来週の為替相場見通し:『パウエル議長の議会証言に注目。ドル円反発に要警戒』(7/10朝)

ドル円は7/2に記録した約1年3ヵ月ぶり高値111.67をトップに反落に転じると、今週は一時109.53まで急落しました。

来週の為替相場見通し:『パウエル議長の議会証言に注目。ドル円反発に要警戒』(7/10朝)

パウエル議長の議会証言に注目。ドル円反発に要警戒

〇今週のドル円早期テーパリング観測後退と米指標の不冴え、株価下落で109.53まで下落
〇その後は欧米株持ち直し等で110.12まで反発して越週
〇ユーロドル7/6に1.1896まで上昇後欧州でのデルタ株感染拡大と経済先行き不透明感に1.1782まで急落
〇週後半にかけてはドル売り強まり、1.1879まで持ち直しての越週
〇ドル円テクニカルの地合いの強さ継続、107.47を下抜けない限り上昇トレンド不変
〇ファンダメンタルズもドル円の上昇材料増える
〇来週は日銀政策決定会合、パウエルFRB議長議会証言等要注目
〇来週の予想レンジ(USDJPY):109.00ー111.50、(EURUSD):1.1725−1.1975

今週のレビュー(7/5−7/9)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初111.06で寄り付いた後、@先週末金曜日に発表された米6月雇用統計が期待されたほど強い結果ではなかったことに伴う米早期テーパリング観測の後退(米長期金利低下→ドル売り)や、A米経済指標の冴えない結果(米6月サービス業PMIや、米6月ISM非製造業景況指数が市場予想を下回ったこと)、B原油先物価格の急反落(OPECプラスの交渉決裂を受けて約6年半ぶり高値圏から急落→資源国通貨の対円相場下落→ドル円連れ安)、C世界的な株価下落を受けたリスク回避の円買い圧力、D米FOMC議事要旨にてテーパリングを急ぐ姿勢が示されなかったことに伴うドル売り圧力、(米10年債利回りは一時1.25%まで急低下。2/16以来、約4ヵ月半ぶり低水準)、

E新型コロナウイルス変異株(デルタ株)の世界的な感染拡大リスク、F米新規失業保険申請件数の予想外の増加(結果37.3万件、予想35.0万件)、G心理的節目110.00を割り込んだことに伴う短期筋のロスカットが重石となり、週後半にかけて、6/11以来、約1ヵ月ぶり安値となる109.53まで急落しました。しかし、一目均衡表雲上限をバックに下げ渋ると、H欧米株が持ち直したことに伴うリスク選好の円売り圧力や、I来週のパウエルFRB議長の議会証言を控えたポジション調整(米長期金利上昇→ドル高)、JFRBの金融政策報告にて「インフレ見通しにおける上方リスクの拡大」が示されたことなどが支援材料となり、結局110.12近辺まで持ち直しての越週となっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1862で寄り付いた後、@米早期テーパリング観測の後退を背景としたドル売り圧力(米長期金利低下→ドル売り)を材料に、翌7/6に、週間高値1.1896まで上昇しました。しかし、一目均衡表転換線に続伸を阻まれると、Aドイツ7月ZEW景況感指数の急低下(結果63.3、予想75.2)や、B上記Aを背景とした欧州経済の先行き不透明感、C欧州圏における新型コロナウイルス変異株(デルタ株)の感染拡大リスク、D原油先物価格や欧米株の下落を背景としたリスク回避のドル買い圧力、E心理的節目1.1800台を割り込んだことに伴う短期筋のロスカットが重石となり、週央にかけて、4/5以来、約3ヶ月ぶり安値となる1.1782まで急落しました。

もっとも、週後半にかけては、F冴えない米経済指標を受けたドル売り圧力や、G欧米株の持ち直しを背景としたリスク選好のドル売り圧力、HECBによる戦略レビュー発表に伴う材料出尽くし感(※ECBは中長期的なインフレターゲットを、従来までの「2%に近いが、それを下回る水準」から「2%」に引き上げることを決定。物価の一時的な上昇を容認するスタンスを明確化しましたが、概ね市場予想の範囲内でサプライズなし)が支援材料となり、結局1.1879近辺まで持ち直しての越週となっております。

来週の見通し(7/12−7/16)

<ドル円相場>
ドル円は7/2に記録した約1年3ヵ月ぶり高値111.67をトップに反落に転じると、今週は一時109.53まで急落しました。しかし、ダウンサイドに一目均衡表雲上限や90日移動平均線といった強力な支持帯が控えていること、強い買いシグナルを示唆するパーフェクトオーダーが継続していること、ダウ理論(週足ベース)の上昇トレンドが継続していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは強いと判断できます(今週後半にかけての下落は、上昇トレンドの過程で見られる一時的な押し目と判断。4/23に記録した安値107.47を下抜けない限り、中長期上昇トレンドは不変)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策格差を背景としたドル買い・円売り圧力(金融緩和脱却の糸口が見えない日本と、金融緩和からの年内脱却が意識される米国との金融政策格差)や、A上記@を背景とした過剰流動性相場逆流への警戒感(資産現金化需要のドル買い圧力)、B米経済の回復期待(インフレ高進+雇用改善)など、ドル円相場の上昇を想起させる材料が増えつつあります(但し、米国における新型コロナウイルス変異株の感染拡大状況には注意が必要。現在は英国に次いで世界で2番目の感染拡大状況)。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の反発をメインシナリオとして予想いたします(今週の下落でポジション調整は一巡したと判断。来週は再び上昇トレンドに回帰すると予想)。尚、来週は本邦側では7/12の5月機械受注に加え、7/16の日銀金融政策決定会合および黒田総裁記者会見が注目されます(※今回は経済・物価情勢の展望が発表される会合)。

一方、米国側では、7/13の6月消費者物価指数や、7/16の6月小売売上高、7月ミシガン大消費者信頼感指数の他、米当局者発言(来週は7/15に予定されているパウエルFRB議長による半期に一度の議会証言の他、複数の米当局者発言が予定)に注目が集まります(来週末よりブラックアウト期間に入るため、米当局者の見解は来週で見極める必要性あり)。消費者物価指数や小売売上高が市場予想を上回る結果を示す場合や、パウエルFRB議長よりタカ派的な発言(インフレリスクや雇用改善、テーパリングの可能性への言及)が示される場合には、8/26ー8/28に予定されているジャクソンホールでテーパリングが宣言されるとの見方が再燃し、米長期金利上昇→米ドル高の流れが強まる恐れもあり、来週はアップサイドリスクに特に注意が必要でしょう。

来週の予想レンジ(USDJPY):109.00ー111.50

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は週央にかけて値を崩し、4/5以来、約3ヵ月ぶり安値となる1.1782まで下落しました。強い売りシグナルを示唆する三役逆転が継続している他、今週は90日線と200日線のデッドクロスを経て移動平均線のパーフェクトオーダーも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを印象付けるチャート形状となっております(週末にかけて持ち直すも、上方には複数のチャートポイントが控えている為、余程強いユーロ買い材料が出てこない限り、上値余地は限定的)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@欧米間で広がる金融政策格差(年内テーパリング開始が意識される米国と、7/8に発表された戦略見直しを経て一時的なインフレ上振れを容認する姿勢を示したECBとの金融政策格差は顕著)や、A欧州圏における新型コロナウイルスの感染再拡大懸念、B上記Aを背景とした欧州経済の減速懸念(今週発表された欧州圏の経済指標は軒並み悪化)など、ユーロドルの下落を意識させる材料が増えつつあります。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(目先は3/31に記録した直近安値1.1703を試すシナリオを想定)。尚、来週は7/14に予定されているユーロ圏5月鉱工業生産をはじめ、7/16のユーロ圏6月EU新車登録台数、ユーロ圏5月貿易収支などに注目が集まります。市場予想を下回る冴えない結果となった場合には、欧州経済の先行き不透明感→ECBによる金融緩和長期化観測→ユーロLONGのアンワインド再開→ユーロドル下落の波及経路が想定される為、ダウンサイドリスクに注意が必要でしょう(ショートカバー一巡後の反落に警戒)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1725−1.1975

注:ポイント要約は編集部

パウエル議長の議会証言に注目。ドル円反発に要警戒

ドル円日足

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