ドル円見通し 株高のリスク選好と米長期債利回り大幅低下で高値から2円以上の下落(週報7月第2週)

ドル円の7月2日高値111.65円から7月8日深夜安値109.52円までの下げ幅は2.13円となり4月23日以降では最大の下げとなった。

ドル円見通し 株高のリスク選好と米長期債利回り大幅低下で高値から2円以上の下落(週報7月第2週)

ドル円見通し 株高のリスク選好と米長期債利回り大幅低下で高値から2円以上の下落

〇ドル円全週の米雇用統計以降の米長期金利低下で7/8深夜に一時109.52まで下落
〇週末は米金利低下一服と米株上昇で110円台を回復して越週
〇NYダウ、ナスダック、S&P500は7/9揃って史上最高値を更新
〇ドル円はリスク選好的な上昇と米長期金利低下による下落の綱引き
〇週末の反発が上昇再開の起点か、リバウンドに過ぎないのか米CPI、パウエル議長議会証言等で見極め
〇109.75以上での推移中は戻り試し110.25超えからは110.58前後を試す可能性
〇109.75割れからは109.52試し、底割れで109.00、108.85試しか

【概況】

ドル円はFOMC後に下落していたNYダウが6月30日に反騰、ナスダック総合指数が史上最高値を更新してリスクオン優勢となる中で7月2日午前高値で111.65円を付けて4月23日安値107.46円以降の最高値を更新した。3月31日高値110.96円を6月24日時点ですでに超えていたが111円台中盤へ乗せて昨年3月24日高値111.71円に迫った。しかし7月2日夜の米6月雇用統計が冴えなかったことをきっかけに米長期債利回りが大幅低下する中で下落に転じて111円を割り込み、長期債利回りがさらに大幅低下を続ける中で7月8日深夜には109.52円まで続落、7月2日高値からの下げ幅は2.13円となり4月23日以降では最大となった。
7月9日は米長期債利回りの大幅低下が一服して持ち直し、NYダウとナスダックがそろって史上最高値を更新する中でドル円も買い戻されて9日深夜には110.25円まで上昇、7月2日からの下げ幅に対して0.73円の戻りとなり凡そ3分の1を戻して110円台を維持したまま週を終えた。

【米長期債利回りの大幅低下】

7月9日の米長期債利回りは前日までの大幅下落が一服したために総じて反騰した。10年債利回りは前日比0.06%上昇の1.36%、30年債利回りは0.06%上昇の1.36%、2年債利回りも0.02%上昇の0.22%となった。
米10年債利回りは昨年8月に0.50%近辺だったところから年明けに1%を超えて急伸に入り3月31日には1.77%まで続伸したがそこでピークアウトして以降は下落基調に転じてきた。6月17日未明に声明を出したFOMCが量的緩和縮小議論の開始と利上げ再開想定時期を前倒しした事を前後しても低下基調は続いて7月8日には1.25%まで低下していた。また利上げ時期に敏感な2年債利回りはFOMC前に0.15%近辺だったところからFOMC直後に0.28%へ急伸してからも高止まりしていたが、7月2日の米雇用統計発表から低下に転じてFOMC後の上昇幅の凡そ3分2を解消している。

ドル円は7月2日の米雇用統計後に米10年債と2年債の利回りがそろって急低下したところで下落に転じた印象だが、為替市場は全般的にまちまちの動きも見られ、豪ドル米ドルは7月2日夜から6日午後へ大きく反騰してから7月2日夜安値割れまで下落して週末に反発、ユーロドルも7月2日夜から6日午後へ反騰してから7日夜へ一段安したものの週末には6日午後高値に迫るところまで反騰しており、ドル円としては7月6日にかけての下落はドル全面安を背景とし、その後はドル高に持ち直し始める中でも下落を続け、週末はドル安一服となったものの逆に若干買い戻されるというように逆の展開にもなった。

7月9日にはNYダウとナスダック及びS&P500総合指数がそろって史上最高値を更新しており、7月8日にNYダウが一時500ドルを超える急落を見せる波乱もあったが、株式市場の先高感は相当程度に楽観的に維持されている。米連銀の量的緩和縮小問題についても6月17日未明の声明発表時にはサプライズ反応を見せたもののその後の経済指標を見れば米連銀が慌てて事を進めることもないだろうと落ち着きを取り戻しているために米長期債利回りは低下したといえる。
ドル円にとっては株高継続によるリスク選好的な上昇感と、米長期債利回りが大幅上昇してきたことでの3月末までの上昇とは様相が変わって利回り大幅低下局面となっていることでのドル売り円買いも強まっており、強弱感が交錯するところといえる。しかし、4月23日以降では最大の下げとなり、これまでの上昇トレンドの中における押し目形成のレベルを超える下落ということを踏まえれば、米長期債利回り低下によるドル安円高局面として年初からの上昇基調も一巡した可能性を考えるべきところと思われる。

【4月23日からの上昇基調崩れ、半年の上昇一巡の可能性も警戒】

ドル円の7月2日高値111.65円から7月8日深夜安値109.52円までの下げ幅は2.13円となり4月23日以降では最大の下げとなった。4月23日からは高値を切り上げた後の小調整でも底上げを確りしてジグザグ型で高値ラインと安値ラインがほぼ平行に走る上昇チャンネルを形成してきた。その中での調整安規模は5月7日への1.37円、5月25日への1.23円、6月7日への1.16円等で1.50円を超えない範囲で推移してきた。しかし今回は2円を超える下落であり、4月23日と5月25日及び6月7日と6月21日の安値をほぼ1直線で結ぶ下値支持線から転落している。

日足の相対力指数は3月高値形成時に80ポイントを超えていたが7月2日高値は70ポイントに届かずに指数のピークが切り下がる弱気逆行型となって強弱分岐点の50ポイントを割り込んでいる。概ね3か月から4か月前後の底打ちサイクルで見れば、3月31日高値から3か月を経過した7月2日で当面のピークを付けて下落期に入った可能性があり、その場合の底形成期は7月後半から8月終盤にかけての間と想定されるためまだ安値試しを続けやすい状況にあるのではないかと思われる。既に4月23日からの上昇幅に対する半値押し109.55円に到達しているのでさらに安値を切り下げる場合は3分の2押し108.85円等へ下値目途も徐々に切り下がってゆく可能性があるところと思われる。

週足においては概ね80週前後の底打ちサイクルで推移しており、1月6日安値でこのサイクルの底を付けて上昇してきたが、7月2日までの上昇で26週を経過して反落し始めている印象となっている。このサイクルの上昇期は2016年6月24日底から同年12月15日高値への26週、2018年3月26日安値から同年10月4日高値への28週、2019年3月26日底から2020年2月20日高値までの26週であり、凡そ半年でピークアウトするパターンを繰り返しているので今回も同様のケースとして下落に転じても不思議ない。週足における相対力指数も3月31日から7月2日への一段高に対して指数のピークが切り下がる弱気逆行がみられるため、26週移動平均(現在108.27円)を割り込む場合は半年の上昇一巡による下落期入りとして年初からの上昇幅に対する半値押し107.11円、3分の2押し105.60円等を目指して行く可能性も考えられる。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

7月2日からの下落は7月8日深夜安値でひとまず下げ止まって戻している。この戻りが下げ一巡による上昇再開の起点となるのか、下げ途中のリバウンドに過ぎずに早々に崩れて一段安へ進むのか、7月13日の米6月消費者物価上昇率、7月14日のパウエル議長議会証言等を通過しながら試す展開と思われる。

(1)当面、7月8日深夜安値109.52円を下値支持線、7月2日からの下げ幅に対する半値戻しとなる110.58円を上値抵抗線とみておく。
(2)109.75円以上での推移中は戻りを試す可能性ありとみて、9日深夜高値110.25円超えからは半値戻しラインの110.58円前後を試す可能性があるとみる。110.50円以上は反落警戒とし、その後に110円割れへ失速するところからは下げ再開を疑う。110円以上を維持するうちは110.70円台、さらに3分の2戻しに110.94円に迫る可能性もあるとみるが、110.50円以上は段階的に戻り売りが出やすいところとみる。
(3)109.75円割れからは8日深夜安値109.52円試しとし、底割れからは109.00円及び4月23日からの上昇幅に対する3分の2押し108.85円を試すとみる。109円割れではいったん買い戻しも入るとみるが、先行きは108円台前半へ向かう流れへ進むとみる。(了)<11日13:15執筆>

【当面の主な予定】

7/12(月)
ユーロ圏財務相会合(イエレン米財務長官出席)
08:50 (日) 5月 機械受注 前月比 (4月 0.6%、予想 2.4%)
08:50 (日) 5月 機械受注 前年同月比 (4月 6.5%、予想 6.3%)
08:50 (日) 6月 国内企業物価指数 前月比 (5月 0.7%、予想 0.5%)
08:50 (日) 6月 国内企業物価指数 前年同月比 (5月 4.9%、予想 4.8%)
22:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
25:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会参加
26:00 (米) 財務省3年債、10年債入札

7/13(火)
未 定 (中) 6月 貿易収支・米ドル (5月 455.3億ドル、予想 448.5億ドル)
未 定 (中) 6月 貿易収支・人民元 (5月 2960.0億元、予想 2700.0億元)
10:30 (豪) 6月 NAB企業景況感指数 (5月 37)
15:00 (独) 6月 消費者物価指数・改定値 前月比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
15:00 (独) 6月 消費者物価指数・改定値 前年同月比 (速報 2.3%、予想 2.3%)
21:30 (米) 6月 消費者物価指数 前月比 (5月 0.6%、予想 0.5%)
21:30 (米) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 5.0%、予想 4.9%)
21:30 (米) 6月 消費者物価コア指数 前月比 (5月 0.7%、予想 0.4%)
21:30 (米) 6月 消費者物価コア指数 前年同月比 (5月 3.8%、予想 4.0%)
25:00 () ボスティック・アトランタ連銀総裁、人種差別関連イベントで開会の辞
26:00 (米) 財務省30年債入札
27:00 (米) 6月 月次財政収支 (5月 -1320億ドル、予想 -2040億ドル)

7/14(水)
09:30 (豪) 7月 ウエストパック消費者信頼感指数 (6月 107.2)
11:00 (NZ) ニュージーランド中銀 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
13:00 (豪) ブロック豪中銀総裁補、講演
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -5.9%)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 22.0%)
13:30 (日) 5月 設備稼働率 前月比 (4月 1.1%)
15:00 (英) 6月 消費者物価指数 前月比 (5月 0.6%、予想 0.2%)
15:00 (英) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 2.1%、予想 2.2%)
15:00 (英) 6月 消費者物価コア指数 前年同月比 (5月 2.0%、予想 2.0%)
15:00 (英) 6月 小売物価指数 前月比 (5月 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (英) 6月 小売物価指数 前年同月比 (5月 3.3%、予想 3.4%)

18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 0.8%、予想 -0.2%)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 39.3%、予想 22.2%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 19.00%、予想 19.00%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.8%、予想 0.5%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 6.6%、予想 6.7%)
21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前月比 (5月 0.7%、予想 0.4%)
21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前年同月比 (5月 4.8%、予想 5.1%)
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
25:00 (米) パウエルFRB議長、半期議会証言(下院金融委員会)
26:00 (英) ラムスデン英中銀副総裁、講演
26:30 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、討論会参加
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

7/15(木)
休場 トルコ(国家統一の日)
米独首脳会談(ワシントン)
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
10:30 (豪) 6月 新規雇用者数 (5月 11.52万人、予想 2.00万人)
10:30 (豪) 6月 失業率 (5月 5.1%、予想 5.0%)
11:00 (中) 4-6月期 GDP 前期比 (1-3月 0.6%、予想 1.2%)
11:00 (中) 4-6月期 GDP 前年同期比 (1-3月 18.3%、予想 8.0%)
11:00 (中) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 12.4%、予想 10.9%)
11:00 (中) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 8.8%、予想 8.0%)
13:30 (日) 5月 第三次産業活動指数 前月比 (4月 -0.7%、予想 -0.9%)
15:00 (英) 6月 失業保険申請件数 (5月 -9.26万件)
15:00 (英) 6月 失業率 (5月 6.2%)
15:00 (英) 5月 失業率・ILO方式 (4月 4.7%、予想 4.7%)

21:30 (米) 7月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (6月 17.4、予想 18.2)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 37.3万件、予想 35.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 333.9万人、予想 331.3万人)
21:30 (米) 6月 輸入物価指数 前月比 (5月 1.1%、予想 1.2%)
21:30 (米) 6月 輸出物価指数 前月比 (5月 2.2%、予想 1.2%)
21:30 (米) 7月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (6月 30.7、予想 27.5)
22:15 (米) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.8%、予想 0.6%)
22:15 (米) 6月 設備稼働率 (5月 75.2%、予想 75.7%)
22:30 (米) パウエルFRB議長、半期議会証言(上院銀行委員会)
24:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、ロッキーマウンテン経済サミット参加

7/16(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
07:45 (NZ) 4-6月期 消費者物価 前期比 (1-3月 0.8%、予想 0.7%)
07:45 (NZ) 4-6月期 消費者物価 前年同期比 (1-3月 1.5%、予想 2.7%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調済 (4月 94億ユーロ、予想 80億ユーロ)
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調前 (4月 109億ユーロ)
18:00 (欧) 6月 消費者物価指数・改定値 前年同月比 (速報 1.9%、予想 1.9%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価コア指数・改定値 前年同月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)

21:30 (米) 6月 小売売上高 前月比 (5月 -1.3%、予想 -0.5%)
21:30 (米) 6月 小売売上高・除自動車 前月比 (5月 -0.7%、予想 0.4%)
22:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、会合挨拶
23:00 (米) 5月 企業在庫 前月比 (4月 -0.2%、予想 0.4%)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値 (6月 85.5、予想 86.5)
29:00 (米) 5月 対米証券投資 (4月 1012億ドル)
29:00 (米) 5月 対米証券投資・短期債除く (4月 1007億ドル)

オーダー/ポジション状況

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