、その時期が年末になるのか来年になるのか、今後の物価動向及び経済指標を見ながら判断してゆくことになると思われる。
米シカゴ地区連銀のエバンス総裁は15日に資産買い入れプログラムの縮小に関する条件は今年後半に満たされる可能性があると述べている。
米ニューヨーク連銀が発表したニューヨーク州製造業景況指数の7月は43.0となり6月の17.4から急上昇して市場予想の18.0を大幅に上回った。統計を遡ることができる2001年7月以降で最高となった。一方で米フィラデルフィア連銀が発表した7月の同地区連銀製造業景況指数は21.9で予想の28及び6月の30.7を下回った。
米労働省が発表した新規失業保険申請は7月10日までの週間で前週比2万6000件減少の36万件となり予想と一致、昨年のパンデミック発生以降では最も少ない水準となった。失業保険受給者総数は7月3日まで1週間で324万1000人で前週比12万6000人減少、市場予想の331万3000人を下回った。
米連銀による6月の鉱工業生産指数は前月比0.4%上昇したが前月の0.7%及び市場予想の0.6%を下回った。前年同月比は9.8%上昇だった。
米労働省による6月の輸入物価指数は前月比1.0%上昇で8か月連続の上昇だったが市場予想の1.2%は下回った。前年同月比は11.2%上昇だった。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルにおいては、7月8日深夜安値で直近のサイクルボトムを付けて反騰期に入ったとして高値形成期を12日から14日夜にかけての間と想定したが、14日夜に急落したために15日朝時点では14日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。15日夕安値から夜へいったん戻してから失速しているが、15日夕安値で直近のサイクルボトムを付けたと思われる。すでに小反発一巡から新たな弱気サイクル入りしている可能性があるが、底割れ回避のうちは16日の日中から21日にかけての間への上昇余地ありとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして20日午後から22日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では15日夜の反発では遅行スパンが好転できず、先行スパンからの転落も続いている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後に悪化するところからは下げ再開とする。強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとする。
60分足の相対力指数は15日夜に50ポイント台へ戻したものの失速している。60ポイントを超える場合は戻りを試す流れへ進むとみるが、50ポイント以下での推移中は下向きとして20ポイント台を試す流れとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月15日夕安値109.70円を下値支持線、15日夜高値110.08円を上値抵抗線とする。
(2)15日夕安値割れを回避するうちは15日夜高値超えから14日高値110.69円を目指す可能性が残るが、110.50円前後からの反落警戒とする。
(3)15日夕安値割れからは7月8日夜安値109.52円試し、さらに底割れから109円台序盤試しへ向かう流れとみる。109円台序盤は買い戻しも入りやすいとみるが、8日夜安値を割り込むと7月2日からの下落も二段目に入るため先安感が高まると思われる。
【当面の主な予定】
7/16(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調済 (4月 94億ユーロ、予想 80億ユーロ)
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調前 (4月 109億ユーロ)
18:00 (欧) 6月 消費者物価指数・改定値 前年同月比 (速報 1.9%、予想 1.9%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価コア指数・改定値 前年同月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)
21:30 (米) 6月 小売売上高 前月比 (5月 -1.3%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 6月 小売売上高・除自動車 前月比 (5月 -0.7%、予想 0.4%)
22:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、会合挨拶
23:00 (米) 5月 企業在庫 前月比 (4月 -0.2%、予想 0.5%)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (6月 85.5、予想 86.5)
29:00 (米) 5月 対米証券投資 (4月 1012億ドル)
29:00 (米) 5月 対米証券投資・短期債除く (4月 1007億ドル)
※ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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